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「ごめんやす~、ごめんやす~!」
鬼瓦興業の玄関で、大きな顎の男が声を張り上げた。そしてその後ろにはオシャレな帽子を深くかぶり、高級ブランド風の服をまとった女性が静かに立っていた
「はっ…はい…ど、ど、ど……、どなたっすか?」
廊下の奥から金髪の鉄が、のそのそと姿を現し、玄関の二人を得意の不気味な目でギロッと見た。同時に玄関の顎男は眉間にしわをよせると
「自分は京極森亀会のデカ顎のサブというもんです…鬼辰のオジキに御用の儀あってまいりました。」
右手を差出し、ぐっと腰を落とした。鉄は多少この業界の仁義という挨拶を知っているのか、あわてて腰を低く下げると
「こ…こ…これは、しっ、しっ、失礼しやした……じっ、自分は、おっ、おっ、鬼瓦興業の…、ふっ、不死身の、てっ…、鉄と…とっ、とっ、とっ……とっ…」
緊張のせいかいつも以上の、たどたどしい時間差口調で挨拶を返し始めた、するとそれまで顎男の後ろにいた女性が
「あー、あなたが吉宗はんの舎弟分の鉄はんやね…」
キラキラした笑顔で二人の間に割って入った
「…えっ?…てっ、鉄はん…?」
鉄は突然現れた女性の顔を見た瞬間、小さな目玉を見開いたまま、その場で固まってしまった…
鉄の前に割って入った女性、それは京極森亀会のお嬢こと、森山京子さんだったのだった…
「あなたが鉄はんや、うちすごーく会いたかったんやわ…」
「あっ、あっ、会いたかったって…えっ?えっ?…」
鉄はボロボロの歯を見せながら口を大きくおっぴろげると、顔を真っ赤にしながら京子さんを見つめた…
「あー、ごめんなさい、急にそない言うたらびっくりするのも仕方ないね…」
京子さんはあわてて帽子をとると
「うちは森山京子どす…、これから長い付き合いになるけど、よろしゅうたのみます」
相変わらずの美しすぎる笑顔で鉄に挨拶をした。
「なが…なが…長い付き合いって…はが、はが…」
鉄は頭から湯気をだしながらポーッと京子さんを見つめていた
「あら、うちったら相変わらずそそっかしいわ、初めて会ってこんな事いったって、鉄はんにはようわからんね、実はうち、吉宗はんのコレなんよ、ふふふ」
京子さんはそっと右手の小指を立てて見せた
「えっ、えーっ、あっ、兄貴の、こっ、コレって?…えっ?……」
鉄はつられるように自分の右手の小指を突き上げると、
「だって兄貴には……えっ?…えっ?…」
もう片方の手の小指もつき立てて、両方を交互にみながらパニック状態に陥っていた…
「鉄はんったらそんなに驚かんでもええやない…。そうやわ聞いてるよ、西条竜一との対決の時に、鉄はんが吉宗はんのピンチを救ってくれたんやてね」
京子さんはそう言いながら鉄に接近すると
「これは、うちからのお礼やわ…。ありがとう、うちの大切な人を救ってくれて、チュッ!」
鉄のほほにそっとキスをした。
「ほえっ!!」
よほどの衝撃だったのか、鉄は頭から機関車のような蒸気をポーッと吹き上げると、まるで旧型のパソコンのようにその場でフリーズしてしまった。
「あら、ちょっと、鉄はん?鉄はんったら、どないしたん?」
「……ジーー……、キュルルル………」
鉄はボロボロの歯をガチガチ動かしながら、完全にフリーズし続けていた、とそこへ居間から姐さんが姿を現し、玄関のお嬢を目にすると
「あらっ、もしかしてあなた京子ちゃん…やっぱり京子ちゃんね」
「はい、京子どす。鬼瓦の姐さん、ご無沙汰してました…」
「まあ、噂には聞いていたけど、本当に美人になっちゃって」
姐さんは嬉しそうに近寄り彼女の手をそっとにぎった
「あなたの話は、さっきうちの人から聞いたわよ、さあ、上がって上がって…あら、後ろにいるのはサブちゃんね、さあ、あなたも上がりなさい…」
「鬼瓦の姐さん、お言葉にあまえて、お世話になります!」
デカ顎のサブこと、京極森亀会の三郎さんは両手を膝にのせ、深々と頭をさげ礼儀正しく挨拶をした後
「ほいたら、失礼します…」
玄関脇に置かれた真っ赤なスーツケースと、その隣にあった水槽を抱え京子さんの後に続いて中へ入っていった。
「さあ、うちの人も首を長くして待っていたから、二人とも向こうで一緒に一杯やりなさい」
「ありがとうございます、鬼瓦の姐さん」
「何よ京子ちゃん他人行儀に…、昔みたいにおばちゃんでいいのよ」
「それじゃ、遠慮なく、鬼瓦のおばちゃん、しばらくお世話になります。」
姐さんに招かれながら京子さんとサブさんは、マサさんの出所祝いでにぎやかに盛り上がっている奥の居間へと歩いて行った。
「あっ!?」
それまでフリーズしていた鉄は、ハッと目を見開くと、慌てて京子さんの後ろ姿に目を向け
「なっ、なっ…なんだ、あの、めちゃめちゃ、すっ、すっげえ美人は!?…それも兄貴の、こっ、コレって…でっ、でも兄貴には、めっ、めぐみさんが…えっ、でも、あの美人は兄貴のコレって…」
興奮で鼻息を荒げながら、両手の小指を交互に見た後
「あーー、そっ、そうか!」
「あっ、あの人は吉宗兄貴の、とっ、土地土地の女?…てことは、あの京都弁からして、にっ、西の女ってやつか!…。やっ、やっ…、やっぱり吉宗の兄貴だ…。あっ…、あんな半端ねえ美人が、にっ、西の女にいるってのに…、めっ、めっ、めぐみさんまで、もっ、モノにしてしまう。すっ、すっ、すっげえ~、すっげえよ~」
鉄はキラキラ光る眼で天を仰ぎ、ぐっと拳を握ると
「東にはめぐみさん、にっ、西にはあの美人の姐さん…きっと北と南にも、兄貴はいい女を隠してるに違いないぞ…。すっ、すっげえ…、あっ、兄貴…、おっ、俺は、一生あんたに付いて行きますぜ…」
僕に対して更なる忠誠を誓ったのだった…。
そのころ僕は…
まさか森亀のお嬢こと京子さんが、鬼瓦興業へ登場しているとは露知らず。めぐみちゃんへの熱いのみを胸に
「僕はめぐみちゃんを選ぶ!…たとえ、ぶった切られたって、めぐみちゃんを選ぶのら~!」
叫ぶと同時に塀の上から、めぐみちゃんの部屋のバルコニーめがけ決死のダイブをした。
…がっ!…
彼女のバルコニーのはるか手前で、距離の目測を誤ったことに気が付き
「あれ!あれれ!?」
遠くに見えるバルコニーをつかもうと、空中で手をバタバタさせたものの、どうにもならずそのまま顔面から落下、グシャーッ!という鈍い音とともに神咲家の庭先へ叩き付けられてしまったのだった…
「ぐおぁ~!!」
僕はガマガエルがダンプに踏みつぶされたような声を発しながら鼻血まみれの顔を持ち上げると、今度は近くにあった柿の木に向かって猛ダッシュ、夢中で木のてっぺんへとよじ登っていった
(めぐみじゃん…めぐみじゃん…)
僕の頭には、めぐみちゃんに会いたい、会って自分の真実の思いを告げたい、ただそれだけしかなかった…。自分がどれだけデンジャラスな場所にいるか、そして身の危険が刻々と迫っているか、そんなことも知らずに僕は柿の木のてっぺんからは少し離れた場所にある、めぐみちゃんの部屋へ声を張り上げた
「めぐみちゃん!めぐみちゃーん!!」
僕は明りのついた彼女の部屋を祈るような思いで見つめた、すると僕の熱い思いが天に届いたのか、部屋のカーテンがあわただしく開き、中から夢にまで見ためぐみちゃんが姿を現した
「吉宗くん!…、そこにいるのは吉宗くんなのね!」
めぐみちゃんもよほど嬉しかったのだろうか、裸足のままバルコニーへ飛び出すと
「ずっと待ってたんだよ、すごく会いたかったんだよ!」
瞳にいっぱいの涙をためながら、バルコニーの端へとやってきてくれた
「めぐみちゃん、ごめんよ…。僕、何も知らずに、あんな酷いこと言っちゃって、ごめんよ…」
僕は柿の木のてっぺんで泣きながら彼女に叫んだ。めぐみちゃんは首を横に振ると
「ううん、いいんだよ…、誤解が解けたんなら、それでいいんだよ…」
嬉しそうに微笑んでくれた
「めぐみちゃん…、めぐみちゃん…」
僕は柿の木にしがみつきながら必死に彼女のバルコニーへ手を伸ばした、
「吉宗くん!吉宗くん!」
彼女も僕の手をつかもうとバルコニーから手を差し出した、しかし、僕たちの距離は遠く、二人して手を取り合うことは出来なかった…。
近いのに遠い、二人の間に存在するその距離こそ、これから先、僕と彼女の間に訪れる試練の壁だったのだった…
そしてその二人の試練の壁の番人が、刻一刻と近づいていた…。
柿の木の下に近づいてくるギラギラ光る丸い物体…、真っ暗な庭先、電灯など無かったはずの柿の木の下で、その丸い光の物体はピタッと止まると
「この腐れガキが~!!」
突然僕に向かって怒鳴り声を上げた…。そう、その光の正体こそ、閻魔のハゲト虎、めぐみちゃんと僕の間に立ちはだかる最大の城壁…警視庁捜査四課で泣く子も黙る鬼刑事、神咲虎三の光り輝くハゲ頭だったのだった…
そして僕たちの間に割って入る人物がもう一人…、そう、それは美しすぎる城壁…。
その美しい城壁、新京極の森亀お嬢はその時、何も知らずに鬼瓦興業の居間で僕がトイレから戻るのを待ちわびていた…
「吉宗はんったら、どないしたんやろ?…せっかくうちが会いに来てあげたのに…」
お嬢は静かにつぶやくと、そっと彼女の後ろに置かれた水槽に目を向け
「もうじきあんたにも会わせたるからね…」
水槽の中に向かって語りかけた。すると中から一匹の獰猛そうなワニガメがゴツゴツした甲羅から、ニューっと顔を突き出し、獲物を求めるような鋭い目で口をパクパク動かしていたのだったのだった…
つづく
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「ああ、最低だ~、僕は最低のスケベ男だぁ~…。」
バンの後部座席、ぎっしり積み込まれた荷物の隅で、僕は恨めしそうに自らの股間を見つめていた
「ああ、どうして僕のここは、節操がないんだ…、めぐみちゃんの悲しい思いを知りながら、あんな所でカチカチに大きくなってしまうなんて…最低のスケベ男だ~」
「お前、さっきからスケベだの、最低だのって、何をぶつぶつ言ってんだ?」
運転席の銀二さんが振り返った
「だって銀二さん…」
「だってもクソもねえだろ、あんないい女に好きって言われたうえに、おもいっきし抱きつかれてんだぞ、そらあチンボだっておっ立つに決まってんだろうが」
「で、でも、銀二さん、僕は京子さんに真実を言えないまま、スケベ心をむき出しにしてしまったんですよ。くそう、それもこれも、この節操のないこいつのせいだ~」
僕は力任せに自らの股間をぶったたき、「ぐおあ…」その場で悶絶しながらかがみこんだ。
「てめえの倅せめてどうすんだ、バカ…」
銀二さんは呆れ顔で笑ったあと、ほっぺをピンクに染めながら
「はあ、それにしてもいい女だったな~京子お嬢…。思い出しただけで俺の真珠入りのマグナムがうずいてくるぜ…」
にやけっつらでつぶやくと
「ああマジでいい女だった、俺の名刀正義だって、さっきから、ずーっとこの調子だぜ」
助手席のマサさんも、こんもりと盛り上がった自分の股間を指さした。
「ちくしょう、おまけにお嬢は京極森亀会会長の一人娘…、一緒になったら関西でも名だたるテキヤ一家の二代目襲名って、どでかいおまけつきだぞ…」
銀二さんとマサさんは口をそろえると、後ろを振り返り鬼のような形相で僕を睨み付け
「だいたいから何でお前なんだ吉宗!先輩の俺らを差し置いて、この野郎!かーっ、なんだかムカッ腹が立ってきやがる!」
「ひえー、そっ、そんなこと言われても…」
僕は思わず顔をひきつらせた
やがてバンは明りの消えたお不動さんの前を通過すると、見慣れた細い路地へと入っていった、だんだん会社へ近づくにつれ僕の鼓動はドキドキと高鳴り始めた。
(もう少しで会社だ、めぐみちゃん今頃どうしてるんだろう?…)
僕の脳裏に寂しげに店番をしていた、めぐみちゃんの姿が浮かんできた。僕はポケットから、無残に紐のちぎられた小さなお守り袋を取り出し
(めぐみちゃん、ごめんね…ごめんね…)
彼女からもらったそれをじっと見つめながら、目にいっぱいの涙を浮かべていた…
「おいっ、ついたぞ吉宗」
マサさんの言葉に顔を上げると、バンはすでに会社の車庫へと到着していた。
僕は慌てて車から降りると、キョロキョロと周囲を見回したが、あたりはひっそり静まり返っており、大きな犬小屋の中でセントバーナードの与太郎が退屈そうに、じっとこっちを見ているだけだった。
「はあ~」
小さなため息をつくと、バンの中から売れ残った金魚や、荷物を倉庫へ運び入れ、鬼瓦興業の建物の中へと入っていった。
「ほーい、みんなお疲れさん。」
玄関に入るといつものように、姐さんが笑顔で僕たちを迎えてくれていた。
「ただいまーっす!腹減ったー」
「今日はマサの出所祝いだ、お慶ちゃん達と一緒に、ご馳走いっぱい作ったからね、手を洗ったら早く居間に行きな…」
「俺の出所祝いっすか?姐さん、ありやとあっす、すっげえ感激っすよ!」
マサさんは小さな目を輝かせると、バタバタ廊下の奥へと入っていった
(お慶ちゃん達?)
僕は雪駄を脱ぎながら、姐さんの言葉に一瞬目を見開いた
「あっ、あの…姐さん。」
「なんだい、よっちゃん」
「お慶さん達って、もしかして、めぐみちゃんも…?」
「ああ、もちろん手伝ってくれたよ」
「それじゃまだ中に!?」
僕は玄関の雑巾で汚れた足を拭くと、心臓をバクバクさせながら奥へ向かおうとした、が、その時
「残念でした…、めぐみちゃんだったら、ハゲ虎が迎えに来てしぶしぶ帰って行ったよ」
姐さんの言葉に足を止め、「はあ~」と、ふたたび大きなため息をつくと、がっくりと肩を落としながら、とぼとぼと廊下の奥へ入っていった。
居間に入ると、何時ものように親父さんが座卓に腰かけ、得意の唐辛子で真っ赤になった刻みネギをバリバリ食べていた。そして、その周りには別の仕事(バイ)に行っていた、追島さんをはじめ、鉄や刺青の岩さんも座っていた。
「おう、なにぼーっと突っ立ってんだ吉宗、ほらお前も座れ、座っていっぱい食え!」
「はい!」
僕は親父さんに頭をさげると、鉄の隣のいつもの場所へ腰を下ろした。
「それじゃ、マサの出所を祝って乾杯!」
親父さんはそう言いながら、最近はまっている純生マッコリの入った大きなどんぶりを掲げたあと、がぶがぶと一気に飲み干し、隣に座っているマサさんの肩をグローブのような大きな手でばしばしとたたき始めた
「おうこらマサ、今度はくだらねえことで、パクられんじゃねーぞ、がはははは」
「くだらねえって、かっ、勘弁してくださいよ、親父さん…」
「馬鹿野郎、酔っぱらって素っ裸で一物されけ出したまま、女子高生追い掛け回したんだろが、思い切りくだらねえじゃねえか、はははは…」
「ちょっと追島の兄いまで」
真っ赤になってうろたえるマサさん、みんな大声で笑いながら、お酒を飲んだり、ご馳走をぼおばったりしていた。
いつもなら、僕にとっても大好きな楽しい時間だった。しかし今の僕は、京子さんと、めぐみちゃんのことが頭から離れず、呆然と座卓のご馳走を眺めていた…
「よっちゃん、どうしたのさ?さっきから、ぼーっとしちゃって」
気がつくと、僕の後ろに、大皿を抱えたお慶さんが立っていた。
「ほら、よっちゃん、あんたの好きな唐揚げだよ」
お慶さんは美味しそうに揚がった唐揚げ入りの大皿を、僕の目の前に置くと、そっと隣の席に腰を下した。
「さあ、食べてごらん、本当においしいんだから…」
「あっ、はい…」
僕はうなずくと、唐揚げを、そっと口の中に入れた…
(おいしい……)
「ねっ、おいしいでしょ、それ、めぐみちゃんがよっちゃんのために、心をこめて揚げた唐揚げだからね…」
「めぐみちゃんが!?」
あわててお慶さんを見たあと、僕は再び大皿に目をやった
(めぐみちゃんが…めぐみちゃんが僕のためにこれを…)
震える手で唐揚げを大皿からとると、僕は再びそれを口に入れた
(おいしい…、おいしすぎる…)
めぐみちゃん作、愛情のこもった唐揚げを噛み締めながら、僕は思わず目を潤ませていた
「何があったの?よっちゃん」
お慶さんはそっと僕にささやいた
「めぐみちゃんと何かあったんでしょ?」
「おっ、お慶さん?…」
「めぐみちゃんね、みんなの前で普通にふるまっていたけど、それを揚げながら泣いていたのよ…」
「泣いていた!?」
「やっぱり何かあったのね…」
僕は静かにうなずいた…
「だめだよ、よっちゃん。あんないい子泣かせたりしたら…」
「………」
「ほら、せっかくよっちゃんのために揚げてくれたんだから、しっかり食べてあげなさい、何があったか知らないけれど、早く仲直りするんだよ」
お慶さんの優しい言葉に頷くと、僕は唐揚げをもう一つ手にとり、そっと立ちあがった
「すんません、ちょっとトイレに…」
涙を隠しながら慌てて廊下へと出ると、僕は奥の暗がりへふらふらと歩きだした。僕の目からは涙が止めどなく流れ落ちていた…
(めぐみちゃんが、泣いていた…この唐揚げを作りながら、泣いていた…)
僕は廊下の途中で足を止めると、そっと窓の外を見た。視線の先にはめぐみちゃんの家があり、二階にある彼女の部屋は暗くひっそりと静まり返っていた。
「めぐみちゃん…」
僕はポケットに手を入れると、彼女が作ってくれた小さなお守り袋をとりだし、これをくれる時のめぐみちゃんの言葉を思い出した。
(恥ずかしいけど、私の手作りのお守り袋…、愛情たっぷりこめて作ったんだよ…中にお不動さんのお守りと、私からのメッセージが入ってるんだ…)
(めっ、めぐみちゃんからのメッセージ?…)
(あっ、ダメ~!恥かしいから、中は後で見てね…)
「そう言えば、めぐみちゃん中にメッセージが入っているって…」
僕は震える指先でお守り袋を開くと、お不動さんのお札の脇に折りたたまれた小さな手紙を取り出し、薄暗い廊下の明りにかざしてみた
「あっ…」
そこには、きれい文字で
『どうか吉宗くんが、毎日、元気に楽しく過ごせますように…』
めぐみちゃんらしい、優しい言葉か書かれていた…。そしてその脇には小さな文字で
『それから…私、神咲めぐみは、ずーっと大好きな吉宗くんのそばにいれますように…』
そう付け加えられていたのだった…
「めっ、めぐみしゃん…」
僕の目玉から、脱水症状になるのではないかと思うほどの、すさまじい涙が流れ始めた…
(めっ、めぐみちゃん!…めぐみぢゃん…)
「こんなに、ポクのことを思ってくれていたのら~!らろに、僕は、僕はめぐみしゃんを疑って、あんらひろいころを、言ってしまったのら~、めぐみしゃん!めぐみしゃん!」
僕は泣きながら顔を上げると、二階の彼女の部屋に目を向けた…
「めぐみちゃん、僕はめぐみちゃんが一番大切なのら~!君だけが大切なのら~!」
頭の中に、めぐみちゃんとの楽しかった思い出が、走馬灯のように蘇ってきた。
初めてであった面接の日…。一緒にべっこう飴を売った楽しいひと時…。西条さんとの対決の後、疲れて僕の肩に寄りそって寝ていた彼女のやさしい顔…。出会って間もないのに、僕にとっては数十年以上一緒に過ごしていたような、そんな数々の思い出を一つ一つかみしめるうちに僕の胸はどんどんと熱くなり始めていた…
とその時、薄暗かった彼女の部屋にパッと明りが!
「はっ、めぐみちゃん!」
(あの明りの部屋にめぐみちゃんが…めぐみちゃんがいる!)
そう思うと僕の心臓はバクバクと高鳴り始めた…
(会いたい…、めぐみちゃんに会いたい!)
気が付くと僕は裸足のまま外に飛び出し、夢中で彼女の家の塀の上によじ登っていた…
(めぐみちゃん!)
僕は無意識に手を伸ばし、彼女の部屋のバルコニーに飛び移ろうとした。とその時…
「はっ!?」
僕の頭の中に、京極森亀会の京子さんの美しい顔が…
「そうだ、僕は…僕はさっき、京子さんに愛の告白をしたままなのだ…」
京子さんの美しい笑顔が、頭の中でどんどん大きく広がりキラキラと輝き始めた。
しかし僕は、「違う!違う!!」ぶるぶるっと塀の上で首を横に振ると
(京子さんごめんらさい!ぼくはやっぱり、めぐみちゃんが一番大切なんれすら~!)
頭の中の美しい京子さんに向かって叫んだ…、すると京子さんは、それまでの美しすぎる笑顔から見る見ると恐ろしい鬼の形相へと変わりはじめ、同時に、彼女のバックには巨大な眼玉を見開いた森亀会長の怒りに満ちた顔と、京極森亀会のこわーい人たちが登場していた。
「ぐお!」僕は思わずのけぞり、思わず塀から落ちそうになった。
頭の中の京子さんは、めらめら燃える火炎の前で、まるでメデューサのように髪の毛を逆立てながら、右手には出刃包丁、そして左手にペットのワニガメを掲げると
(おどりゃ~!さっきの愛の告白は嘘やったんか~!)
目玉を血走らせながら僕に襲い掛かってきた
(うぐあーーー!)
僕はあわてて股間を握りしめると、青ざめた顔でバルコニーの先にある、明りのついた、めぐみちゃんの部屋に目をやった…
(ここで、あのバルコニーに飛び移ったら、めぐみちゃんに会える。でも、そのあとに待っているのは…)
僕の未使用の一物をおいしそうに食べているワニガメの様子がリアルに映し出された
(まだ、一度も使ったことが無かったのに…)
僕は寂しげに自分の股間をなでなですると
(ごめんね、僕のおちんちん…!)
自らのおちんちんに別れを告げ、ぐっと眉間にしわをよせ
「僕はめぐみちゃんを選ぶ!…たとえ、ぶった切られたって、めぐみちゃんを選ぶのら~!」
大声で叫びながら、めぐみちゃんの部屋のバルコニーへ向かって飛んでいたのだった…
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ドンガ、ドンガ、ドンガ、ドンガ…
森亀会長らによる祝い太鼓は、けたたましく夜空に響き渡っていた…
(金玉をぶった切って、ワニ亀の餌って…)
僕は京子さんの言葉が頭から離れず、恐る恐る彼女に目を向けた。しかしそこには優しい笑顔で祝い太鼓を見つめている彼女の姿があった
(さっきの怖い顔…、見間違えだったのかな?…)
そう思い首をかしげた時、
「おい、吉宗…、吉宗…」 僕の肩をそっと叩く手が、振り返るとそこには顔面蒼白なマサさんが立っていた…
「あっ!マサさん…」僕が声を出すと、マサさんは自分の口の前に人差し指を立てて
「バカ、しっ、しー!」
「えっ?」
「いいから、こっち来い!」
僕の腕をつかみ、植栽の影へ引きずり込んだ…
僕は植栽の中で首をかしげていたが、ハッと目を輝かせると
「マサさん、ありがとうございました!…お陰で僕も新しい愛を掴むことができましたよ!」
元気いっぱいに頭を下げた
「ありがとうじゃねえよ、この天然バカが…」
「えっ!?」
「お前、とんでもねえこと、お嬢に言っちまったんだぞ…」
「とんでもない?…」
「ああ、とんでもねえことだよ」
「どういうことですか?…、僕、マサさんの言うとおり、真実の愛を掴んだんですよ…、これでめぐみちゃんも、邪魔者の僕が消えてマサさんと幸せに…」
「それが違うんだよ」
「違う?」
「言いか、よーく聞けよ…」 マサさんは青ざめた顔で
「実はなあ…」
すべての真相を僕に告げた…
「えっ?…マサさんはめぐみちゃんと婚約なんてしてない?…えっ?えっ?…」
僕は何がなにやらわからず、目をパチパチさせ…
「あの…、言っている意味が良くわからないのですけど…」
「だから、あれは俺の嘘…」
「嘘?…」
「ああ…、実は婚約も嘘、ぜーんぶ嘘、本当はめぐみはお前の事だけが好きなんだよ…」
「ぜーんぶ嘘?…、めぐみちゃんは僕の事だけ好き?……、えっ?えっ?…」
何度も首をかしげると
「いやだな、マサさん…、どっ、どうしてそんな嘘をつくんですか?…はは、ははは…」
「嘘じゃねえってんだよ」
「だって、証拠に、そのめぐみちゃんが作った愛のお守りが、それにマサさんとめぐみちゃん、あんなに仲も好いし…」
震える手で、マサさんの胸元にぶら下がっている小さなお守袋を指差した…
「あっ、これか?…、これはめぐが作ったんじゃなくて、あいつの従姉妹が昔作ってくれたやつなんだ…」
「えっ!?」
「実はよ、めぐの従姉妹と俺は昔付き合っててよ、それであいつ、前から俺のこと兄貴みたいに思っててよ、そんな訳だから、お前が俺の事、恋人と間違えるのも無理ねえってかよ…」
マサさんの話を聞くうちに、僕の顔はだんだん青ざめ
「そっ、そんな…、そんな…」 崩れ落ちるようにその場にしゃがみこんだ…
「そっ、そんな~…」
「すまねえ、マジですまなかった吉宗…」
「はっ、それじゃ…!?」
「それじゃ僕は騙されているとも知らずに、めぐみちゃんに、あんな酷いことを…」
彼女からもらった、愛のお守袋を、怒って引きちぎってしまった時のことを思い出した…
「ぼっ僕は…、僕は何ということを彼女に…」
(すると、ここで店番をしていた時の、めぐみちゃんの悲しい顔は…)
「あーーーー!?」
(あんなひどいことをした僕の事を、けなげに待ってくれていたのか!?)
「ああぁ…、めぐみしゃん…、めぐみしゃん…」
気がつくと僕は涙と鼻水まみれのボロボロの顔で泣きくずれていた…
「おい、泣いてる場合じゃねえだろ…吉宗!」
「えっ?」
「えっじゃねえよ、ほらあれ…」
マサさんは植栽の中からぬっと顔を突き出すと、幸せそうに祝い太鼓を眺めている京子さんを見た
「あっ!京子さん!?」
彼女の姿を目にし、僕は思わず額から青筋をたらした…
「あー!!、めぐみちゃんの辛い思いも知らずに、僕は京子さんに愛の告白を!…」
「だから俺は、お前を止めようと必死にここで叫んでたんだろうが…」
マサさんが手をバタバタしている姿を思い浮かべ
「あっ、あれは、応援団の三々七拍子じゃなかったのかー!」
「まったくお前ってやつはよう…」
マサさんは呆れ顔で僕を見た後
「とにかく、真実がわかった以上、ちゃんとお嬢に本当のことを伝えねえとダメだろうが…」
「はっ!」
「はっじゃねーっての、早く、僕には好きな人がいるんですって、お嬢に言うんだよ…」
「えっ、でもそんなこと言ったら京子さんが深く傷ついてしまうんじゃ!…」
「それじゃ、めぐみはどうすんだ、あいつは嘘つき呼ばわりされながらも、けなげにお前のことを、ここですっと待ってたんだぞ…」
「ああ、そうだ…、そうなんだ…」
僕は再びめぐみちゃんの悲しい心を思い、ぽろぽろと涙を流しはじめた…
「だから、泣いてる場合じゃねえだろっての…」
「でも、マサしゃん、いったいどうしたら?…」
「一つだけ手はあるぞ…」
「えっ?」
マサさんはニヤッと小さな目玉を光らせると
「お嬢、つまり京子さんの前に、お前以上に愛すべきすごい男を登場させるんだ…」
「愛すべきすごい男?…」
「いいか、よーく聞けよ…」
マサさんは大きなパンチパーマを近づけると、僕の耳元でぼそぼそと語りはじめた…
「まず、はじめにお前はすべての真実を打ち明ける…」
「でも、それじゃ?京子さんがショックを…」
「まあ、始めはお嬢も落ち込むだろうな…、だがその心は、ショックからやがて裏切られたお前に対する怒りに代わっていくだろう…」
「えっ!?…やっ、やっぱり…」
僕は一瞬見せた彼女の般若のような目を思い浮かべた…
(それじゃ怒りに満ちた京子さんは…)
「吉宗はん、あれは嘘やったのね、あの言葉を信じていいって、うちに言うたあの約束は…」
京子さんの顔がみるみる鬼の形相に変わり
「それやったら、きっちり落とし前つけてもらうわ!」
「落とし前!?」
「言うたやろ、あんたの金玉ぶった切って、ワニ亀の餌にしたるって…」
いつのまにか彼女の右手に大きな出刃包丁が握られていた…
「ひー!、ちょっと待って下さい、これには訳が、訳が…」
「やかましい、早う、その腐れ金玉出さんかい!」
彼女は無理やり僕のパンツをずり下ろし、一物をぐいっと鷲づかみにすると
「落とし前やーー!」
声を張り上げ、出刃包丁を天高く振り上げた…
と、その時…
「あいや、待たれい!…」
危機一髪の僕の前に、さっそうとマサさんが登場!
「お嬢、あいや京子さん、吉宗には何の罪もねえ…、すべては俺が犯した過ちのせい、どうか勘弁してやっておくんなさいよ…」
「なんやのあんた、これはうちと吉宗はんの問題や!…」
京子さんは僕の一物を握り締めたまま、嶮しい顔でマサさんを見た
「たしかに、お嬢と吉宗の問題かもしれねえ、でもな、それじゃ俺の男としての義が立たないんでさあ…」
「あんたの義?…」
「ああ、俺が嘘をついたせいで、吉宗に落とし前をつけさせちまったんじゃ、この俺の義がたたねえ…」
マサさんの言葉に京子さんは、ギロッと鋭い目を向けると
「それやったら、あんたが落とし前つけるいうの?…」
「お嬢さん、それであんたが許してくれるならね」
マサさんは、そう言うと同時に、さっそうとベルトを緩めパンツごとズボンをずり下ろした
「あっ!?…」
京子さんの頬が一瞬ピンクに…
「お嬢さん、あんたを傷つけちまった落とし前だ、さあ、この磨きぬかれた俺の名刀正義、そいつでスパッとやっちまっておくんなさい!」
「本気でいってるのかい?」
京子さんは僕のものを放すと、出刃包丁を片手に立ち上がり
「うちはマジでやる女よ…」
「かまいませんよ、あんたのような日本一のいい女にスパッとやられるんだ、俺の名刀も幸せってもんでさあ…」
「日本一のいい女?…」
「ああ、あんたは日本一いい女だ、さあ、遠慮しねえでスパッと!…」
マサさんの気迫に京子さんはしばらく呆然と立ち尽くしていた…、がやがて
「負けや…」 そうつぶやくと、手にしていた包丁をカランと地面へ放り投げ
「負けや負け、うちの負けやわ…」
ピンクにほてった顔で、そっとマサさんの一物を握り締め…
「こんな立派なお宝、ぶった切ったりしたら、うち一生後悔するやないの…」
「お嬢さん、それじゃ…」
「この名刀正義は、もうあんただけのものやない…、今日からうちの物でもあるんやしね…」
熱いまなざしをマサさんに向けた…
「おっ、お嬢さん!…」
「ううん、やめてそんなよそよそしい呼び方、京子って呼んで…」
「京子!」
「はい?」
「京子、俺について来てくれるか?」
「うちはこれからあんたのモノや…、来るなって言われても一生ついて行きます…」
京子さんは潤んだ瞳でマサさんの胸にすがりつくと、ふっと僕をかえりみた
「吉宗はん、そういう事やから、あんたはその、めぐみ言うお嬢さんとお幸せに…」
「あっ、はい…」
僕は、あわやぶった切られる寸前だったアレをさらけ出したまま、呆然とした顔でうなずいた
マサさんはそんな僕に
「それじゃ、俺は行くぜ…達者でな…吉宗…」
そう言い残し、京子さんと二人手をとりあって去っていったのであった…
…つづく…
「とまあ、そういう訳だ…これならお嬢も傷つくことはねえだろう?…」
「はっ、はあ…」
僕はマサさんの話に首をかしげていた…
「何だよお前、俺のこの作戦が信じられねえってのか?」
「だって、京子さんがマサさんのアレを見てそんな風になっちゃうなんて…」
「バカだなお前は、だから何時までたっても童貞なんだよ、大人の女ってなあ、みーんな立派なお宝に目がねえんだぞ…」
「でっ、でも…」
「おい吉宗、そのバカの話なんぞ信じちゃなんねえぞ…」
「えっ?」
気がつくと僕とマサさんの背後に銀二さんがしゃがみこんでいた
「何だてめえ銀二、俺の作戦のどこがバカな話だってんだ…」
「バカだからバカだって言ってんだよ…」
「何!?…」
「てめえのチンケな金玉見て惚れる女が何所にいるってんだ…」
「チンケだと、てめえ銀二!」
銀二さんはマサさんの口を押えると
「いいか吉宗、このバカでなく俺の言うことを信じるんだぞ…」
「あっ、はあ…」
「いいか、よーく聞けよ…」
僕の耳元で作戦を伝授しはじめた
「まず、お前がお嬢に真実を打ち明ける…、そして怒りに我をわすれたお嬢が、お前の金玉を切り落とそうとする。これも俺の経験上間違いなく予想できることだ…」
「やっ、やっぱり銀二さんも、そう思いますか?…」
「ああ、間違いねえだろう」
僕はぞっと青ざめた
「おいおい、心配はいらねえぞ吉宗」
「えっ?…でっ、でも…」
「危機一髪の瞬間、今度は俺があらわれる…そしてお嬢に一言」
「おいおい、待ちなよお嬢さん!」
銀二さんはキリッとした表情で怒りに満ちた京子さんに声をかけた
「何よあんた?…関係ない人は口出ししないでちょうだい!」
「それが、関係なくねえんだよ、何しろその吉宗って男は右も左も分かれねえころから俺が育てた男だからな…」
「あんたが育てた?」
「ああ、そいつの過ちは、そいつを教育してきた俺のあやまちだ…」
「へえ、それやったら、あんたどうするつもりやの?…」
「どうも、こうも、俺が落とし前をつけさせてもらう以外ねえだろうな…」
「あんたが落とし前?」
「ああ…」
銀二さんはつりあがった鋭い目で京子さんを見ると、おもむろにズボンを下ろし、彼女の目の前に、自慢の一物をさらけ出した…
「なっ、なんやのあんた?…そんなもの出してどういうつもりなの?…」
「言っただろ、落とし前は俺がつけるって…」
銀二さんはそう言いながら、腰をぶるっと動かした、すると
ジャラジャラ!…
銀二さんの黒光りした一物から奇妙な音が…
「なっ、何!今の音は…」
京子さんは驚きのあまり呆然と銀二さんのアレを見つめた…すると銀二さんはさらに腰を大きく揺さぶり
ジャラジャラ!ジャラジャラ…
「はっ、その音は、まさかあんたのそれ!?…」
京子さんは顔を真っ赤にすると、握っていた僕のあれから手を放し、恐る恐る銀二さんのもとへ近寄った…
「どうやら気がついたようですね、お嬢さん…」
「やっぱりそれって真珠入り!?…」
「ええ、100パーセント天然のね…」
銀二さんはキリッと目を細めると、京子さんの前で腰をくねくねと激しく振りまくった
ジャラジャラ…ジャラジャラ…
京子さんはその音を聞いているうちに、どんどん顔を真っ赤に火照らせ
「もうあかん…、そんな素敵な音を聞かされたんじゃ、うち、もう我慢できへんやないの…」
銀二さんの真珠入りへ向かって叫んでいた…
「さあ、落とし前だ、その包丁で俺のパール入りのゴージャスなこいつを、思いっきりぶった切るんだ!」
「えっ、でっ…でも!」
「さあ、いいから、ぶった切れ!!…」
銀二さんが大声で叫ぶと同時に、京子さんは 「はあ、あかん…」 かすれた声で、その場に崩れ落ちてしまった
「あかん、うちにはそんなゴージャスなお宝、眩しすぎて見ることもできない…ましてやぶった切ることなんて…」
「それじゃ、こうしよう…、落とし前としてぶった切る変わりに、今日から俺のゴージャスなこいつは、お嬢さんあんただけの物だ…煮て食うなり焼いて食うなり好きにしてくれ…」
銀二さんはギラッと光る眼で京子さんを見つめた…
「はあん…嘘やろ~、本当に本当に今日からこれが私の物?…」
「ああ、この鬼瓦興業の山崎銀二って男は、嘘をつく男じゃありませんぜ…ましてやお嬢さんみてえな美しい女性にはなおさらね…」
「うれしいー!」
京子さんは目に涙をいっぱいあふれさせると、その場にしゃがみ込んで、銀二さんのゴージャスなお宝をうれしそうにジャラジャラ揺すぶり始めた…
「今日からこれは、私のもの…ふふふ…」
ジャラジャラ、ジャラジャラ…
こうしてお嬢の心は銀二さんのものに…銀二さんは僕の急場を救った上に、晴れて京極森亀会の二代目襲名となったのであった…
…つづく…
「まあ、こういう算段ってわけだ、はははは、はははははー!」
銀二さんはカクカク腰を揺さぶりながら、ジャラジャラと真珠を鳴らした
「どうだ吉宗、素晴らしい作戦だろうが、はははは」
「素晴らしいっていうか、あの、マサさんとほとんど同じじゃないですか…」
「こいつと同じ!?…」
銀二さんは隣であきれているマサさんを見ると
「ふざけんなバカ、こいつのしょぼくれチンポと俺の真珠入りゴージャスチンポとじゃ、天と地の差だ、天と地の…」
「てめえ銀二、俺の名刀をしょぼくれチンポとは何だこの野郎!」
「しょぼくれだから、しょぼくれって言ったんだろが!」
「何だこの野郎、そういうてめえの方こそ、天然真珠とかぬかして本当はプラスチック入りのイカサマ改造チンポだろうがコラ!」
「なっ、てめえマサ、イカサマ改造チンポとは何だ、このしょぼくれチンポ野郎が!」
「何このイカサマチンポ野郎!」
「なんだこの、しょぼくれチンポ野郎!」
二人はえげつない言葉で罵り合いながら、その場で取っ組み合いを始めてしまった…
「あー、ちょっと銀二さん、マサさん喧嘩はやめてー」
僕が必死に割って入った、その時だった…
「吉宗はん、そんな所で何しとるの?…」
気がつくと、僕たちの前に京子さんが立っているではないか…
「あっ!きょっ、京子さん!?…」
僕が慌てて叫ぶと、今まで喧嘩をしていた二人も、はっとこっちを見た
「あっ、お嬢!?」
銀二さんとマサさんは、京子さんに気がつくと
「あっ、どっ、どもーーー!」
顔を真っ赤にしながらニンマリ微笑んだ…
「あっ、もしかしてお二人は銀二はんにマサはんですか?…」
京子さんはその美しすぎる笑顔で二人に話かけた
「銀二はんにマサはんって、あのお嬢さん、どっ、どうして俺たちのことを…」
「やっぱりそうやったのね、ふふふ…、だって憧れの吉宗はんの先輩でしょ、しっかり調べとかんと恋人として失格やからね…」
にっこり微笑みながら、僕の腕をにぎり
「ねっ、吉宗はん…うふふ」
キラキラ輝く瞳で僕を見つめてきた…
「あっ、はひ…ははは、はははは…」
僕はその美しさにつられて、うっかり大切な事を忘れ微笑んでいた…
「近くで見ると、さらに美しいな…」
「ああ、やっぱ美しすぎる…」
銀二さんとマサさんは顔を真っ赤にしながら、呆然と京子さんを見つめていたが、やてハッと我に返ると
「おい、吉宗!作戦、作戦…、俺が伝授した作戦開始だ…」
小声で僕に訴えかけてきた
(はっ、そうだった…、僕はまず真実を京子さんに話さなきゃいけなかったんだ…)
必死に深呼吸をすると、
「京子さん!僕の話を聞いてください!」
大声で叫びながら彼女を見つめた
「えっ?どないしはったの吉宗はん」
京子さんは振り返ると、キラキラ輝くそれは眩しすぎる笑顔で僕を見つめ返してきた
「あっ!…」
彼女のそんな輝きに包みこまれた瞬間、僕は緊張のあまり何も言えず口をパクパク動かすだけになってしまった…
「どうしたん?吉宗はん、今なんていうたの?…」
京子さんは金魚のように口をパクパクしいてる僕を、しばらくの間じーっと見つめていたが、やがて
「えっ?なに…、あ…い…し…て…る…?」
僕の口パク言葉を勝手にそう読み取ると
「吉宗はんったら、うちのこと愛してるって、今、そう言ったのね!」
美しい瞳をさらにキラキラと輝かせた…
「いや、あの…」 僕は慌てて首をふったが京子さんは
「うち、うれしい…めっちゃうれしいー!!」
そう言うと、力いっぱい僕に抱きついてきた…
(ちっ、ちがう、ちがう…)
必死に叫ぼうとした、その時…
ポヨン、ポヨヨ~ン…
僕の胸元にやわらか~く、丸いポヨヨンとした物体が…
(あっ、こっ、これは!?…きょっ、京子さんの!?…)
僕は下目ずかいに彼女の胸元へ目をうつし、ポッと真っ赤にお顔をそめ…
(やっぱり、きょ、京子さんのオッパイだ…。ああ、何て暖かくて、やわらかくて…素晴らしい感触なんだろう…)
鼻の下をだらーっと伸ばし、ポエ~っとだらしない顔で微笑んでしまった…
「はっ!?…」
(いけない、こんなところでポエーッとしてる場合じゅないんだ!…京子さんに真実を…)
そう思った僕は、思い切ってめぐみちゃんと僕の事を語ろうとした、その時だった
気がつくと僕の困った君が、こんな危機的状況にもかかわらず、スーパー困った君へと変身してしまっているではないか…
(うおあー!まずい、僕のおちんちんが~!!)
(なっ、何でこんな時に…、今は、さっきの愛の告白が間違いだったって、京子さんに伝えなくちゃならないのに…)
僕はスーパー困った君のことを京子さんに悟られないよう、必死に腰を後ろへくねらせると
(このバカちんちん、静まれ!静まれ~!)
僕の困ったおちんちんに言い聞かせた…。ところが…
「吉宗はん、うち好いちょるよ、吉宗はんのこと、好いちょるよ…」
京子さんは危機的状況の僕をさらに刺激するかのように、耳もとでそうささやくと、そのやわらかいおっぱいをぐっと押し付けてきたのだ
「うぐぁー!」
僕は思わず踏みつぶされたガマ蛙のようなうめき声を発すると
(だめ、だめだめ…そんな事をされたら…だめだめ…静まれ、静まれ!)
グレードアップしてしまった、スーパー困った君を、必死になだめ続けたのだった…
そんな僕の光景を遠目に見ていた銀二さんとマサさんは、
「でっ、でけえ…」
二人そろって、ボソッとつぶやくと、額から青筋をたらしながら自分の股間に目をやった…
「おい、マサ…、どうやら俺達のチンボ大作戦は、通用しそうもねえな…」
「ああ銀二、やつがあんなお宝を持ってたんじゃな…」
二人は僕のグレートスーパー困った君を眺めながら、呆然と立ち尽くしていたのだった…
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