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ごく普通の家庭に生まれ、ごく普通の学校を卒業、そんな一条吉宗くん、
ひょんなことから、な、なんと任侠の世界へ!

Ryouheikunouennmokuji

lovely第一話から読んでくださる暖かーい方はこちらをクリックしてねdog

pen本編とは別に、私の雑談広場コーナー作っちゃいました、サイドバーのカテゴリーから『光’s 喫茶」をクリックしていただければ、表示されます^^気軽にご意見ご感想など頂けたらいいなーと思っています^^

新コーナー
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吉宗くん本編更新に詰まったときの子供だより
我が家の暴れん坊たちの漫画です^^ちょっと息抜きにどうぞconfident

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2009年7月 7日 (火)

第89話 めぐみは僕が守る…!

「ぐっ、ぐぉー!…だっ、騙したのか!……」

「俺の大事な顔に、こんな事しておいて、黙って返すわけねえだろ…くっくく…」

イケメン三波はボロボロの顔に不敵な笑みを浮かべると、僕の首へ回した腕にさらに力をこめてきた…

「く、苦しい…は…な…せ…」

「クックック…、だんだん虫の息になって来てるぞ、おい…さっきの威勢はどうしたんんだ、あー、」

「…あぐ、あぐぁ…」

そんな僕の様子に気が付かず、めぐみちゃんは少し離れた場所で、あたりをきょろきょろ見渡していた…

「吉宗くん、大丈夫よ、あの人いないみたいだから急いで…?」

小声でささやきながら振り返り、ハッと驚きの顔を浮かべた…

「ど、どうしたの?…」

「はぐあ…はが…」

「あーっ!?ちょっと、何してるんですか三波先生!?」

「何って、見りゃわかるだろ…お前の大事な吉宗君を絞め殺そうとしてるんだよ…クックク」

「ど、どうして、そんな…」

「どうして?…さっき言っただろ、お前に逃げられたんじゃ、困るってよ、それにこのまま逃がしたんじゃ、おいしくいただくことも、できねーしな、お前をよ…」

三波は不適な笑みでつぶやくと、突然夜空に向かって大声で叫び声をあげた 

「西条さーん、西条さーん、やべえっすよー、女が逃げますよーー!」

「ひっ、ひどい、また騙したのね!?…」

「…今頃わかったのか、まったく、とろい女だ……」

「西条さーん!西条さーん!」

三波は何度も叫びながら、僕の首に回した腕をさらに締め上げてきた…

「ぐえっ……」

「よっ、吉宗君!」

めぐみちゃんはあわてて駆け寄ろうとした、僕はそんな彼女に

「来るなーー、にっ、逃げろ…逃げろ…」

「何言ってるの…」

「逃げろー、ぼく…は、いいから、早く、逃げろー!」

かすれた声で必死に訴え続けた…

 

「そっ、そんな…よっ吉宗君を置いて、逃げれるわけないじゃない!」

めぐみちゃんは大粒の涙を流すと

「放してー、三波先生、その手を放してください!」

必死に叫びながら、再び僕の元へ近づこうとした…

「だめだーー、来ちゃ駄目だー、ぼっ、…僕は…いい…から、君は…逃げ…ろ…」

その時だった…めぐみちゃんの背後に、一人の大きな男の影が…その男はニヤニヤ笑いながら僕を見ると

「ほう、こらぁ、なかなか美しい愛の姿やな…真実の愛ちゅうやつかのう…ふふふ…」

「あっ!!」

めぐみちゃんは振り返り、急にカタカタと振るえはじめた…、その男こそ、西条竜一だったのだ…西条は笑みを浮かべながら、その大きな腕でめぐみちゃんの肩に手を回し、ぐっと力任せに引き寄せると、ギロッと恐ろしい目で僕を見た…

「ほう、これが、お前の男のようやの…なかなか男前やないか…」

「………」

「さっきまで…お前に手出すのはよそう思うとったが、何やこの小僧見て気が変わったわ…」

血走った目で舌なめずりをすると、めぐみちゃんの肩を押さえた反対の手で、彼女のあごをぐっと鷲づかみにした…そして大きな顔を近づけると、まるで爬虫類のように、べろっと彼女を頬をひと舐めした…

「…やっ、止めて…止めてください!」

めぐみちゃんは青ざめた顔で脅えていた…そんな光景に僕の怒りは再び頂点に達しようとしていた… 

「むおーーーー!貴様ー、何て事をーーーーーー!」

僕は三波に締め上げられたまま、必死に西条を睨みすえると…

「放せ…めぐみちゃんを…放せ…この悪党!…」

かすれた声で訴えた…西条はムッとした顔を僕に向けると

「あー?なんや兄ちゃん、放せ、この悪党やて、誰に言うとるんや…こら…」

すさまじい形相で睨みすえてきた…

 

「うぐぉ…!」

僕は一瞬ひるんだ…しかし、その直後、

「うおあああぁーーーーーーーーーーーーーーー!!」

気がつくと、鬼のような西条に対して、大声を発しながら、必死に睨み返していたのだった…

過去の僕だったら、恐怖に脅え、言葉も出せず、きっとおしっこをチビってしまっていたはず……ところが今の僕は違っていた…、愛するめぐみちゃんを救いたい、その愛の力に加え、鬼瓦興業に入社してからの数日、この間に起こった数々の事件が何時しか僕を逞しく変えていたのだった…

僕は締めつけてくる三波の腕をぐっと握りながら、

「めぐみちゃんから…手を放しぇ…放しゃないと、ただで済まさないじょ……」

必死に西条を睨みすえた…

「あー、何や?その目は…このガキが…」

「放しぇ…めぐみちゃんに…手を出したら…絶対に…許さないじょー!許さないじょー!…」

「ほう、許さないって、どない許さんつもりや?……」

西条はめぐみちゃんの肩を強く抱いたまま、真っ赤な顔で僕に向かって近づいてきた…

「おもろいやないか、小僧が…どない許さんか先に見せてもらおか……おい、三波、そのガキ放したれや…」

「えっ?…放すって…」

「ええから、そのガキ、放せや…」

「はっ、はい…」

三波はあわてて僕の首に回した手を放した…同時に西条はめぐみちゃんの背中をドンと押して、

「運動後のお楽しみや、大事に捕まえとけよ…」

彼女を三波の前に突き出した…三波はうれしそうにうなずくと、めぐみちゃんの体を後ろから押さえつけ、哀れむような目で僕を見ながら…

「どうやら、今日がお前の命日のようだな…くっくくく…」

ニヤニヤと笑い続けていた…僕はそんな三波を見た後、目の前に立っている西条に目を移した…

「よう言うたの、兄ちゃん…我も男や、吐いたつば飲まんとけよ…」

「……!」

「そや、一つだけ教えといたるがの、ワイは我のようなケツの青いガキが、この世の中で一番むかっ腹が立つ生きもんなんや…てめえ勝手で、すき放題しよる、お前ら見とると、不思議とぶち殺したくなるんや…ぶち殺したくな……」

「じっ、自分勝手で好き放題はなのは、あなたじゃないですか…、まるで、あっ悪魔だ!」

「悪魔?…ふっ、おう、悪魔でけっこうや…ただ、その悪魔をマジで怒らせた兄ちゃん、きっちり覚悟は出来とるんやろうな…」

西条はそうつぶやきながら、見る見るうちに、恐ろしい悪鬼の形相へと変わっていった…

「……うぐっ!…」

僕は恐怖に一瞬青ざめたあと、ふっと横目でめぐみちゃんを見た…そこには目にいっぱいの涙をためながら、心配そうに僕を見ている彼女の姿が……

  

(守らなければ!…僕が、めぐみちゃんを守らなければ!…守らなければ!…)

何度も何度も、心でそう叫んでいるうちに、僕の中に不思議な勇気が沸き起こってくるのを感じた…、そして目の前の悪鬼西条を力いっぱい睨みすえると

「うおぉおおおおおおおぉおーーーーーーー!!」

天に向かって、雄たけびを上げていたのだった…

 

「なんや?お前は、月もでとらんのに、狼男にでもなったつもりか…ははは…」

 

「めぐみは、僕が絶対に守る!…絶対に、絶対に守る……」

「よっ、吉宗くん……」

「守る…めぐみは絶対に、僕が守る…守るんだ……」

僕は何度も何度もそう叫びながら、両手の拳をぐっと握り締めていたのだった…

つづく

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2009年6月27日 (土)

第88話 吉宗君とめぐみちゃん、涙の再会!

「はぁ、はぁ…めぐみちゃん…今行くから、僕が…助けに、行くから…はぁ、はぁ…」

多摩川の最下流に沿って立ち並ぶ倉庫街、僕はすごい行相でママチャリをこぎながら、めぐみちゃんを連れ去ったバスを探し続けていた…バスにはあの2mのスキンヘッド熊井さんを襲った凶悪な男が乗っている、でも、その時僕はめぐみちゃんを救うことだけに頭がいっぱいで、不思議と恐怖は感じていなかった…

「絶対に……僕が助けに行くから…絶対に、絶対に…」

ところが走っても走っても、あたりは静まり返った倉庫だらけ、

「いない、ここにもいない…たしかに、感じたんだけど…こっちの方でめぐみちゃんが助けを呼んでいるのを…あれは、錯覚だったのかな……」

僕は古びた倉庫の前で自転車を止めると、一瞬、あたりをきょろきょろと見回した…と、その時だった、

ガサガサ…

先の大きな倉庫脇で小さな物音が…

「あっ…あそこか!?」

あわてて自転車のペダルを踏み込むと、古びた倉庫の前から離れ走りはじめた、

「めぐみちゃん!」

叫びながら音がした倉庫へ、ところがそこには…ニャー、ニャー…数匹の子猫が鳴いていただけで、まったくバスの気配すらなかったのだった…

「はぁ…やっぱり、錯覚だったのかな…」

僕は不安な気持で、倉庫街をさらに奥へ向かって走っていった…

  

 

僕が一瞬立ち止まった古びた倉庫、実はその裏手の暗い駐車場に黄色いバスはひっそりと止まっていた…

バスの中ではイケメン三波が、眠っているめぐみちゃんを、恨めしそうに見つめていた…

「おせえなー、西条さん…もう我慢も限界だぜ…」

三波はバスの入り口をキョロキョロと見た後、めぐみちゃんにぐっと顔を近づけ、

「しかし、間近に見ると、まじ可愛いかも…、ますますそそられるな、こいつ…」

いやらしそうににやけながら、彼女の上にかけられた上着をそっとめくった、そこには透き通るような白い肌とかわいいブラが光っていた…

「かー、たまんねーな…、早くやりてー!…」

三波はむくっと顔をあげて再びバスの入り口を見ると

「西条さん、当分来ないみてーだな…、どうせ後で犯しちまう女なんだ、ちょっと見るぐらいは…」

ニヤニヤしながら、めぐみちゃんのブラをはずそうと胸に手をかけた、と、そのとき、

ガタ!

バスの入り口で大きな物音が響いた、

「やっ、やば!?」

三波はブラから手を放すと、あわてて彼女の肌に上着をかぶせた、そして何事もなかったように顔をあげると 

「さっ、西条さん…遅いですよー!」

ごまかしながらバスの入り口を見て、ハッと驚いた 

「てってめえは!?」 

イケメン三波の先に立っていたのは、西条ではなく、怒りに体を震わせながら仁王立ちしている、僕の姿だったのだ…

  

「みつけたぞ三波!…めぐみちゃんはどこだー!!…」

「なっ、何だてめえ、どうしてここが!?…」

「めぐみちゃんは何処だー!」

僕は再び叫んだ後、三波の横でひっそりと目を閉じているめぐみちゃんの姿に気がつき

「ぐっぉおおおおおーーーー!」

まるで獣のような雄たけびをあげた…

「めっ、めぐみちゃんが…めぐみちゃんがーー!?」

僕は怒りで体を震わせながら、イケメン三波を睨み据えた 

「三波ーー、よくも、めぐみちゃんをーーー、この野郎ーーーー!!」

まじめ一筋だった僕が、こんな言葉を発するなんて、そのくらい僕の怒りはすさまじかった…

 

「お、おい、まてよ、俺はまだ何にも…」

「だまれ、このケダモノめーーー!」

大声で怒鳴りながら突進していくと、

「ぐおぁあーりゃぁーーーー!」

今までに見せたことも無いようなすさまじい怪力で、三波を天高く持ち上げ、そのまま数メートル先のバスの床に投げ飛ばした…

「ぐおあ、いたーーー!」

痛みに悶絶する三波を横目に、僕はあわてて後部座席に走ると、 

「めぐみちゃん、めぐみちゃん…」

静かに目を閉じているめぐみちゃんを必死に揺すぶった…しかし彼女は僕の呼びかけにまったく答えてはくれなかったのだ…

「めぐみちゃん、めぐみちゃん…なっ、何で、何でこんな変わり果てた姿に…、」

どぶわぁーーーーーーー!

僕の目玉からとてつもない量の涙が…

(なっ、なんてことだ、めぐみちゃんが…めぐみちゃんが………)

(めぐみちゃんが、死んでしまうなんてーーーー!)

 

「…なっ、何でだーーーーーー!!」 

僕は天に向かって泣き叫びながら、涙と鼻水まみれのぐしゃぐしゃの顔で、必死に彼女の亡骸を抱き起こし

「何で、何でやさしい君が、こんな目に…うぐ…ごめんよ、僕が、僕が、もう少し早く助けに来ていたら…こんなことには…うわぁーーー!!めぐみちゃん、めぐみちゃーーん!」

大声で泣き叫び続けた…

と、その時だった、めぐみちゃんの体にかけられていた上着がはだけて、彼女の美しいブラ姿のやわ肌が僕の目に飛び込んできた… 

「ぐわーー!?」

その姿を見た瞬間、僕の心に今までに経験したことのない、とてつもない怒りがこみあげてきた…

 

「こ、こんな…こんな姿に……ぐおーーー!!」

人の怒りは頂点にたっすると、髪は逆立ち、目玉は血走り、この世のものとは思えないくらいのすさまじい形相へとかわっていく…その時の僕はまさにそうだった…、頭からはメラメラと怒りの炎が立ち登り、見る見るうちに僕は、まるで鬼神の様な姿へと変貌していったのだった…

そして、バスの前で背中を押さえながら、呆然としている、三波を睨み据えると

「この野郎ー、よくもめぐみをーーー!!」

鬼神の形相のまま立ちあがった…

 

「よくも、よくも、めぐみを殺したな…!」

「えっ?こ、殺す…?」

三波はあわてて手を振った、

「おい、ちょっと待てよ、違う、違う…」

しかし怒りに満ちた僕はメラメラと燃え盛る背景とともに、一歩、また一歩と歩をすすめ、

「ぐぉあぁぁーーーーーーー!」

大声と共にまるで天狗のような跳躍力でバスのシートを飛び越え、三波の顔面めがけて飛びかかって行った!

「ぐわあああああああーーー!よくもーーーーー!」

「ちょっと、待てって、違う、違うって…」

「やかましい、このけだものめー!」

まるで鬼神とかした僕は三波の上にまたがると、やつの鼻の穴、口の穴、耳の穴、穴という穴に指を突っ込んで、ぐわーっと思いっきり、それはメチャメチャにかきむしった!

「ぐはあー、痛い、痛いはなへ、こらーーー」

「ぐおあー、うるさい!殺されためぐみの痛みは、こんなもんじゃなかったんだぞーー!」

「はから、勘違いするなって、あの女は死んでなんかいないっての、おい!」

「何を今さら、言い逃れしやがって、この野郎ーーー!!」

「違うって言ってるんだよーー」

「だまれーーーーーー!ぐおーーー!」

僕は鬼神の顔に加え涙と鼻水でぐしゃぐしゃの、この世のものとは思えない形相で、イケメン三波の顔から髪から、すべてをぐしゃぐしゃにかきむしっていた…

 

と、そんな騒ぎの最中…、静かに眠っていためぐみちゃんが、ふっと目をさました……

 

「…あれ?…ここは……」

めぐみちゃんはボーっとした顔であたりを見渡し、そこが恐ろしいバスの中だと気がつくと

「いっいやーーーー!!」

気絶する直前の恐怖をよみがえらせて大声で叫んだ…そしてあわてて身体を起こすと同時に、三波の上にまたがっている僕の後姿に気がつき、一瞬不思議そうに目を見開いた

 

「えっ?…」

僕は怒りのせいで彼女が目を覚ましたことに気づかず 

「ぐおわーーーー、この野郎ーーー!!」

大声でわめきながら、三波をぐしゃぐしゃにかきむしり続けていた…そんな僕の後姿にめぐみちゃんは首をかしげながら 

「…よ、吉宗君?…もしかして吉宗君?…」

小さな声で恐る恐る話しかけた…

「この、ケダモノーー、このケダモノーーー」

「ぐぎゃー、痛い、やめれーーー」

「吉宗君!!」 

「!?」 

僕は背中越しに飛び込んできた、聞き覚えのある美しい声に気がつき、三波をかきむしる手を止めた……

「い、今の声は…たしかにめぐみちゃんの声…そ、そんなバカな、彼女は死んでしまったはずなのに…気のせいか?…」

「吉宗君!…」

「えっ、また…、また、めぐみちゃんの声が!?…」

僕は恐る恐る、後ろを振り返った…

そこには、ブラのまま、うるんだ瞳で僕を見ている、めぐみちゃんの姿が…

 

「めっ、めぐみちゃん!?…」

「やっぱり、吉宗くんだったのね…」

めぐみちゃんの瞳からぽろぽろと大粒の涙がこぼれおちた…

 

「あの幽霊?…そこにいるのは、めぐみちゃんの幽霊?」

「え?…」

「だって、そ、そんなに悲しい泣き顔して、やっぱりめぐみちゃんの幽霊なんだね…」

僕はそう言いながら立ち上がると、プルプルと震えながら彼女に近づいて行った…

「ちょと、吉宗君、幽霊って何言ってるの?…」

「そうか、めぐみちゃん、自分が死んじゃったこと分かってないのか?」

「私が死んだ?」

めぐみちゃんはあわてて、自分の手や足を見た

 

「幽霊でもいい、もう一度、君に会えたんだから、こうして話ができたんだから…めぐみちゃんーーー!」

僕はぐしゃぐしゃの顔で泣きながら、力いっぱい彼女のことを抱きしめ…

「めぐみーーー、たとへ君が幽霊になろうとも、僕は、僕はずーっと君を愛し続けるよーー!うわぁーーーーー!」

号泣しながら叫び続けた…

「私が幽霊って?えっ?えっ?それじゃ私、死んじゃってるの???」

めぐみちゃんは、あわてて自分の体を見ると、あちらこちらつねってみた…

「痛い…やだ、ちょっと、吉宗君、私幽霊なんかじゃないよー、ほら…ちゃんと手も足もあるし…それに、こうして吉宗君とも触れあえてるじゃない…」

「えっ?幽霊じゃない?」

「ほら、吉宗君だってこうして私のこと抱きしめること出来てるでしょ…」

「あっ、そ、そう言えば…」

「もう、相変わらずそそっかしいんだから、吉宗君…ふふ…」

めぐみちゃんのそんな笑顔を見て、僕は目をきらきら輝かせた 

「め、めぐみちゃん…めぐみちゃんが……生きてた!…」

「よっ、吉宗君!?…」

「よ、良かったー、本当に良かったー、、良かったーー!」

僕は大粒の涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、彼女のことを夢中で抱きしめた…めぐみちゃんも、涙をぽろぽろと流しながら、

「よっ、吉宗君、吉宗君!…会いたかったー、私、吉宗君にすごく会いたかったんだよー…」

僕の胸に夢中でしがみついていた…

僕は幸せだった、それはまさに幸せいっぱいの再開だったのだった…

 

しかし、そうはイカのちんちんタコがひっぱる……しばらくして、彼女はふっと何かを思い出すと、あわててキョロキョロとあたりを見渡しはじめた

「ど、どうしたのめぐみちゃん?…」

「そういえば、さっ、さっきまで、すごい怖い人が乗ってたの、このバス…」

「怖い人……!?」

「うん、私その人に襲われそうになって…それで…あっ!?、やっ、やだ私…」

めぐみちゃんは自分のブラウスのボタンがはずされていることに初めて気がつき、あわてて胸を隠しながら僕に背を向けた…

「あっ、ごっ、ごめん…」

僕はあわてて目をとじると、はっとある重大なことを思い出した…

「そっ、そうだ、その怖い男って、熊井さんを襲った人かも?」

「えっ、熊井さんって、あの!?」

「うん…」

「…熊井さんを襲うなんて…あっ、あの人だったら、分かる気がする……」

めぐみちゃんは、再び恐怖を思い出し、カタカタと振るえはじめた…

「やっぱり、そ、そんなに恐ろしい人…」

それまでめぐみちゃんを救いたい、ただその一念で張り詰めていた僕の背中にも、突然と恐怖の震えが…

「…と、とにかく、急いでバスから降りよう…」

「うん…」 

めぐみちゃんは、うなずきながらも、よほど恐ろしかったらしく、あたりをきょろきょろと見渡していた…、僕はそんな彼女を見て大きく息を吸い、ぐっと気合をいれると

「だっ、大丈夫…めぐみちゃん、僕が絶対に守るから…」

「吉宗くん…」

「絶対に絶対に守るから…」

何度もそう言うと、ありったけの勇気を振り絞り、彼女の肩をやさしく抱え、バスの入口に向かって歩きはじめた…

そして僕達がバスの入り口付近に差し掛かった時だった

ガシッ!

突然僕の足に冷たい感触が

「うわーー!」

見るとそこには、ぼろ雑巾のような姿で床に這いつくばっている男が、僕の足をにぎってこっちを見ていたのだ……

「まっ、待て…待ってくれよーー」

「うわーー、何だーー!?このミイラ男みたいな人は!?」

「ミイラって、お前がやったんだろ…」

「えっ?…ぼっ、僕が?……」

突然脳裏に鬼神と化して暴れている僕の姿が…

 

「あー!?」

そう、そのぼろ雑巾のような男、それは僕によってボロボロにされてしまったイケメン三波だったのだ…

「待ってくれよ…その女、連れていかねーでくれよ…たのむよー…」

三波はポロポロと泣きながら、僕の足をひっしに握りしめた、

「はっ、放せこら、その手を放せって…」

「たのむよ、そんなこと言わないで助けてくれよーー」

 

「助けて?…なっ、何言ってるの、あなた、私のこと騙したくせに…」

めぐみちゃんはムッとした顔で、ぼろ雑巾三波を見た…

「だましたのは、謝るから…だから行かねーでくれよ…、やべえんだよ、そいつ連れて行かれたら、俺がやばいんだよー」

「俺がやばいだと?」

僕はその言葉に再び目を吊り上げた…

「俺がやばいって、どこまで勝手なんだお前…自分さえ助かればめぐみちゃんはどうなってもいいのか!」

「…うぐ……」

三波は無言で僕達を見たあと、再びポロポロと涙をこぼし始めた…

「だましたことは悪かったよ、謝るから、でも、助けてくれよ…俺も助けてくれよーー」

「助けてって言われても…」

めぐみちゃんは静かに三波の事を見た後、

「吉宗くん…こんなに真剣に涙をながしてるんだし、一緒に連れて逃げてあげたら…」

「一緒に?…だって、めぐみちゃん…」

「頼む、頼むよ…このままじゃ俺、マジで殺されちまう、彼女の言うとおり一緒に連れてってくれよ…」

「……」

僕が無言で三波を見た後、そっとめぐみちゃんに顔を向けた、

「吉宗くん…」

彼女もやさしく微笑みながらうなずいた…

「それじゃ、一緒に行きましょう、三波先生…」

「ありがとう、本当に君はやさしい人だね、めぐみさん…」

 

「それじゃ、急いでついて来いよ…」

僕とめぐみちゃんはバスを降りた後、中で這いずっている三波に向かって振り返った…ところがやつは…

「あっ、痛い、痛たたたた…だっ、駄目だ俺、さっきあんたにやられた傷のせいで足が…」

そう言いながらなかなかバスから降りようとはしなかった…

「足って、お前…」

僕はあわててあたりを見回すと、

「仕方ない、ほら…僕の背中に乗れよ…」

そう言いながらしぶしぶ三波に背中を向けた

「あっ、ありがとう…あんた、本当はすげえいいやつだったんだな…」

「そんな言葉言ってる場合じゃないだろ、ほら急げよ…」

「それじゃ、お言葉に甘えて…」

イケメン三波はうれしそうに涙を流すと、痛々しい表情でバスを降り、僕の背中にしがみついた…と、その瞬間だった

「うぐえーーーー!!」

突然、三波の腕が強い力で僕の首に巻きついてきたのだ…

 

「おい…そっ、そんなにしがみついたら、くっ、苦しい…苦しい…」

僕はひっしに締め付けられたやつの腕をはずそうとした…ところがやつは腕の力を緩めるどころか、さらに強く僕の首を締めあげてきたのだ…そして僕の耳元で

「苦しいに決まってんだろ、絞め殺そうと思ってんだからよ…ふっふっふふ…」

不敵な笑い声を響かせたのだった…

続き
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2009年6月22日 (月)

第87話 悪鬼西条の真実…

「なんや?…おい、姉ちゃん、どないしたんや?…」

西条竜一はあわててめぐみちゃんの顔の近くに耳を近付けると

「あかん、気失ってもうたわ…」

渋い顔でつぶやいた

「まあ、暴れる中服脱がす手間が省けたってもんかの…悪う思うなや、姉ちゃん、恨むんやったら、追島の野郎を恨みい…」

ふてぶてしく笑うと、めぐみちゃんのブラウスのボタンをはずし始めた…ひとつ、ふたつ、西条の太い指によってボタンが外されると同時に、中から彼女の綺麗な白い肌と可愛い白いブラが姿をあらわした…

「ほう、何や?…三波の奴、テキヤの三下の女言うとったが、こいつひょっとすると処女かもしれんぞ、こらあほんまにとんだ拾いもんかもしれんな…」

西条が悪魔のような笑みで、すべてのボタンを外し、めぐみちゃんの透きとおるような肌がさらけ出された、その時だった…シートの背もたれにかけられていた、さっきまで西条がかぶっていた保育園児の黄色い帽子が、不自然に落ちてきたと思うと、めぐみちゃんのはだけた素肌を覆い隠したのだ…

「んっ!?」

西条はその帽子を見たとたん、一瞬顔をゆがめた…そしてあたりをキョロキョロと見回すと、ふたたびめぐみちゃんの肌の上の帽子に目を落とし… 

「そんな、アホなことあるか、まさか、お前が?……」

突然体を震わせながら目を閉じた…そして、唇をかみしめながら天を仰ぐと

「やっぱり、おまえか?…ここにおるんか?…こんなワイでも、まだそばにおってくれたんか?…おまえ…」

苦しそうな顔でつぶやき、無言でバスのシートにもたれかかった…そして、床で気を失っているめぐみちゃんの事をじーっと静かに見つめると

「…ふー、追島の名前聞いて、かっとなってもうたが、この姉ちゃんよう見ると、まだ十七八のガキやないか……」

めぐみちゃんの顔をさわると同時に

「まったくアホらし……」

彼女を抱きかかえて、後部座席にそっと寝かせた、そして自分が羽織っていた上着を脱いで、眠っているめぐみちゃんの、はだけた素肌の上にかけると…

「こっ、これでええんやろ、これで、…………」

何やら不思議な一人ごとつぶやきながら、落ちていた黄色い帽子を片手に立ち上がり、バスの出口へと歩き始めた…

 

「あれ?西条さん、もう終わったんっすか?…」

バスの入り口でイケメン三波が首をかしげながら、西条に声をかけた

「アホ…そないに早く終わるか、ボケ…ちっと小便ついでに涼んでくるだけや…」

「小便ついでに涼むって?…それじゃあの女は?」

三波はバスの中を覗き込むと、後部座席で横になっているめぐみちゃんを見てハッと驚きの顔を浮かべ

「さっ西条さん…ま、まさか殺しちゃったんじゃ…!?」

「アホー、気うしなっとるだけや…」

「びっ、びっくりしたー、」

「ほんまにアホやな、お前は…」

「でも、それだったら、そのままやっちまえばいいじゃねえすか…なんで涼みにって?」

「気絶してる女なんぞ犯して、何がおもろいんやアホたれ…それやったらダッチワイフと変わらんやろうが…」

「で、でも…」

「ええか、三波、わいが戻るまで、あの女しっかり見張っとるんやで…」

「は、ハア…」

「よう考えると、あの姉ちゃん追島のガキ、おびき寄せるための大事なネタに使えるからの…」

「ネタって、それじゃ、西条さん、やらねーつもりなんすか?あの女…」

「アホ、誰がやらん言うた、やるやらんは目が覚めてからの事や…」

西条はそう告げると、黄色い帽子を見ながら、倉庫街の奥の海辺に向かって歩き出し、ふいに振り返って三波を睨み据えた

「おい、わいが戻る前に、あの女に手だしおったら、我、ぶち殺すからの…」

「えっ!…あっ、はっ、はい…」

西条の言葉に、三波はしぶしぶうなずくと、チッと舌うちをしながら、バスの中に乗り込んで行った、そして後部座席で静に眠るめぐみちゃんの前にしゃがみこむと、そっと彼女にかけられた上着の中を覗きこんだ…

「おうおう、可愛いブラが丸出しじゃん、へへへ……しっかし、ここまで脱がせといて、急に涼みにいっちまうなんて、西条さん何考えてんだか…」

「あの人が、さっさと一発すませてくれねえと、何時までも、お預けじゃねえか、まったく、たまんねーぜ……」

三波はよだれをすすりながら、めぐみちゃんの寝顔を恨めしそうに眺めていた…

 

 

「お慶ちゃん、ヨッチーちゃん見つかったかしらー!」

「それがさっぱり…」

お大師さんへ向かう大通りでは、お慶さんと栄二さん、それに銀二さんらが、自転車で消えた僕と黄色い保育園バスを探していた

「バスはともかく、追いかけて行ったヨッチーちゃんまで消えちゃうなんて、ああ、どうしよう、私の大切なヨッチーちゃんの身に何かあったら…」

女衒の栄二さんはふりふりのついたハンカチをかみしめながら目をうるませた…

「バスはともかくって、なんて事言うのよ栄ちゃん、中にはめぐみちゃんが乗ってるのよ…」

「めぐっぺなんて、どうでもいいのよ、イケメン保父に誘われて、ホイホイケツ振ってついて行った罰なんだから…」

「なんてこと言っているのよ栄ちゃんったら…」

そんな、二人の言い争いの横で、銀二さんは携帯を耳にあてていた

「はい、はい…分かりやした、どうもすんませんっす…」

銀二さんは携帯を閉じると、

「おかしいな、この先でテキヤ仲間連中も探してるんだけど、黄色いバスも吉宗の姿も見てねえらしいって…」

渋い顔で栄ちゃんとお慶さんを見た、そして何かを思い出したように

「お慶さん、西条って野郎知ってるでしょ…」

「西条!?銀ちゃん、それって竜一さんのこと?」

お慶さんは、さっきまで喫茶慶で話していたその男の名前に驚きの顔を浮かべた…

「はい、今、聞いたんですが、熊井さんを襲ってバスに乗ってる男、その西条って野郎らしいんですよ…このあたり仕切ってるテキヤ、川龍一家の元幹部で俺がこの世界はいる前に破門になった、西条竜一って男です…たしか追島の兄いの兄弟分だった人っすよね…」

 

「竜一さんが、熊井さんを……嘘よ、どうしてあの竜一さんが…」

お慶さんは、栄二さんを見た…

「さっきも話したでしょ、お慶ちゃん、今の竜一は、あんたの知ってるやつじゃないって、全く別人になったって……」

「ど、どうして…」

「あの事件よ、あれが竜一を別人に変えたのよ…」

栄ちゃんはそう言うと同時に眉間にしわを寄せた…お慶さんは、そんな栄ちゃんの表情からハッと思い出したように、目を見開くと

「健太君…健太君のこと!?」

栄ちゃんは静にうなずいた…

そんな二人の様子を見ていた銀二さんは、首をかしげながら 

「俺の聞いた西条って男は、どうにもならねえ悪で有名だったって、破門された後も、ふてぶてしく関西で悪どい金貸しやってる男だって…そうじゃねえんすか?なあ、お慶さん、事件って、何よ?……」

 

「そうか、銀ちゃん知らないのね…竜一さんのことも、事件のことも…」

お慶さんは目を潤ませると

「追島と西条が学生時代から親友だったことは知ってるでしょ…」

「あっ、はい…それって実は不思議だったんっすよ、何で追島の兄いが、そんな達の悪い野郎とまぶだちだったのかって?…」

「竜一さんは、達の悪い男なんかじゃないのよ、とても優しくて、思いやりのある人なのよ」

「……?」

 

「私と追島が結婚した時も、本当に自分の事のように喜んでくれてね、それに、ユキが生まれた時も……」

お慶さんは静に夜空を見あげた…

 

ユキが生まれた時、小さな産婦人科だったけど、竜一さんったら大きなリボンの付いた箱を抱えて大声で叫びながらあらわれてね…

(おーい、追島ー、慶ちゃん!)

あんまり大きな声だから、竜一さんったら、看護婦さんに…

(ちょっと、あなた、ここは病院なんですよ、そんな風に走って危ないでしょう)

(いや、あかん、こら、えらいすんまへん看護婦さん…何しろ、未来のうちの嫁さんが生まれたもんやから、ハハハ…)

そんなふうに頭をかきながら、それでもすごくうれしそうに竜一さん、私たちの病室に来てくれたの…

 

(おう、追島ー、慶ちゃん、おめでとうー!)

(あら、竜一さん、来てくれたんだー、ありがとう…)

(来てくれたってあたりまえやろ、慶ちゃん、何しろ未来のうちの嫁はんが生まれたんやからな…はははー)

(おい、竜、未来の嫁、嫁って、勝手に何言ってやがんだ…)

(勝手にって何いっとるんや?、これは慶ちゃんとわいとの間に結ばれた約束なんやで、女の子が生まれたら、うちの嫁にするって…)

(お前の嫁って、ふざけんな竜…おい、慶、お前もなんて約束してんだこら!)

(わいの嫁?…追島…お前何訳の分からん事、ぬかしとるんや?)

(えっ?)

(やだー、あなたったら、健太君よ、竜一さんの息子さんの健太君のお嫁さんにって話なの…)

お慶さんは生れたばかりのユキちゃんを抱きながら、笑顔で追島さんを見た…

(健太?…なっ、なんだ、健太のことか…)

(まったく、そそっかしいわね…)

(ほんまや、アホ、それやからゴリラの脳みそ言われるんや…)

(ゴリラってこら…)

(竜一さん、それじゃゴリラに失礼よ、…)

(お、慶、お前まで!?)

 

(そんなことより、慶ちゃん、赤ちゃん見せたってやー、実はワイ、楽しみで楽しみで、ここんところ眠れんかったんや…)

西条はうれしそうにはしゃぎながら、お慶さんの手の中にいる小さなユキちゃんを覗き込んだ…そして幸せそうに微笑むと

(かわいいのう…おう、慶ちゃん、あんたそっくりの美人さんやないか…なあ、抱っこさせてくれんか?)

(あっ、はい…)

(おー、おー、ほんまにベッピンさんや、よかったなー、お父ちゃんに似ないで、おっちゃんそれだけが心配で心配で、眠れんかったんや……おい、追島、名前は?名前は考えとるんか?…)

(あ、ああ、今ん所、ユキって、つけようかって…)

(ほう、ユキちゃんか…そらあ、ええ名前や…)

(ユキちゃん…ええか、ユキちゃんは将来うちの倅の、健太の嫁はんになるんやで…約束やで……)

(勝手に決めるなって言ってるだろ、竜…)

(勝手やない言うてるやろ、慶ちゃんと約束した言うとるやろうが、アホ…)

(慶、お、お前勝手に…)

(あら、良いじゃない健太君だったら、この子より三歳年上でつりあいも良いし、それに可愛いし、竜一さんと君江さんに似て、やさしくて思いやりもある子なんだから…)

(でも、それは大人になってユキが…)

(アホ、うちの健太が大人なったら、どれだけええ男になるか…なあ、慶ちゃん…)

(そうよね、すごいモテモテになるんだろうね、健太君…だからこっちからも今のうちに予約しておかないとね…)

(そやろ、そやろ…慶ちゃんもそない思うやろ…ワイも実はほんまに楽しみでな、あいつの成長した姿想像すると、うれしくて、うれしくてな、ハハハハ…)

(竜一さんの命だものね、健太君…)

(ああ、あいつのためやったら、ワイは何でも出来る…どんなに仕事がしんどくても、親分にこずかれても耐えられるんや…ははは…)

 

「あの時竜一さんは、うちのユキを優しく抱きながら、本当にうれしそうに笑っていた…彼、本当に心から健太君の事を愛してたの……」

「…なのに…」

お慶さんは、急にやりきれない表情になると、瞳にいっぱいの涙をうかべていた…

「なのに、健太君……健太君、あの火事で……」

そう言ったまま、うつむき、ポロポロと涙を流した…

「あの火事?…」

「………」

お慶さんは静にうなずいたまま、言葉を失っていた……そんなお慶さんの肩をそっと支えながら栄二さんが…

「健太ちゃん、火事で小さな命を奪われたの、それも受験に失敗した学生がその腹いせに放った火のせいで……」

そうつぶやいた後、悔しそうに夜空を見上げた…

 

 

「健太……」

多摩川と東京湾をつなぐ海岸わき、黄色い帽子を握り締めた男の影が、苦しそうに震えていた…

そう、それは西条竜一その人だった…

「何でや…何で、お前が、何の罪も無いお前が…うぅぅ…」

西条は海岸のコンクリートの壁にもたれると、帽子を胸にかかえて一人苦しそうに唸り声を上げ続けた…

「健太…父ちゃんあかんのや、お前が熱い火の中で苦しんで泣いてる姿を…うぅぅぅ、父ちゃんその事考えると、もう、胸がぐちゃぐちゃなんや…もう、ほんまにあかんのや…うぅぅ…うぅぅぅぅぅ…」

しばらくの間、壁にへばりついたまま、唸り声を上げ続けていた…

 

どれくらいたったか、コンクリートの壁の上には、ぐしゃぐしゃに握りつぶされた小さな帽子が無造作に置かれ、今まで聞こえていた悲痛の唸り声はいつしか消え、あたりはシーンと静まり返っていた…そして、それまで苦しみの声をあげていた西条竜一の顔は、すべての世を呪った悪鬼の顔に戻っていたのだった……

続き
第88話 吉宗君とめぐみちゃん、涙の再会へ

Megulank_3
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