トップページ | 2008年2月 »

2008年1月

2008年1月29日 (火)

第7話 チェリーボーイ

めぐみちゃん……

銀二さんから聞かされたその名前は、スーツ姿でさっそうと働くという夢を打ち砕かれ、パンチパーマにされてしまった僕にとって、唯一の希望の光だった…

(めぐみちゃん、いったい鬼瓦興業とは、どういった関係なんだろう?…)

そんなことを時々頭に浮かべては、ホンワカした笑顔でポーッとなり、そのたびに銀二さんからどやされ…、それでもどうにか、僕のテキヤとしての第一日目はぶじに終わった。

Omoi_2

僕は今日一日で起こっためまぐるしい事件の数々と、なれないテキヤの仕事にへとへとに疲れながらも、銀二さんの言いつけどおり、店のかたずけをしていた

そこへ、今日の売り上げを高倉さんの下へ届け終えた銀二さんが戻ってきた。

「おい、おつかれさん、今日は売り上げよかったからよ、高倉の兄貴おどろいてたぞ、吉宗おまえなかなか才能あるかもな…」

「え?才能ですか?…ハハ…」

銀二さんの言葉に、うれしいような、悲しいような、そんな複雑な気持ちで僕は笑った

 

「そうだ、あっ、あの…銀二さん、さっき話してくれた、めぐみちゃんって、いったい?」

僕は思い切って尋ねた…がっ…

「ねえー、銀ちゃんー、終わったー」

僕の声をさえぎるように、髪を金髪に染め、へそだしルックにミニスカート姿という、いかにも、お馬鹿~という女性が現れた…

「おー、里美か…、なんでえ、そんなに俺の真珠入りのマグナムが待ちきれないのか?」

銀二さんは、腰をカクカク振りながら、ニンマリと笑った…

「ばっかじゃないの、もう…」

と言いつつも、その女性は銀二さんの腕に手を回し、ベタッと寄り添いながら僕の方を見た…

「ねえ、銀ちゃん、この彼氏新人さん?」

「おう、吉宗ってんだ、」

「へー、すごいー、いい男ー」

里美はそう言うと同時に、銀二さんから離れて、今度は僕に身体をすり寄せてきた…、

「あっ、いやっ…ちょっと…」

僕はその色っぽさにドキドキしながら、顔を真っ赤にして後ずさりした

「逃げなくてもいいじゃない、ねえ、今度私とエッチしようよー、お兄さん~…」

そう言いながら、里美は僕の股間をタッチしてきた

「ひゃーーー!?」

僕は思わずそんな声をだしてしまった

 

「ぶあはははははは、ひゃーってお前、なんて声だしてんだよ…」

「本当~、ちょっとからかっただけなのに、可愛いー、この子ー…」

銀二さんは、股間を押さえて真っ赤になっている僕を見ながら、大笑いしていたが、ふっと何を思ったか真顔で僕を見ると

「お前まさか、童貞?」

突然超恥ずかしいことを尋ねたきた… 

「えっ!?……」

僕は更に顔を真っ赤にしながら、無言で額から汗をボタポタと流しはじめた… 

「うっそーーーーー、おまえ18だろー!?」

銀二さんと里美は信じられない動物をみるような目で、僕をまじまじと見つめた… 

「今時いるんだな、こんな奴って…」

「い、いますよー、いっぱい、いますよー!」

僕は頭のてっぺんから出すような甲高い声で、一生懸命二人に答えた…

「そうか、おまえ、やらずの18だったのか…、それはすこし健全じゃねえなー、そのうち何とかしてやんねーとな…」

銀二さんは腕を組みながら、ニンマリ微笑んだ…

 

「ねえねえ、そんなことより仕事終わったんでしょー、銀ちゃん…、早く行こうよー」

「何だよお前、やっぱ俺の真珠入りが、恋しいんじゃねえかよ…」

「馬鹿じゃないのもうー」

そういいながらも里美は銀二さんの腕にぴたーっと体を擦り付けていた

「吉宗、悪いけど、こんな訳だから、鉄と会社帰ってろな…、姐さんには少し遅くなるって伝えといてくれよ…」

銀二さんは僕にそう告げると、里美の肩を抱いて、暗がりの中へと消えていった…

「あっ、あの、銀二さん…、一つ聞きたい事が…めぐみちゃんって、いったい?…」

あわてて銀二さんを呼んだが、返ってきた答えは…

「いやーん、もう銀ちゃんったら、エッチー……、あ~ん、あぁ~ん…」

暗がりでもだえる、女性のあえぎ声だけだった…

 

「……だっ、ダメだ…」

結局、僕にとってめぐみちゃんという存在は、謎のままで終わってしまった…

と、その時、僕は背後から突き刺さるような恐怖の視線を感じた…

「!?」

振り返るとそこには、じーっと僕を見つめてながら、不気味な笑顔で突っ立っている、金髪の鉄の姿があった…

つづき 
第八話 鉄へ

Onegai001   
にほんブログ村 小説ブログ 学園・青春小説へにほんブログ村 小説ブログ コメディー小説へ
good↑青いボタンとピンクのボタンを、一日ワンクリックして頂けると、
吉宗くんのポイントアップにつながり、すごーく励みになります。
侠客☆吉宗くんの他、
楽しいブログがいっぱい紹介されているサイトです^^
clover

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年1月27日 (日)

第6話 めぐみちゃん

『子供たちに夢と希望を与える仕事』

そう書かた求人広告に目を輝かせた僕は、疑うこともなく意気揚々と面接に向かった…しかしその結果、僕はあやまって武州でも名の通ったテキヤ一家、関東鬼瓦興業へ就職してしまったのだった…

そして面接で出会ったあの長沢まさみ似の女の子にも会えることなく、僕はダボシャツ姿に、パンチパーマという悲しいいでたちで、会社の隣町の縁日で仕事をしていた…

「おらー、吉宗ー、なに泣きっ面でぼーっとしてんだ、砂糖がこげるだろうが…」

銀二さんの声にハッとした僕は、目の前でぐつぐつ煮えている砂糖と水あめを、あわてて火からおろした

「煮え過ぎたら、固まんなくなるって、さっき教えたろーが!」

大きな銅板の上にせわしなく型をならべながら、銀二さんは僕に顎で合図をした

「あ、はい…すいません」

僕は持っていた鍋から銅の型の中に、水あめと砂糖の溶けた液体を流し込んだ

やがてその液体が固まりはじめ、ころ合いをみて銀二さんが、小さなヘラで中に絵を描いていく…、そして完全にかたまった飴を型をはずすと、そこには僕も小さなころ大好きだった べっ甲飴が完成していた…

 

「こうやって作るんですか、べっ甲飴って…」

「おう、火加減間違えると、飴はかたまんなくなっちまうんだ、微妙な技がいるってわけよ…」

銀二さんは誇らしげに、型の中の固まりかけている飴にへらで絵をかいていた

「あ、それってピカチュウじゃ?…」

「ん?ピカチュウ?あ、これピカチュウか?…」

銀二さんはまったく絵心がないらしく、どの型の飴もすべて猫の絵になっていた

「昔から絵心ないからよー、俺…」

銀二さんはそう言いながら、三寸と呼ばれる露店につるさがっていタオルで額の汗を拭いた

「あ…あのー、僕すこしだけ絵が得意なんですけど…」

「何ー!お前なんで、それを早く言わねーんだよ…」

そう言うと銀二さんは、僕にへらを手渡し、腕を組んで僕の手元をながめはじめた…

  

僕はさっそく型にあわせた絵を、頭に思い描きながら、なれない手つきながらも型の中の絵を完成させていった…

「おーーーー、お前やるじゃんかー、これは今日は売れるぞー!」

銀二さんは嬉しそうに僕を見た…はたから見るといかついパンチパーマ姿で怖いお兄さん、僕も出会ったころは恐ろしかった銀二さんだが、いつしかその瞳の中に、不思議な魅力と優しさがあることに僕は気がついた…

そして僕はずーっと気になっていた、大切なことを、思い切って銀二さんに尋ねた

「あっ、あの銀二さん…ひとつ聞きたいことがあるんですが…」

「ん?」

「僕が面接を受けた日に、とても可愛い女性に会ったんですけど…、あの子は鬼瓦興業の事務員さんなんですか?」

「可愛い女性の事務員?…なんだそれ、うちには事務員なんていねえよ…」

「え?それじゃあの子も、同じように、こういった露店を?…」

「何いってんだお前、うちは姐さん以外は男ばかり…、みーんな男だっての、、、」

「えっ!?、それじゃいったい、あの子は?…」

「あの子?誰だそれ…」

銀二さんは不思議な顔で僕を見ていた…

 

社長の趣味からパンチパーマ姿に変身…、おまけにテキヤ稼業という思いもよらない世界に足を踏み入れてしまった僕にとって、唯一の救いは、あの面接で出会った彼女との思い出だけだった…

(これから一緒に働けるんですね…)

そう言いながら、やさしく握りしめてくれた彼女の、暖かい手のぬくもりを思い出しながら、僕はふっとあることを思った…、

(それじゃあの子は…)

「あの子は、社長のお嬢さんだったのかー!」

「社長のお嬢さん?」

「そうでしょ、あの綺麗な女性は、社長のお嬢さんでしょう…」

「何いってんだお前…、親父さんには今、子供なんかいねえぞ!」

「え?…子供はいないって…そっ、それじゃ、あの子はいったい…」

(はっ!?…それじゃ、まさか…)

 

「あの子は、あの子は…社長の愛人だったのかー!?」

大声で叫ぶと同時に、僕の目にショックの涙があふれかえった… 

「何だお前…、吉宗、何、急に泣き出してんだよ…」

「泣いてないっしゅ…泣いてないっしゅ…」

僕はポロポロ涙を流しながら、型の中の飴に絵を書き続けていた…

「おいおい、飴に涙が入るだろ…どうしたんだ…」

銀二さんは、僕を見ながら、ハッと目を輝かせた…

「あー、分かったー、お前それめぐみちゃんに会ったんだろー、そうだそうだ…」

「めぐみちゃん?…」

「そうだよ、めぐみちゃんだよ…」

僕は涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔を銀二さんに向けると…

「社長の愛人のあの子、めぐみちゃんって名前だったんでしゅか…」

「愛人?…バーカ違うよ、めぐみちゃんは社長の愛人なんかじゃなくて…」

銀二さんが続きを言いかけた、その時だった…

ドーン、ドーン

境内で大きな太鼓の音が鳴り響いた…

 

「おーし祭りの太鼓だ!、そろそろ始まるぞー、忙しくなるからなー」

「あのー銀二さん、めぐみちゃんって…」

「話は後、後…、どんどん作っておかねえと、後でえらいことになるぞー!」

あわただしく、そう言いながら、銀二さんは沸騰しかかった水あめを鍋から降ろすと、銅板の型の中にそっと流し込んだ

「ほら、吉宗、早く固まるまえに、絵の準備しろー」

「は、はい!」

僕は慌てて小さなヘラを手に、飴にむかった…

 

「あーいらっしゃい、らっしゃいー、べっ甲飴、小、中、大、100円、200円、300円だよー買ってってー」

銀二さんは三寸(露店)の中から、大きな声を出し始め…気がつくとあたりは浴衣姿のたくさんの人で賑わっていた、

「ほら、早く、絵、絵…」

「はい…」

銀二さんに急かされ、僕があわてて型に絵を描き始めると、

「あーピカチュウー、パパー、ピカチュウだー!」

小さな子供たちが集まってきたのだ…

 

「これ分かったの君…」

僕は少しうれしくなって、次から次へと型の飴に絵を描き始めた

「あードラえもん…、あーこんどはしんちゃん、しんちゃん…」

いつの間にか、銀二さんと僕の周りには、たくさんの子供たちが、群がっていた

「銀二さんー!」

僕はうれしくなって、銀二さんを見た

「だから言ったろ吉宗、今日は売れるって…」

銀二さんはそう言うと、再び三寸から外に向かって大きな声を張り上げた 

「さあーいらっしゃいいらっしゃいーーーー、べっ甲飴ー、べっ甲飴ー!」

「小、中、大 200円、300円、500円だよー」

「え、さっきは…?」

「しー!小さいことを気にするな…」

これは売れる…そう判断した銀二さんは、さりげなく値上げをしていたのだった…

「お兄さんーその大きいピカチュウちょうだいー」

「あいよー500円ねー」

銀二さんの値上げにも関わらず、僕の作るべっ甲飴は、それから飛ぶように売れはじめた…、そんな忙しさにもかかわらず、僕の頭の中では、銀二さんが言った一人の女性の名前が大きくふくくらみはじめていたのだった

(めぐみちゃん…めぐみちゃん…)

  

  

   

「あらーめぐみちゃんお帰りー」

薄暗くなった鬼瓦興業の門前で、社長の奥さんが一人の女の子に声をかけた…

「ただいまー、おばちゃん!」

そこには髪に可愛い朱色の髪留めをちょこんとつけた、学生服姿の少女が立っていた…。女の子は片手に学生かばん、もう片方の手には、食材の入った買い物ぶくろをぶらさげ、社長の奥さんに、うれしそうに尋ねた

「おばちゃん、来た?あの人…」

「来たよー、さっそくみんなと隣町の縁日に仕事(バイ)に行ってるよー」

「よかったねー、おばちゃん…」

「さあね、うちで続くかどうかねー、はははは」

「きっと続くよ、あの人なら…」

学生服すがたの女の子は、可愛い笑顔で、やさしく微笑んだ

「あとで行ってみよーっと」

「こんな遅くに、おとうさんに怒られるよー」

「パパは今日も遅いって、急に電話があったから…」

「なんだい、大変だねー、近頃は物騒だから、めぐちゃんの父さんも忙しいねー…、それじゃ食事も一人でしょ…、それ冷蔵庫にしまっといで、後でうちの連中と一緒に御飯食べようよ…」

社長の奥さんは彼女の買い物袋を指さして、やさしく笑った。

「それじゃ、お言葉に甘えて、おばちゃんの所でごちそうになろうかな…」

「その代わりに手伝っとくれよー、めぐみちゃん」

「はい…」

かわいらしく小首をかしげながら微笑む、めぐみちゃんと呼ばれるその女性こそ、まぎれもなく、僕が恋い焦がれる面接の時であった彼女だったのだ

がっ、しかし…、このめぐみという少女との恋が、更なる試練の幕開けだったとは、この時、僕は、まったく知るよしもなかった…

Megumi_2

つつく

※イラストは後日更新しますので、お楽しみに^^(by光一郎)

つづき
第七話 チェリーボーイ

Onegai001   
にほんブログ村 小説ブログ 学園・青春小説へにほんブログ村 小説ブログ コメディー小説へ
good↑青いボタンを、一日ワンクリックして頂けると、
吉宗くんのポイントアップにつながり、すごーく励みになります。
侠客☆吉宗くんの他、
楽しいブログがいっぱい紹介されているサイトです^^
clover

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年1月25日 (金)

第5話 侠客鬼瓦興業

アジアチャンピオンのもと、6ミリ4ミリのみごとなパンチパーマ頭に変身させられてしまった僕は、ショックあまり、涙を流すことすら出来ず、ただ呆然と銀二さんの後を歩いていた…

「あっ、あのー銀二さん…、一つだけ聞きたいことが?…」

「あん、なんだ?」

銀二さんはタバコに火をつけながら振り返った

「あ、あのー、僕うっかり面接の時、仕事の内容聞き忘れてしまったんですが、鬼瓦興業の仕事っていったい…」

僕は思い切って銀二さんに聞いてみた、

「うちの仕事…?何いてっんのお前……ぶっ!」

「ぷっ、ぷわーははははっははははっはっはっはは!」

銀二さんは僕を見ながら、急に大笑いを始め

「わりいわりい、あんまりにもお前のパンチパーマ姿が面白かったからよー、ぷひゃひゃひゃ、腹いてー腹いてー」

質問に答えられる状態では無くなってしまった…、僕はしかたなく笑いころげる銀二さんのあとを、とぼとぼと歩き続け…やがて、気が付くと僕たちは会社の入り口に立ってたのだった…

 

「おせえぞ銀、早く仕事の支度しろよ!」

とつぜん会社の中庭から大きな声が聞こえてきた、見るとそこには、公園で出会った刺青の岩さん、それに鉄という岩さんにグローブで殴られていた、金髪の男、他に数人のガラの悪そうな人たちが、恐い顔で立っていた 

「すんません岩さん、親父の言いつけで、この新入りアジアチャンピオンのとこ連れて行ってたんすよ…」

銀二さんはそう言いながら僕を見ると、またしてもゲラゲラ笑い始めてしまった

「新入り?…あれー!お前さっきのうんこの兄ちゃんじゃねえか!…何だうちの新人だったのか…」

「はっ、はい…」

「それにしても、えらい変身したなー、はははは…」

刺青の岩さんは僕を指差してうれしそうに笑った…続いて今度は、鉄という金髪男が、不気味な顔で近寄って来ると、鋭い目つきで僕を睨んできた

「なんだよ…、お、お、お前…、うちの新人だったんかよー」

「あっ、はい、そうです…」

僕は恐怖でガチガチに固りながら必死に答えた…そんな時、鉄という男の後ろから、一人のかっこいい男の人が現われ、鉄の頭をゴンと軽くこずいた。

「こら鉄、なーに新人君にガンくれてやがんだ!ばーか…」

まるで映画の二枚目俳優のようなその男の人は、優しい笑顔で僕に近寄ってきてくれた

 

「ほー、お前か、求人案内で面接に来た、お兄ちゃんてのは?」

「あ…はい!」

「名前は?」

「一条吉宗です!」

その二枚目俳優のような男の人は、たんたんと僕に話しかけてきた。

「ほー、いい名前じゃねえか、俺は高倉だ、よろしくな!、仕事はちょっときついけど、これから頑張れよ!」

そういいながら高倉という人は僕の肩をぽんと叩いた、僕は何となくそのやさしい笑顔に救われて、少しだけ緊張から解かれた思いがした…。

「おーいお前ら、これから一緒に働く、一条吉宗だ!しっかり面倒見てやれよ!」

「へーい」 「ほーい」 「あーいよろしくー」

岩さんをはじめ恐い顔の人たちは、いっせいに僕に声をかけてくれた。

「あ、ども、ども…」

僕はパンチパーマ頭をぽりぽりかきながら、こわばった顔で軽く会釈した…、その時だった今まで優しい笑顔を見せていた高倉さんが、急に赤鬼のような形相に変身して僕を睨みすえてきたのだ…

Takakura

「この野郎~新入り、なーんだその挨拶のしかたは~!」

「ひ、ひぇーーーー!?」

あまりの急変ぶりと、その恐ろしい形相に僕は、思わず震えあがってしまった…

「すっ、すいません…すいません…」

「銀~、てめえ新入りに挨拶の仕方も教えなかったのか、この野郎!」

高倉さんはそういいながら銀二を睨みすえた。

「す、すいません頭…」

いままで気さくに笑っていた銀二さんは、その後、急に恐い顔になって、僕のそばにやってきた

「こら、吉宗、俺のやるとおり見てろ…」

そういうと銀二さんは、急に足をがばっと、ガニ股に開き、軽く前かがみになると、両膝の上にばんっと手を置いた、そして相手から鋭い目をはなざず、そのまま頭をさげると

「おはようございやーす」

今までとは打って変わったドスの聞いた声で、みんなに挨拶をした、そしてその体勢のまま、横目で僕を睨むと小声で

「何ぼーっとしてんだこら、お前も同じように挨拶しろ!…」

「あ!?…はっ、はい!」

僕は一生懸命なれないガニ股になると、見よう見真似で銀二さんと同じ格好で挨拶をした

「お…おはようございあまさまさまーあす」

僕は恐さからあわてて、思わずこんな挨拶をしてしまったのだった

 

「なんだー、そのわけの分からん挨拶は!それに声が小さい声がー!」

高倉さんは僕の顔の間近に、その鬼のような顔を突きつけてきた。」

 

「お、おはようございまーーーーす!」

僕はありったけの勇気をふりしぼって、大きな声でみんなに挨拶をした

高倉さんはそんな僕をしばらく腕組みしながら、恐い顔で見つめていた…

僕はがにまた姿のまま、そーっと、恐る恐るあたりを見渡し、そして高倉さんの顔をチラッと覗いた…、すると、今まであんなに恐ろしい形相だった高倉さんの顔が、最初にであったときのやさしい顔に戻っていたのだった

「やればできるじゃねえか、やれば…」

高倉さんはそう言いながら、僕のパンチパーマをぽんと軽くたたくと、

「おう、お前ら準備できたら行くぞー」

そう言いながら、鉄から白衣を受け取り、スバっとかっこよく羽織り、さっそうと肩で風を切りながら外にでていった…

 

「ふー、びっくりしたか吉宗、高倉さんは昔から挨拶だけはうるさいからよー」

銀二さんはその手に、一着の白い服を持って、僕の前にやさしい笑顔で現れた

「ほい仕事仕事、そんなスーツ姿じゃ仕事にならねーだろ…、早くこいつに着がえな!」

「着がえ?」

「まあ、うちのユニフォームってやつだ、ほれ早く着替えろ、今度は岩さんにどやされるぞ…」

僕は銀二さんから白いユニフォームを受け取ると、奥の倉庫でごそごそ着がえを始めた…、しかし、着がえ終わった僕は、思わず自分の姿に悶絶してしまった

「えーーーーーーーーーーーーー!?」

「銀二さん!銀二さん!な、なんですかこの格好はー!?」

気が付くと僕は、白いよれよれの襟のないダボシャツに、白いズボンおまけにお腹には真っ黒い腹巻、それはまるで、「男はつらいよ」で同じみ、フウテンの寅さんそのものという格好だったのだ…。

「銀二さん、銀二さん、銀二さん…」

僕は、自分の姿を指さしながら、銀二さんの周りをピョンピョンと飛び続けた

「おー、なかなか似合ってんじゃねえか、やっぱパンチパーマにはそのかっこだな…」

銀二さんは笑いながらそう言うと、僕に真新しいわらで出来た時代劇でよく見かける、ぞうりを差し出した

「なんですか?そのぞうり?」

「ぞうり、雪駄ってだよ、セッタ…ダボシャツに皮靴じゃカッコつかねーだろ、ほら…」

僕はしぶしぶそのセッタというゾウリに履き替えると、ちりちりのパンチパーマ頭に手をやりながら、目に涙をいっぱいためて小さな声でつぶやいた 

「な、何なんだー、この頭といい、このユニフォームといい…いったいこの会社は、なんなんだーーーー!?」

 

「おおおお!よーく似合っとる、似合っとるぞー、若人よーーー!」

僕の背後からまたしても、聞き覚えのある大きな声が…振りかえるとそこには思った通り、満面の笑顔の社長の姿があったのだった

「うん、良い!良いぞー若人!やはり男は短髪、パンチパーマが一番いいぞー、似あっとる似あっとる!がーはははははははは!」

社長はまるで僕の頭を、ぺろっと一飲み出来るくらいの大きな口を開いて、うれしそうに、大笑いを続けていた…、僕は思い切ってそんな社長に訪ねた

「あのー、社長さん、一つだけ、伺っていいですか?…」

「んー?なんじゃ、若人よー」

「あのー、求人案内には、この会社、(子供達に夢と希望を与える会社)、そう書いてあったんですけど、いったいどんな仕事の会社なんですか?」

「なんじゃー!お前、知らんでうちに入ったのか?若人よー」

「は…はい…」

社長はきょとんとした顔で僕を見たが

「まあ良い、まあ良い、男なら仕事の中身なんぞ気にしないで面接に来る、そのくらいどーんと構えてないとなー、がはははは…」

高らかに笑い続けた

 

「はあ、はははは」 

仕方なく僕もこわばった顔で社長と一緒に笑い続けた、そしてしばらくしてもう一度、社長に小声でたずねた

「で、あの仕事の内容って…?」 

「的屋だよ…」 

「てきや?…」

「そう的屋…」

「て、てきや?…」

「おう、祭り、縁日で子供達に夢と希望を与え続ける、あの的屋だー、的屋!」

社長は僕の頭を、ぽんぽんうれしそうにたたきながら、大声でそう叫び続けた…

 

「的屋…、的屋…、あ、あの的屋!?…」

「そうだ的屋だ、あの的屋、」

「的屋…、的屋…、的屋…、やっぱりあの的屋?…」

僕はショックのあまり、社長と共に、何度も何度もそのテキヤという言葉を繰り返し続けたのだった…

武州多摩でも名のあるテキヤ一家、侠客鬼瓦興業…

こうして僕は、そんなテキヤ稼業に見事就職…、その後、さらなる恐ろしい出来事を、乗り越えながら、この稼業で男を磨いて行く事になろうとは…、この時はまだ知るよしもなかったのだった…

続き
第六話 めぐみちゃんへ

Onegai001   
にほんブログ村 小説ブログ 学園・青春小説へにほんブログ村 小説ブログ コメディー小説へ
good↑青いボタンを、一日ワンクリックして頂けると、
吉宗くんのポイントアップにつながり、すごーく励みになります。
侠客☆吉宗くんの他、
楽しいブログがいっぱい紹介されているサイトです^^
clover
clover

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年1月20日 (日)

第四話 アジアチャンピオン

アジアチャンピオンの所へ連れて行ってやれ、社長のその一言から、僕は不思議な期待を胸に銀二さんの後ろをのこのこ歩いていた…

「吉宗ってのか…、見かけによらず、すんげー名前だなー…」

銀二さんは、そうとう僕の名前が面白いのか、笑いながら、話しかけてきた

「は、はい昔からよく言われます。」

「でもついてんなーお前、いきなりアジアチャンピオンのとこへ行かせてもらえるなんてよ…、俺だってなかなか行けねえんだぜ…」

「あのー、ぎ、銀二さん、アジアチャンピオンって、いったい何のチャンピオンなんでしょうか?」

「それは会ってのお楽しみだよ…」

銀二さんは振り返ると、いたずらっぽい笑顔を僕に向けた…

 

それから歩くこと数分、銀二さんは、『BAR BAR 留松』 そう書かれた古びた看板に、青赤白のぐるぐる回る電飾の店の前で足を止めた…、僕が連れてこられた場所、それは床屋さんだったのだ… 

「おー、いらっしゃい銀さん、あれ、先週来たばっかだよね」

中から現れたのは、まるで演歌歌手のようにビシッと頭を短くセットした、白衣のおじさんだった…

「今日は俺じゃねーんだ、こいつこいつ、マスターのセンスでばっちり頼むよ…」

「新顔だね、鬼瓦さんのところのニューフェイスかい?…」

「は、はい…」

「うーん、ういういしいねー」

マスターは嬉しそうに、僕を椅子に招くと、小気味よくはさみの音を立てながら、散髪の準備を整えはじめた…

 

「あ、あの銀二さん、チャンピオンってもしかして、この床屋さんですか?」

「そうだよ、マスター二年連続だっけか」

銀二さんは店の壁に飾られているトロフィーに近寄ると、そこから一つ僕の前に持ってきた…

「すげえだろ、吉宗、二年連続アジアチャンピオンなんだぜ、ここのマスターは…」

「えー、すごいですねー…、もしかしてそんなすごいカリスマ美容師さんに、カットしてもらえるんですか?」

「おうだよー、だから言ったべ、お前ついてるってよ」

 

(そうかー社長はあんな怖い顔していたけど僕にすごい期待を、かけてくれているんだ、それで僕をカリスマ美容師のところへ…)

僕が感激で胸をいっぱいにしていると、シャキシャキ華麗な手つきではさみを鳴らしながらアジアチャンピオンのマスターが近づいてきた…そして銀二さんに向ってひと言、

「パンチパーマでいいね!…」

「おう頼むよマスター」

「パッ、パンチパーマーーーーーーー!?」

驚きと同時に銀二さんが手にしていたトロフィーの文字が、僕の目に飛び込んできた…

 

『優勝パンチパーマ・アジア選手権大会』

 

マスターはハサミを天高く舞いあげると、すさまじスピードで有無を言わさず、僕の長髪をカットしはじめました。

シャキシャキシャキシャキシャキシャキ…

「あああああああああああああああああああ…」

あまりのショックに、僕の意識がもうろうとしはじめていた…

「最近カリスマ美容師なんて、かっこつけてんのがいるけどさー、あいつらパンチパーマなんて出来ないからねー、パンチも出来ないで、何がカリスマだってんだよね…、銀さん」

シャキシャキシャキシャキ…

素早いハサミの音と、マスターの嬉しそうな声が、もうろうとしている僕の耳にかすかに聞こえていた…

チリチリチリチリチリチリチリチリチリチリ

「うーん、いい感じだねー銀さん、この兄ちゃん、いいパンチャーになれそうだよー…」

僕はコテの熱さと、髪の毛の焦げるにおいを感じながら、遠ざかる意識の中でマスターの訳のわからない会話を聞いていた…

 

それから何分たったか…

気がつくと、六ミリ四ミリみごとに焼かれたパンチパーマ姿の僕が、鏡に映し出されていたのだった…

Hujibitai_2

「あいやーーーーー、まいったな銀さん、この彼氏、すごい富士びたいだよー!」

僕はもともと狭い額をしていた、マスターは鏡に映った僕のその額をみて、納得がいかないそんな顔を、銀二さんに向けた…、

「あらー、本当だ…これはかっこ悪いなーマスター…、しょうがないからソリも入れたろうか、ソリも…」

「ソッ、ソリーーーーーーーー!?」

僕はその一言を耳にしてから先、完全に気を失ってしまった…。そして目が覚めた時、目の前の鏡には、全く別人と化した僕が座っていたのだ…。

Panchi

「おおー、なかなかいいじゃねえか、」

「………」

「さすがはアジアチャンピオンだなーマスター、見事なパンチャーに仕上がったじゃん…」

銀二さんは、マスターにお金を払いながら、うれしそうに僕のパンチパーマ姿をながめていた…

 

「な、なんで…?」

僕の思考回路は、このパンチパーマと同じようにくるくる回り始めていた… 

(僕が就職した、この鬼瓦興業って、いったいぜんたい…?)

 

崩壊した頭の僕は、気づくと銀二さんに連れられ、リクルートスーツにパンチパーマという、一昔前の演歌歌手のようないでたちで、これから生活する鬼瓦興業に向かって、とぼとぼと歩いていた…

その後、さらに恐ろしい事が待ち受けているような予感を感じながら……

続き
第5話 侠客鬼瓦興業へ

Onegai001   
にほんブログ村 小説ブログ 学園・青春小説へにほんブログ村 小説ブログ コメディー小説へ
good↑青いボタンボタンを、一日ワンクリックして頂けると、
吉宗くんのポイントアップにつながり、すごーく励みになります。
侠客☆吉宗くんの他、
楽しいブログがいっぱい紹介されているサイトです^^
clover
clover

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年1月16日 (水)

第3話 侠客吉宗くん誕生3

今時にしてはめずらしい瓦で出来た和風の門をくぐり、古びた玄関の前で僕はふっと大切なことを思い出した。

「そういえば考えてみると、この会社の仕事内容、何にも聞いてなかったんだ、求人募集には、子供達に夢と希望を与える仕事って書いてあったけど…」

僕はあまりにもとっぴな面接に、うっかり仕事内容を聞き忘れてしまっていたのだ

「それにどう見てもオフィスとは思えないこの雰囲気って…」

僕の額から一本の脂汗がタラーと流れ落ちた…とっ、その時…

ガラガラ~!

突然玄関のドアが開き中から買い物かごをもった中年女性が姿を現した

「!?」

女性は一瞬驚いた顔をしたあと、急に恐い顔で僕を睨みつけてきた

「誰、あんた?うちはセールスはお断りだよ!」

「あ、あの、す、すいません、あ、あの…あの…」

僕は女性の迫力に押されて、言葉をうしなってしまった…

「おまえ、さては泥棒だなー、このやろう!」

女性はそういうと突然僕のネクタイをむんずとつかみ、もっていた買い物かごでべしべし僕の顔をはたきはじめた

「テレビで見て知ってんだぞー、最近の泥棒はセールスマンのふりして堂々と玄関から入ってくるって…この野郎!!…」

「うげー、ひえー、ちっ、違いますーーーー!、僕は今日からこちらに就職、就職ですー!」

「就職?」

女性はしばらく考え事をしていたが、急に何かを思い出して大声で笑い始めた…

「あらー、ごめんねーあんたこの間面接に来たって子だったの?…いやだよー、泥棒と間違えちゃったじゃない、ごめんなさいねー、はははは…」

女性はガラガラ声で笑うと、僕の肩をぽんと叩いて、今度は優しい笑顔で話しかけてきた…

「あんた、根性なさそうだねー、大丈夫かい?」

「えっ?あ…そんなことないです、僕は根性はいっぱいあります!…」

精一杯胸をはって女性に答えた

「はははは、そうかい、まあいいや、あんた、これからよろしくね…早く入りな!」

女性はぽんと僕のせ中を叩くと、玄関の開き戸をガラッとあけて、奥の事務所まで案内してくれた

「中に入ってまってなよ、今うちの人呼んでくっから…」

「は、はい!」 

「あんたー、来たよーこの間話してた面接の男の子ー」

女性はそういいながら、廊下の奥へと歩いていった…

 

「うちの人って、社長の奥さんだったのか…、口は悪いけど気さくそうな人だな…」

僕は社長の奥さんと思われる人のおかげで、がちがちの緊張から少しだけ解放された…。そして奥さんが事務所と言っていた場所の入り口のドアに手をかけた時、ふっと面接の彼女のことを思い出した

「もしかして、この中にあの子が……」

僕は入口横の鏡に目をやると、自分の顔をジーと見つめ、鼻毛は伸びていないか、鼻の穴をもぞもぞしながらチェックし

「うん、大丈夫だ…」

そう呟くと、ドキドキ緊張しながら事務所の入り口をのノックして、思い切ってドアを開けた…

「あれ?」

ところが事務所の中はもぬけのから、しーんと静まりかえっていた…。しかたなく僕は事務所の真ん中のソファーに小さく腰をおろし、あたりをきょろきょろ見回した

事務所の中には机が三つ、そのうち二つは事務用と思われ、古びたパソコンが一つ置かれていた

「ここにあの子が座ってるんだな、きっと…」

僕はOLスタイルで、さっそうとパソコンのキーボードを打っている、彼女の姿を想像しながらにんまり微笑んでいた…

それから僕は、彼女のものと思われる机の脇にそっと目を移してびっくり、そこには河童のお化けような置物が、ぎろっとこちらを睨みすえていた…

「うわー、何だ、置物か…、気持悪い置物だな…あの社長の趣味かな…」

そんな悪趣味の河童の置物の横には、社長の机と椅子がどっかと置かれており、椅子の後ろには立派なむく板に、『神農道』という言葉が見事な文字で彫りこまれていた…

「かみのうみち?」

僕が首をかしげながら、つぶやいているところへ後ろから聞き覚えのある大きな声が、響いてきた。

「おーおーー!来たか来たか、若人よ~!」

僕はあわてて立ち上がり後ろを振り返ると、そこには着物姿の面接の時に出会った社長が立っていた…

「おっ、おはようございます!」

「あー!何だ若人ー、元気がないぞー元気が、チンポついてんのかー!」

社長はそういうと大きなグローブのような手で僕のちんちんをおもいっきり叩いてきた。

グシャー!!

「いたー!」

僕はあまりの痛さに思わず大声をだして、その場にしゃがみこんでしまった…

「何だおい、大きな声だせるじゃねえか、若人よー!あいさつもそのくらい、でかい声でやらなーいかんぞ!」

社長はそういうと、笑いながらソファーに腰掛け、僕の顔をじろじろ見つめだした。僕は痛さで顔をひきつらせながら、

「おはようございますー」

必死に声を振り絞って、挨拶をやり直した…

「まだまだ、声が小さいな、まあ、ビシッと鍛えりゃそのうち何とかなるか…」

社長は右手の小指で鼻くそをほじりながら、ジーと僕の顔を見つめていた

 

「うーーん………」

「あ、あの僕の顔になにか…」

「顔はなかなかの男前なんだがな~…、惜しいなーそのヘアースタイルが…」

「えっ!、ヘアースタイルですか?」

「うーん、いかんなー…、それでは、どうもちゃらちゃらして、我が社にはふさわしくないなー!…」

「それでも、あの…、こっ、これ、昨日リクルート用に美容院へ行ったばっかで…」

「びっ、美容院だとー!?」

社長は大声で怒鳴ると、急にムッとした顔で、僕の前に顔をちがずけて来た

「いかん!いかんぞ!若人~、男の癖になんで美容院なんぞ行くんだー、男なら散髪屋、昔からそう決まってんだー!」

「すっ、すいません!」

僕は社長に圧倒され必死になって謝り続けていた… 

「まずは、ガリ屋からか…」

「ガリ屋?」

「まぁ、その前に若人よー、君の上司でも紹介しようか…」

社長は後ろを振り返ると

「おーーい、銀二ー!」

ドスの聞いた声で、そう叫んだ… 

「はーい、何すか、親父さん」

「あーーーー!」

僕は思わず声を張り上げて出てきた人のことを指差していた…

「ん?あーっ!、お前さっきのうんこじゃねえか!!」

社長に呼ばれて出てきた、銀二という人は、僕が公園で出会った銀と呼ばれていたチンピラ風の男だったのだ…

 

「おまえ知ってんのか、この若人を」

「へい、さっき公園でねー…」

そう言いながら銀と呼ばれていた男はゲラゲラ笑い始めた

「知ってるんなら丁度いいや、おい銀二、お前これからこの若人の面倒みたったれや…」

「あっ、はい…」

僕は突然の恐怖の再開に言葉を失って、ただただ震え上がっていた…、銀二という男はそんな僕の前にすっと歩を進めると

「俺、山崎銀二、よろしくな!…」

今までとは打って変わったような優しい笑顔で、僕の肩をぽんと叩いてきた…

「あっ、はい!よろしくお願いします…」

僕は立ち上がりきおつけをすると、銀二という人に向かってふかぶかと頭を下げた…

 

そんな二人の様子を笑顔で見ていた社長は、胸から分厚い財布を出すと、中から一万円札を銀二さんに手渡した

「銀二、さっそくこの若人を、アジアチャンピオンの所に連れて行ったれや…」

「えっ、チャンピオンの所っすか?…はっ、はい…」

銀二さんはそう言うと、社長から一万円を受け取り、うれしそうに僕の横に来た

「お前ついてんなー、いきなりアジアチャンピオンの所に、行かせてもらえるなんてよー」

「アジアチャンピオン?」

首をかしげている僕に、銀二さんは笑顔で、外に出るよう首で合図をしながら、事務所の外に出て行った…

「あ、そうだ、親父さんこいつ名前なんすか?…」

銀二さんは玄関で立ち止まると、社長に訪ねた…社長はキョトンとした顔を僕に向けると

「名前?…あれっ、何だっけお前?…」 

「あっ、一条です、一条、吉宗です!…」 

僕は改めて社長と銀二さんに、挨拶をした

 

「ふーん、吉宗ね…何か偉そうだけど、おもしれえ名前だな…」

つぶやきながら笑っている、銀二さんの後を追って、僕は玄関に向かった…

アジアチャンピオンに会うために……

続き
第4話アジアチャンピオンへ

Onegai001   
にほんブログ村 小説ブログ 学園・青春小説へにほんブログ村 小説ブログ コメディー小説へ
good↑青いボタンを、一日ワンクリックして頂けると、
吉宗くんのポイントアップにつながり、すごーく励みになります。
侠客☆吉宗くんの他、
楽しいブログがいっぱい紹介されているサイトです^^
clover
clover

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年1月15日 (火)

第二話 侠客吉宗くん誕生2

「やったなー、一条君、君の企画で、よい子とそのお母さんたちが、大喜びだぞー、おまけに、儲けもがっぽがっぽ、君はまさに我が社のホープだー!」

面接の日に出会った金縁めがねで強面の社長は、ニコニコ顔で僕の手を握ると、涙を流しながら喜んでいた。

「社長、当然の仕事をしたまでですよ…」

リクルートスーツに身を包んだ僕は、胸をはってそう答えると、回りの社員達から尊敬のまなざしを受けながら、面接の日に出会った長沢まさみ似の彼女の元へと近づいていった。

「おめでとう、一条君、社長をあんなに喜ばせるなんて、すごいじゃない…」

「いやいや、ほんの実力ですよ…」

僕は前髪をかき上げながら、彼女に向かって輝く白い歯をキラッとのぞかせた

ポ~!heart04

彼女はそんな僕の熱視線に頬を染めると、少しうつむきながら小声で… 

「あ、あの、一条君… もし良かったら、私と今日食事でも……」

「えっ?…」

「あっ、いいです、いいです…今のは独り言ですから…」 

緊張している彼女の肩に僕はそっと手をそえた…

「僕の方こそ、君と二人で食事が出来たらって、出会った面接の時から思っていたんだ…」

「え!、一条君もそう思ってくれていたなんて、私うれしいーheart04

「僕だって、うれしいよ……」

僕は目じりをデローンと下げて、ニヤニヤしながら彼女を見つめていた…

 

「兄さん、おい兄さん、」

「え!?」

気が付くと僕の前にいたキラキラ輝く彼女の顔が、見る見るうちに年老いた老婆へと変わっていった 

「うわー!」

僕はビックリしてのけぞりかえった

「うわーって、何だよ、ビックリするね…あんた、大丈夫かね、さっきかから一人ニヤニヤして…」

「えっ?…」

「それにそんなとこに、じーっとしていられたら商売のじゃまなんだよ」

「あ!?」

気が付くと僕は、会社に向かう途中の小さなタバコ屋の前で、輝かしいオフィス生活を想像しながら、いやらし~い顔でたたずんでいたのだった…

 

「変な人だよー、さっきからニヤニヤして、おまけにうんこまでふんで…」

「うんこ!?…」

あわてて足元を見ると、僕のおろしたてリクルートシューズの下には、無責任に放置された巨大なやわらかい茶色い物体が横たわっていた……

  

「うわぁーーーー!!」

「ちょっと、ちょっと、店の前なんだから、あんまりバタバタしてうんこ散らさないでおくれー!」

「あっ、ご、ごめんなさーい!」

僕はあわてて靴を脱ぎ、近くの公園の水道めがけて、ぴょんぴょんとけんけんで走っていった

 

「なんだよー、今日おろしたばかりの皮靴なのに……」

公園で半べそをかきながら、靴を洗っていた、その時だった

「なんだ、兄ちゃん、うんこ踏んじまったんかー?」

「うわぁ…きったねー、それもべっちょりじゃねーか…」

「え?」

振り返るとそこには、パンチパーマにチンピラ風ファッションの若い二人組の男が、ニヤニヤ笑いながら立っていた

Tinpira

「あ…あの…すっ、すいません……」

僕は恐怖で、なぜか二人組に謝っていた…

 

「おーい、銀、何やってんだー」

今度は別の場所から野球のグローブを手にした、上半身裸の中年の男が、近づいてきた

(どぇーーー!!)

中年男の右肩には、なんと竜の刺青が、僕は恐怖のあまりその場で腰をぬかしてしまった…

 

「岩さん、こいつそこで、うんこ踏んじゃったんだってー」

一人の若い男が、げらげら笑いながら、僕を指差した

 

(輝かしい入社日だっていうのに…、なんでこんなことに…)

腰の抜けた状態で身動きも出来ず、僕は脂汗を流しながらじっーと恐怖で固まっていた

と、その時だった、岩さんと呼ばれる刺青のおじさんが、うんこのついた靴を無造作に僕の手から取り上げると

「ひでーな、こりゃ…こいつはかなりでかい犬だな…」

靴を見ながらつぶやき、最初に現れた若いチンピラ風の男を、恐い顔で睨みすえた…

「おい、てめえ、これは与太郎のじゃねーか?」

「…えっ…、いや、あの岩さん……」

「やっぱり与太郎のだな、この野郎!」

刺青の男は若いパンチパーマ男の頭をもっていたグローブでぶったたいた

「えー!?」

僕は突然の出来事に、言葉をうしなってしまった…

 

「こら、鉄、このやろう…又、与太の糞、かたさないで帰ってきやがったな…」

そう言いながら刺青男は、何発も鉄と呼ばれる若い金髪頭のチンピラをグローブで殴りつけた

「すいません…、すいません…、岩さん、つい…慌ててたもんで…」

「馬鹿野郎、こんなこと親父に分かったら、てめえこんなもんじゃすまねえんだぞ、この野郎!」

さんざん鉄と呼ばれる男をグローブでこずいた刺青男は、今度は僕のほうにその恐い顔を向けてきた

「ひーっ、す、すいませーん!…」

「なんで兄ちゃんがあやまってんだ?」

「えっ?…」

「兄ちゃん、すまなかったなー、こいつがちゃんと与太郎の糞をかたずけなかったばかりに迷惑かけちまってよ…」

そう言いながら、刺青男はもっていた手ぬぐいを水道で濡らすと、僕の靴をきれいに洗い始めた

「えっ、えっ?」

僕は、何が何やら分からず

「こちらこそ、すいません、すいません…」

刺青男に必死で頭を下げまくっていた…

 

「ちょっと匂い残ったかも知れないが、勘弁してくれな、兄ちゃん…」

刺青の岩さんと呼ばれる男は、そっと僕の足元に靴を置いて、優しい笑顔で微笑んできた

「あっ、すいません…」

僕は慌てて頭を下げると、こわばった顔で微笑んだ…

 

「兄ちゃん、この辺じゃ見かけない顔だな、これから何処行くんだい?」

こわもての顔の銀と呼ばれる男が僕に話しかけてきた

「あっ、はっ、はい…実は、鬼瓦興業という会社に向かう途中で……」

汗を拭きながらそう言うと

「鬼瓦興業?…」

三人の男達は不思議そうに顔を見合わせ、今度は奇妙な生き物を見るような視線で、僕の方をじろじろ眺めてきた…

「兄ちゃん…、何かの…セールスか?」

鉄と呼ばれる男が恐い顔で僕を睨みつけた… 

「いやっ、あっ、あのセールスでなくて、入社…入社…」

「入社~!?」

三人はまた不思議そうに顔を見あわせると、今度は僕を無言で睨みすえてきた…

「うっ、あっ……………」

僕はあまりの恐怖に後ずさりすると 

「ひーーーーたっ、たすけてーーーーーー!」

気が付いた時には大声を出しながら、一目散に公園から逃げたしていた

  

「あ、おい兄ちゃん!?」

背後で、岩さんと名乗る男の声が聞こえたが、恐怖から僕は立ち止まることなく、全力で走り去っていた…

 

あっちの道、こっちの道と、どこをどう走ったのか、あまりの恐怖に覚えていなかったが、気が付くと僕は、またさっきの公園の前に戻っていた

そこで僕は公園の向かい側にある大きな看板に目をとめた…

『鬼瓦興業』

大きなむく板に見事な字で掘り込まれた看板を目にした僕は、思わずその場にしゃがみこんでしまった

 

「ここが、鬼瓦興業?…」

それは僕の創造とはまったく違う雰囲気、純和風の大きな門構えに、中には小さな日本庭園、そして奥には大きな格子のついた和風の扉が見えていた

「なんか、想像していたイメージとは違うけど…」

僕は背中に一瞬、恐~い予感を感じたが、すぐに首をぶるぶる振ると、頭の中で面接の日に出会った美しい女性を思い浮かべた、そして

「ふーーーー!」

大きなため息を一つついた後、リクルートスーツのネクタイをきゅっと締めなおした…

 

「今日からここで、僕の新しい人生がはじまるんだ……よーしっ!!」

一言、気合をつけて、鬼瓦興業という看板を掲げた大きな門の中に飛び込んでいった

これから、何が起こるか、知るよしもなく………

続き
第三話(侠客吉宗くん誕生3)へ

Onegai001   
にほんブログ村 小説ブログ 学園・青春小説へにほんブログ村 小説ブログ コメディー小説へ
good↑青いボタンを、一日ワンクリックして頂けると、
吉宗くんのポイントアップにつながり、すごーく励みになります。
侠客☆吉宗くんの他、
楽しいブログがいっぱい紹介されているサイトです^^
clover
clover

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年1月10日 (木)

侠客吉宗くんへの思い入れ

「侠客☆吉宗くん」へようこそhappy01

気の小さい、ごく普通の少年、一条吉宗君、ひょんなことから任侠の世界に入り込んでしまったこの吉宗くんが、数々の試練を乗り越えながら、明るく楽しく成長していく姿、

そんな吉宗くんとともに、私も成長できたらいいなー、そんな事を考えながら、初の小説にチャレンジさせていただいています。

下手な文章で読みぐるしい点が、たーくさんあると思いますが、そこはどうか一つ、広く暖かい青空のような心で読んでやって下さいねcoldsweats01sweat01

この物語の主人公、吉宗くんを通して、やさしさと暖かさ、そんな素敵な世界をかけたらいいなーなんて、ひそかに思っています。

こんな時代だから、できる限り、明るく、楽しく、皆さんにホンワカ笑って、暖かい気持ちになってもらえるよう、日々こつこつ続けていきますので応援よろしくおねがいしまーすhappy01

by 光一郎sun

Onegai001   
にほんブログ村 小説ブログ 学園・青春小説へにほんブログ村 小説ブログ コメディー小説へ
good↑青いボタンとピンクのボタンを、一日ワンクリックして頂けると、
吉宗くんのポイントアップにつながり、すごーく励みになります。
侠客☆吉宗くんの他、
楽しいブログがいっぱい紹介されているサイトです^^
clover

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年1月 9日 (水)

第一話 侠客吉宗くん誕生1

侠客、強きをくじき弱きを助ける義侠の人、正義のためなら命を掛けても闘うその侠客の道へ、いま一人の若者が足を踏み入れようとしていた…。

 

第一章 侠客鬼瓦興業

 

第一話 侠客吉宗くん誕生

桜の花びらが舞踊る四月、大きなボストンバックをかついだ僕は、期待と不安を胸に、これから始まる新しい人生に向かって歩を進めていた。

僕がこれから暮らす多摩の地は、かつて武州と呼ばれ、古くは新撰組の近藤勇、土方歳三などの出身地ということで有名らしく、駅を降りてからの商店街には、いたるところに彼らの写真やポスターが張り巡らされていた。

僕は胸ポケットから一通の、いかついマークが刻印された封筒を取り出し、中の手紙に目を向けた…

Nyusya_2 

《採用通知、一条吉宗殿、貴殿を我が社へ採用することに決まったので、ここにご報告申し上げる。入社日はおってさたする也、また地図はここだ、間違えぬよう注意、、、株式会社鬼瓦興業 代表鬼瓦辰三》

「なんとなく、変な採用通知なんだよなー、思い出すと面接の時も、奇妙だったし…」

僕はすこし曇った顔で、1ヶ月前に駅前の小さなビルで行われた面接を思い出した。

 

 

殺風景なビルの一室、僕は求人広告を片手に、面接会場と書かれた古びたドアをノックした。

コンコン

「あーい!どうぞー」

中から、どすのきいた声が返ってきた。アルバイト経験はあっても正式な就職経験のない僕は一瞬たじろいだが勇気を振り絞ってドアを開け中に入っていった。

「あのー面接を受けに来たものですが…」

「よし!採用~!!」

ドアの向こうには、「おめでとう若人よ!」 そう走り書きされた風俗店の広告で使う、チャラチャラの飾り付けをしたプラカードをもった、それは恐ろしい顔のおじさんが笑顔で立っていたのだった、、、

Saiyou

「え?あの採用ってまだ何も…」

「採用だよ採用!おめでとう若人よ~!」

おじさんは、いやらしい笑顔で僕の手を握り、おもいっきり振り回すように握手をしてきた…。そのスタイルは、見事に手入れされた角刈りに金縁の色つきめがね、右の眉には大きな傷あと、どう見ても一般の人とは思えないようすだった。

「いやー、おめでとう、おめでとう!」

大声でそう言いながら、こわもてのおじさんは、僕の手から履歴書をふんだくると、さっさと奥の部屋に向かって歩いて行こうとした、

「あっ、あの、ちょっと、すいません…」

訳の分からない僕は、あわててそのおじさんを呼び止めた、するとおじさんは面倒くさそうに、こちらを振り返り

「おって沙汰する、若人よ…」

にんまり笑顔でそういい残し、とっとと奥の部屋へと消えていってしまったのだった…

 

「…なっ、なんだ、この会社は?……」 

僕があぜんとして、たたずんでいると、今度は中から、めちゃめちゃ可愛い、長沢まさみ似の僕好みの女の子があらわれ、うれしそうな笑顔で僕に近寄って来た… 

「おめでとうございますー、社長から伺いましたよー、これから一緒に仕事してくれるんですねー」

女性は澄み切った美しい瞳を向けながら、僕の手を両手でやさしく握り締めてきた

「えっ?…あ……」

「えっ…て?、あの、一緒に仕事してくれるんですよね?…」

僕はその女性のあまりの可愛さに、顔を真っ赤に染めながら

「あっ!は、はい、そうです…」

「うれしい、頑張ってくださいね!」

「はっ、はい!…がんばります!がんばります!…」

何度もそういいながら、彼女の可愛い小さな手を握り締めていたのだった……

  

 

「可愛かったなー、あの子…」 

僕はそうつぶやくと、目頭をだらしなーくたるませながら、彼女と握手した右手を眺めていた…

「奇妙な面接だったけど、あんなに可愛くて、純粋そうな子が勤める会社なんだから…」

頬を赤く染めながら自分にそう言い聞かせると、地図に書かれた多摩川のほとりにある、これから僕の人生を掛ける会社に向かって歩き始めた… 

その後、とてつもない恐ろしいことが、待ち構えているなんて、露とも知らずに……。

つづく

侠客☆吉宗くん第二話
侠客吉宗くん誕生2へ、、、

Onegai001   
にほんブログ村 小説ブログ 学園・青春小説へにほんブログ村 小説ブログ コメディー小説へ
good↑上の青いボタンボタンを、一日ワンクリックして頂けると、
吉宗くんのポイントアップにつながり、すごーく励みになります。
侠客☆吉宗くんの他、
楽しいブログがいっぱい紹介されているサイトです^^
clover
clover

| | コメント (4) | トラックバック (0)

トップページ | 2008年2月 »