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2008年1月16日 (水)

第3話 侠客吉宗くん誕生3

今時にしてはめずらしい瓦で出来た和風の門をくぐり、古びた玄関の前で僕はふっと大切なことを思い出した。

「そういえば考えてみると、この会社の仕事内容、何にも聞いてなかったんだ、求人募集には、子供達に夢と希望を与える仕事って書いてあったけど…」

僕はあまりにもとっぴな面接に、うっかり仕事内容を聞き忘れてしまっていたのだ

「それにどう見てもオフィスとは思えないこの雰囲気って…」

僕の額から一本の脂汗がタラーと流れ落ちた…とっ、その時…

ガラガラ~!

突然玄関のドアが開き中から買い物かごをもった中年女性が姿を現した

「!?」

女性は一瞬驚いた顔をしたあと、急に恐い顔で僕を睨みつけてきた

「誰、あんた?うちはセールスはお断りだよ!」

「あ、あの、す、すいません、あ、あの…あの…」

僕は女性の迫力に押されて、言葉をうしなってしまった…

「おまえ、さては泥棒だなー、このやろう!」

女性はそういうと突然僕のネクタイをむんずとつかみ、もっていた買い物かごでべしべし僕の顔をはたきはじめた

「テレビで見て知ってんだぞー、最近の泥棒はセールスマンのふりして堂々と玄関から入ってくるって…この野郎!!…」

「うげー、ひえー、ちっ、違いますーーーー!、僕は今日からこちらに就職、就職ですー!」

「就職?」

女性はしばらく考え事をしていたが、急に何かを思い出して大声で笑い始めた…

「あらー、ごめんねーあんたこの間面接に来たって子だったの?…いやだよー、泥棒と間違えちゃったじゃない、ごめんなさいねー、はははは…」

女性はガラガラ声で笑うと、僕の肩をぽんと叩いて、今度は優しい笑顔で話しかけてきた…

「あんた、根性なさそうだねー、大丈夫かい?」

「えっ?あ…そんなことないです、僕は根性はいっぱいあります!…」

精一杯胸をはって女性に答えた

「はははは、そうかい、まあいいや、あんた、これからよろしくね…早く入りな!」

女性はぽんと僕のせ中を叩くと、玄関の開き戸をガラッとあけて、奥の事務所まで案内してくれた

「中に入ってまってなよ、今うちの人呼んでくっから…」

「は、はい!」 

「あんたー、来たよーこの間話してた面接の男の子ー」

女性はそういいながら、廊下の奥へと歩いていった…

 

「うちの人って、社長の奥さんだったのか…、口は悪いけど気さくそうな人だな…」

僕は社長の奥さんと思われる人のおかげで、がちがちの緊張から少しだけ解放された…。そして奥さんが事務所と言っていた場所の入り口のドアに手をかけた時、ふっと面接の彼女のことを思い出した

「もしかして、この中にあの子が……」

僕は入口横の鏡に目をやると、自分の顔をジーと見つめ、鼻毛は伸びていないか、鼻の穴をもぞもぞしながらチェックし

「うん、大丈夫だ…」

そう呟くと、ドキドキ緊張しながら事務所の入り口をのノックして、思い切ってドアを開けた…

「あれ?」

ところが事務所の中はもぬけのから、しーんと静まりかえっていた…。しかたなく僕は事務所の真ん中のソファーに小さく腰をおろし、あたりをきょろきょろ見回した

事務所の中には机が三つ、そのうち二つは事務用と思われ、古びたパソコンが一つ置かれていた

「ここにあの子が座ってるんだな、きっと…」

僕はOLスタイルで、さっそうとパソコンのキーボードを打っている、彼女の姿を想像しながらにんまり微笑んでいた…

それから僕は、彼女のものと思われる机の脇にそっと目を移してびっくり、そこには河童のお化けような置物が、ぎろっとこちらを睨みすえていた…

「うわー、何だ、置物か…、気持悪い置物だな…あの社長の趣味かな…」

そんな悪趣味の河童の置物の横には、社長の机と椅子がどっかと置かれており、椅子の後ろには立派なむく板に、『神農道』という言葉が見事な文字で彫りこまれていた…

「かみのうみち?」

僕が首をかしげながら、つぶやいているところへ後ろから聞き覚えのある大きな声が、響いてきた。

「おーおーー!来たか来たか、若人よ~!」

僕はあわてて立ち上がり後ろを振り返ると、そこには着物姿の面接の時に出会った社長が立っていた…

「おっ、おはようございます!」

「あー!何だ若人ー、元気がないぞー元気が、チンポついてんのかー!」

社長はそういうと大きなグローブのような手で僕のちんちんをおもいっきり叩いてきた。

グシャー!!

「いたー!」

僕はあまりの痛さに思わず大声をだして、その場にしゃがみこんでしまった…

「何だおい、大きな声だせるじゃねえか、若人よー!あいさつもそのくらい、でかい声でやらなーいかんぞ!」

社長はそういうと、笑いながらソファーに腰掛け、僕の顔をじろじろ見つめだした。僕は痛さで顔をひきつらせながら、

「おはようございますー」

必死に声を振り絞って、挨拶をやり直した…

「まだまだ、声が小さいな、まあ、ビシッと鍛えりゃそのうち何とかなるか…」

社長は右手の小指で鼻くそをほじりながら、ジーと僕の顔を見つめていた

 

「うーーん………」

「あ、あの僕の顔になにか…」

「顔はなかなかの男前なんだがな~…、惜しいなーそのヘアースタイルが…」

「えっ!、ヘアースタイルですか?」

「うーん、いかんなー…、それでは、どうもちゃらちゃらして、我が社にはふさわしくないなー!…」

「それでも、あの…、こっ、これ、昨日リクルート用に美容院へ行ったばっかで…」

「びっ、美容院だとー!?」

社長は大声で怒鳴ると、急にムッとした顔で、僕の前に顔をちがずけて来た

「いかん!いかんぞ!若人~、男の癖になんで美容院なんぞ行くんだー、男なら散髪屋、昔からそう決まってんだー!」

「すっ、すいません!」

僕は社長に圧倒され必死になって謝り続けていた… 

「まずは、ガリ屋からか…」

「ガリ屋?」

「まぁ、その前に若人よー、君の上司でも紹介しようか…」

社長は後ろを振り返ると

「おーーい、銀二ー!」

ドスの聞いた声で、そう叫んだ… 

「はーい、何すか、親父さん」

「あーーーー!」

僕は思わず声を張り上げて出てきた人のことを指差していた…

「ん?あーっ!、お前さっきのうんこじゃねえか!!」

社長に呼ばれて出てきた、銀二という人は、僕が公園で出会った銀と呼ばれていたチンピラ風の男だったのだ…

 

「おまえ知ってんのか、この若人を」

「へい、さっき公園でねー…」

そう言いながら銀と呼ばれていた男はゲラゲラ笑い始めた

「知ってるんなら丁度いいや、おい銀二、お前これからこの若人の面倒みたったれや…」

「あっ、はい…」

僕は突然の恐怖の再開に言葉を失って、ただただ震え上がっていた…、銀二という男はそんな僕の前にすっと歩を進めると

「俺、山崎銀二、よろしくな!…」

今までとは打って変わったような優しい笑顔で、僕の肩をぽんと叩いてきた…

「あっ、はい!よろしくお願いします…」

僕は立ち上がりきおつけをすると、銀二という人に向かってふかぶかと頭を下げた…

 

そんな二人の様子を笑顔で見ていた社長は、胸から分厚い財布を出すと、中から一万円札を銀二さんに手渡した

「銀二、さっそくこの若人を、アジアチャンピオンの所に連れて行ったれや…」

「えっ、チャンピオンの所っすか?…はっ、はい…」

銀二さんはそう言うと、社長から一万円を受け取り、うれしそうに僕の横に来た

「お前ついてんなー、いきなりアジアチャンピオンの所に、行かせてもらえるなんてよー」

「アジアチャンピオン?」

首をかしげている僕に、銀二さんは笑顔で、外に出るよう首で合図をしながら、事務所の外に出て行った…

「あ、そうだ、親父さんこいつ名前なんすか?…」

銀二さんは玄関で立ち止まると、社長に訪ねた…社長はキョトンとした顔を僕に向けると

「名前?…あれっ、何だっけお前?…」 

「あっ、一条です、一条、吉宗です!…」 

僕は改めて社長と銀二さんに、挨拶をした

 

「ふーん、吉宗ね…何か偉そうだけど、おもしれえ名前だな…」

つぶやきながら笑っている、銀二さんの後を追って、僕は玄関に向かった…

アジアチャンピオンに会うために……

続き
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