第13話 恐怖の影
「私、応援してます、、、、吉宗くんのこと、、、」
憧れのめぐみちゃんの、その言葉は、単純な僕にとって最高の活力剤だった。そして僕は誰もいない鬼瓦興業の玄関で小さく拳を握りしめて、つぶやいた
「がんばろう!うん、がんばるよー、、、、よし、がんばるぞーー、」
「何をがんばるの?」
「えー?!あーーーー銀二さん!」
気がつくと後ろには、僕のボストンバックをもった銀二さんの姿があった
「部屋案内してやるから、ほらこれ、、、」
銀二さんはボストンバックを僕に差し出した
「あ、すいません」
僕は銀二さんからボストンバックを受け取ると、いそいそと銀二さんの後ろをついて、寮と思われる場所へ向かう長い廊下を歩きだした
「まず、親父さんの挨拶が先だからな、親父さんは高倉の若頭よりも挨拶はうるさいから、しっかりやれよ」
「は、はい!」
「それから、ここじゃみんな、社長じゃなくて、親父さんって呼んでっから、今からお前もそう呼べよ、」
「おやっさん、、、ですか?」
「そう、それから奥さんは、姐さん」
「あねさん、、、、は、はい」
僕と銀二さんはさっそく、社長あらため親父さんの元へ、顔を出した
「失礼しまーす」
銀二さんはそう言って挨拶すると、後ろでぼっとしている僕をぎろっとにらんだ
「あ、失礼しまーす」
「おーう」
親父さんは、別室の居間で鉄に肩をもませながらテレビを見ていた
「おい銀二、見ろこのニュース、動物園で、ゴリラが逃げちまったんだとよ、みんな大騒ぎだ」
親父さんはそう言いながら、テーブルの木箱からタバコを取り出し口にくわえた。
すると小気味よいテンポで銀二さんが、持っていたライターで親父さんがくわえていたたばこに火をつけた
「親父さんそれじゃお先、休ませていただきます。」
銀二さんはそう言いながら、股を開き気味に正座すると、両手をついて礼儀正しく挨拶をかわした。
僕もその様子を見よう見まねで、同じように親父さんに挨拶をした
「お、、親父さん、、、僕もお先に休ませていただきます」
「おう、ごくろうさん、明日も早いから、しっかり寝ておけよ!」
親父さんはたばこをふかしながら、しぶーい目をして、僕に微笑んでくれた
「ところで、親父さん、こいつどこの部屋住まわせれば良いんすかね?」
銀二が尋ねると、
「お前らのとこじゃ狭いしな、、、、おう、あそこあいてんだろ、オイの所」
「え?!、お、オイさんの所ですか?」
「おう、この間ひとり居なくなったばかりだし、奴も喜ぶだろ」
「は、、、、はあ、、、、」
銀二さんは返事をしながら、青ざめた顔を僕に向けた
何となく僕は不安になったが、親父さんの言いつけに従って、そのオイさんという人の部屋に銀二さんと向かった。
「あ、あの銀二さん、さっきお話していたオイさんっていったい?」
「ん、、、?、ああ、俺達の先輩でな、今日は川崎の方で露店(バイ)が入ってたから、おそいんだ」
「、、、、、、はあ、、、」
僕は何となく嫌ーな予感がしたが、しぶしぶ銀二さんの後ろをついて、部屋にむかって歩き続けた
「おう、ここだ」
銀二さんはそう言うと、古びたふすまを、ばっと開け放った
むわーーーーーーー!
ふすまの中からは、まるで獣のような異臭が廊下に向って噴き出してきた
「ぶわーーーー!くせーーー」
銀二さんは、鼻をつまみながら、部屋の中に入ると、あわてて窓を開け、暗い部屋の電気をパッとつけた。
「うわーー!!」
僕たちはその部屋の凄まじさに、一瞬氷のように固まってしまった。
敷きっぱなしの蒲団には、所々に薄茶色のしみがこびりついており、あちら、こちらにゴミが散乱して、まさに足の踏み場もない散らかりようだった。
テーブルの上には読み散らされたエロ本数十冊と、巨乳のお姉さんがナース姿で股間に茄子をはさんでいるパッケージのDVD、銀二さんはそのDVDをつまみながら
「ナースでなーすだと、、信じらんねえの見てんな、このおっさんは、、、とりあえず入ってこいよ吉宗」
僕はしかたなく、そのすさまじい部屋に足を踏み入れた、
ぐにゃ~!!
「!?」
僕の足元で、嫌な感触がした、
まさか、またしてもウンチ?
僕はおそるおそる足元を見た、するとそれは一枚のコンニャクだった
「なんだー、コンニャクか、よかったー」
僕はそう言いながら、そのコンニャクを拾い上げた
しかし、よく見るとそのコンニャクには、横に大きな穴が開いていた
「なんだろう、この穴?」
僕はコンニャクを上に持ち上げて、穴の中を覗き込んだ
「あー、馬鹿やめろー!!」
銀二さんの大きな声が聞こえるのと同時に、コンニャクの中からどろっとした白い液体が流れ出し、覗いていた僕の顔に見事命中した
「ぐわぁー、な、何だこの液体はー?」
「あーあ、馬鹿ー、だからやめろって言ったのに」
僕は顔の液体を手でぬぐい、その匂いを嗅いでみた、するとそれは、僕にとっても嗅ぎ覚えのある、一瞬漂白剤のような香りの液体だった
「ま、まさか、これって、、、、、」
「そのまさかだよ、、、お前も時々出すだろ、、、同じの、、、」
「、、、、、、、、、、、、、」
僕はその一言でお地蔵さんのように固まってしまった
「お前って、信じられねえくらい面白すぎるなー、いきなり顔面シャワーかよ、くーくくくく」
銀二さんはそう言いながら、お腹をかかえて笑いころげていた
「ちょっとー、何でこんなものが落ちてるんですかー!!」
僕はそのコンニャクを片手に銀二さんに近づいて行った
「知るかよそんなのー、わー汚ねー、来るなバカー!」
銀二さんはそう言いながら、あわてて部屋の外に逃げて行ってしまった
「あー銀二さん!!」
僕は手にしていたコンニャクに気づき、あわててそれを投げ捨てると、一人半ベソをかきながら、ぶざまな顔面シャワー姿でたたずんでいた。
少しして銀二さんが布団をかかえてもどってきた、
「ほれ布団、それから便所と洗面所は廊下出て左、」
そう言い残すと、銀二さんは、笑いながら一目散に出て行ってしまった。
「あーーー銀二さーん!!」
それから僕は、洗面所でぶざまな顔を洗い流し、これから暮らす部屋を少しだけかたずけると、部屋の隅っこに、銀二さんからもらった布団を敷いて床についた。
僕はしばらく落ち着かず、あたりをきょろきょろしていたが、今日一日の疲れのせいか、いつの間にかぐっすりと眠りについていた。
どれくらいたったか、僕は廊下で聞こえる、猛獣のような声と巨大な足音に目をさました
「ぐうーーーーー、ぐうーーーーーー」
ドスン、ドスン、ドスン、ドスン
「!?、、、、、」
猛獣のような唸り声と足音は、だんだん僕の部屋の方へと近ずいてきた、、
「な、、何だー、こ、この鳴き声は、、、、」
僕は布団を頭からかぶり、恐怖で震えながら、ふっと親父さんが居間で話していたニュースを思い出した
(おい銀二、見ろこのニュース、動物園で、ゴリラが逃げちまったんだとよ、みんな大騒ぎだ)
「そ、そう言えば親父さん、さっきあんなことを、、、、それにここって、確か近くに大きな動物園があったよなー」
ドスン、ドスン、ドスン、ドス!!
猛獣のような足音が部屋の前で止まった
そしてその猛獣は、いきなり入口のふすまを、がばっと開け放つと、
「ぐうおおおおおおおおおおお」
と大声をあげながら部屋の中に入ってきた
「、、、、、あわ、あわ、あわ、、、」
僕は、震えながらも、そーっと布団の隙間から、外を覗き見た
「あっ!?」
その瞬間、あまりの恐怖に一瞬呼吸が出来なくなってしまった、
そう、僕の目の前には、ニュースで話していた、巨大なマウンテンゴリラが、さまじい形相で、僕を睨み据えていたのだ、、、、、
つづく
続き
第14話、ゴッツ追島へ
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コメント
こんにゃくの部分が変わってしまいましたね!^^;
あれはあれで面白かったから変えなくて良かったのに・・・
幻の文章がもったいないですね(笑)
投稿: 楽楽 | 2008年2月18日 (月) 22時11分
楽楽さんこんばんわー^^
そう言われて改めて読み返すと、やっぱりあれは面白いですね^^
吉宗君には可哀そうですが、楽楽さんのあたたかーい意見を参考に審議の結果、彼には顔面シャワーを体感してもらうことに決定いたしました
というわけで幻の名場面こっそり復活してますよー^^
投稿: 光一郎 | 2008年2月19日 (火) 01時16分