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2008年2月

2008年2月27日 (水)

第17話 吉宗くん愛の幽体離脱

根性をつけるため、、、、、

そんな理由から二メートルのスキンヘッド熊井さんと、恐怖の睨みあい、またの名を「ガンのくれあい」なるものを、させられる羽目になってしまった僕は魔界の住人から魔王と化した熊井さんの恐い顔を目の当たりにして、金縛り状態に陥ってしまったのだった

Kumaitaiketu

 

(ど、どうして僕が、こんな目にあわなければならないんだ、、、、)

僕は恐怖で引きつったすさまじい顔を熊井さんに向けながら、その場から逃げ出したい思いだった

しかし、心とは裏腹に、僕の身体はどんどん固まっていく、僕がそんな窮地に陥っているとも知らず、鉄をはじめギャラリーは喜んで僕と熊井さんの戦いに湧き上がっていた

 

「いいぞー若いのー!ぜったいに引くんじゃねーぞー!はははは」

「吉宗の兄貴ー、また鬼神のごとき力っすよー!」

 

(人事だと思って、みんな勝手なことを、、、それになんでこんな時はすらすら話せるんだ、あのバカ鉄は、、、)

  

僕は金縛り状態で立ったまま、鉄とギャラリーの人たちを恨めしく思っていた

  

「おい、小僧!引くなら今のうちだぞー、
俺をまじで怒らせんじゃねーぞ、コラ!」

熊井さんはそう言いながら、更に僕の顔に自分のスキンヘッドの顔を近づけてきた
そしてその顔は怒りのせいか、じわじわと燃えるように赤く変化し始めていた

Kumaitaiketukowai  

(お、、、、恐ろしすぎる~!!、、、、)

その場から逃げよう、そう思っても恐怖で身体が言うことを聞いてくれない、、、
切迫した極限状態に陥ってしまった僕の精神は、ついにその肉体から離れて遠くへ旅立とうとしていた。それはまさに恐怖による幽体離脱というものだった

  

そして僕の魂がその肉体から、半分くらい抜け出そうとしていた時、何処からか、僕の名前を呼ぶ、美しい声がこだましてきた

 

『吉宗くーん、吉宗くーん、吉宗くーん、くーん、くーん 

  

(誰?僕を呼ぶのは、、、、、)

僕の抜けかけた魂は、その声の主を探した

  

『ここよー、吉宗くーん、くーん、くーん

 

(あっ!、き、君は!!、、、、、)

そうそこには美しい天使の姿をした金髪のめぐみちゃんが、ニッコリ笑って微笑んでいたのだ

Tensimegu

  

『がんばってー、吉宗くーん、くーん、私と一緒にお仕事しましょー、しょー、しょー

天使のめぐみちゃんは、美しく響き渡る声で、僕に手を振っていた

  

(めぐみちゃーーーーーん  )

  

『さあ、戻って、逃げないで肉体に戻るのよー、よー、よー

  

(分かったよー、もどるよーーー)

僕は、めぐみちゃんの姿をした天子の、愛に包まれて幸せに満たされていた。

そして幸せ満タン状態で僕の魂は、再びその肉体に戻っていった

  

(え、、、今のは夢?僕は夢をみていたのか、、、、、?)

  

「あれー!?」

奇妙な幽体離脱から戻った僕は、そこで目の前に起こっている状況の、大きな変化に気が付いた、
それはなんと、あの恐ろしかった熊井さんの魔王のような顔が、見る見るうちに優しく透き通るような顔に変わっていったのだ

  

「え?な、なんでー?」

僕は、ふっと自分自身の変化にも気付き、いつの間にか動くようになっていた手で、そーっと自分の顔に触れてみた

 

「あ、あれ?あれれ?」

気が付くと僕は、恐怖に引きつった顔ではなく、愛に満たされた満面の笑顔の顔となって、熊井さんの顔をじっと見つめて立っていたのだった

Tensiyosimune

(なんだー?何が起きたんだー?)

 

その直後、僕にとっても、周りのギャラリーにとっても驚く出来事が起きた

  

「ううううう~、ううううううう~、、、、、ううううううううううう」

なんと目の前にいた二メートルのスキンヘッド、熊井さんが少年のように泣き出してしまったのだ

  

「えええ!?な、なんでーーー!?」

僕は驚きのあまりホンワカした笑顔のまま、目の前で泣いている熊井さんを見つめていた

そして熊井さんは泣きながら僕を抱きしめると、大声で訴え続けた

「負けたー負けたよー若いのー、お前さんのその暖けえ笑顔見せられたら、急に国のおふくろさんを思い出しちまったよー、だめだー喧嘩になんかならねーよー、、、ううううう」

熊井さんは涙と鼻水だらけの顔で泣きながら僕をその太い腕で抱きしめ続けた、そして僕はその鼻水を顔中に受けながら、ホンワカした笑顔のまま、ひたすら驚いていた。

  

「、、、、さ、、、さすがは兄貴だー!!熊井さんの心の奥底を瞬時に見際めて、涙で屈服させちまうなんて、、、やっぱり俺がほれ込んだ男だーー!」

感動のまなざしで立ち尽くしていた鉄が、大声でそうさけぶと、号泣しながらその場に崩れ落ちていった

「おおおおお!いいぞー若いのー!!」

「感動させてもらったぞー!」

鉄につられて周りにいたガラの悪いギャラリーももらい泣きをしながら、僕に拍手をおくってきた

  

熊井さんは、片手で僕を抱き上げると、まるで試合後のチャンピオンをたたえるように、もう一方の手で、僕の右手を天高く空に持ち上げた。

(か、勝ったのか?僕は、僕は本当にこの人に勝ったのか?)

僕はそんな感動にしたりながら、ふっとあることに気が付いた

(これって、もしや愛の力、、、、?昨日のおでん達との戦いの時と同じ、愛の力だったのか、、、?)

  

何時しか僕の目はキラキラ輝く自信に満ち溢れた目に変わっていた

  

境内に広がる大歓声の中で、親父さんの大きな声が僕の耳に聞こえてきた

「うん、いい目だ!さっきとは打って変わったいい目になったなー、若人、いや、吉宗よ!」

気が付くとそこには、嬉しそうに笑う親父さんの姿があった

  

「がーははははー!それにしても、熊の剛の拳に対して、柔の拳で闘うとは、柔よく剛を征すだなー!よしわかったー!お前のその根性を買って、めぐみちゃんはお前のところで手伝ってもらうぞー、吉宗ー!」

「えー!」

僕は熊井さんの腕に抱かれたまま、目を輝かせて親父さんを見た

「がーはははっはー愉快、愉快、、、」

親父さんは趣味の悪い黄金の扇子をパタパタさせながら、めぐみちゃんの肩をぽんぽんたたいて大笑いしていた。

「お、、親父さん!!」

僕は鼻水まみれの顔をしわくちゃにほころばせながら、目をキラキラ輝かせて親父さんを見つめた、そしてそのすぐ横に立っているめぐみちゃんの姿に目を移した、そこには、うれしそうにニッコリ僕に微笑んでくれている、彼女の姿があったのだ、、、、

 

「それじゃー、めぐちゃんは吉宗とべっこう飴たのむよー」

親父さんはめぐみちゃんにそう言うと、追島さんの方を見た

「追島、吉宗もここまで頑張ったんだ、まあ、そういうことにしてやれや、、、」

 

「は、、はい、、、、」

追島さんは、不機嫌そうに返事をした

  

「それじゃ、後は頼んだぞ、、」

親父さんはみんなに、そう言い残すと、いつの間にか隣に現れれていた高倉さんと共に神社を後にして去っていった

  

親父さんが去ったあと僕は、エプロン姿のめぐみちゃんに目を写し、頭をかきながら照れくさそうに微笑んだ

そんな僕にあわせるようにめぐみちゃんも笑顔で微笑みながら、可愛らしくちょこんとお辞儀をしながら僕に声をかけてくれた

 

「今日一日よろしくお願いします、、、吉宗くん、、、」

「こ、こちらこそ、、、よろしくね、、、め、め、めぐみちゃん、、」

僕はそう挨拶した後、真っ赤な顔でたたずんでいた

びしゃー!!

「痛ああああああ!」

またしても、お尻の激痛で僕は振り返った、するとそこには例のごとく、追島さんがむっとした顔で高尾山の孫の手を片手に立っていた

「何時まで、でれでれしたアホ面してやがんだ、
さっさと仕事の準備しやがれ!」
 

「ハイ!!」

僕は元気良く返事をすると、腰にぶら下げていた鉢巻をくるくるひねり上げ、さっと頭に巻きつけた

  

「さあ、めぐみちゃん、しっかり頼むよー!!」

そういいながら僕は元気いっぱいに露店(さんずん)の組みなおしを始めた

めぐみちゃんもつられて元気良く微笑みながら、雑巾をしぼり拭き掃除に取り掛かった

追島さんはそんな僕の変化に一瞬戸惑っていたが、

「まあ、いいや、、、おい、タンカ売、、しっかりやらなかったら、ただじゃおかねーからな!」

そう言い残すと、ぷいっと振り向いて去ろうとした

 

「はい!追島さん、しっかりやりますから、任せといてください!!」

 

「!?」

僕の一言で追島さんは驚いて振り返ったが、

「しっかりやるのは、当たり前だバカ!」

そう捨て台詞をはきながら立ち去って言った

 

僕とめぐみちゃんはそんな追島さんの様子がおかしく、二人で目と目を合わせて微笑んだ

「めぐみちゃん、がんばろうね!」

「はい!」

僕は幸せだった、苦労の末に憧れのめぐみちゃんとこうして幸せなひと時を過ごせる喜びをかみ締めていた

  

 

そんな僕達の幸せな姿を、遠巻きに銀二さんと鉄が眺めていた、

「銀二兄い、吉宗の兄貴幸せそうですねー」

「、、、、、、、、、、」

鉄の嬉しそうな一言を聞いて、銀二さんは一瞬表情を曇らせた

  

「おい鉄、やっぱりあいつ、、、吉宗のやつ、めぐみちゃんに気があるのか?」

「、、、へへ、間違いなくありっすよー、自分知ってるんですよー」

  

鉄の嬉しそうな不気味な笑顔を見て、銀二さんの表情は更に曇りを見せた

  

「鉄、、、吉宗のやつ、めぐみちゃんの秘密しってんだろうな?」

「え、、、?、、、、さ、、、さあ、、、、」

  

「、、、お前それじゃ、、、、や、、、やばいぞ、あいつ、、、、」

銀二さんは急に青ざめた顔をこわばらせながら、幸せの絶頂にいる僕の姿を見つめていたのだった

続き
第18話 めぐみちゃんの涙へ

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2008年2月25日 (月)

第16話 吉宗くん恐怖との戦い

テキヤ稼業へ就職して二日目、僕の目の前には幸運のハプニングが舞い降りてきていた

そう、それは憧れのめぐみちゃんと一緒に、仕事が出来るのだ

めぐみちゃんは可愛いエプロンを着けて、親父さんの後ろでにっこり笑顔で、僕にピースをしていた 

(春だー、苦労の後に春が来たんだー) 

僕は驚きと喜びのあまり、顔を真っ赤に染めながら、露店(さんずん)の中で、またしてもお公家様のような笑顔でにんまりしていた

しかし、そんな喜びを打ち消すように、ゴリラ男追島さんの一言が僕に飛んできた。

 

「親父さん、駄目駄目!こいつにバイトの手伝いなんて必要ないっすよ、ろくにタンカ売も出来ねーこいつの所より、銀二のとこ手伝わせた方が良いでしょ」

 

(えーーー!!)

その言葉は力無い男にめぐみちゃんは預けないというまさに戦力外通告だった、僕のお公家さまのような笑顔は一瞬にして、絶望の顔にかわってしまった

 

「それじゃ、今日のべっこうの売り上げは捨てるしかねーのか?」

親父さんは困った顔で僕を見た、そしてめぐみちゃんの方を振り返り声をかけた

「タンカ売もろくに出来ないんじゃ、しかたないな、おーい、めぐみちゃん、、」

「親父さん!!」

僕は親父さんの言葉の途中で、あわてて声を張り上げた

「僕、やります!しっかりタンカ売やります!!」

自分でも驚くほどの大きな声で、僕は親父さんに訴えていた

「何だ?出来るのか吉宗」

僕は鼻の穴を大きく広げ、力いっぱいうなずいた。

 

「よーし、それじゃ、もっぺんタンカ売やってみろー!」 

僕の大見得を聞いた追島さんの一言で、僕はガラの悪い観客の前で、再びタンカ売にチャレンジすることになった。

僕は鼻血をぬぐうと、手にしていた雑誌をくるくるっと丸め、チラッとめぐみちゃんの方を見つめた、

僕の視線に気が付いためぐみちゃんは、親父さんの後ろでニッコリ微笑むと、声をださず口パクで僕に声をかけてくれた

 

《 が ・ ん ・ ば ・ っ ・ て、、、、》

Meguganbatte

 

(が、、頑張ってって、、め、、、めぐみちゃん、、、 )

 

僕は嬉しさで目をキラキラさせながら、追島さんの方を振り返ると、思いっきり手にしていた雑誌を机めがけて振り下ろした

パン!!

雑誌の大きな音が、あたりに鳴り響き、同時に僕は大きな口をあけて、声を張り上げた

 

「しゃーーー!らっしゃーーーぁあいーー!!」

 

「ぐぅわー!!」

気が付くとまわりのギャラリーはいっせいに耳をふさぎ、すごい形相でかたまっていた

(、、、、えっ!?、あ、、、し、しまったー!、、)

僕はその光景を目の当たりにして一瞬にして青ざめてしまった、そう、気負いすぎた僕は頭のてっぺんから出るような、ひっくり返った黄色い甲高い大声で、思わず叫んでしまったのだった

「な、、何だその声はー!」

追島さんの怒りの孫の手が僕のお尻に大ヒットした

「痛ぁぁぁぁぁぁーー!」

 

「もう一度ー、もう一度ー、お願いしますやらせて下さい!」

僕はお尻を押さえてピョンピョン飛び跳ねながら、追島さんに向かって必死に訴えていた

「バカヤロウ!もっぺんも糞もあるかー!」

「お願いです、もう一度、もう一度チャンスをーーーー!!」

僕は追島さんにへばり付きながら必死に訴え続けた

  

「そこまで言ってんだ、追島もう一度チャンスをやったらどうだ」

必死になって追島さんに訴えている僕の姿を見た親父さんが、笑いながら声をかけてくれた

「おやじさん無駄っすよ、この新入り根性なさすぎですからね」

追島さんは僕の頭を鷲づかみにして親父さんに話した

  

「根性かー、なるほど、それじゃまずは、根性をつける事から始めたらどうだ、追島」

「根性すか、、、、、」

  

追島さんと親父さんは、二人で腕組みをしながら僕を眺めて考え込んでいた

  

「そうだ!親父さんいい考えがありますよ」

追島さんはうれしそうに拳で手のひらをパンと叩くと、ギャラリーの方を向いて真剣に何か吟味をはじめた、そして2メートル近い巨体に、つるつるのスキンヘッド、おまけの顔中刀傷だらけの世にも恐ろしい形相の人を見つけて声をかけた

「おう、熊井、すまねえがちっとばかし手伝ってくれねーか、」

「なんすか、追島の兄い?」

そいいながら熊井という恐ろしい顔の男が僕の前にやってきた

  

追島さんは間近に見ると一段と恐ろしい熊井という人の顔を指差しながら、僕に声をかけた

 

「新入り、お前今からこいつに喧嘩売ってみろ!」

 

「え、、、?」

「え?じゃねー、こいつに喧嘩売れって言ってんだ」

Kuai  

「おーおー、そうかそうか追島、そらー、いい考えだなー、根性つけるにはそれが一番だながははは」

親父さんは嬉しそうに笑いながら、追島さんにむかってうなずいていた

 

(け、、、喧嘩って、何で僕がそんなこと、、、)

僕は恐る恐る熊井という人を覗き見た、するとその二メートルのスキンヘッドは僕をまるで奇妙な昆虫を見るような目でジーとその恐い顔で見つめていたのだ、

「、、、うわ!?、、、、」

その瞬間、僕はまさに蛇に睨まれたカエル状態になってしまった、
そしてその場で身動き一つ出来ず、恐怖のあまりすさまじい顔で、そのスキンヘッドを見つめたまま、じっと固まってしまったのだった

 

その光景を離れたところで、とんでもない男が見つめていた、僕が恐怖で身動きできずにいるとも知らず、大きな勘違いをしてその男は大声で叫んできた

「うおー、さすがは吉宗の兄貴だー! 熊井さんの恐い顔にもビクともしないで、いきなりガンのくれあいを始めちまうとは、有無を言わさずの戦闘開始っすね!」

 

(うわー、バカ鉄!何も知らず余計なことを、、、)

 

僕は熊井さんを見つめたままの状態で鉄の無神経な言葉に、ゾッとしていた、

「おう、上等じゃねーか兄ちゃん!鬼瓦興業の新人だろうと、そう来るなら容赦しねえぞ!」

こともあろうに鉄の勘違いの一言のおかげで、目の前にいる熊井さんの恐い顔はさらに魔界の住民のごとき恐ろしさに変貌をとげてしまったのだ

「ひえーーーー!!」

僕はあまりの恐ろしさから、全身硬直状態に陥り、下から二メートルの巨体をさらにひきつったすごい顔で見つめたまま、身動きできなくなってしまった

 

「おおー良いメンチだー、若いのー! 熊を相手に一歩もゆずらねーで、それだけのメンチが切れるとは、見上げた根性だなー」

「そうでしょう、俺が兄貴と認めた男っすから」

「ほう、鉄の兄貴分か、、、、」

 

僕の気持ちも知らず、鉄も周りの人たちも勝手に関心して喜んでいた、そんな中、熊井さんの顔は見る見るうちに、魔界の住民からさらにグレードアップして、魔王そのものと変化し見動き出来ない僕の顔にぐっと近づいてきた。

「、、ひ、、ひ、、ひえ~!!」

 

「何をひるんでんだーコラー新入り!トラだトラお前はトラになるんだー!」

「負けるなー若人よー、がははははっはは!」

追島さんの怒鳴り声と、人の気も知らないで大はしゃぎしている親父さんの笑い声が僕の耳にかすかに響いていた

根性をつけるため、追島さんのアイデアと、鉄の勘違いから始まってしまった熊井さんという二メートルのスキンヘッドとの戦闘、鬼瓦興業入社二日目僕は、めぐみちゃんとの幸せな仕事をかけて、更なる恐怖と危機にさいなまれていたのだった。

つづく

続き
第17話吉宗くん愛の幽体離脱へ

イラストは後日更新します^^

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2008年2月21日 (木)

第15話 タンカ売(バイ)

関東でも名のあるテキヤ一家、侠客鬼瓦興業へ誤って入社してしまった僕は、今までのごく平凡な暮らしからは創造できないほどのめまぐるしい一日を経験、

そしてそれから一夜明けた朝、僕は銀二さん、鉄らと共に再び初めてテキヤの仕事を経験した神社で眠い目をこすりながら、仕事の準備に取り掛かっていた。

「ふわぁぁぁ~」

僕は銀二さんに言われる通り、露店、こちらの業界用語では三寸(さんずん)といものを組み直しながら、大きなあくびをした

「こらー、新入りー、朝から何てあくびしてやがんだー」

ぴしゃっー!!

大声と同時に僕のお尻に激痛が走った

「痛ぁー!!」

僕は悲鳴上げながら後ろを振り替えった、するとそこにはゴリラ男じゃなかった、追島さんが片手に高尾山と刻印された大きな孫の手を持って僕を睨んでいた

「新入りの分際で、ぶったるんでる証拠だ、バカヤロウ」

「す、すいません」

僕はそういいながら、せっせと三寸の天井にべっこう飴と書かれた、朱色ののれんを結び始めた

ぴしゃっー!!

「いたーーー!!」

またしても追島さんの孫の手が飛んできた

「バカヤロウ!そこのところが、たるんでるだろうが!心がたるんるから、ビシッとできねーんだ!!」

追島さんはのれんのちょっとした弛みを、指差して僕に当り散らしてきた

「すいません!すいません!」

 

そこへつり銭の入った巾着袋をぶら下げた銀二さんが戻ってきた、

「追島の兄い、向こうで高倉の頭が呼んでますよー」

「頭が?」

追島さんはそういうと、神社の入り口に向かって歩きだし、思い出したように僕たちに振り返ると、ぐっと恐い目をした

「こらー銀二ー!新入り甘やかすんじゃねーぞ!びっと仕込めよーびっと!」

「は、ハイ!」

銀二さんは追島さんにそう返事すると、恐い目で僕を睨みすえ、

「ほらー吉宗ー、そこちゃんと拭いて置けって言っただろうがー!」

急に怒鳴りながら僕のお尻をけってきた

「ひー!!」

その様子をじーっと見ていた追島さんは、ひとり首をうんうんとうなずくと、のっしのっしとその巨体を揺らせて歩いて行った。

銀二さんは横目で、追島さんがいなくなったのを確認すると、笑顔で話しかけてくれた

「お前もしくじったなー、こともあろうに追島の兄いを、ゴリラなんて言っちまうから、」

僕はお尻をおさえながら、苦笑いを銀二さんに見せた

「追島の兄いは、へび見てえに執念深いからよ、しばらく覚悟が必要かもなー、吉宗」

「えーーー!」

僕はその言葉にぞっと青ざめた

「まあ、身から出たカビ、だな、、」

そういいながら銀二さんは、タバコに火をつけた、僕はしばらく考え、小首をかしげ気さくに笑顔で銀二さんに切り替えした

「それを言うなら、実から出たサビ、じゃないですか」

「え?そうだっけか?ははは」

銀二さんは、タバコをふかしながら笑っていたが、突然恐い顔で僕を睨むと、

「てめえ、新入りのくせに、こまけえことで揚げ足とってんじゃねー!!」

突然僕に向かって怒鳴ってきた

「は、、はいすいません!!」

僕は銀二さんの急変振りに驚くと同時に、はっと背中に何か恐ろしい獣の殺気を感じ、恐る恐る振り返った

するとそこには巨大なマウンテンゴリラじゃなっかった、追島さんが恐い顔で立っていた

「追島の兄い、心配無いっすよ、ちゃんとビシっとやってますから!」

銀二さんはそう言って苦笑いをした。

追島さんはそんな銀人さんの言葉など聞きもせず、じーっと僕の顔を恐い顔で眺めていた

「え、、あ、、あの僕の顔に何か、、、」

僕は頭をポリポリ掻き、冷や汗をかきながら作り笑いを追島さんに向けた

「新入り、お前そこでちょっと、タンカ売やってみろ!」

追島さんは真剣な顔で、僕に言ってきた

 

「たんかばい?」

 

僕は言葉の意味がわからず、たずね返すと追島さんは眉間にしわを寄せながら、じれったそうに銀二さんを見た、銀二さんは慌てて僕に声をかけた

「吉宗、たんか売ってのは、まあ、口で言ってもなんだ、見てろ」

そう言うと銀二さんは近くにあった雑誌を丸めて、台の上をバシッと、ひと叩きして大声を張り上げだした

 

「はーい!、よってらっしゃい見てらっしゃい!!
ご存知べっこう飴の台競演だー!こいつをさささーっと並べて、
おいしい飴をとろーり、さあさあ、後は見てのお楽しみだー、

らっしゃい、らしゃーい」

銀二さんは小気味いいテンポで、軽快に飴の型枠を並べながら声を張り上げていた、そして感心している僕を見ると

「そこの兄ちゃん、どうだい一つ彼女の御見上げだー、安くしとくよー、」

僕はすっかりその銀二さんのタンカ売なるものに見とれてしまった、すると僕の周りで仕事の準備をしていたガラの悪そうな人たちも、気が付くと周りに集まっていた

「銀ちゃん相変わらず上手いもんだねー」

年配で角刈りのおじさんに声をかけられて銀二さんは照れくさそうに、笑っていたが僕のほうを振り返ると、

「言いか吉宗ー、こんなもんは真似事で本物のタンカ売とは言えやしねーが、まあ、こんな感じだ、ほれお前もやってみろ」

そういって僕に手にしていた丸めた雑誌を手渡した

 

「えー!僕が今のを?!」

 

僕は顔を真っ赤にしながら、銀二さんから受け取った雑誌を横に振った

「む、無理です、無理です、そんなこと僕には、、、」

 

「無理じゃねえ、やーるーんーだー!」

追島さんの大きな顔がすさまじい形相で僕に近づいてた

「は、、、はい、や、やります、」

 

僕はガチガチに固まりながら、三寸の中に入ると、鼻を大きく開いて何度も深呼吸をした

「おう、がんばれよー兄ちゃん!」

「いよっ!色男ー!」

気がつくと僕の周りには、恐い顔のおじさんやお兄さん達が、ギャラリー化して僕に鋭い視線を向けていた

ぞーーー!!

僕は恐怖と緊張で、更にガチガチに固まってしまい、一人、口をかくかく動かして言葉にならない言葉を発していた

「おい!兄ちゃん何やってんだー、はやくやれー!!」

「金かえせーコラー!!」

ガラの悪いおじさんたちは、僕をひやかしはじめた

 

「新入りー、黙ってねーで、早くやれー!!」

 

びしーっ!!

いつの間にか後ろにいた、追島さんの高尾山の孫の手が僕のお尻にヒットした

「あいたー!!」

僕は悲鳴を上げて飛び上がった

 

しかたなく僕は丸めていた雑誌を天高くまいあげると、勢い良く下の台をめがけて振り下ろした

スカッ!

どてーーー!!

ガコー!

僕は振り下ろした雑誌を見事に空振り、そのまま三寸の中でずっこけ、顔面を見事、台にヒット!そのままぶざまに鼻血を流しながら、崩れ落ちてしまった

「わはははっはー、これはお約束ってやつだな、追さんとこの新人はなかなか笑わせてくれるなー」

「おう、色男いいぞ、いいぞー、面白い!面白いぞー!」

僕はいつの間にか、ガラの悪いギャラリーに、爆笑をふりまいしまっていた

 

そんな様子を、あきれた顔で見ていた銀二さんが、追島さんに声をかけた

「追島兄い、何で今時タンカ売なんぞさせるんですか?」

 

「お前抜きで、今日一日しっかり売(バイ)が出来るようにしろって、親父さんからの言いつけがあってな、」

「俺抜きっすか?」

「おう、高倉の頭、急に親父と義理に出向くことになってな、俺が変わってデンキ(綿菓子)まかされたんだ、お前は俺に代わって、たこ焼きに回れ、」

「はい、え?それじゃこいつ今日、べっこう ひとりっすか?」

「いや、親父さんがバイト連れてくるって電話で言ってたけど、この馬鹿が、ちまちまやって売り上げ縮める訳にいかねえだろ!」

「あー、なるほど、、、」

僕はそんな二人の会話を、鼻血をたらしながら耳にして、また不安の心がよぎっていた

(僕がお店をきりまわす、、、?、それにバイトっていったいぜんたい、、、、)

僕の脳裏に鉄の笑顔がよぎった

(この仕事のバイトって言うぐらいだから、やっぱり、、あんな感じかな、、ど、」どんな人が現れるんだ~、、、)

僕は昨日からめまぐるしく現れる、鬼瓦興業に関係する人たちを創造して、恐怖におののいていた。

そこへ、とんがらし、ネギにんにくパワー全快の大きな声が響いてきた

 

「おーう、ごくろうさーん!」

 

それは紛れも無い、親父さんの声だった、親父さんは黒塗りのスーツ姿で、金色の扇子をパタパタさせながら入ってくると、あたりにいたガラの悪い人たちから、いっせいにまるで神様のようにあがめられながら、挨拶を受けていた

「おう、追島、どうだ吉宗は、しっかり一日出来そうか?」

親父さんは僕を指差しながら、追島さんの顔を見た

「だめですねー親父さん、話にならないですよー、こいつ、、、」

追島さんは肩をふっと持ち上げながら首を横に振った、親父さんはその言葉を聞いて眉にしわを寄せながら僕に向かって話しかけた

 

「なんだーお前、ちんぽついてんだろが、しっかりしろよー!」

僕は親父さんにむかって泣きそうな顔で苦笑いした

「なんて顔してやがるんだ!それじゃバイトさんに馬鹿にされちまうぞ!」

「さーて、どうしたものかなーバイトちゃん」

大きな声でそう言いながら親父さんは後ろを振り返った、僕は三寸の影から恐る恐る、今日僕と一緒に商売をするというバイトの人をのぞき見た

「、、、、、!?、、、、」

僕はその瞬間、心臓がバクバク、呼吸が出来なくなってしまった。

 

バイトの子は親父さんの後ろから、エプロンすがたに、可愛い鉢巻を頭に巻いて、ちょこんと顔を出すと、僕に向かって可愛くピースをしてきた

そう、それは他でもない、僕の憧れの人、

めぐみちゃんだったのだった、、、、

Megubaito

つづく

続き
第16話吉宗くん恐怖との戦いへ

イラストカットは後日更新します^^

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2008年2月18日 (月)

第14話 ゴッツ追島

鬼瓦興業の寮生活、初日にして僕は、突然現れたマウンテンゴリラによって、生命の危機にさらされていた

僕はあまりの恐怖に布団の中でじっと息をころし、カタカタと震えていた

そんな僕のことを、マウンテンゴリラは不振そうにながめていたが、やがてその巨大な手で、僕の布団をむんずとつかむと、一気にガバットはぎとった

「ひえー助けてーーーーーー!」

僕は大声で悲鳴をあげながら、部屋のすみへまるで鼠のように逃げ込んだ。

とそこへ、僕の大声を聞きつけた銀二さんと鉄が眠そうな目をこすりながら入ってきた

「何だ吉宗でかい声出して?うるせーな」

銀二さんと鉄は目の前にゴリラがいるにもかかわらず、平然と僕に話しかけていた、

僕は恐怖で手をばたばたさせながら、

「なんでそんな平然としてるんですか!ゴリラ、ゴリラ、、、」

僕は震えながら、目の前のマウンテンゴリラを指さした

「ゴリラって、ば、馬鹿おまえ、、、、」

銀二さんはすごい顔をしてゴリラの後ろで手を横に大きく振っていた

「え?だってゴリラが、、、」

僕は一瞬かたまりながら目の前のゴリラを指さした、

するとそのゴリラはぐいっと僕の前にその恐ろしい顔を近ずけたかと思うと、突然人間の言葉を発してきた

「誰がゴリラだこの野郎!」

「えー!ゴリラがしゃべったー!!」

僕はあまりの驚きに言葉をうしないその場に、腰を抜かしてしまった

「バカ!お前その人はゴリラじゃなくて人間だー!」

「え!?」

「だから、その人が追島の兄貴、オイさんなんだー!」

銀二さんの一言に僕はその場で身動きができなくなり、改めてじーっと目の前の男を見つめた

そしてよく見るとその男はランニングシャツにウェットズボン、体毛もうすく、顔は確かにゴリラだが、頭はビシッとそろえた今の僕と同じパンチパーマ姿をしていた

「この野郎ー、人が仕事から帰ってくればいきなりゴリラ、ゴリラって、気に障ることを何べんもぬかしやがって!!」

そのゴリラ男あらため、追島さんはそう叫ぶと、いきなり僕のことをむんずと捕まえ、そのすさまじいモモのような腕で締め付けてきた

「うげげーーーー」

Oijima

「あ、、、追島の兄貴、すんませんそいつ新人なもんで、勘弁してやってください」

「新人?」

「馬鹿野郎、新人も糞もあるか、」

追島さんの太い腕はさらにすさまじいパワーで僕の首をしめつけてきた

「ぐえ、、くるちー、、、、、」

あまりの苦しさに、僕の意識は遠~くへ、飛んで行きそうになっていた、そんな中、聞き覚えのある大声がかすかに僕の耳に響いてきた

「おう、追島帰ってたのか、ご苦労だったな」

とその瞬間、僕を締め付けていた太い腕の力がパッと抜けた、と同時に僕の遠くへ行きかけていた意識も徐々に回復し、気が付くと僕と追島さんの目の前には、親父さんの姿があった。

「おやっさん、遅くなりましたが、追島ただいま戻りやした。」

追島さんは、膝に手をのせて親父さんに挨拶をした

「おう、ごくろうさん」

そういうと、親父さんは僕を指さし追島さんに話しかけた

「今日からうちに入った新人の吉宗だ、追島おまえもしっかり面倒みてやれ」

「はい!」

追島さんはそう返事をすると、今度は僕の方を振り返った、そしていきなり僕の頭をむんずと右手で鷲づかみすると、ひょいっと僕の身体を持ち上げ、荒い鼻息を吹きかけながら僕の顔をじーっと見つめた

「ふん!なるほど、こいつが例の新入りって訳ですね、、、、」

追島さんは、そういいながらうれしそうな笑顔で僕に微笑んできた。そして片手でつかんだ僕の頭をさらに天高く持ち上げると

「俺は鬼瓦興業のゴッツ追島だ、、、お前なかなか色男だなー」

にっこり笑ってそう話しかけてきた

「い、、いえそんなことは、、、、」

僕は、苦笑いをしながらそう答えた、すると追島さんは今度は突然打って変わったように恐い形相にかわり僕に向かって一言どすの利いた声でつぶやいた

「俺はなー、昔からお前みたいな、色男が大嫌いなんだ、、、、おまけに、何べんもゴリラ、ゴリラって人の気に障ること抜かしやがって、これからたっぷり可愛がってやるから、よろしくなー、新入り」

「、、、、よ、、よろしくお願いいたします、、、」

僕は恐怖におびえながらも、必死で返事返した、

 

そんな様子を今まで黙って見ていた鉄が、ボソッと声をもらした

「さ、、、、さすがは吉宗の兄貴だ、、、、追島の兄貴にいきなり会ってゴリラ呼ばわりできるなんて、、、、」 

鉄はそういいながら、キラキラ輝く感動の目を僕へ向けていた

「それもそうだなー、この追島を初対面からゴリラ呼ばわりするとは、お前なかなかたいしたもんだぞー吉宗、がははははっは!」

親父さんはうれいそうにそう言いながら、これまた大きな声で笑い始めた。

「い、いや違います、、そんなつもりじゃ、、、」

僕は恐る恐る横を見た、

するとそこには更に怒りの表情をました、追島さんが僕のことを睨みすえていた

「ひえぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

僕はこれから始まる寮生活に大きな恐怖と不安を感じながら、追島の右手の下、いつまでも捕らえられた野うさぎのように、ぶらん、ぶらんと、つるされていたのだった。

つづく

続き第15話
タンカ売(バイ)へ

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第13話 恐怖の影

「私、応援してます、、、、吉宗くんのこと、、、」

憧れのめぐみちゃんの、その言葉は、単純な僕にとって最高の活力剤だった。そして僕は誰もいない鬼瓦興業の玄関で小さく拳を握りしめて、つぶやいた

「がんばろう!うん、がんばるよー、、、、よし、がんばるぞーー、」

 

「何をがんばるの?」

「えー?!あーーーー銀二さん!」

気がつくと後ろには、僕のボストンバックをもった銀二さんの姿があった

「部屋案内してやるから、ほらこれ、、、」

銀二さんはボストンバックを僕に差し出した

「あ、すいません」

僕は銀二さんからボストンバックを受け取ると、いそいそと銀二さんの後ろをついて、寮と思われる場所へ向かう長い廊下を歩きだした

「まず、親父さんの挨拶が先だからな、親父さんは高倉の若頭よりも挨拶はうるさいから、しっかりやれよ」

「は、はい!」

「それから、ここじゃみんな、社長じゃなくて、親父さんって呼んでっから、今からお前もそう呼べよ、」

「おやっさん、、、ですか?」

「そう、それから奥さんは、姐さん」

「あねさん、、、、は、はい」

僕と銀二さんはさっそく、社長あらため親父さんの元へ、顔を出した

 

「失礼しまーす」

銀二さんはそう言って挨拶すると、後ろでぼっとしている僕をぎろっとにらんだ

「あ、失礼しまーす」

「おーう」

親父さんは、別室の居間で鉄に肩をもませながらテレビを見ていた

「おい銀二、見ろこのニュース、動物園で、ゴリラが逃げちまったんだとよ、みんな大騒ぎだ」

親父さんはそう言いながら、テーブルの木箱からタバコを取り出し口にくわえた。

すると小気味よいテンポで銀二さんが、持っていたライターで親父さんがくわえていたたばこに火をつけた

「親父さんそれじゃお先、休ませていただきます。」

銀二さんはそう言いながら、股を開き気味に正座すると、両手をついて礼儀正しく挨拶をかわした。

僕もその様子を見よう見まねで、同じように親父さんに挨拶をした

「お、、親父さん、、、僕もお先に休ませていただきます」

「おう、ごくろうさん、明日も早いから、しっかり寝ておけよ!」

親父さんはたばこをふかしながら、しぶーい目をして、僕に微笑んでくれた

「ところで、親父さん、こいつどこの部屋住まわせれば良いんすかね?」

銀二が尋ねると、

「お前らのとこじゃ狭いしな、、、、おう、あそこあいてんだろ、オイの所」

「え?!、お、オイさんの所ですか?」

「おう、この間ひとり居なくなったばかりだし、奴も喜ぶだろ」

「は、、、、はあ、、、、」

銀二さんは返事をしながら、青ざめた顔を僕に向けた

何となく僕は不安になったが、親父さんの言いつけに従って、そのオイさんという人の部屋に銀二さんと向かった。

「あ、あの銀二さん、さっきお話していたオイさんっていったい?」

「ん、、、?、ああ、俺達の先輩でな、今日は川崎の方で露店(バイ)が入ってたから、おそいんだ」

「、、、、、、はあ、、、」

僕は何となく嫌ーな予感がしたが、しぶしぶ銀二さんの後ろをついて、部屋にむかって歩き続けた

「おう、ここだ」

銀二さんはそう言うと、古びたふすまを、ばっと開け放った

むわーーーーーーー!

ふすまの中からは、まるで獣のような異臭が廊下に向って噴き出してきた

「ぶわーーーー!くせーーー」

銀二さんは、鼻をつまみながら、部屋の中に入ると、あわてて窓を開け、暗い部屋の電気をパッとつけた。

「うわーー!!」

僕たちはその部屋の凄まじさに、一瞬氷のように固まってしまった。

敷きっぱなしの蒲団には、所々に薄茶色のしみがこびりついており、あちら、こちらにゴミが散乱して、まさに足の踏み場もない散らかりようだった。

テーブルの上には読み散らされたエロ本数十冊と、巨乳のお姉さんがナース姿で股間に茄子をはさんでいるパッケージのDVD、銀二さんはそのDVDをつまみながら

「ナースでなーすだと、、信じらんねえの見てんな、このおっさんは、、、とりあえず入ってこいよ吉宗」

僕はしかたなく、そのすさまじい部屋に足を踏み入れた、

 

ぐにゃ~!!

 

「!?」

僕の足元で、嫌な感触がした、

まさか、またしてもウンチ?

僕はおそるおそる足元を見た、するとそれは一枚のコンニャクだった

「なんだー、コンニャクか、よかったー」

僕はそう言いながら、そのコンニャクを拾い上げた

しかし、よく見るとそのコンニャクには、横に大きな穴が開いていた

「なんだろう、この穴?」

僕はコンニャクを上に持ち上げて、穴の中を覗き込んだ

Konnyak

「あー、馬鹿やめろー!!」

銀二さんの大きな声が聞こえるのと同時に、コンニャクの中からどろっとした白い液体が流れ出し、覗いていた僕の顔に見事命中した

「ぐわぁー、な、何だこの液体はー?」

「あーあ、馬鹿ー、だからやめろって言ったのに」

僕は顔の液体を手でぬぐい、その匂いを嗅いでみた、するとそれは、僕にとっても嗅ぎ覚えのある、一瞬漂白剤のような香りの液体だった

「ま、まさか、これって、、、、、」

「そのまさかだよ、、、お前も時々出すだろ、、、同じの、、、」

 

「、、、、、、、、、、、、、」

 

僕はその一言でお地蔵さんのように固まってしまった

「お前って、信じられねえくらい面白すぎるなー、いきなり顔面シャワーかよ、くーくくくく」

銀二さんはそう言いながら、お腹をかかえて笑いころげていた

「ちょっとー、何でこんなものが落ちてるんですかー!!」

僕はそのコンニャクを片手に銀二さんに近づいて行った

「知るかよそんなのー、わー汚ねー、来るなバカー!」

銀二さんはそう言いながら、あわてて部屋の外に逃げて行ってしまった

「あー銀二さん!!」

 

僕は手にしていたコンニャクに気づき、あわててそれを投げ捨てると、一人半ベソをかきながら、ぶざまな顔面シャワー姿でたたずんでいた。

  

少しして銀二さんが布団をかかえてもどってきた、

「ほれ布団、それから便所と洗面所は廊下出て左、」

そう言い残すと、銀二さんは、笑いながら一目散に出て行ってしまった。

「あーーー銀二さーん!!」

それから僕は、洗面所でぶざまな顔を洗い流し、これから暮らす部屋を少しだけかたずけると、部屋の隅っこに、銀二さんからもらった布団を敷いて床についた。

僕はしばらく落ち着かず、あたりをきょろきょろしていたが、今日一日の疲れのせいか、いつの間にかぐっすりと眠りについていた。

 

 

どれくらいたったか、僕は廊下で聞こえる、猛獣のような声と巨大な足音に目をさました

「ぐうーーーーー、ぐうーーーーーー」

ドスン、ドスン、ドスン、ドスン

「!?、、、、、」

猛獣のような唸り声と足音は、だんだん僕の部屋の方へと近ずいてきた、、

「な、、何だー、こ、この鳴き声は、、、、」

僕は布団を頭からかぶり、恐怖で震えながら、ふっと親父さんが居間で話していたニュースを思い出した 

(おい銀二、見ろこのニュース、動物園で、ゴリラが逃げちまったんだとよ、みんな大騒ぎだ) 

「そ、そう言えば親父さん、さっきあんなことを、、、、それにここって、確か近くに大きな動物園があったよなー」

ドスン、ドスン、ドスン、ドス!!

猛獣のような足音が部屋の前で止まった

そしてその猛獣は、いきなり入口のふすまを、がばっと開け放つと、

「ぐうおおおおおおおおおおお」

と大声をあげながら部屋の中に入ってきた

「、、、、、あわ、あわ、あわ、、、」

僕は、震えながらも、そーっと布団の隙間から、外を覗き見た

「あっ!?」

その瞬間、あまりの恐怖に一瞬呼吸が出来なくなってしまった、

そう、僕の目の前には、ニュースで話していた、巨大なマウンテンゴリラが、さまじい形相で、僕を睨み据えていたのだ、、、、、

Gottuoijima

つづく

続き
第14話、ゴッツ追島

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2008年2月13日 (水)

吉宗くんイラスト集 その2

またまたイラストの数々しょうかいしまーす

Megumichan22_2
再開シーンで吉宗くんを心配しているめぐみちゃんです
久々にGペンで書きましたー^^

Magumifaight_3
12話応援してるね!と吉宗くんを励ますめぐみちゃん
こんな子に頑張ってって言われたいなー、、、ボソ

Odentonotatakai
愛のパワーを見せてしまった吉宗くん
吉宗くん愛のパワーより

Nigaaaaa
吉宗の弟分になってしまった鉄の笑顔
こんな弟分私はいりません^^

Oyabun_2
11話で登場ひさびさの親分(社長)、恐い、、、、(汗

Mokkori_2
11話でめぐみちゃんに決定的瞬間を見られてしまう吉宗くん
鉄いわく、これぞまさしく鬼怒り^^

イラスト集その③も何時の日かアップしますのでお楽しみにー^^

本編はこちらよりおはいりくださーい^^

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2008年2月12日 (火)

第12話 吉宗君とめぐみちゃん2

まさか、あそこで僕のピンコ立ちを、めぐみちゃんに目撃されてしまうなんて、、、、、

僕は節操のない自分のあそこを、恨めしい目でじっと見つめた後、テーブルの斜め向かいにすわって、楽しそうに社長の奥さんと話しをしている、めぐみちゃんの姿を、ちらっと見つめた

Megusyokuji

しかし、彼女のやさしいまなざしが僕の方に向くことはあれ以来無かった

(はー、無理もないよなー、あんな恥ずかしいものを、見られてしまったんだから、、、、)

僕はしゅんとしながら、もぐもぐご飯を食べていた。

「何じゃー、若人よ、そのめしの食い方は、男ならもっと豪快にガツガツくわんといかんぞー」

テーブルの上座にある立派な座イスに腰掛けた社長が、あいかわらず
1キロは先まで届きそうなな大声で、僕に声をかけてきた

「は、、はい」

僕は苦笑いをしながら、口を大きく開いてご飯をほおばった

「おお、そうじゃーそうじゃー、男はそうでなきゃいかんぞー、がははははー」

社長は、そういいながら目の前の大きなどんぶりに入った、およそ10本分はあると思われる刻んだネギとにんにくの山に、豪快に唐辛子をぶっかけると、これまた豪快に口に頬張りムシャムシャ食べていた

僕がその光景に唖然としていると、

「おー、これか若人、これはわしのパワーの源だー、うまいぞーお前も食うかー」

社長は部屋中に、ネギとにんにくの匂いをまき散らしながら、大声で僕にそのパワーの源を勧めてきた

「あ、、、いやすいません、さすがにそれは、、、、」

僕は冷汗をかきながら、必死に社長の勧めをことわった

 

『豪華食事付、社員寮完備』

僕は求人広告に書かれたその言葉にも、大きな魅力を感じ、この鬼瓦興業への就職を決意したのだが、その食事風景は想像とはまったくちがっていた。

広い和室に大きな木製座卓テーブルが、どっかと置かれており、その上座と思われる場所には、社長が、そしてその周りにたくさんの社員や、奥さんが囲んで座り、テーブルの上に置かれた沢山の大皿から、みんなおいしそうに、ご馳走をとっては、がつがつと食べていた

まるでそれは、僕が子供のころに見た昭和初期のドラマに出てくる、大家族の食事風景だった

小さな団地で兄弟は姉と二人、ひっそりと育ってきた僕にとって、この大家族風の食事は、初めての経験だった

はじめは少し戸惑いもあったが、みんなの笑い話を聞きながら食べているうちに、今日起こった嫌なことなど、すっかり忘れている自分に気がついた

 

(食事って、こんなに楽しいものだったのか、、、、)

僕はふっとそんなことを思いながら、大皿に手を伸ばし大きな玉子焼きを、豪快に口に頬張ったみた

(うまい、、、、)

僕は今までに、こんなに食事をおいしいと思って食べたことはなかった

と、その時、僕の様子を静かにお酒を飲みながら眺めていた社長が、うれしそうに僕に声をかけた

「どうじゃ、若人、ちまちま食うより、こうしてみんなで豪快に食った方が、数倍うまいだろう!」

「は、、、はい」

僕は、不思議と眼がしらを熱くさせながら、素直にそう答えていた

 

「お前も1日がんばって働いたんだ、遠慮はいらんから飯もスープも好きなだけオカワリして、たらふく食えよ、吉宗!」

 

その時の社長の言葉には、今までの豪快さとは打って変わった、やさしさがこもっていた、そして僕の名前を初めて吉宗と呼んでくれた社長の瞳の奥に、大きく包み込んでくれるような、不思議な暖かさが隠れていることに僕は気が付いた

そして気がついた時、そこには今日一日の精神的疲労から開放されたせいか、ポロポロ涙を流しながら、がつがつとご飯を頬張ってるという、不思議な姿の僕がいた

 

「おい、何だお前泣きながら飯食ってんのかー、お前って意外と単純で面白いやつなんだな、ははは」

銀二さんが僕をからかった、でも僕は高まる感動を抑えきれず、泣きながら一生懸命ご飯を豪快に食べ続けていた

そして僕は、元気に手にしていたどんぶりを、力強く前に差し出して

「おかわりーーーー!」

大きな声でそう叫んでいた。

 

が、ぼくは差し出されたどんぶりの先を見て、思わず固まってしまった

そう、その先には、めぐみちゃんの姿があったのだった

 

「あ、、、!」

 

僕は何も考えず勢いで差し出してしまったどんぶりを引っ込めることもできず、顔を真っ赤にしながら、しばらくの間、がちがちに固まっていた

 

「は、、はい、おかわり、、ですね、、、」

 

めぐみちゃんは、頬をそめながら、ぎこちなく返事を返すと、あわてて僕に差し出されたどんぶりに手を伸ばした

そんな姿を見ていた鉄が、またしてもこんな時に限って、早口に余計な声をかけてきた

 

「す、すげえー、さすがは兄貴だー!めぐみさんに対して、しょっぱなから、まるで女房みたいに、どんぶりを差し出すなんて、、、、」

 

鉄のそんな無神経な言葉に、僕の顔はさらに真っ赤になって、おでこからポーっと湯気がたってしまった

めぐみちゃんも、そのせいか、顔を赤く染めながら、さっとどんぶりを僕から受け取ると、無言で部屋の隅にあったジャーから、静かにご飯をよそい、素早く僕に手渡した

「は、はい、どうぞ、」

「あ、、、ありがとうございます、、、」

そんなぎこちない僕との会話のあと、めぐみちゃんは頬を赤くしながら何となくよそよそしく静かにご飯を食べていた

それ以来僕も恥ずかしさから彼女に目を向けることができず、静かにみんなの会話を聞きながら過ごしていた。

そして、そんな会話の中から、僕は、めぐみちゃんが鬼瓦興業の隣にすんでいて、小さな時から社長夫婦から家族のように可愛がられて過ごしていたことを知った

 

そして僕にとっての最大の疑問であった、なぜあの面接会場に彼女がいたのか、、、

 

それは何と、ただ単に、、めぐみちゃんが社長に頼まれて、面接の雰囲気づくりのために、手伝っていただけだと、僕は聞かされてしまったのだ、

(そえじゃ、結局僕はそんなパフォーマンスに乗って就職してしまったのか、、、、)

僕はショックのあまり、その後まったく食事の味が分からなくなってしまっていた。

 

それからどれくらいたったか、食事を終えためぐみちゃんの見送りをするために、僕は鬼瓦興業の玄関で、静かに社長の奥さんの後ろにたたずんでいた

「おばちゃん、ごちそうさまでしたー」

めぐみちゃんは明るく奥さんに挨拶をした

「ありがとうねー、こっちこそ食事の支度手伝ってもらっちゃって、助かったよー」

社長の奥さん言葉にめぐみちゃんは首を振りながら、しゅんとしている僕の方をちらっと見た

そして、ぽっと頬を染めながら、小さく手をふり、恥ずかしそうに僕に声をかけた、

「あの、、、これからお仕事、がんばってくださいね、」

「え?は、はい!」

僕のピンコ立ち目撃事件から、ずーっとよそよそしかっためぐみちゃんの突然のやさしい言葉に、僕の眼はふたたび、輝きを取り戻したのだった 

そしてめぐみちゃんは、別れぎわ再び僕にふりかえり 

「私、応援してます、、、、、吉宗くんの事、、、」 

そう言うと、恥ずかしそうに、鬼瓦興業の玄関を後にして隣の自宅へと走っていった

僕は彼女を見送った後、誰もいなくなった玄関で一人たたずんでいた、そして最後に僕に向けて放った彼女のやさしい言葉によって、面接の真相による落ち込みなどは、僕の頭からすっかり消えて無くなっていたのだ 

Magumifaight_2

 

「よ、、、吉宗君って♡♡♡めぐみちゃんが、、、応援してます、吉宗君って♡♡♡、、、、」

(春だ~、春が来た~!!)

僕の心は飛んでいた、両手をばたばたさせながら、空に向かって、羽ばたいていた!

「吉宗くんって、、、、応援してます、吉宗くんって、、、、」

僕は、目をキラキラ輝かせながら、気持悪いお公家様のような笑顔で、何度もそんな言葉を一人口ずさんでいたのだった。。。。

Okuge

続き
第13話恐怖の影へ

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2008年2月10日 (日)

第11話 吉宗くんとめぐみちゃん

「正負の法則」

僕は前にそんな言葉を、金髪のすごい服の人が、太った着物のおじさんに話していたことをテレビで見たことがあった。

その時は、何のことか良く分からなかったけれど、鬼瓦興業にもどった僕は事務所の中で、そのことが、事実だったと少しだけ分かった気がした

思いかえすと、朝の出社途中で、犬のウンチを踏んだところから、まさかのテキヤ就職に、パンチパーマ姿への変身、おまけに金髪の鉄のまきぞえを食って、おでん男たちにボコボコにされるありさま

それはまさに僕の人生にとって史上最悪の負のできごとだった。

 

しかし、今の僕は幸せだった、、、

体中とてつもなく痛いけれど、僕の目の前にはやさしく傷の手当てをしてくれている、あこがれのめぐみちゃんの姿があったのだ

「ひどい傷、ちょっとしみるけど、我慢して下さいね」

めぐみちゃんはそう言いながら、僕の傷口をやさしくそっと消毒してくれた

Siawasw

「あ、 痛たた!」

「あ、ごめんなさい、大丈夫?」

「だ、大丈夫です」

「もう少しですからね」

めぐみちゃんはそういいながら、きれいな指先にもった脱脂綿で僕の顔を消毒してくれた

僕は手当のために、何度も近づいてくる、彼女の可愛い顔にすっかり見とれていた、

愛らしくうるんだ瞳、美しいピンクの唇、そして彼女の甘い香りにとろけながら、何時までもこの幸せの時間が終わらないで欲しい、僕は、めぐみちゃんの前にちょこんと座りながら、でれーんとした顔でそう願っていた

しかし、そうはイカのちんちん、たこが引っ張る、

僕とめぐみちゃんの幸せの時間をじゃまするかのように、聞き覚えのある大きな笑い声が、事務所の入り口あたりから響いてきた

「わーはっははははは、若人よー、チンピラ相手に、派手にやったらしいなー!」

振り返るとそこには、『あっぱれ』と殴り書きされたセンスをパタパタさせながら、どしどし歩いてくる、ジャージ姿の社長の姿があった

「鉄から聞いたぞー、驚いたなー、まるで鬼神のごとき強さだったそうじゃないか、始めは弱弱しいお坊ちゃんかと思ったが、人は見かけによらんもんだなー、若人よー!」

社長は笑いながら僕の傷口をその大きなグローブのような手で、叩いて来た

「びえー痛ーーーーー!」

僕はその痛みから飛び上がってしまった

「おー、すまんすまん若人よー、がはははははは!」

社長は大笑いしながらめぐみちゃんの方を向いた

「めぐちゃん、そろそろ飯にしないと、遅くなってしまうぞ、」

めぐみちゃんは、すこし頬をそめながら

「でも、おじさん、もう少しですから」

そういいながら薬箱から絆創膏をとりだしていた

「あー、この程度のキズそんなもん、いらん、いらん、こんなもん、こうすれば治る!」

社長は大声でそういうと、そのグローブのような手にペッとつばを吐きかけ、僕の顔のキズにぬりつけてきた

「うわーひゃー!」

僕は思わず、目玉をおっぴろげて悲鳴を上げてしまった。

「なんじゃー若人、変な声だしおって、ほれ、もっとたっぷり、つけちゃるぞー」

社長は笑いながら、さらにつばを両手にぺっぺと吐きかけて、僕にせまってきた

Oyabun

そのときだった、

「ちょっとーおじさんったら!」

あわてて、僕と社長の間にめぐみちゃんが割って入ってきてくれたのだ

べっとりと唾のついた手を広げながら、社長をいっしゅんきょとんとした顔をしていたが、少しして、ニヤリと微笑んだ

「あれー?めぐちゃん、やけに、この若人の肩をもつじゃないか、、、?」

「え?」

めぐみちゃんの動きが一瞬とまった

「おー、そうじゃ、そうじゃー、あの面接の日以来、何時来るのかーなんて、楽しみにしとったからのー、おーおー、そうかそうか、」

「もう、おじさんー!」

そういいながら一瞬めぐみちゃんの顔がポッと赤くなったのを、僕は見てしまった

「、、、、、、、、、、、」

僕は社長のつばきのべっとり付いた顔を、真っ赤にそめ、心臓をばくばくさせながらめぐみちゃんを再びそっと見た、

するとめぐみちゃんも、恥ずかしそうに僕のほうをちらっと見て、一瞬、僕とめぐみちゃんの目と目はぴたりと止まってしまった。

僕は恥ずかしさと緊張のあまり、まるで時代劇ででてくる、気味の悪いお公家さんのような笑顔でめぐみちゃんに微笑んでしまった

Okuge_2

「ぷー!!」

めぐみちゃんは急にふきだして笑うと

「もう、なんて顔してるんですかー!」

そう言うが早いか、真っ赤になって僕の顔に、手にしていた消毒液をブシューっと吹きかけてきた

「ぐわーーーいたたー!!」

僕は傷だらけの顔に思いっきり消毒液を吹きかけられた痛みで、顔をおさえてぴょんぴょん会社中を飛びはねてまわった

「あー、ご、ごめんなさい」

めぐみちゃんは持っていた消毒液を目にして、あわてて僕にあやまってきた

「いや、、、だ、、大丈夫です、これくらい、、、、ははは」

「もう、おじさんがん変なこと言うから、、、」

めぐみちゃんは、恥ずかしそうに社長を見た

「ははは、すまんすまん、それじゃ向こうでみんな待ってるから、早くすませてな、はははは」

社長は笑いながら振り向くと

「いやー若人たちは良いのー、がはははは」

そんなことを言いながら、事務所の外に向かった

僕は真っ赤になりながらも、これで邪魔者がいなくなって、またしばしの幸せの時間を、味わえるそう思った時、ふっと社長が振り返って、僕のある一点を見つめて一言つぶやいた

「どうでもいいけど、若人よ、お前、わしが入ってきた時から、立ちっぱなしだぞー、」

社長はその大きな指で僕のあそこを指さした、

「え!?」

僕はあわてて自分の股間を見た、すると、僕のあそこはみごとに、ピンコ立ちして、ズボンがこんもり盛りあがっていた。

「あー!?」

僕はあわててめぐみちゃんを見た、するとそこにはすごい真剣な顔で僕の盛り上がりを見ながら無言で固まっているめぐみちゃんの姿があった

Mokkori

「あー、いや、あのこれは、、、、、」

「やだーもう!!」

めぐみちゃんは真っ赤になって顔をそむけながら、またしても持っていた消毒液を僕の顔にブシューっと吹きかけてきた

「ぎゃーーーーーー!!」

「親父さん、何っすかこの騒ぎはー!」

そんな中へこともあろうに騒ぎを聞いた銀二と鉄、おまけに社長の奥さんまで、来なくいていいのに、駆けつけて来てしまった。

「おう、お前らかー、いや何、かくかくしかじかでなー、はははは」

「えーマジですかー親父さん、、、吉宗ー、気持はわかるけど、そりゃー見られたらまずいだろーはははは」

「いやだよーこの子ったら、あらら、でもけっこう立派なもの、持ってるじゃない」

「、、、、、、、いやー、、、、さすが兄貴っすねー、、、、、そっちのほうも、、、鬼怒りっすねー、」

「うん、うん若さじゃのう、若人よー、がーははははー」

真っ赤になっためぐみちゃん、その周りを痛みで跳ねながらも、見事なピンコ立ち姿をキープしている僕、

そしてその姿をうれしそうに眺める侠客鬼瓦興業のこわーい人たち、

結局その夜、めぐみちゃんの秘密を知ることはできなかったが、ひとまず僕のテキヤ稼業で男をみがくべく第一日目は、無事ではなかったけど終わったのだった

つづく

続き
第12話吉宗くんとめぐみちゃんPart2へ

 

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2008年2月 7日 (木)

吉宗くんのイラスト集その壱

侠客☆吉宗くん イラストコーナー

本編に登場したイラスト他、紹介しまーす^^ 

Meguyosi1_2
トップ用に書いたイラストですが、実はこれ吉宗くんとめぐみちゃんを別々に
書いてごうせいしているのです^^(基本的にペン画をスキャンしたのち、
イラストレーターcs2で色をつけています

Nyusya
第一話侠客吉宗くん誕生より
希望を胸に鬼瓦興業へ向かう吉宗くん、実はおっとこまえなんです^^

Saiyou
第一話侠客吉宗くん誕生より
いきなり登場、鬼瓦興業の社長、スーパーパワーの持ち主です^^

Tinpira 
第二話より
初めてであった、銀二と鉄、その後の吉宗の運命を左右する重要なキャラです

Hujibitai
第四話アジアチャンピオンより
あの男前だった吉宗くんが、なんとパンチパーマに変身するシーン、
描いていて結構楽しかったイラストです^^

Panchi
第四話アジアチャンピオンより
見事パンチパーマの完成^^

Takakura
第5話侠客鬼瓦興業より
若頭 高倉さん、これは恐い(汗

Megumi
第六話ではじめてイラストで登場しためぐみちゃんです、明るく活発で
心やさしいヒロイン、実は私光一郎もこの子に惚れています^^

Omoi_2
第7話より
憧れのめぐみちゃんをおもってホンワカしている吉宗くん、
じつは結構お茶目なところがあるのです

近日イラスト集その弐 公開しまーす^^

本編を読んで下さると、とーってもうれしいです^^
こちらからお入りいただき、ごゆるりとお楽しみください^^

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第10話 めぐみちゃんの秘密

おでん顔の二人組との死闘を、みごと愛の力で勝利した僕は、ぼろぼろの身体を引きずりながら、鬼瓦興業にむかって歩いていた。

そして僕の後ろには、いつのまにか、すっかり僕に心酔しきって、まるで下僕とかしている、金髪の鉄が相変わらず鋭い目つきをしながらついてきていた

「鉄君、一応救急車は呼んでおいたけど、大丈夫かなあの人たち。」

僕は鉄パイプの下敷きになって気絶していた、おでんの二人を思い出しながら鉄に話しかけた

「、、、、、、、だ、大丈夫でしょ、、、、、ちゃんと息してたから、、、、、、」

鉄はボソッとつぶやいた、

「それより兄貴、、、、、、、鉄君はやめてくださいよ、、、、、今日から舎弟なんですから、鉄って、、、そう呼んでくんねーと、、、、、、」

鉄は僕にむかってそういいながら、ぼろぼろに欠けた歯で微笑んだ、、、

( ぞーーーーーー! )

僕は彼の不気味な笑顔を見るたびに、背筋が凍るおもいがした

Nigaaaaa

僕は出来る限り彼を見ないようにしながら、おでん達に対した時のことを思いだしていた

(何であの時、あんな不思議なパワーがでたんだろう、、、やっぱり、愛のパワーなんだろうか?)

僕はめぐみちゃんの顔を思い浮かべながら、ボーっと考えていた

(考えてみると、彼女とは面接でほんの数分あっただけなのに、あの日以来、頭からはなれなくなって、おまけにあんなパワーまで、、、これが一目惚れの力というものなのかな、、、)

僕は両鼻に大きなティシュをつめこんだ顔でポッと頬をそめながら、夜空を見上げてにんまり微笑んだ

Yosimuneyorokobi

(でも、彼女はいったい?銀二さんの話では、社員でもなく、娘さんでもなく、どういった子なんだろう、まさにミステリアスだなー、いったい彼女の正体って、、、、)

僕はぞっとするのを覚悟で、鉄に振り返ると、おもいきって彼女のことを聞いて見ることにした

「ねえ、鉄君」

「、、、、、、、鉄です!」

鉄はぎろっと僕を睨んできた

「あ、、、ご、ごめんそれじゃ、、、て、鉄、、、」

「なんっすか、兄貴~」

鉄はうれしそうに、気味の悪い笑顔を僕に向けた

「あ、あの、鉄はめぐみちゃんって知っていますか?」

 

「、、、、、、、、、、、め、めぐみちゃん?!!、、、、、、」

 

鉄は突然青ざめた顔で、黙り込んでしまった

もともと時間差会話の鉄だが、今回は少し様子が違う、僕は鉄の青ざめた顔を見て、急に不安な心がよぎった。

「あ、、、あの鉄、彼女には何か、、、、?」

僕は思った、彼女には恐ろしい彼氏とかいるのでは、それで鉄はこんなに怯えた顔を、、、

「あの鉄、彼女ってもしかして、彼氏がいるとか、、、?」

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、」

またしても鉄の沈黙が続いた、僕はさすがにじれったくなってしまい、

「だから、彼氏がいるのか、いないのかー?」

気が付いた時、僕はあの恐い鉄の顔に自分の顔をすりつけていた

僕はドキドキしながら鉄の返事をまった、そして返ってきた鉄の言葉はあっけなく

「彼氏がいるなんて、、、、、、聞いたことありませんよ、、、、、、、」

僕にとっては、ほっとする最高の言葉だった、

「あーよかった、彼氏はいないんだー」

僕はほっとしたせいで、思わず鉄がいることを忘れてそうつぶやいてしまった。

「え?兄貴もしかして、めぐみさんのこと、、、、」

いつもはなかなか返事もしないくせに、こういう時だけは、すばやく鉄は僕に質問をかえしてきた

「え、、、あ、、、あのその、、、」

僕は真っ赤になってしどろもどろ返事をはぐらかした、そんな僕を鉄は無言で見つめ続けていた、

しかしその目は、冷やかしとかそういう目ではなく、恐ろしい生き物でも見ている、そういった目だった

「あ、、、あのどうしたの鉄、そんな顔で僕のことを見たりして、、、、?」

僕は額に青い線を数本たらしながら、恐る恐る鉄の顔をみた、すると鉄はそれまでの恐怖に怯える顔から、今度はうれしそうな顔にかわって、突然訳のわからないことを言い始めた

「さ、、、、さすがは兄貴だー!、、、、、あの、めぐみさんに目をつけるなんて、やっぱり俺が兄貴と認めただけの人ですねー、、、、、」

鉄は腕組みをして、うれしそうにうんうんと、うなずきながら僕のことをまじまじと見つめていた

「え?何?なんで?さすがって、、、?」

ぼくは、鉄が感心している理由が、lさっぱり分からなかった、

しかしめぐみちゃんには彼氏はいない、そう分かったことで不安はなくなり、僕のあたまの中は大きなハートマークでいっぱいになっていた。

そんな僕に鉄はふたたび気になる、一言をあびせかけた

「さすがは兄貴だー、あの、めぐみさんに挑みかかろうって言うんだから、やっぱり男の中の男だ、、、」

「え、、、挑みかかる?、、、、、、」

 

「おーい、吉宗ー!鉄ー!」

僕が鉄の一言で一瞬、固まっているところへ、僕らを呼ぶ声が聞こえてきた

そして振り返るとそこには、僕たちを見つけてうれしそうに駆け寄ってくる、銀二さんの姿があった

「銀二さん~」

銀二さんの顔を見た瞬間僕は、今までの恐ろしい出来事から救われたような、妙なほっとする気持ちになって、思わず声を出して泣き出してしまった

「ぎんじすわーーーん」

「あらー、何だお前達、そんなぼっこぼこのツラしやがって、」

銀二さんは僕と鉄の顔を見て大笑いしていた、

「でもよかったー、お前らが見つかったから、これでやっとこさ、ご馳走にありつけるぜ」

「いやーよかった、よかった、あねさんは探して来いって言うし、腹はぺこぺこだし、いやーよかった、飯が食えるー」

銀二さんは僕たちの、このぼこぼこの姿などどうでもよく、ただ頭の中はご飯のことでいっぱいだった

「本当によかったー、めしだーめしめしー」

銀二さんはご飯が食べれると、さんざん喜んだあと、ふいっと後ろを振りかえり声をはりあげた

「おーい、見つかったぞー、これで飯が食えるぞー!」

僕は銀二さんがそういいながら声をかけた先を見つめた

 

「あーーーーー!?」

 

一瞬僕のまわりの空気がとまった、、、、、、、

 

(めぐみ、、、、、、ちゃん、、、)

 

そう、僕の目の前には、夢にまで見た面接の彼女、めぐみちゃんが、心配そうな目を僕に向けながら静かに立っていた。

Megumichan22

つづく

続き
第11話吉宗くんとめぐみちゃんへ

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2008年2月 5日 (火)

第9話 吉宗くん愛のパワー

ついてない一日とは、どうしてここまで、とことん続くのか、

意気揚々と就職してみれば、そこはなんとテキヤの世界、おまけにパンチパーマにダボシャツ姿に変身させられた挙句、鉄という目つきの悪い男のおかげで、僕は仕事帰りの路地で恐怖の世界に追い詰められていた。

僕の足元には、その張本人の鉄が、頭から血をながして気持ちよさそうにノックアウト中、そしてその向こうには、いかつい顔の男が二人、危ない目で僕を睨みすえていた。

Odentonotatakai2

「あ、、、あの、暴力は、暴力はやめましょうね、は、話し合いで、解決しましょう、話し合いで、、、」

僕は頭のてっぺんから出てるような甲高い声で、男たちにうったえた。

 

「あーん、何なめたこと抜かしてんだコラー、てめえらから喧嘩うったんだろがーボケー!」

長身でいかり肩、そして顔はまるで、はんぺんのように四角い男が、すごい形相で僕に近寄ってきた。

「いや、あ、あの喧嘩を売ったのは僕じゃなくて、この人、、、」

僕は資材置き場の壁に追い詰められながら、一生懸命気絶している鉄を指差した

「こいつもくそも関係ねーだろが、生意気にパンチパーマなんぞ当てやがって」

今度ははんぺんのような男の後ろから、丸顔でやたら血色がよくつるつるした、ゆで卵のような男が倒れている鉄を足蹴にしながら、僕にすごんできた。

「パンチパーマって?いやあのこれには、事情が、、、、、」

僕ははんべそを書きながら、一生懸命パンチパーマ頭を手でかくした。

いつもの僕だったら、こんなガラの悪いおでんみたいな人たちと、こんな事に成るなんて、ありえないのに、、、、僕は、気持ちよさそうに眠っている金髪の鉄を恨めしい目でチラッと見つめた。

 

そう、ことの始まりは、すべてこの鉄が原因だった。

相変わらず時間差会話を繰り返す鉄に、僕は何となく親しみを覚え始めたさなか、ふいっと路地を曲がったところで、このおでんの具のようなチンピラ達と、僕たちはばったり出くわしてしまったのだ。

よくある光景というか、そのおでんのような二人は、路地脇の自動販売機の脇で、しゃがんで、言い方を代えれば、うんこすわりでタバコをふかしていた。

僕にとっては駅前や夜のコンビになどで、良く見る光景で、そういう人たちに遭遇してしまった時には、当たらず触らず、そーっと目を合わせないように、そして出来るだけ小さくなって、通り過ぎれば、何ごともおこらずすむ。

今日も僕はとっさに道路の隅にそそくさと移動して、小さくなって目をあわさないように無事通り過ぎた

が、、、、、

いつもならそれで終わりだったのに、今日の僕には、この金髪の鉄という男のおまけがついていたのだ

僕がおでんの二人を無事スルーし終えて、チラッと後ろを振り返ったとき、そこではすでに大事件が始まっていた

鉄はなんと、立ち止まり、得意の鋭い目つきで、おでんの二人を、じーっと見つめていたのである

僕はその瞬間背筋が凍りつき、ぐわっと顎が開いたまま閉じなくなってしまった

「あー、ちょっと鉄君!?」

僕が小声で鉄を呼んだのと同時に、ゆで卵の男が立ち上がり、鉄の胸ぐらをつかんでぐいっと上に突き上げた。

「何だコラー!なにガンくれてやがんだ、おー!」

「、、、、、、、、、、、、、、、、」

鉄は胸ぐらをつかまれながらも、黙って恐い顔で、ゆでたまごを見つめていた。

「あーだめだって、鉄くん」

僕はそういいながらも、かくかく震える足で、そっとその場からはなれようとした

 

ところが

 

「おい、てめえも仲間か、こらー」

振り返ると、そこにはいつの間にか、もう一人のはんぺん男が、小さな眼玉をぐりぐりさせながら、恐ろしい顔で立っていたのだった

「ひえーーーーー、」

僕は恐怖のあまり、その場で固まって動けなくなってしまった

 

「こっち来いよこらー!」

たまご男は、そうわめき散らしながら、鉄の胸ぐらを強引に引っ張り、近くの工事会社の資材置き場につれこんだ、

と、その時だった、今まで黙って相手を睨み据えていた鉄が、ニヤッと自信に満ちた顔で微笑んだのだ、

「え!?鉄君、、、」

僕は鉄のその不敵な笑みを見て、この男もしや格闘技の達人では、そんな予感を肌で感じ取った。 

が、そのあと目にした光景は、その鉄がなすすべもなく、たまご男にボコボコに殴られたすえ、とどめに、かかと落としを脳天に一発もらって、地べたに崩れ落ちるぶざまな姿だった

「よ、、、、弱、、、、」

僕は鉄という男が、みごとに応戦して自ら作ったこの難局を打破してくれるのでは、あの不敵な笑顔から、とっさにそう思ったのだが、その淡い期待はものの数秒で終わった

Odentatak4  

「お前もだコラー!」

ふがいない鉄のKO劇にショックで口をおっぴろげていた僕の背中を、こんどは、はんぺん男がドンっと突き飛ばしてきた。

そして気が付いたとき、今度は僕が、おでんの二人に、その場で追い詰められていたのだった 

「あの、すいません、すいません、、、は、話し合いましょう、、、、。」

僕は一生懸命半べそをかきながら、二人ににうったえた、

しかし目の前にいる、彼らはギラギラした目を僕にむけながら、まるで獲物を狙う、おでんといった顔で、じりじりと近づいてきた

そして僕の必死のうったえをまったく聞くよしもなく、ようしゃなく僕に襲い掛かってきた! 

「このガキャー!」

ブヮキーーーー!!

たまご男のすごいストレートが僕の顔をとらえた、

「ぐぶわーーーー」

倒れたところを今度ははんぺん男の強烈なキックが僕のお腹につきささった

「ぐぅおーーーー」

それから、おでんの二人は、何発ものパンチやキックを僕に浴びせてきた

(こ、こんなところで僕の人生は終わりなのか、、、、思い起こせば、ごく普通に生まれ育って、これといった趣味もなく、そして内気で恋愛経験もほとんどなく、何時でも小さくなって生きてきた僕の人生は、終わってしまうのか、、、、、。)

痛みと悲しみのなか、そう思ったとき、僕の頭の中では、小さなころから現在までの、僕の人生の映像が、走馬灯のように脳裏によみがえっていた

小さな子供の時、誤ってドボン便所に落ちてしまったこと、

幼稚園では友人に濡れ衣を着せられて罰としてにわとり小屋に閉じ込められてしまったこと、

小学校では、僕が体育倉庫内の掃除中なのに、用務員のおじさんにまちがえて外から鍵をかけられて、三日間一人で泣きながら暗い倉庫ですごしたこと

また成長してからは、雑誌の通販でいやらしいDVDを注文したら、配達に怖いお兄さんが現れて20万円もする男のダッチワイフをローンで買わされてしまったこと

おもい返すことは、すべて僕にとってついていなかった事件の数々だった、、、、

そしてその思い出は、やがて鬼瓦興業の面接の日まで辿り着き、そこで出あった美少女めぐみちゃんの清らかな笑顔で止まった

「めぐみちゃん、、、、、」

「めぐみちゃん、、、、、、、、」

彼女の笑顔が頭の中で大きく膨らんだ時、僕の心の中では今にも消えかけていた小さな炎が、再びめらめらと音を立てて燃え上がり始めたのを感じた、と同時に

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

僕は今までの人生で、一度も出したことのないような大きな声を張り上げて、ぼろぼろの体にも関わらず、おでん達の攻撃をみごとに振り切って立ち上がったのだ!

 

「こ、こんなところで僕の人生を終わらせる訳には、いかにゃいんだー、、、、、。」

そういいながら、僕は命がけのすごい形相をで、おでんの二人を睨みつけていた

「なんだ、こいつ、急に復活しやがったぞ」

「終わるわけにはいかにゃいんだー!」

「何をわけのわからないことを、この野郎ー!」

たまご男はそう言いながら、ふたたび僕に殴りかかってきた

「うおおおおおおおおおおおおお!」

気がつくと、僕はさらに大きな声で雄たけびをあげながら、たまご男が打ち込んだ拳にむかって突進していた!

グシャーーーー!!

一瞬あたりの空気が止まった、、、、

ポタッ、ポタッ 僕とたまご男の間の土の上に数滴の血がしたたりおちた

そして再び空気が動き始めた時、そこには、たまご男の繰り出したパンチを、見事に顔面で受け止めている、僕の姿があった

Odentatakai3

「うわー、すんげえカウンター、決まったなーこりゃ、、、、」

横で見ていたはんぺん男が、そんな壮絶な光景を目の当たりにして、つぶやいた。

ところがその後、はんぺん男にとっても僕にとっても、意外な事態が起きたのだ 

「うぐあーーーーーーーーーー!」

なんと、そういって、悲鳴をあげたのは僕ではなく、たまご男の方だったのだ、

たまご男の右手はまるでグローブのように腫れ上がり、彼はその手をかかえてのたうち回っていた。

不思議なことにあれだけのパンチを顔面にもらったにもかかわらず、僕はその時、まったく痛みを感じなかったのだ 

「こ、これは愛だ~!愛の力が僕に不死身の体を与えてくれたんだー!」

僕はその時、真剣にそう思った、そして今度は滴り落ちる鼻血ブーで壮絶な顔をはんぺん男に向けた

「なんだ、こいつは、訳の分らんことをぬかしやがって」

はんぺん男はそういいながら近くにあった鉄パイプに手をやった、

と同時に僕はさらに大きな雄たけびをあげた

「うおあああああああああああああああああああ!」

僕は無我夢中で近くにあった鉄パイプ、それにドラム缶など手当たり次第に、大声を張り上げながらはんぺん男に投げつけていた

「うおおおおお、こんなところで、終わってたまるかー!終わってたまるかー!」

「うわーこらやめろー、いててー」

はんぺん男の声が、かすかに聞こえていたが、僕はひたすら大声をはりあげながら手当たりしだいに、あっちのものこっちのものと、ひっくり返したり、投げつけたり大暴れをしていた。

「うわーー!うわーー!うわーーーーーー!」

僕はさらに暴れた、暴れて暴れて、暴れまくっていた

そして僕がふっと正気にもどったとき、あたりはシーンと静まりかえっていた

「え?あれ?何?何が起きたの?」

僕は当たりをキョロキョロ見渡すと、そこはまるで嵐がさった後のように単管や古タイヤ、ドラム缶などが、ぐちゃぐちゃに散乱していた

そして僕の前には、数十本の単管の下敷きになって気絶している、おでんの二人が泡をふいて伸びでいたのだった。

「えーーーーー!、な、何でーーーーー!」

僕は飛び上がって驚いた、

「ちょっと大丈夫ですかー!大丈夫ですかー!」

僕はおでん達に声をかけながら、二人の上に重たくのしかかっているたくさんの鉄の単管パイプを両手でどかしていた。

その時、僕の後ろで今まで不甲斐なく眠っていた鉄が目をさました

そしてその鉄の目に見えたものは、長い鉄パイプを両手でがっしりにぎりしめ、気絶しているおでん達の前に血みどろの顔で仁王立ちでたっている僕のすがただった

Odentonotatakai_2 

「す、、、、、、すげえ、、、、、、、」

鉄はそういいながら僕のことを、まるで恐ろしい鬼神を見るように見つめていた

「あ、鉄君目が覚めてくれたのかー、よかったー早くこの人たち病院へ連れて行かないと」

僕はそういいながら鉄パイプをおでん男の上からどかそうとしたが、それまでのダメージからふっと力が抜けて、鉄パイプを抱えたまま、その場に崩れ落ちてしまった。

鉄の目には、その光景はまるで戦場で槍を抱えて崩れおちる勇ましい武人の姿にみえてしまった、

そして金髪の鉄は目に涙をいっぱいにためて、

「あ、、、、、、、兄貴ーーーーーー!」

僕のことを急にそう呼んだのだった

「あ、アニキ?」

「あ、、、、、、兄貴、、、、吉宗の兄貴、、、、、、」

「え?ちょっと鉄君、何ですかその兄貴って」

僕は鉄パイプにささえられながら、ぼこぼこの顔で訳がわからずしゃがみこんでいた

「ま、、、、、、、、まさか、、、、、、、、あなたが、こんなに強かったなんて、、、、お、、、、俺は感動しましたー」

金髪の鉄はそういいながら僕の前にひざまずくと

「あ、、、、、、、兄貴、、、、、、、、俺を俺を兄貴の舎弟にしてください!」

「シャテイ?」

僕はその時、鉄の言うシャテイという言葉の意味が全く分かっていなかった

しかしその言葉の意味が弟分であると後でわかったとき、それが僕にとって更なる波乱の幕開けになろうとは、この時はまだ考えてもいなかった。。。。

づづき
弟10話 めぐみちゃんの秘密へ

イラストは後日アップします^^ 

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2008年2月 1日 (金)

第8話 鉄

銀二さんがお馬鹿風の女性と暗がりに消えてしまったおかげで、結局僕はめぐみちゃんという名前のみで、あとは彼女のことを何一つ知ることはできなかった…

そのかわりというか何というか、僕はやたら目つきの鋭い金髪の鉄という男とふたり、息苦しい雰囲気の中、会社にもどるはめになってしまった

小柄でずんぐりむっくりした鉄は、道中不機嫌そうにむっつり黙って、やたら恐い目であたりを見渡しながら僕の隣を歩いていた…、僕はそんな異様な雰囲気に耐えられず、なんとか打開できたらと、おそるおそる鉄に話しかけた

「あっ、あの、確か名前、鉄さん…ですよね…」

「…………」

鉄は不機嫌そうな顔でむっつり黙っていた…

「あっ、すいません…」

恐くなって謝ろうとすると、

「そうだよ……」

鉄は時間差攻撃で返事をかえしてきた…

僕は少しほっとして、鉄にたずねた

「あ、あの、鉄さんは入社して長いんですか?」

「………………」

鉄はまたしばらく恐い顔で沈黙をくりかえした後

「3ヶ月…」

相変わらずの時間差攻撃のような返事だったが、今度は僕のほうを見ながら、そう答えた…

目つきの悪さもさることながら、口をあけた時にちらりと覗かせる、ぼろぼろに欠けた前歯が、さらに彼の不気味さを際立たせた…

Tetu_2 

「あ、あの鉄さんも面接で入ったんですか?」

「………………いや、銀二兄いに、スカウトされた。」

「スカウトですか?」

「……………そう…」

何時しか僕は、この鉄という男との時間差攻撃の会話にも、慣れはじめていた…、と同時に、若いのか老けているのかわからない、この男の年齢が気になった。

「あのー、鉄さんは、お何歳ですか?」

「………………」

相変わらずの時間差沈黙のあと鉄はぼそっとつぶやいた

「16」

「16歳!?」

(まっ、まさか僕より二つも年下だったなんて…)

僕は、横目でチラチラ眺めながら様子を伺うと、やはり鉄の顔の中には何処となく16歳という雰囲気が漂っていた…

それからしばらく、鉄との奇妙な時間差会話を続けていた僕は、ふっとあることに気が付いた

(この鉄という男は、別に怒っている訳でなく、会話が苦手で、頭の中であれこれ考えているせいで目つきが悪く見えてしまうんでは…、僕のことを睨みすえながら不気味に微笑んださっきも、きっとそれが原因だったのかも…)

そう思ったとたん、僕は銀二さん同様、この鉄という男に対しても、奇妙な親しみを感じ始めていた…

ところが、暗がりの路地を曲がった時、鉄のその目つきの悪さが原因で、僕はとんでもない事件に巻き込まれてしまったのだった…

 

 

「親父さん、姐さん、ただ今戻りましたー」

鬼瓦興業の玄関へ、たまっているものを吐き出し、さっぱりした顔の銀二さんが、ほっぺをピンクに染めながら戻ってきた。

「おかえりなさーい」

そんな銀二さんの前に、台所から、割ぽう着姿のめぐみちゃんが、笑顔で出てきた

Megukappougi

「おー、めぐみちゃん来てたのか…」

「うん…」

めぐみちゃんは小さくうなずくと、嬉しそうに微笑みながら、銀二さんの周辺を見渡した…、しかし、周りに誰もいないことに気が付くと

「あれ、銀二さん、面接のあの人は?」

きょとんした顔で尋ねた

「え?まだ帰ってないのか、吉宗のやつ、鉄と一緒に先戻ったはずなんだけど…」

中から社長の奥さんが出てきた

「何だよ銀ニ、一緒じゃなかったのかい?」

「いや、ちょっと…俺は急な野暮用ができちゃって…」

そう言いながら、銀二さんは頭をポリポリ掻いた

「いったいぜんたい、何処で道くさ食ってんだろうね、せっかくめぐみちゃんが手伝ってくれたご馳走で、歓迎会してやろうと思ったのに、銀二ちょっと探してきておくれよ…」

奥さんの言いつけで、銀二はしぶしぶ靴を履きなおした

「あっ、私も探しに行きます…」

めぐみちゃんは、うれしそうに銀二さんの後を追いかけた… 

 

銀二さんとめぐみちゃんが僕を探しに会社を出たその頃…、僕は鉄と会話しながら曲がった路地横の小さな資材置場で、恐怖に怯えていた…

そして僕の足元には、頭から血をながして気絶している鉄が、大の字で横たわっていた

「やっ、やめましょうよ…、ぼっ、ぼっ、暴力はよくありませんよー…」

僕は資材置き場の壁に、背中を押し付けながら、強張った表情で苦笑いしていた……

つづき 
第9話吉宗くん愛のパワーへ

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