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2008年2月27日 (水)

第17話 吉宗くん愛の幽体離脱

根性をつけるため、、、、、

そんな理由から二メートルのスキンヘッド熊井さんと、恐怖の睨みあい、またの名を「ガンのくれあい」なるものを、させられる羽目になってしまった僕は魔界の住人から魔王と化した熊井さんの恐い顔を目の当たりにして、金縛り状態に陥ってしまったのだった

Kumaitaiketu

 

(ど、どうして僕が、こんな目にあわなければならないんだ、、、、)

僕は恐怖で引きつったすさまじい顔を熊井さんに向けながら、その場から逃げ出したい思いだった

しかし、心とは裏腹に、僕の身体はどんどん固まっていく、僕がそんな窮地に陥っているとも知らず、鉄をはじめギャラリーは喜んで僕と熊井さんの戦いに湧き上がっていた

 

「いいぞー若いのー!ぜったいに引くんじゃねーぞー!はははは」

「吉宗の兄貴ー、また鬼神のごとき力っすよー!」

 

(人事だと思って、みんな勝手なことを、、、それになんでこんな時はすらすら話せるんだ、あのバカ鉄は、、、)

  

僕は金縛り状態で立ったまま、鉄とギャラリーの人たちを恨めしく思っていた

  

「おい、小僧!引くなら今のうちだぞー、
俺をまじで怒らせんじゃねーぞ、コラ!」

熊井さんはそう言いながら、更に僕の顔に自分のスキンヘッドの顔を近づけてきた
そしてその顔は怒りのせいか、じわじわと燃えるように赤く変化し始めていた

Kumaitaiketukowai  

(お、、、、恐ろしすぎる~!!、、、、)

その場から逃げよう、そう思っても恐怖で身体が言うことを聞いてくれない、、、
切迫した極限状態に陥ってしまった僕の精神は、ついにその肉体から離れて遠くへ旅立とうとしていた。それはまさに恐怖による幽体離脱というものだった

  

そして僕の魂がその肉体から、半分くらい抜け出そうとしていた時、何処からか、僕の名前を呼ぶ、美しい声がこだましてきた

 

『吉宗くーん、吉宗くーん、吉宗くーん、くーん、くーん 

  

(誰?僕を呼ぶのは、、、、、)

僕の抜けかけた魂は、その声の主を探した

  

『ここよー、吉宗くーん、くーん、くーん

 

(あっ!、き、君は!!、、、、、)

そうそこには美しい天使の姿をした金髪のめぐみちゃんが、ニッコリ笑って微笑んでいたのだ

Tensimegu

  

『がんばってー、吉宗くーん、くーん、私と一緒にお仕事しましょー、しょー、しょー

天使のめぐみちゃんは、美しく響き渡る声で、僕に手を振っていた

  

(めぐみちゃーーーーーん  )

  

『さあ、戻って、逃げないで肉体に戻るのよー、よー、よー

  

(分かったよー、もどるよーーー)

僕は、めぐみちゃんの姿をした天子の、愛に包まれて幸せに満たされていた。

そして幸せ満タン状態で僕の魂は、再びその肉体に戻っていった

  

(え、、、今のは夢?僕は夢をみていたのか、、、、、?)

  

「あれー!?」

奇妙な幽体離脱から戻った僕は、そこで目の前に起こっている状況の、大きな変化に気が付いた、
それはなんと、あの恐ろしかった熊井さんの魔王のような顔が、見る見るうちに優しく透き通るような顔に変わっていったのだ

  

「え?な、なんでー?」

僕は、ふっと自分自身の変化にも気付き、いつの間にか動くようになっていた手で、そーっと自分の顔に触れてみた

 

「あ、あれ?あれれ?」

気が付くと僕は、恐怖に引きつった顔ではなく、愛に満たされた満面の笑顔の顔となって、熊井さんの顔をじっと見つめて立っていたのだった

Tensiyosimune

(なんだー?何が起きたんだー?)

 

その直後、僕にとっても、周りのギャラリーにとっても驚く出来事が起きた

  

「ううううう~、ううううううう~、、、、、ううううううううううう」

なんと目の前にいた二メートルのスキンヘッド、熊井さんが少年のように泣き出してしまったのだ

  

「えええ!?な、なんでーーー!?」

僕は驚きのあまりホンワカした笑顔のまま、目の前で泣いている熊井さんを見つめていた

そして熊井さんは泣きながら僕を抱きしめると、大声で訴え続けた

「負けたー負けたよー若いのー、お前さんのその暖けえ笑顔見せられたら、急に国のおふくろさんを思い出しちまったよー、だめだー喧嘩になんかならねーよー、、、ううううう」

熊井さんは涙と鼻水だらけの顔で泣きながら僕をその太い腕で抱きしめ続けた、そして僕はその鼻水を顔中に受けながら、ホンワカした笑顔のまま、ひたすら驚いていた。

  

「、、、、さ、、、さすがは兄貴だー!!熊井さんの心の奥底を瞬時に見際めて、涙で屈服させちまうなんて、、、やっぱり俺がほれ込んだ男だーー!」

感動のまなざしで立ち尽くしていた鉄が、大声でそうさけぶと、号泣しながらその場に崩れ落ちていった

「おおおおお!いいぞー若いのー!!」

「感動させてもらったぞー!」

鉄につられて周りにいたガラの悪いギャラリーももらい泣きをしながら、僕に拍手をおくってきた

  

熊井さんは、片手で僕を抱き上げると、まるで試合後のチャンピオンをたたえるように、もう一方の手で、僕の右手を天高く空に持ち上げた。

(か、勝ったのか?僕は、僕は本当にこの人に勝ったのか?)

僕はそんな感動にしたりながら、ふっとあることに気が付いた

(これって、もしや愛の力、、、、?昨日のおでん達との戦いの時と同じ、愛の力だったのか、、、?)

  

何時しか僕の目はキラキラ輝く自信に満ち溢れた目に変わっていた

  

境内に広がる大歓声の中で、親父さんの大きな声が僕の耳に聞こえてきた

「うん、いい目だ!さっきとは打って変わったいい目になったなー、若人、いや、吉宗よ!」

気が付くとそこには、嬉しそうに笑う親父さんの姿があった

  

「がーははははー!それにしても、熊の剛の拳に対して、柔の拳で闘うとは、柔よく剛を征すだなー!よしわかったー!お前のその根性を買って、めぐみちゃんはお前のところで手伝ってもらうぞー、吉宗ー!」

「えー!」

僕は熊井さんの腕に抱かれたまま、目を輝かせて親父さんを見た

「がーはははっはー愉快、愉快、、、」

親父さんは趣味の悪い黄金の扇子をパタパタさせながら、めぐみちゃんの肩をぽんぽんたたいて大笑いしていた。

「お、、親父さん!!」

僕は鼻水まみれの顔をしわくちゃにほころばせながら、目をキラキラ輝かせて親父さんを見つめた、そしてそのすぐ横に立っているめぐみちゃんの姿に目を移した、そこには、うれしそうにニッコリ僕に微笑んでくれている、彼女の姿があったのだ、、、、

 

「それじゃー、めぐちゃんは吉宗とべっこう飴たのむよー」

親父さんはめぐみちゃんにそう言うと、追島さんの方を見た

「追島、吉宗もここまで頑張ったんだ、まあ、そういうことにしてやれや、、、」

 

「は、、はい、、、、」

追島さんは、不機嫌そうに返事をした

  

「それじゃ、後は頼んだぞ、、」

親父さんはみんなに、そう言い残すと、いつの間にか隣に現れれていた高倉さんと共に神社を後にして去っていった

  

親父さんが去ったあと僕は、エプロン姿のめぐみちゃんに目を写し、頭をかきながら照れくさそうに微笑んだ

そんな僕にあわせるようにめぐみちゃんも笑顔で微笑みながら、可愛らしくちょこんとお辞儀をしながら僕に声をかけてくれた

 

「今日一日よろしくお願いします、、、吉宗くん、、、」

「こ、こちらこそ、、、よろしくね、、、め、め、めぐみちゃん、、」

僕はそう挨拶した後、真っ赤な顔でたたずんでいた

びしゃー!!

「痛ああああああ!」

またしても、お尻の激痛で僕は振り返った、するとそこには例のごとく、追島さんがむっとした顔で高尾山の孫の手を片手に立っていた

「何時まで、でれでれしたアホ面してやがんだ、
さっさと仕事の準備しやがれ!」
 

「ハイ!!」

僕は元気良く返事をすると、腰にぶら下げていた鉢巻をくるくるひねり上げ、さっと頭に巻きつけた

  

「さあ、めぐみちゃん、しっかり頼むよー!!」

そういいながら僕は元気いっぱいに露店(さんずん)の組みなおしを始めた

めぐみちゃんもつられて元気良く微笑みながら、雑巾をしぼり拭き掃除に取り掛かった

追島さんはそんな僕の変化に一瞬戸惑っていたが、

「まあ、いいや、、、おい、タンカ売、、しっかりやらなかったら、ただじゃおかねーからな!」

そう言い残すと、ぷいっと振り向いて去ろうとした

 

「はい!追島さん、しっかりやりますから、任せといてください!!」

 

「!?」

僕の一言で追島さんは驚いて振り返ったが、

「しっかりやるのは、当たり前だバカ!」

そう捨て台詞をはきながら立ち去って言った

 

僕とめぐみちゃんはそんな追島さんの様子がおかしく、二人で目と目を合わせて微笑んだ

「めぐみちゃん、がんばろうね!」

「はい!」

僕は幸せだった、苦労の末に憧れのめぐみちゃんとこうして幸せなひと時を過ごせる喜びをかみ締めていた

  

 

そんな僕達の幸せな姿を、遠巻きに銀二さんと鉄が眺めていた、

「銀二兄い、吉宗の兄貴幸せそうですねー」

「、、、、、、、、、、」

鉄の嬉しそうな一言を聞いて、銀二さんは一瞬表情を曇らせた

  

「おい鉄、やっぱりあいつ、、、吉宗のやつ、めぐみちゃんに気があるのか?」

「、、、へへ、間違いなくありっすよー、自分知ってるんですよー」

  

鉄の嬉しそうな不気味な笑顔を見て、銀二さんの表情は更に曇りを見せた

  

「鉄、、、吉宗のやつ、めぐみちゃんの秘密しってんだろうな?」

「え、、、?、、、、さ、、、さあ、、、、」

  

「、、、お前それじゃ、、、、や、、、やばいぞ、あいつ、、、、」

銀二さんは急に青ざめた顔をこわばらせながら、幸せの絶頂にいる僕の姿を見つめていたのだった

続き
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第一章 侠客鬼瓦興業」カテゴリの記事

コメント

こんばんは~
第15話のタンカ売りから、ストーリーがますます面白くなってきましたね!!(^-^)
新しい登場人物、スキンヘッドの熊井さん・・赤い顔のイラストはホント世にも恐ろしい人相~~(-_-;)
それが・・突然目がキラーン♪と輝く笑顔のイラスト!!
このギャップがステキ過ぎ~~~~~(爆)

う~ん、めぐみちゃんのひみつって何かしら?気になります~

投稿: みゅうー | 2008年2月28日 (木) 22時43分

すっごく怖い顔ですねー!
熊井さんの顔をイメージして実際に描いていて夢に出てきませんかあ~(笑)
個性的な登場人物が次々と登場してくるのが楽しみです♪
次回はどんな展開になるでしょう~?

めぐみちゃんの”ひみつ”って???

投稿: 楽楽 | 2008年2月28日 (木) 23時03分

みゅうーさん 楽楽さん

コメントありがとうございます
まわりに振り回されるだけでなく、吉宗君自信も個性を出し始めてもらいたいと思っていたら、こんな結末んなってしまいました
いろいろな経験を通して彼がこれからどんなふうに成長するか、書いている私も楽しみです

熊井さんすごいでしょう^^はじめ眼玉を紫にしたら、恐ろしすぎて、目をむけられなくなってしまったのでこれでもソフトにしたんですよーん
楽楽さんのおしゃるとおり夢に出そうですね

本当にいつも読んでいただいてありがとうございます^^ 

投稿: 光一郎 | 2008年3月 1日 (土) 01時02分

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