第28話 与太郎と天使のめぐちゃん
「ヨーゼフどいておくれー、ヨーゼフ」
僕は親父さんの愛犬セントバーナード、ヨーゼフに見事なマウントポジションをとられ、身動きできない状態で必死になって訴えていた
しかしヨーゼフはその巨体を動かそうとせず、口からすさまじい量の唾液を僕の顔にぶっ掛けながらじっとたたずんでいた
「お、おねがいだから、ヨーゼフ、どいて、、、、、ヨーゼフ、、、、ヨー、、、、ゼ、、」
僕はその重さに、耐え切れず思わず虫の息になってしまっていた、そんな僕の顔をヨーゼフはべロッと巨大な舌でなめてきた
「ワオッ!?」
僕の顔をひとなめしたヨーゼフは、嬉しそうに顔を持ち上げると、これは美味しいぞ、そういった顔で再び僕を見た
「ヨーゼフ、、ちょっと僕は、、食べものじゃない、、、ヨーゼ、、、、、フ」
僕は必死になってもがいた、しかしがっちりマウントを取られてしまっている僕の身体は身動き一つ出来ない状態だった、、、
(あー、まさか始まったばかりの侠客吉宗くんなのに、こんなに早く最終回がおとずれてしまうなんて、、、、、それも僕が親父さんの愛犬に美味しく召し上がられて終わりなんて、、、、)
目の前で美味しそうに僕を見ながら舌なめずりをしている、ヨーゼフを見ながら僕は思った、、、
(いやだーーー、そんなのいやだーーーー、ついにめぐみちゃんとの恋がスタートしたばかりだって言うのに、、、、)
そう思った僕は、必死になって救いの声を発していた、、、、
「た、、、たしゅけてーーー、誰か、たしゅけてーーーー」
力ない声で僕は叫び続けた、しかしその悲痛の叫びもむなしく、助けがやってくる気配はまったくなかった
「たしゅけてーーー、たしゅけてーーーー」
その巨体に押しつぶされた苦しみから、僕の意識はまたしても遠くのほうへ旅立とうとしていた、、、、
(ここは何処だ、、、?、前に一度来たことがあるような気がする、、、)
僕は見覚えのある、お花畑にいた、
(そうだ、、、ここは確か熊井さんの恐怖から逃げようとした時、僕が入りそうになったところだ、、、、、ああ、ついに僕は来てしまったのか、、、ここに、、、)
僕は一人お花畑で寝そべっていた、そしてふと見ると僕の腕と足にはたくさんの草のつるがからまって僕はそこでも身動きできない状態だった
(何だよこれは、、、)
僕は必死にそのつるを取り除けようともがいたが、がっちり絡まったそのつるから逃れることは出来なかった
観念した僕は、綺麗な空を眺めながらボーっと考え事をしていた
(確かここで、めぐみちゃんにそっくりな天使に出会ったんだよなー、、、)
僕はそう思いながらあたりを見渡した、すると遥かかなたからカバンをかかえた天使が飛んでくるのが見えてきた
「吉宗くーん、くーん、くーん、どうしたのーのーのー」
「あー!?、君はあのときのめぐみちゃん、、、、」
僕はうれしくなって微笑んだ、、、
天使のめぐみちゃんは、急に優しい声でささやいた
「ヨーゼフ、どきなさい、さい、さい、、、」
「さあ、どくのよヨーゼフ、、、さあ、こっちにおいで、おいで、おいで、おいで、、、」
「あ、、、だめだよ、、、、そんなことをしたら君がヨーゼフに食べられてしまうよ!」
僕は慌てて天使のめぐみちゃんに叫んだ、しかし天使のめぐみちゃんは、僕の制止も聞かずヨーゼフを呼び続けた
「ヨーゼフ、、来なさい、さい、さい、、いたずらは駄目よ、だめよ、だめよ、、、、、、」
やさしいめぐみちゃんの天使の声が、心地よくお花畑にこだました
すると突然僕の手足に絡まっていたつるが、するするっと解け始め、気が付くと僕は自由の身になっていた
「あ、、ありがとう、き、君が助けてくれたんだね、、、、」
僕は天使のめぐみちゃんを見つめた、
天使のめぐみちゃんは優しく微笑んでいた、そして気が付くと、そのめぐみちゃんの横には静かにじっとしているヨーゼフの姿があった、、、、
「吉宗くん、、、、、吉宗くん、、、、、、」
「、、、?、、、」
「、、大丈夫、吉宗くん、、、、」
「は、、、めぐみちゃん!?、、、」
気が付くと僕の目の前には、天使のめぐみちゃんではなく、本物のめぐみちゃんが心配そうに僕を眺めていた
「あれ、、、ここは、、、?」
僕は慌てて周りを見渡した、するとそこはさっき僕がヨーゼフに襲い掛かられた彼の小屋の中だった、
「驚いたー、うちの玄関をでたとき、たすけてーなんてかすれ声が、こっちのほうで聞こえるから、来て見たら、吉宗君がこの子の下敷きになってるんだもん、、、」
振り返るとめぐみちゃんは嬉しそうに微笑みながら、彼女の横で静かに伏せをしているヨーゼフの頭を撫でていた
「うわ、、、めぐみちゃん、、危ない、、危ない、、、」
僕は慌てて彼女の横にいるヨーゼフを指差した
「、、、え?、、、」
めぐみちゃんは不思議そうに僕の指の先にいるヨーゼフを見た
「もしかして、危ないって、この子のこと?」
「うん、、うん、、、、」
僕は必死にうなずいた、しかしめぐみちゃんはまったく慌てた様子も見せず、微笑みながらヨーゼフの頭を撫でた
「大丈夫よ、吉宗くん、、、この子はとっても賢くて優しい子なんだよ、、」
「ねー、ヨーゼフ」
めぐみちゃんに撫でられながらヨーゼフは嬉しそうにしっぽを振っていた、僕は驚いた顔でめぐみちゃんとヨーゼフを何度も見ていた
「そうか、、急に僕が小屋に入ってしまったから悪かったんだね、、、」
僕は笑いながらそう言うと、そっと手を差し出してやさしくヨーゼフに声をかけた
「ほら、おいでヨーゼフ、、、」
するとヨーゼフはのそっと立ち上がると、その巨体をゆすりながら僕に近づいてきた
「ね、、、とっても賢い子でしょ、、、」
「本当だ、、、ごめんなヨーゼフ、さっきは僕が驚かせてしまったんだね、、、」
僕はしゃがんだ状態で、近寄って来たヨーゼフの頭を撫でようとした、と、その時、突然ヨーゼフはその身体をくるっと反転させ僕の前で大きな後ろ足を高く持ち上げた
「!?」
ヨーゼフの高く上げられた足の付け根にある、巨大な突起物から、僕の頭めがけて黄色い生暖かい液体が突如発射された
じゃじゃーーーーーーーーーーーーーーーー!!
「ぶわーーーー何だーー!?」
「ちょっとヨーゼフやめなさい!!」
相当たまっていたのか、ヨーゼフから発射された大量の液体で、僕は頭から身体までずぶぬれ状態になってしまった
ヨーゼフはその股間から最後の一滴を僕に振り掛けると、まるでライバルを見るような視線を僕に向けながら、のそのそとめぐみちゃんのもとへ戻って、彼女の横で静かに伏せをした。
「、、、、、、、、、、」
僕はヨーゼフのおしっこまみれの身体で、しずかにめぐみちゃんとヨーゼフを見つめながら固まっていた、
、
「もう、何てことするの、ヨーゼフ、」
ヨーゼフはめぐみちゃんに怒られて旬としていた、
「ちょっとまっててね、吉宗くん、今タオルもらってくるからね、、」
「、、、、、、、、、、、」
「おばちゃーん、大変なのー!!」
めぐみちゃんはそう叫びながら、鬼瓦興業の事務所の中に走っていった
僕は呆然としながら、離れたところでじっと伏せをしているヨーゼフを見た
「おい、、、、ヨーゼフ、、、いや与太郎、、、」
ヨーゼフは僕の言葉にめんどくさそうにこっち見た
「お前、僕に何の恨みがあるっていうんだ、、、」
僕は頭と身体からアンモニア臭を漂わせながら、つぶやいた
ヨーゼフはそんな僕をギロッと睨むと、黙ってめぐみちゃんが走り去った方角を愛する人を待ちわびるような目で見つめていた
「まさか、与太郎、お前もめぐみちゃんのことを、、、、」
ヨーゼフはその言葉を聞いて、じろりと好戦的な目で僕を見つめた
(こんなところに、僕のライバルがいたとは、、、、)
僕は身体から異臭を発散させながら、じーっとヨーゼフと見詰め合っていたのだった、、、、。
イラストは近日更新します
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