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2008年4月18日 (金)

第30話めぐみちゃんの願い

小屋の掃除を済ませた僕は、与太郎ヨーゼフを連れて多摩川の土手へと向かっていた

 

「こら、ヨーゼフそんなに引っ張るなっていうの、、、」

 

ヨーゼフは僕の言葉など聞く耳を持たないといった顔で、のっしのっしと我が物顔で歩いていた

 

ヨーゼフの隣には、川崎という言葉をきいて一瞬戸惑いの顔をみせたが、すぐに元の明るい笑顔にもどっためぐみちゃんがいた

 

「吉宗くん、すごいでしょこの子のパワー」

 

「本当、腕がちぎれそうだよ、、、、ははは」

 

僕は、ぶっといリードを両手で握りながら、めぐみちゃんに向かって苦笑いを浮かべた

 

 

 

「でも、考えてみると、この子のおかげで、こうして吉宗君と一緒に過ごせたんだね、」

 

「ははは、僕はあやうく命拾いしたけどね、、、、」

 

めぐみちゃんと目を合わせて、僕は照れ笑いを浮かべた

 

 

 

「ねえ、、、、吉宗くんって兄弟はいるの?」

 

めぐみちゃんは嬉しそうに尋ねてきた

 

「え、、、あ、姉貴がひとり、いい年してまだ独身だけど、、、」

 

「へえ、お姉さんがいるんだ、いいなー、私一人っ子だったから、兄弟って憧れだったんだ」

 

「うるさいばっかりだだったよ、早くご飯食べろとか、勉強しろとか、剣道部だって姉貴が無理やり入れたんだよ、僕の泣き虫が治るようにって、、」

 

「、お姉さんが?、へえ、、何だかすごく会ってみたいなー、」

 

「男勝りで、めぐみちゃんとは正反対だよ、、」

 

「私と正反対って、まだ吉宗くん、私のことよくわかってないくせに、、、」

 

 

 

「え?、、、、、」

 

 

 

めぐみちゃんの意味深な言葉に僕は一瞬歩くのを止めて彼女を見た

 

「でも、お姉さんの期待は裏切られちゃったみたいだね、、、、」

 

「裏切る、、、?」

 

「うん、だって吉宗君の泣き虫は、全然治ってないでしょ、、、、」

 

「えー、ひどいなー、何で僕が泣き虫なんだよー」

 

僕はしぶい顔でめぐみちゃんを見た

 

「何でって、昨日だってさ、、、、ふふ」

 

めぐみちゃんはそう言いながら、嬉しそうに、頬をそめながら僕に微笑んだ

 

「あ、、、!」

 

僕は昨日の縁日での号泣事件を思い出して、おもわず顔を真っ赤にした

 

 

 

それからしばらく、めぐみちゃんは楽しそうに僕のことをあれこれ訪ねてきた、僕も彼女と一緒に過ごせることが幸せで一生懸命そのといかけに答えていた

 

僕は幸せだった、、しかし、そんな幸せを無情に打ち切るように、僕とめぐみちゃんは、川原と駅への分かれ道にさしかかった

 

「あー、もうこんなところかー、」

 

めぐみちゃんは口をぷっとしながら、駅の方を指さした

 

「楽しかったのに、駅こっちだから、、、これでお別れだね、、、、」

 

「あ、、、、そうか、めぐみちゃん学校だもんね、、」

 

「放課後手伝いに行きたいんだけどね、今日は委員会があるからなー、、、、」

 

めぐみちゃんはそう言いながら、僕たちの横で寂しそうにめぐみちゃんを見ているヨーゼフの頭をなでた、

 

「ヨーゼフ、またね、お利口にするんだよ、、、、」

 

めぐみちゃんの言葉に、ヨーゼフはやっと、かまってもらえたという喜びから大きな尻尾をぶんぶん振って喜んでいた

 

 

 

「それじゃ、、、吉宗くん、またね、、、、」

 

「あ、うん、また、、」

 

めぐみちゃんは立ち上がると、駅の方に歩きだした、そして数歩歩いた所で何か思いだしたように振り返った、

 

 

 

「吉宗くん、、、、」

 

 

 

「え?」

 

 

 

めぐみちゃんは、心配そうな顔で僕をじっと見つめていた、、、、

 

 

 

「吉宗くん、、、、あ、、、あの、、、、」

 

「、、、、?何?どうしたの、、?」

 

 

 

「あ、、、あの、、、、、」

 

めぐみちゃんは、言いにくそうにもじもじしていたが、ふっと溜息をつくと、真剣に僕を見た

 

「あの、、今日の川崎の仕事だけど、、、、終わってから、銀二さん達にさそわれても、お風呂屋さんにだけは行かないでね、、、、」

 

Nayami  

 

「え?、、お風呂屋さん?」

 

 

 

僕は訳が分からずめぐみちゃんを見つめてキョトンとしていた、、

 

めぐみちゃんは恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながら、話を続けた

 

「ま、前に銀二さんと鉄君たちが、嬉しそうに話してたの思いだして、、、、あ、あの川崎の仕事は後から、お風呂屋さんに行くのが楽しみだって、、、、」

 

「え?え????」

 

僕はまったく訳が分からず、目をまん丸にしながら、めぐみちゃんを見ていた

 

めぐみちゃんは真剣に見つめながら僕に再びうったえてきた

 

 

 

「川崎のお風呂屋さんには、行かないでね、、、」

 

 

 

「あ、、、うん、わかった、行かない、、、、」

 

 

 

「、、、、よかった、、、、それじゃ、また、、、、仕事、がんばってね、、、」

 

めぐみちゃんはそう言いながら、明るい顔で僕に手を振ると、恥ずかしそうに駅に向かって走って行った

 

 

 

「、、、、、、、????、、、」

 

僕は訳の分からない状態でボーッとしながら、彼女の後姿を見つめていた。

 

「、、、めぐみちゃんどうしたんだろう急に、何でお風呂に言っちゃダメなんだろう?」

 

僕は切実に訴える彼女の顔を思い出しながら首をひねっていた、

 

 

 

 

 

「まあ、いいか、、、、さあ、散歩の続き行くぞ、与太郎、、、」

 

僕はそう言いながら、ヨーゼフのリードを引っ張った、しかしヨーゼフは、さっきとは売ってかわった態度でその場から動こうとはしなかった

 

「おいこら、ヨーゼフ行くぞ、、、、」

 

僕は再びリードを強く引っ張ったが、奴はふてぶてしい顔で僕を見ながらじっとしていた

 

「お前、めぐみちゃんがいなくなったとたん急に態度変えやがったな、、、、、」

 

「来い!!ヨーゼフ!!」

 

僕は大きな声でそう言うと、ふたたび力任せにリードを引っ張った、するとヨーゼフは

 

「ワオン、、、、、、」

 

大きな声で吠えたあと、その巨体をむくっと起こした、

 

と、同時にヨーゼフは突然、僕を無視して全速力で多摩川に向かって走り出したのだ

 

「うわーーーー、何だ急にーーー!!」

 

僕は腕に巻きつけられていたリードを離すことも適わず、ヨーゼフに無理やり引っ張られながら、全力で走らされてしまった

 

 

 

どた、どた、どた、どた、どた、

 

「わーわー、コラーヨーゼフ、とまれーーーーーーとまれーーーーーー」

 

僕の必死のさけびなどまったく無視して、ヨーゼフは全力疾走を続けた

 

「あーーーとまれー、やめれー、あああああああああ」

 

そんな叫びも虚しく、そのまま僕はヨーゼフに拉致されてしまったのだった、、、。

 

続き
お引っ越しのご案内

 

イラストは近日アップします

 


Onegai2

 

 

 

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