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2008年4月29日 (火)

第33話 ゴリラの目にも涙

(追島さんが、、、泣いていた、、、、、)

信じられない光景を目撃してしまった僕は、少し離れたところから、倉庫をじっと見つめていた、しかし追島さんはしばらくその中から出てこようとしなかった

プップーーーーー!!

そんな僕の後ろからクラクションの音が響いてきた

「おーい吉宗ー、何やってたんだよー!!」

振り返ると荷物を満載に積んだワゴン車の運転席から銀二さんが、大声で叫んでいた

 

「あー銀二さん、、、良かったー、みんな仕事に行っちゃったかと思いましたよー」

僕はほっとして目を潤ませながら銀二さんのもとへ駆け寄って行った

「あれーー?何だよお前そのカッコは、下ろしたてのシャツがぼろぼろじゃねーか、」

「さては、与太郎に散々な目にあわされたんだな、だから言わんこっちゃねー、」

「銀二しゃーん」

僕は半べそをかきながら、銀二さんの答えにうなずいた

「それにしても、派手にやられたな、お前、今日はせっかく川崎のお大師さんで仕事(バイ)だってのに、そのカッコはうまくねーだろ、」

「、、、、、、、」

僕は無言で自分のぼろぼろのシャツを眺めながら、苦笑いを浮かべた

 

「しゃーねえな、今日は川崎だからな、俺の着がえ、特別貸してやるよ、後ろ乗って着替えろよ」

銀二さんはそういいながらワゴン車の後部座席を指差した

「は、はい」

僕は慌てて後ろのドアを開いた、すると中には金髪頭をビシッとポマードでかためて、胸に竜の刺繍のはいったダボシャツをうれしそうに来ている鉄が、不気味な笑顔ですわっていた

 

「兄貴ーー、へへへ渋いでしょこれ、俺の勝負ダボシャツなんすよ、、、、」

鉄はそういいながら、どう見ても悪趣味なシャツを僕に見せびらかしながらボロボロに欠けた歯で笑った

Tetu2

「あ、、、ははは、渋いね、、うんうん、、、」

「そうっしょ、兄貴、渋いっしょ、、、なんたって今日は川崎っすからね、、、」

鉄はただでさえ不気味な笑顔をさらに倍増させながらにやけていた、、、

「銀二兄い、はやく、すべりに行きたいっすねー、げへへへへー」

「そうあせるなっての鉄、今日は祭りが終わるのは遅いんだから、すべることばっか考えてっと、またつり銭間違えちまうぞ、、、」

「、、、、そ、、そんなこと言ったって、俺、もう二ヶ月もすべってねえんですよ、、、」

「何ー!?それじゃ二ヶ月も後無沙汰か?、、、、そらあ、あせるのも当然だな、ハハハ」

銀二さんと鉄の奇妙な会話を、僕はきょとんとした顔でながめていた

 

「あのー、鉄、すべるっていったい?」

「えー、兄貴すべったことねーんすか?だって川崎って言えばすべーる、すべーるの名所っすよ、、、、」

「すべるの名所????、、」

「兄貴ほどの人が、またふざけちゃって、、、、散々すべりまくってたくせに、、、、」

鉄は不気味な笑顔を浮かべながら、ひじで僕をつっついた、

(あ、そうかスケートのことだな、、、、)

そう思った僕は鉄にささやいた

「すべるって鉄、そのことか、ははは、、、でも僕がすべったのは小学生以来だからな、、、うまくすべれるかどうか、、、、」

その言葉で隣の鉄が急に青ざめてしまった、、、、

 

「しょ、、、小学生、、、?」

 

「え?、、、あ、うん、小学生の時、毎週いってたけど、、、、」

「毎週ーーーーー!!」

「え?」

「すげえ、、、、、さすがは兄貴だ、、、、小学生ですべってたなんて、、、、」

「さすがって、そんな驚くことじゃないじゃないか、ハハハ、鉄は面白いなー」

「、、すげえ、、、、すげえ、、、やっぱ俺が兄貴とほれ込んだ男だ、、、、、」

鉄はそう言いながら、僕を得意の尊敬のまなざしで眺めていた、

 

「ぷーーーーー」

僕と鉄のかみ合わない会話を聞いていた銀二さんが急に噴出して笑い出した

「え?銀二さん、何がおかしいんですか?」

「だってお前、、、」

ガチャ!!

そんな会話の途中で僕たちの乗ったワゴン車のドアが開いた

  

「ほい、お待ちどー!!」

そう言いながらバンの助手席に乗り込んできたのは、さっき倉庫で涙を流していた追島さんだった

追島さんは、無言で助手席に座ると、その大きな両足をダッシュボードの上にどっかと乗せて、あごで銀二さんに合図をした

「それじゃ、行くぞーお前らー」

銀二さんは後ろの僕と鉄にそう言うと、軽やかな手つきでギアを入れて車を発信させた

 

僕達を乗せたワゴン車は多摩川の土手沿いの道を、軽快に走り続けた、

くわえタバコで鼻歌を歌いながら、華麗なギアさばきで車を運転する銀二さん、僕のとなりで、すべーる、すべーると、よっぽどスケートが好きなのか念仏のように唱え続けている鉄、そんな中で銀二さんの紫のダボシャツに着替えた僕は、恐る恐る助手席の追島さんの姿を、眺めていた、しかし追島さんは何事もなかった顔で、気持ちよさそうにいびきをかいて眠っていた

(さっきの涙は、一体なんだったんだろう?)

僕はあれこれ考えをめぐらせながら、追島さんの寝顔をチラチラと垣間見ていた

 

土手沿いの大きなカーブを曲がり、踏切を越えたところで、急に鉄が絶叫した

「兄貴ーー、すべーる、すべるの名所っすよー!!」

鉄はうれしそうに道路の右側に見える町並みを指差しながら、はしゃぎまくっていた、しかしそこはどう見ても、どこにでもある普通の町の景色で、大きなスケート場があるようには見えなかった

「こんな所に?」

僕が首をかしげていると、その町の大通りをはさんだ反対側に、大きな建物が見えてきた

(ああ、ここのことか、、、)

僕はそう気が付きながら、建物の入り口を見た、しかしそこはどう見ても競馬場といった雰囲気だった

(、、、、、、あれ?)

僕が首をかしげている間に、車は川崎のお大師さんの裏境内へと入っていった 

 

到着した駐車場には、僕達と同じような荷物を積んだワゴン車が、所狭しと並んでいた、銀二さんは空いているスペースに車を止めると追島さんに声をかけた

「追島の兄い、つきましたよ、、、」

 

「んー、おう、、、」

追島さんは眠そうに大あくびをすると、車から降りた、

「それじゃ、ショバ割り行ってくるから、お前ら準備しとけ、、、」

銀二さんと僕たちに追島さんはそう告げると、近くにいるガラの悪そうな人たちと、挨拶をかわしながら神社の境内の方へのっしのっしと歩いていった

「ショバワリ?」

僕は車から降りながら銀二さんに尋ねた、

「ん?ああ、場所割りのことだよ、このあたりの庭場の親分さんに挨拶してな、うちがどこにどんな店構えるか、世話してもらうんだよ、、」

「はあ、、、」

「俺たちテキヤってのはな、あっちこっちの仲間同士でお互いに助け合いながら、生きいてるってわけだ、ここではここの親分さんに世話してもらって、地元に帰れば、逆に俺たちがよそ様の世話させてもらう、」

「お互いのお世話を、、、」

「俺たちは博徒ヤクザとはちがう、商人だっていう伝統と精神を大切にしてるわけだ、、、」

「伝統と精神、、、、、ですか、、」

 

「よー銀ちゃん、久しぶりだなー」

僕と銀二さんが話しているところへ、口ひげに短いパンチ頭のこわもてのおじさんが現れた

「山さん、こんちわーす、今日はよろしくお願いしますー」

銀二さんは、両膝に手をあてながら、挨拶をしたあと、僕を振り返った

「おい、吉宗!」

「あ、、はい!」

僕は慌てて銀二さんの後ろで、前にならった挨拶をした

「おはようございますー!!」

 

「ほう、君が一条吉宗か、、、、噂は聞いているぞー、」

山さんと呼ばれる口ひげのおじさんが笑顔で僕に話しかけた

「え?」

僕はビックリして目をきょとんとしていた

「警視庁捜査四課のハゲ虎相手に、一歩も引かなかったんだろ、鬼瓦興業に一条吉宗あり!うちの若衆の間でも噂だぞ、、、、」

 

「、、ぼ、僕がうわさ?、、、」

「それにしても、男前だなー、さぞもてるんだろう、、、、」

「いや、、そんな僕は、、、、」

照れ笑いを浮かべている僕の肩を、銀二さんがポンとたたいて話しかけてきた

「吉宗、こちらの山さんはな、べっこう飴の神様といわれている方なんだぞ、、、」

「べっこう飴の神様、、、ですか?」

僕は目をキラキラさせながら山さんを見つめた、、、、

「おいおい、そんな穴の開くような目で見るなよ、恥ずかしいじゃねーか、ははは」

「後でその技見せてもらえよ、参考になるからな、、」

銀二さんはそう言いながら、ワゴン車の後ろのドアを開けた、そこへ追島さんが一枚の紙を片手に戻ってきた

 

「あ、山さん、ご無沙汰してます、」

追島さんは山さんに丁寧に挨拶をすると、僕達に声をかけた

「銀二お前はここで、たこ焼き、鉄、お前はここで氷かきだからな、、、、」

銀二さんと鉄は、追島さんの持っている境内の場所割りを見ながら返事をした

 

「吉宗、お前は銀二の隣で赤タンだ、、」

 

「赤タン?」

 

「金魚すくいのことだよ、、、」

銀二さんが僕にそう教えてくれた

「僕が金魚すくいですか?、、、、」

「何か文句あんのか、こら~!」

追島さんはさっきの泣き顔とは打って変わった、いつもの鬼軍曹にもどって僕をにらみつけた

「いや、、、文句なんて無いです、、、、ハイ!!」

 

「それじゃ支度しろ、銀二、このボケに赤たんのやり方しっかり教えとけよー」

「ハイ」

追島さんは銀二さんにそう告げると、そのゴリラのような筋肉で大きな三寸をかかえて境内の中にのっしのっしと歩いていった

 

「お前、赤たんかー、うらやましいなーー」

銀二さんはうれしそうに、僕をもっていた三寸の柱でつっついた

僕達を見ていた山さんも、うれしそうに声をかけてきた

「赤丹、水チカ、ツンパ、パイオツの余禄付き、だな、、ははは」

 

「赤丹、水チカ、ツンパ、パイオツ?、、、、余禄付き?」

 

僕は不思議そうに銀二さんと山さんを見た、そんな僕を銀二さんはいやらしい目をしながら再び突っついてきた

「赤丹は金魚すくい、水チカは水風船、、、そのうち分かるよ、ははは」

「、、、、、はあ、、」

僕はその言葉に、わくわく、どきどき、期待を膨らましまくっていたのだった、、、

続き
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イラストカットは近日更新します^^


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第一章 侠客鬼瓦興業」カテゴリの記事

コメント

こんばんは~
今回の話は、追島さんの涙とかすべーるの名所とか(笑)、これから大騒動が起きそうな予感で、意味深な内容ですね!(^-^)
これからの話の展開が、ホント楽しみです~♪
それにしても、赤丹、水チカなどの言葉、私ははじめて聞きました・・ふ~ん、そういう言い方するんだっていう感じです・・(^^;)

投稿: みゅうー | 2008年4月30日 (水) 00時45分

みゅうーさんこんばんわー
コメントありがとうございますーhappy01
今回のお話しみゅうーさんの言葉どおり、次々おこる展開への附箋ですよー^^

土手沿いの大きなカーブを曲がって踏切を超えた右側、さてさてそこには一体何が^^

それは先に行ってのお楽しみですsmile

でもあそこへ行くことはめぐみちゃんを裏切ることに、、、つづき楽しみにしていてくださいねー^^note

投稿: 光一郎 | 2008年4月30日 (水) 01時23分

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