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2008年5月 9日 (金)

第35話 テキヤ稼業の三つの掟

「誰にも言うなよ、、、、、」

そう言われると、どうしても誰かに言いたくなってしまう、僕は今朝倉庫で見たこと、そして今しがた近くの保育園で目撃した追島さんの秘密を誰かに話したくて仕方なかった、

しかし、そんなことをしたら、恐怖の鬼軍曹追島さんからどんな目に合わされるか、、僕はあれこれ独り言をつぶやきながら持ち場へ向かっていた

 

「それにしても追島さんって、恐い顔してるけどけっこうシャイだったんだな、、、あんな風にこっそり好きな人のことを眺めたりして、、」

僕は何となく追島さんの人間らしさを垣間見れた気がして、少しだけ親しみを感じ始めていた

「でも、あれだけ綺麗な人なんだから、きっと恋人とかいるんだろうな、、出来ることなら、追島さんの恋、実らせてあげたいなー、、、、」

僕はそうつぶやきながら、追島さんとさっきの美人保母さんが幸せそうに並んでいる姿を頭に浮かべた、、、、 

しかし浮かんでくる姿は、美女とゴリラの不釣合いなカップルの姿だった、、、、

「これぞまさしく、美女と野獣そのものだな、、、ははは」

 

僕はお弁当をぶら下げて、にんまり笑いながら、気が付くと持ち場の前に立っていた

「何だお前、ずいぶんうれしそうな顔しながら戻って来て、、、?」

「え、、、、あっ!銀二さん!?」

気が付くとたこ焼きの種を仕込みながら銀二さんが、じーっと僕の顔を見つめていた、

 

「いや、あのその、、別に何でもないです、、、ははは」

「何でも無いって、どう見ても何かあったツラだろお前、何いいもの見たんだよ、、、さては女か?」

「いや、、、、そ、そんなんじゃないです、、、ははは」

僕は慌てて頭を掻きながら、袋から幕の内を取り出すと、銀二さんに手渡した、銀二さんは首をかしげながらそれを受けとると、近くにあった大きな木箱に腰を下ろした

「それよりお前も早いとこ、シャリ食っておかねーと、もうじき客がどっさりやってくるぞ、、、」

「あ、、ハイ!」

僕は慌てて弁当のふたを開けると、ご飯をほおばった

 

「おう、銀ちゃんー、銀ちゃんじゃねーか、、、、」

僕と銀二さんの後ろから、もごもごした声が聞こえてきた、、、、、振り返るとそこには全身包帯だらけでサングラスをかけた、まるでミイラ男といった感じの人が、ボーっと突っ立っていた

Miiraotoko_2 

「うわっ、、ぐほぐほほ、、!!」

僕は突然のミイラ男の出現に驚いて、口に入れていたご飯を詰まらせてしまった

 

「誰だ、お前は、、、、」

銀二さんも慌ててそのミイラ男に尋ねた

「俺だよ、俺、、、、まさるだよ、、、、、銀ちゃん、、」

ミイラ男はそう言いながら、かけていたサングラスをはずした、するとその目のまわりは、真っ青にはれあがり、目玉は真っ赤に充血していた

 

「まさるって、、、お前、あの、コマシのまさるか?」

「コマシはひでえなー、銀ちゃん、それに自分だってこましじゃねーかよ、、、」

ミイラ男はうれしそうに腫上がった目で微笑んだ、

「何だよお前その姿は、、、、」

「いやちょっとあってよ、、、、そんなことより、今度良い女のいる店見つけたんだよ、いっしょに行こうぜー銀ちゃん、、」

ミイラ男はそういいながら、包帯だらけの右手を突き上げたが、

「あ、、!?」

と何かに気がついて、慌ててその手を引っ込めた 

あまりにも一瞬の出来事だが、僕はその一瞬を見逃してはいなかったのだった、

それは明らかに、まさるというミイラ男が、銀二さんに小指を突きたてようとした時、自分のそれがなくなっているのに気が付いて慌てて引っ込めたという、一瞬の出来事だった、、、

僕は瞬時に青ざめてしまい、のどをつまらせたことも忘れて固まってしまった

 

ミイラ男の一瞬の出来事を、隣にいた銀二さんも見逃してはいなかった、

「まさる、、、、お前、何だよその指、、、、」

銀二さんは額から汗をたらしながら、マサルというミイラ男に尋ねた、、、、

「あ、、、、?、ばれちゃった、、、、ははは、ちょっと下手打っちまってよ、、、」

「下手って、何やったんだよお前、、、、」

「いやいや大したことじゃねーよ、、ははは、、、、、」

「大したことねえって、お前、エンコ飛ばされて、大したことねーは無いだろうが、、、」

銀二さんはそういいながら、マサルと言うミイラ男の手をつかもうとしたが、ミイラ男は慌ててその場から離れると、はずかしそうに

「こんど飲み行こうな、、、、銀ちゃん、、、」

そう告げながら僕達の前から離れていった  

 

「何だあいつ、、、あんな姿にされちまって、、、、、」

銀二さんは慌てて僕達の隣でべっこう飴の準備を終えて弁当を食べていた、山さんを見た

 

山さんは少し渋い顔をしながらもっていた弁当を三寸に置くと、ぼそっと小さな声で一言つぶやいた

 

「ばしたとっちまったんだよ、、、、マサルの野郎、、、、」

 

「ばした!?、、、、、」

 

「まあ、昔から女癖の悪い奴だったけどよ、うっかり野郎の兄貴分のばしたとっちまって、あのざまだよ、、、」

「それで、あんな包帯だらけだったんすか?」

「かなり派手にヤキ入れられたらしいからな、おまけに、、、、」

山さんは自分の小指を突き立てると、もう片方の手でチョイっと切るまねをした

 

銀二さんは額に汗をかきながら、だまって山さんの話を聞いていた、、

 

そんな山さんと銀二さんの恐ーい会話を聞いて、真っ青になっていた僕を見て、山さんが笑いながら話しかけてきた

 

「吉宗っていったな兄ちゃん、、、、」

 

「は、、、はい、、、、」

「お前さんも気をつけろよ、それだけの男前だ、間違って仲間のばしたなんて取っちまったら大変だからな、、、」

 

「あ、、あの、、、さっきからお話している、ばしたっていったい?」

 

「仲間の女のことだよ、」

銀二さんは再びお弁当を食べながら僕に教えてくれた、、、、

  

「いい機会だから言っておくがな吉宗、俺達テキヤの世界にはあれこれめんどくせえ決まりは少ねえがよ、変わりに昔から大切な三つの戒めってのがあるんだよ、、、」

「三つの戒めですか?」

 

「おう、その一つが、ばひはるな、、、、、」

「ばひ、、はるな?」

「こいつは、売上金をちょろまかして、ネコババするなってことだ、、、」

銀二さんは右手の指でわっかを作りながら、真剣な顔で僕を見た

 

「二つ目が、たれこむな、、、、、」

「たれこむ、、、、、」

「そうだ、こいつは、仲間内のことは何があっても絶対に警察にちんころするなってことだ、、、、」

 

「ちんころ???」

 

「密告するなってことだよ、兄ちゃん、、、」

僕が首をかしげているのを見て笑いながら、山さんが教えてくれた

 

「そして最後に、ばしたとるな、、、、」

「こいつはつまり、仲間の女を取っちゃならねーってことだ、、ばしたとるな、こいつを破るのは何よりの重罪だ!、」

「ばしたとるな、、、、、、、重罪、、ですか」

 

「兄ちゃんは何にも知らねーんだな、ははは、、、、」

山さんは楽しそうに僕を見ながら話を始めてくれた

「昔から俺達テキヤって奴は、日本全国渡り歩いて生きてきたんだ、そんな旅の最中に家にいるおかあちゃんが他の仲間とできちまったんじゃ、安心して仕事にうちこめねーだろ」

「は、、、はい、、」

「仲間の女は仲間がしっかり守る、そういう意味で決まった掟だ、、、ばしたとるな、、てな、」

「仲間の女は仲間が守る、ですか、、、、」

僕は初めて聞かされる話を真剣に聞き入っていた、銀二さんはそんな僕を笑いながら見ると、お弁当のなかにあるウインナーを箸でつまんで持ち上げた

「吉宗、、、ばしたとるな、、、こいつを破った奴はな、昔だったらその罰として、親指かあれを詰められても文句は言えねえ!こいつはもっともきつい罰がまってたんだよ、、、、」

「親指か、あれ、、、、!?」

僕の背筋に悪寒が走った、、、、

「あの、、、、銀二さん、、親指か、あれの、あれって、、、、もしかして、、、?」

 

「ん?、、あれ?、、お前の想像するとおり、そう、これこれ、、、」

銀二さんは箸でつまんでいたウインナーを、僕の顔の前に突き出したあと、うれしそうにそのウインナーを自分の歯で根元から食いちぎった、、、、

 

「、、、、、、、、、、うぐ!、」

うれしそうにウインナーをむしゃむしゃ噛んでいる銀二さんを見つめながら僕は青ざめていた、、、、

(やっぱり僕は、とてつもなく恐ろしい世界に入ってしまったのではないか、、、、)

そう思った僕は、口から泡を噴出しながら、遠くを見つめて真っ青になって固まってしまった、、、

Kyouhu

「あれ!?、ちょっと刺激が強すぎたか、、、、、おい吉宗、今の親指かあれってのは、一昔前の話だぞ、、おい、、、吉宗、、、、、、」

 

「、、、おや、、ゆび、、、、あれ、、、おや、、ゆび、、、、あれ、、、、、、」 

銀二さんが慌てて話しかけてきたが、僕は恐怖のあまり、まったく耳に入らず、同じ言葉を呪文のようにつぶやきながら遠くを見つめていた、、、

 

「おいおい、俺が気をつけろなんて悪いこと言っちまったからか、、、いや、悪かったな、兄ちゃん兄ちゃん、大丈夫、大丈夫、、、ばしたとったり、下手打たなきゃいいんだからよー、お前さんがしっかり気をつけてれば、エンコ飛ばされることなんか無いって、ははは」

山さんは明るく笑いながら僕の背中をたたいてくれたが、その言葉は決して僕を安心させてくれるものではなかった、、、

「ばした、、、、おや、、、ゆび、、、あれ、、、ばした、、、、、おや、、ゆび、、、、あれ、、」

「おいおい吉宗ー、吉宗、、、そうだ、そうそう もうじきツンパとパイオツの余禄がまってんだぞー、余禄、余禄ー」

「ツンパ、パイオツの余禄、、、、ツンパ、パイオツの余禄ー」

銀二さんは、慌てて、その言葉を呪文のように僕の耳もとでささやいた、しかし僕の耳には恐怖の戒めが、頭にこびりついてしまって銀二さんの呪文を聞き入れる余地はなかった、、、

「ばした、おや、、ゆび、、、、ばした、、、おや、、ゆび、、、あれ、、、、あれ、、、」

「ツンパ、パイオツ、ツンパ、パイオツ、ツンパ、パイオツ、、、」

祭りが始まるまであとわずか、お大師さんの境内のすみでは、僕と銀二さんのそんな奇妙なつぶやき声がこだましていたのだった、、、、

続き
第36話 ツンパ、パイオツの余禄

イラストカットは近日更新します^^


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第一章 侠客鬼瓦興業」カテゴリの記事

コメント

テキヤ業界の隠語ってあるんですね。^^
ばした、ばひはるな、ちんころ…素人の前で会話されたら、チンプンカンプンですよね(笑)
指とかあれとかをチョン切られると聞いて真っ青になった吉宗君!
やっぱりどこかヤクザな掟があるんですねテキヤにも。きっと規律が厳しいんでしょうね?
でも、でも、持ち前の運の強さとド根性でその場その場を乗り越えていく吉宗君ですよね。
たまにキレイな人や、爆乳の人に鼻の下を長~くする…
そんな吉宗君も正直で素直でよろしい(爆)

投稿: 楽楽 | 2008年5月10日 (土) 22時51分

楽楽さんこんばんわー^^

コメントありがとうございます
むかーし吉宗くんのための資料として的屋さん関係の本を買いためていたのですが、かなりなくしてしまい先日ネットでたくさん買いあさりました^^

古いしきたりみたいですが、あえて紹介しました^^

刺激がちょっと強くてどうかな?何た思いましたが、ちょっと怖い部分も書いてしまいましたよー

指つめなんて、面白半分に書いてはいけないそう思いながらも、ついつい勝手に物語が動いてしまいましたcoldsweats02

次回はいよいよ、吉宗くんの鼻の下がさらにでれーっと伸びてしまう事件が、、
楽しみにしていてくださいね^^

投稿: 光一郎 | 2008年5月11日 (日) 00時26分

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