第75話 ソープランドなんて許せない
どれくらい泣いたか、、、我に帰ったときには、奥にいた数名のお客さんの姿はなくなっていた
「あ、、、!」
思わず飛び出した僕の声に、お慶さんが
「あら、やっと泣き止んだのね、、えっと、、吉宗くんだったっけ、、、」
「あっ!?す、、すいません、、、」
「ふふふ、まったく、面白い子ね、君って、、、」
「お、おもしろい、、ですか?、、」
「面白いじゃない、昨日の縁日でもそうだったけど、何ていうかさ、心が熱いっていうか、ふふふ、、、」
お慶さんはうれしそうに僕を見た後、隣のめぐみちゃんに
「ところで、さっきから気になってたんだけど、めぐみちゃん、、、あなた、このお兄さんとどういう仲なの、、、、」
「えっ?、、」
「えじゃないでしょ、、、、めぐみちゃん、正直におっしゃい、、、」
「あ、、あの、、、実は、私の大切な人、、、なんです、、、」
めぐみちゃんは恥ずかしそうに微笑むと、そっと僕の腕に手をまわした、、、
「大切な人!?、、まあ、言うじゃない、、」
お慶さんは目を大きく見開くと、改めて僕の顔を真剣に見た、、、
「確かになかなかの男前だけど、、、、でも、めぐみちゃんに、ここまで言わせるなんて、、、ねえ、君、どんなマジック使ったわけ?」
「ま、、マジック?」
「そうよ、、このお堅いめぐみちゃんを、どんな手を使って口説いたわけ?、、、」
「口説くって、別に、、、その、、、」
「お慶さん!!」
めぐみちゃんはちょっと怒った顔で立ち上がると、、、
「別に私は、吉宗君に口説かれたわけじゃありません、、、」
「えー?、、、、」
「吉宗君に出会った瞬間から、この人は運命の人だって、、、そう思って、、、」
「運命の人!?、、」
「あっ、、、!!」
めぐみちゃんは急に恥ずかしそうにうつむいた、お慶さんはそんな彼女をうれしそうに見た後、いたずらな顔で僕を見ると
「めぐみちゃんに運命の人なんて言われちゃって、、あなた、すっごい幸せものねーー」
その言葉に、僕もあわてて立ち上がると
「は、、はい!、、すっごい幸せ物だと思ってますです!」
直立不動でそう叫んでいた、、、
「あらまあ、自分から幸せ者だなんて、素直だ事、、、」
お慶さんが笑うのを横目に、めぐみちゃんはそっと僕にささやいた、、
「吉宗くん、本当?、、、本当に幸せって思ってる?、、」
「あ、あったり前じゃないか、、めぐみちゃん、、、」
「うれしい、、、」
ホンワカ~
僕とめぐみちゃんはお慶さんやみんなが見ていることも忘れて、ピンクのお花畑の背景を背に見詰め合っていた、、
「まあ、、二人そろって、幸せいっぱいだこと、、、、まいっちゃうわね、、、ねえ、、、、」
お慶さんは、思わず笑いながら栄ちゃんを見た、が、そこには四角い顔を引きつらせながらピンクのハンカチを噛み締めている女衒の栄二さんの姿が、、、
「なーにが、幸せいっぱいよ、、勝手に背景に花畑なんて浮かばせちゃって、冗談じゃないわよ、、!」
「え?、、、、」
「ヨッチーちゃんのことを心から愛しているのは、めぐっぺだけじゃなくてよ、、私だって出会った瞬間に運命を感じちゃったんだから、、、、それなのに、、キー、、く、悔しい!、、」
栄ちゃんは、僕とめぐみちゃんの幸せそうな姿を見ると、噛み締めていたハンカチをガリガリ食いちぎり、ついにはペロッとすべて飲み込んでしまった、、、
お慶さんは、冷や汗を流しながら、、
「ははは、栄ちゃんまで、、、複雑な三角関係だったのね、、、、」
呆れ顔で笑ったあと、僕のことを真剣に見た、、、そして、、
「でも、、君、、、、」
「あ、、はい」
「めぐみちゃんは私にとって、妹みたいな、とっても大切な子なんだからね、、、泣かせたりしたら、承知しないわよ、、、」
「は、、はい!!」
「そんな事言って、裏切って変なところ行ったりしてないでしょうね?、、、」
「え!?、、、変な所、、と、、おっしゃいますと?、、、、」
「この店の周りにある、ちゃらちゃらしたネオンのお店とかよ、、、」
「んぐ!?」
僕は、思わずがちがちに固まってしまった、お慶さんはそんな僕を見て楽しそうに、、、
「まさか、、行ってないでしょうね、、、、お風呂屋さんなんて、、、」
「お、おお、、お、、お風呂!?」
「そうよ、お風呂、、ソープランドよ、、、、」
「ソ、、ソーーーーープって、、あ、、い、、いや、、はや、、、あの、、あの、、、、」
「何、、どうしたの?、、急にしどろもどろしちゃって、、、」
お慶さんがいたずらな笑顔で追及してきたそのとき、隣にいためぐみちゃんが大声で、
「お慶さん!」
「えっ?、、あら、めぐみちゃん、どうしたの真っ赤な顔して、、」
「真っ赤じゃないです、、吉宗君はそんなところに行くような、人じゃありません!!」
「それはどうかしら?、、だってこのくらいの男の子って、行きたいんじゃない、そういうところ、、、」
「い、、行きたいかも知れないけれど、、、吉宗君は私と約束してくれたんだから、絶対にそんな所には行かないんです!、、、」
めぐみちゃんは必死にそう言うと、真剣な顔で僕を見た、、
「ね、、そうでしょ?、、、吉宗君、私との約束を破って、お風呂屋さんなんて行ったりしないよね、、、」
「えっ、、、、、、あ、、当り前じゃないか、、、、はははは、、」
僕はそう言いながら、彼女の顔がまぶしくて、思わず目をそらした、、、、
(ご、、ごめん、、ごめんよ、、めぐみちゃん、、、、、)
「やっぱり、愛する人が、ソープランドなんて行ったの知ったら、許せないでしょ、、めぐみちゃんも、、、」
お慶さんは、むっとした顔で腕を組むと、めぐみちゃんにそう尋ねた、、、僕はそんなお慶さんの怖い顔をこっそり見た後、今度は恐る恐る隣のめぐみちゃんを見た、
するとそこにも、お慶さんと同じ、怖ーい顔のめぐみちゃんが立っていたのだった、、そして、めぐみちゃんは一言、
「ぜーーーーったいに、、許せないです!!」
「、、、、、、、ぐっ!!、、、、」
僕は冷や汗をたらたら流しながら、無言でめぐみちゃんを見ると、ふっと昨夜銀二さんが言った
(風呂に行ったこと、間違っても、めぐみちゃんに話したりするんじゃねーぞ、、)
そんな言葉と、その後の銀二さんとの会話を思い出した、、
(バカ正直なお前の事だからよ、、、、白状せずにいられなくなっちまって口滑らすんじゃねーか、ちょっと心配になったからよ、、、)
(それは、もちろん、、、僕だって言いません、、、)
(あれは一夜の夢だ、、、、若頭も明日になったらその話には絶対に触れねえし、鉄には後で釘をさしておくからな、、)
(はい、、お、お願いします、、)
(俺も、追島兄いの二の舞は、もう御免だからよ、、、、)
(は、、はい、、、、え!?)
(お、、追島さんの二の舞っていったい?、、、、、)
(さっきの話の途中だがよ、、、追島の兄いがお慶さんと別れたきっかけ、俺が風呂に、、つまりソープランドにさそったのがきっかけなんだよ、、、)
「あっ!、、、」
(そうだ!、、そう言えば、銀二さん、、追島さんとお慶さんが別れた原因が、ソープランドだって、、、、)
「あの、、、お慶さん、聞きたいことが、、、、」
気がつくと僕は、お慶さんに尋ねていた、、、
「あら、、、なに?、、吉宗くん、、急に真剣な顔をして、、、、、」
(いけない、、こんな失礼なこと、、それにめぐみちゃんの前でこんな話題は、危なすぎる、、、)
そう思った僕は、思わず言葉をにごした
「あっ、、!?、、、、いや、、、な、何でも無いです、、、はい、、、」
「何よどうしたの?、、遠慮しないで言って御覧なさい、、」
「えっ!、、でも、、あの、失礼すぎる事なんで、、、だから、、、、」
「何?吉宗君、失礼って?、、、、」
「め、、めぐみちゃん!、、いや、、なんでも、、、」
そんな僕の様子にお慶さんはむっとした顔で
「ちょっと、、そんな中途半端に終わらせられたんじゃ、気になって仕方ないでしょ、、、この際何でも気にしないで話してご覧なさいよ、、」
「で、、でも、、、」
「話しなさい!!」
「は、、はい!」
お慶さんに叱られ、僕は思っていることを、思い切って話し始めた、、
「あの、、お慶さんと追島さんが別れた理由って、本当にソープランドが原因なんですか?、、、」
「えーー!?、、、」
お慶さんは一瞬目をぱちぱちさせながら、僕の顔を見た、、
「あーー、すいません、、変なこと聞いたりしちゃって、、いいです、こんなこと答えなくていいですから、、、ははは、、、」
僕は手をバタバタさせてごまかそうとした、、
ところがお慶さんは、真剣に僕を見ると
「だれ?、、、銀ちゃん?、、、、それって銀ちゃんから聞いたわけ、、、」
「あ、、いや、、あの、、、」
「隠さなくってもいいわよ、、、やっぱり銀ちゃんでしょ、、、」
「は、、はい、、、、」
僕の返事に、思わず、くすくすと笑い出した、、、
そしてしばらくしてそっと目をとじると
「あの子、まだ気にしてるんだね、、、あの時のこと、、、、」
小さな声でそうつぶやいた、、
「あの時って、あのー、、、、」
「銀ちゃんが鬼瓦興業に入ってきたばかりのころだったかな、、、、」
お慶さんは遠くを見つめながら、静かに話をはじめた、、、、
「そう、府中の競馬場で、たしか天皇賞だったかな、、、、追島のやつ、すごい万馬券当てちゃって、、たまたま一緒にいた銀ちゃんがね、、、」
(うおーーー、すっげえ、追島の兄い、配当、三万二千円、、すげえ、すげえ、大万馬券じゃねえっすかー!)
(おう、、どうだー、銀二、俺の実力思い知ったかーーははははーー!)
(すっげえー、追島の兄い、ねえねえ、ご祝儀でいいとこ連れてってくださいよーー、、、)
(いいところ?、、)
(いいところって言えば、すべるすべるしか無いでしょう、、、兄い、、いよっ、、太っ腹!)
「そんな訳で、追島のやつ、銀ちゃんを連れて、この川崎に繰り出したんだって、、、」
(それって、、何処かで見たパターンだ、、、、うぐ、、)
僕は思わず、昨夜の高倉さんと銀二さんの、そっくりな会話を頭に浮かべた、同時に青い顔でお慶さんに訪ねた、、
「あ、、、あのーー、お慶さん、、、」
「何?、、」
「それで、追島さんと銀二さんは、、、もしかして、ソ、ソープランドに?、、、」
「ピンポン、、正解、、、、」
お慶さんは眉間にしわを寄せながら、僕に指をさした、、、
「あの、、そ、それが原因で、追島さんと、、、、、ですか?、、」
「そう、、そう言う事、、、だってさ、私というものがありながら、そんな所に行くなんて、絶対に許せないじゃない、、」
「やっぱり、、許せないですか、、?、、、」
「当たり前じゃないの、ねー、めぐみちゃん、、貴方だって、もし吉宗君が、そんな所に言ったってしったら、絶対に許せないでしょ?、、、、」
お慶さんはめぐみちゃんを見た、僕もつられて彼女の様子を伺った、、、
「吉宗君が、、ソープランド!?、、、」
めぐみちゃんは真剣な顔で僕を見ると、ぐっと怖い顔で
「許せない、私も絶対、絶対、ぜーったいに許せないです、、、、」
そう叫んだのだった、、、、
(ぐわーー!、、やっぱりそうだよなーー、知らなかったとはいえ、もしも昨夜のこと、めぐみちゃんにばれたりしたら、いっかんの終わりだー!、、、)
僕は額から数本の青筋をたらしながら、心の中で恐怖におののいていた、、、
と、そこへお慶さんが、、
「分かった、吉宗くん、、そう言うわけだから、間違っても君は、そんな所行ったりしちゃ、だめだぞ、、、」
そう言うと、僕の肩をぽんぽん叩いて、めぐみちゃんに分からないように小声で、
「これから先は、絶対にね、、」
こっそりささやきながら、意味深なウインクをした、、
(えっ!?、、、、)
同時に僕は、昨夜ここへ来たときの僕たちが、明らかに以前の追島さんと同じ、そんな雰囲気をたーっぷり醸し出していたのに気が付いた、、
(お、、お慶さんは、僕たちが昨夜ソープランドに行ったこと、すべてお見通しなのか!?、、、)
僕は背中に寒ーいものを感じながら、真っ青な顔でお慶さんの事を見ていたのだった、、、、
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