第86話 吉宗君助けて…
保育園バスの後部座席に深々と腰掛けた西条竜一は、まるで罠にかかった獲物の品定めをするかのように、めぐみちゃんの事をジーっと見据えていた…
「えっ!?…」
めぐみちゃんは慌てて運転席の三波を見た、するとそこには今までのさわやかな笑顔の三波ではなく、鋭い冷めた表情の奴の目が、バックミラー越しに光っていた…
「みっ、三波先生、ど、どういうことですか?…」
「どういうこと?」
「だって、さっき子供が乗ってるって!…」
「あれ?俺、そんなこと言いましたっけ?…」
「そっ、そんなことって…それじゃ、騙したんですか…」
「騙す?、おいおい、えれえ人聞き悪い言い草だな、」
「………」
めぐみちゃんは、とっさに僕がイケメン三波に飛び掛っていった時の事を思い出した…
(そ、そういえばさっき吉宗君、よくもマライアさん…って……それじゃ、、マライアさん…真理絵さんが言ってた男って…)
「やっぱり、あなただったの…吉宗君が言ってたとおり、真理絵さんにひどいことをした人って…」
「真理絵?…」
三波はタバコくわえながら、不思議そうな顔でめぐみちゃんを見た
「おい?何だよ、お前も真理絵のこと知ってんのかよ?…ははは…あの田舎出のホルスタイン女か、あれは最高の女だったな、すっかり俺に夢中で、よーく稼いでくれたっけな…」
「…ひ、ひどい…あなたって、やっぱり吉宗君の言ってた通りひどい人だったのね…」
「吉宗、吉宗ってさっきから、うるせえんだよ!…」
「………」
めぐみちゃんは無言で三波を見たあと、ハッとした顔を浮かべ
「…それじゃ、あなた、春菜先生も、真理絵さんのように利用しようと…」
「春菜か、ああ、あれも田舎出のお人よしのバカ女だからな、これからたっぷり稼いでもらうつもりだ、くっくくくく…」
「……さ、最低…あなたって最低の男…」
「…最低か、ははは、まあ、今のうち何とでもぬかしとけ…西条さんが楽しんだ後は、お前、その最低の俺にやられる運命なんだからな…」
「西条さんのあと?…」
めぐみちゃんはあわてて振り返った、と、そこには何時の間にか、間近にぬっと立っている西条の姿が…
「!?」
西条はその大きな腕で、いきなりめぐみちゃんの腕を握ると、力任せに彼女をその胸に引き寄せた
「なっ、何するんですか!?」
「何?…アホやな姉ちゃん、ええことするに決まってるやろ……」
不気味に笑いながらその大きな顔をめぐみちゃんに近づけると、そのままめぐみちゃんをバスの後部座席へと押し倒した…
「ちょっと、何ですか、やめて!!」
「ほう、またその困った顔がええのう、そそられるわ……」
「放してよ!この変態!」
めぐみちゃんは叫ぶとどうじに、西条の鼻の頭を拳で強く殴りつけた
「うぐあ…痛てててーー!」
西条の鼻から真っ赤な血が…
「放せって言ってるでしょ!」
「うーん、かわいい顔して威勢のええ姉ちゃんやのう、ぐははははは…」
西条は鼻血を流しながら、運転席の三波に向かい大声で
「おーい、三波、こらあええで、我もたまにはええ女プレゼンしてくれるやないか…」
笑いながらめぐみちゃんを睨みすえてきた…イケメン三波はミラー越しに目を光らせると
「西条さん、終わったら、俺にも頼みますよ…」
ニヤニヤ笑いながら、ウィンカーを左につけて、大通りから狭い路地の倉庫街へと入り、やがて小さな古びた倉庫の前でバスを停止した…そして後ろの西条とめぐみちゃんを見ると
「西条さん、自分も朝からその女狙ってたんすよ、まじで終わったらやらせてくださいよ、頼みますよ…」
「おう、分かったから、我は早く外に出とらんかい、そのボケ面でじっと見られとったら、楽しめんやろが、アホ…」
「す、すいません…」
あわてて頭をかくと、未練がましく押し倒されためぐみちゃんを見ながら、バスの外へと出て行った…
「ほれほれ、これで邪魔者は消えたでー、さあ、たっぷり楽しもうやないか、姉ちゃん…」
「ちょっと、楽しむって何よ、ふさけんじゃないわよ!…」
めぐみちゃんは再び西条の下から拳を振り上げた、しかし今度は軽く交わされ、西条にその腕をわしづかみに握られてしまったのだった…そして西条はめぐみちゃんのもう一方の腕も押さえつけると、その顔を彼女の顔に近づけ、クンクンとにおいをかぎ始め
「うん、においも格別ええわ…、まだ青臭い女やが、顔もええし…」
同時に、その大きな手のひらでめぐみちゃんの胸を鷲づかみにすると
「乳もちょうどええ、こらあ久々のヒットや、ぐあははははーー」
「やめてよ、ちょっと何するのよ…」
「何ってさっき言うたやろ、ええことするって…ほれ、まずはチューからや、チューから、ははは…」
「き、気持ち悪い顔近づけないでよ、放してよ!」
めぐみちゃんは必死に西条の下でもがいた、しかし
「ええかげんに、暴れるのはやめい言うとるやろが!」
その怪力と巨体に無理やり押さえられ、やがて身動きが出来なくなってしまった…
「どうや、もうあきらめて、姉ちゃんも楽しんだほうが得やで…」
「楽しむって、冗談じゃないわよ、この変態が!」
「おいおい、そう変態、変態って言わんといてくれんか?…これでもワイは傷つきやすい性格なんやでーー」
西条は静かにつぶやきながら、大きな舌を出すと、べろっとめぐみちゃんの頬を舐めてきた…
「止めてよ…お願いだから、止めて…」
「アホか、姉ちゃん、ここまで来て止める訳が無いやろ…どうや、姉ちゃん、あんたが静かにしとったら、ワイも優しく終わらしたるんやでー、ええ加減あきらめいや、んー?…」
「じょ、冗談じゃないわよ、だ、誰があんたみたいな男に…」
めぐみちゃんはそう言うと、再び西条の下でもがき始めた
「ええかげんにさらさんかい!!」
バシッ!
「ギャッ!!」
西条はその大きな手のひらで、めぐみちゃんの顔をおもいっきり張り飛ばし、その衝撃で彼女の上半身は後部座席から下の床に強く叩き付けられた…そして鬼のような形相でバスの床に倒れた彼女を見据えると
「我もかたぎの女ちゃうやろがー、おー!…何時までも調子暮れさらすな、アホたれ!…テキヤの女風情が、おーこら!」
力任せにめぐみちゃんの髪の毛をつかんだ、が…
「ん?…なんや、どないしたんや?…」
頭を強く打った衝撃で、気を失いかけている、彼女に気がつき、一瞬きょとんとした顔を浮かべていた…
そんな西条竜一の下で、めぐみちゃんは遠のく意識の中、必死に心の中で叫び声をあげつづけていた…
(助けて…吉宗君……)
(吉宗君…助けてー!…)
(助けて…た、す、け…て……よし、むね…く…ん……………)
何度も何度もそう叫びつづけながら、やがて彼女は完全に意識を失ってしまったのだった…
(助けて、吉宗君!!……)
「!?」
突然、めぐみちゃんの悲痛の叫び声が、僕の頭の中で響いてきた…
「めぐみちゃん!?…めぐみちゃん!?…」
僕はおばちゃんから奪い取ったママチャリを全力でこぎながら、愛のテレパシーで彼女の危険を感じ取ったのだった…
「どこだー、めぐみちゃーん!めぐみちゃーん!!」
彼女を連れ去った黄色いバスには、熊井さんを襲った恐ろしく凶暴な男が乗っている、そんなことは百も承知だった、しかし、愛するめぐみちゃんの危機に、僕はまったく恐れることなく、必死にバスを探し続けていた…
「めぐみちゃん、めぐみちゃん、絶対に僕が行くからー、僕が助けに行くからーーー!」
(神様ーー、どうか、僕が行くまで、めぐみちゃんを守ってくださいーー!)
心の中で懸命に祈りながら、ひたすら大通りをママチャリで走り続けていた…
と、そんな最中、倉庫街へ入る小さな路地を通りすぎようとした僕の頭に、
(助けて、吉宗君!………)
ふたたび彼女の心の叫びが、響いてきたのだった…
あわてて自転車のブレーキを握ると、あたりをきょろきょろと見渡した
「めぐみちゃん!?…この近くにいるのか?…めぐみちゃん…はぁ、はぁ…」
僕は静かに目をとじると
(めぐみちゃん、僕だよ、どこ?何処にいるんだい?)
まるでSF小説の主人公のように、彼女に対し必死に愛のテレパシーを送り続けた…その時だった、左方角から、かすれながら小さくなっていく彼女の心の叫びが…
(よ、し、む、ね…くん……たす、け、て…………)
(めぐみちゃん!?…)
(た、すけ…て………)
「こっちかー!?」
僕は大声で叫びながら、倉庫街へと向かう小さな路地に目を向けた…
(この先に、めぐみちゃんが、めぐみちゃんがいる…)
「待ってろ、めぐみーー!今、助けに行くからーーーーー!」
大声で叫ぶと同時に、ママチャリを急発進させ、鬼のような形相で路地の中へ入っていった
その先に、今までに経験したことも無い、恐怖の闘いが待ち受けていることを知っていながら……
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コメント
行け~~~吉宗
待ってろ、めぐみーー!って、
格好いい
作者さ~ん
マー君が出走するレースの情報お願いしますです
投稿: けんさぁ | 2009年6月17日 (水) 10時36分
けんさぁさん

ここ一番では吉宗君もカッコいいことをするみたいですね
でも、相手は恐ろしい西条…どうなってしまうのでしょう
マー君予定というか、調教師の先生は続戦をかんがえているようです
一応私の予想では、7月5日福島ラジオNIKKEI杯 GⅢのような気が…
けんさぁさんのお膝元京都競馬場へは、秋になりそうですね、結果決まったらお知らせしますね…
ちなみに先週の土曜日は愛馬トランスワープが見事な勝利をおさめました
今年に入って愛馬軍団絶好調です
投稿: 光一郎 | 2009年6月17日 (水) 13時29分