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2009年8月 6日 (木)

第92話 吉宗くん曇り無き剣

「よくもめぐみちゃんを…許さん、貴様は絶対に、許さん…」

僕は怒りにパンチパーマを逆立てながら、角材を上段に構え、ぐっと西条を睨みすた…

「ほう、上段とはのう…、我も棒振りの経験があるようやの……」

西条は不気味に笑いながら、手にしていた木刀を、再び僕に突きつけた

 

「許さない…絶対に許さない!!」

「きえぇーーーーーーっ!」

叫ぶと同時に、僕は力いっぱい西条めがけて打ちかかっていった…しかし、西条は僕の気合の打ち込みにまったく動じる様子を見せず、

「フン!!…」

ガツッ!

鼻で笑いながら、手にしていた木刀で、軽く僕の一の太刀を交わすと、すさまじいスピードの返し技で、僕の喉元めがけて強烈な突きを打ち込んで来た…

「うぐぁー!」

あまりに速い突きに、完全にやられた!…そう思った時、なぜか僕の体が無意識に反応、間一髪でその突きを交わしたのだ…

あわてて西条の間合いから飛びのいた僕の耳に、桃さんの野太い声が響いてきた…

(気をつけよ、この者、そうとうの使い手であるぞ…)

「えっ?…」

 

「ほう、今のワイの突きを交わすとは…我もなかなかやるやないか…」

西条は一瞬うれしそうに笑うと、今度は木刀を両手で握り、僕に向けぐっと正眼の構えを見せた…

(うっ…、構えにまったく隙が無い…この人、本当に強い!…どっ、どこから攻めれば…桃さん…桃太郎侍さん…)

僕はとっさに、憑依している桃さんに訴えかけた…すると再び僕の頭に、野太い声が…

(倅殿…まずは落ち着かれよ…気を鎮め、無の境地になるのじゃ…)

「無の境地?…」

(そうじゃ、あの者は強い…まずそなたの心の雑念を振り払い、無になるのじゃ…)

「僕の雑念?…」

 

「何をごちゃごちゃ一人でしゃべっとるんや?…ワイを倒して、お前の女を助けるんやなかったんか?…」

「!?」

「そうや、考えてみたら、あの女はもうお前の女とちゃうのう…ワイの女や…はははは…」

「うぐぉ…おのれーーーー!」

僕は西条の言葉で、再び怒りの炎を燃え上がらせた…

 

(この男が、めぐみちゃんを…大切な…めぐみちゃんを…)

僕の脳裏に、この悪鬼西条によって、美しい体をメチャメチャにいたぶられている、愛する彼女の光景が浮かんで来た…

(めぐみちゃんが…この悪魔によって、汚されてしまった…汚されてしまった…)

そう思うにつれ、だんだん僕の西条に対する怒りは、真っ赤に燃えあがる憎しみへと変わっていった…

(いかん!…邪念を捨てよ…!)

桃さんの声がかすかに届いていた、しかし僕は

「よくも…よくも、めぐみちゃんを…きえぁーーーーーーーーーー!!」

憎しみを抑えきれず、西条に向かって再び打ちかかっていた

「きえぁーーーーーーーーーーーーー!」

「うおぉー!」

ガツッ!

僕の角材と西条の木刀が力いっぱい激突、二人はそのままつばぜり合いとなって、顔を突きつけあった…そんな最中、西条は不適な笑みを見せ 

「悔しいか…ワイは我の女を犯した男やで、悔しやろ…悔しかったら、もっと怒り狂ってみい…」

「ぐおーーーー、おのれーー、絶対に許さない!!」

僕は目を血走らせながら、力任せに角材を押し付けた…

 

(いかん!力で勝てる相手では無い…邪念を捨てよー!!邪念を捨てよーーーー!!)

 

「はっ!?」

桃さんの大きな声に、僕は一瞬我に帰った…と、同時に今度は目の前の西条が

「ぐおぉーーーーーー!」

大声を発しながら、すごい力で僕の事を突き飛ばし、すさまじい速さの打ち込みを僕の脳天めがけて仕掛けてきた

「うわっ!」

脳天に一撃、今度こそ終わった…そう思った時だった…、再び無意識に僕の体が、まさに紙一重でその剛剣を交わしたのだ

ブーーーーン

西条の剣がすさまじい音を立てて空を切った… 

「ほう、またしても交わしたか…」

 

(馬鹿者!…あと半歩踏み込んでいたら、そなたの脳天はパックリ割られて、脳みそが四方八方、飛び散っていた所じゃ…)

「はあ、はあ…」

僕は桃さんの声に、思わず青ざめていた…

(よいか、まずは邪念を捨て去るのじゃ…でないと、わしも働くことができぬ…)

「桃さんが働く?…」

(なんじゃ、それでは御主、今までの紙一重で交わしていたのが、ワシの力だと気づかなかったのか?…)

「あっ!?」

 

(良いか、そなたの純粋に愛するものを守りたい、その心がワシを現世に呼び出すという奇跡を生み出しているのじゃ…その御主が邪念に満ち溢れ、憎しみまみれになっていては、ワシも動けんのじゃ…)

「邪念?…憎しみ?…」

(そうじゃ、恨み、憎しみの心を捨て、無の境地になるのじゃ…)

「でも、あの男は、愛するめぐみちゃんを…」

僕は再びぐっと西条を睨んだ…

 

「何や?さっきから我は何をべちゃくちゃしゃべっとるんや?…」

「うぐぉ…」

「そうそう…一つ、おもろいこと教えたるは、我の女な…あれは処女やったで…くっくく…」

「ぐおーっ!!」

僕の心に再び憎しみの炎が… 

(馬鹿者!相手の言葉に心乱すでない、邪念をすてよ!!)

「でっ、でも…めぐみちゃんが!…めぐみちゃんの美しい純潔が…」

(それがどうしたというのじゃ?…)

「えっ!?」

桃さんの吐き捨てるような声に僕はハッとした…

(美しい純潔がどうしたというのじゃ?…そなたの愛の心は、その程度のものだったのか?…)

「…!?…」

(その程度のことで、心乱すほど、そなたの愛は薄っぺらだったのか?…んっ?…)

桃さんの心の声に、僕は目を大きく見開いた…、同時に、めぐみちゃんとの面接での出会いから、縁日での涙の告白…仕事を終えて戻った時の優しいめぐみちゃんの笑顔…幸せな一コマ一コマが、僕の脳裏にほんわか~っと、蘇って来たのだった…

 

「そうだ…そうだよ…たとえ、目の前の狼にひどい目に合わされたって、めぐみちゃんは、めぐみちゃんじゃないか…」

(分かったか?倅殿よ…)

「そう、めぐみちゃんは、めぐみちゃんなんだ…何があったって、僕の彼女への愛の深さは絶対に変わらないんだ!」

(そうだっ!…、天に誓って絶対に変わらないんだ!!…)

そう思った瞬間、今まで逆立っていた僕のパンチパーマが、すーっともとの6ミリ4ミリへと戻っていった…そして気がつくと僕は、澄み切った青空のように清らかな表情で、じっと目の前の西条を見つめていた…

 

「なっ、何や我…急に…、おい、ワイは我の女を犯した男なんやで…」

西条は不適に笑いながら、ふたたび僕を挑発してきた…しかし、僕はキラキラ輝く瞳のまま

「そんな事は、たいした問題ではありません…」 

「なっ、なんやと!?」

「たとへ貴方が、彼女にどんな事をしたとしても、僕のめぐみちゃんに対する真実の愛は変わらないんです…」

「あー?」 

「それに、桃さんに気づかせてもらったんです…大切なことは憎しみではなく、真実の愛だということを…、だから僕は真実の愛のため、彼女を助けるためだけを考えて…あなたと闘います!!」

僕はそう言うと、角材を正眼に構え、その剣先を静かに揺らしながら、じっと西条を見た…

「なっ、何を綺麗ごとを、そんな物嘘や!…自分の女を犯された相手に、憎しみを持たんなんぞ、できる訳が無い…我は嘘つき野郎や!!」

どうしたことか、僕のキラキラ輝く瞳に、西条は異常なくらい動揺し始めていた…僕はゆっくりと剣先を揺らしながら、

「真実の愛の力には…憎しみなど適わない…そう適わないんです…」

「なっ、何!?…うぐっ…」

西条はその直後、ふっと悲しげな目を僕に向けた… 

「やはり、あなたは悪い人では無い…あなたの目は、本当の悪い人の目ではありません…」

僕は静かに西条に向かって語りかけていた… 

(うむ、見事じゃ倅殿よ…これぞ無の境地…後はこのワシに任せよ!!)

桃さんの声に、僕はそっとうなずいた…

 

西条は首をぶるぶると横に振ると、手にしていた木刀をぶんぶんと振り回した、そして再び鬼のような顔で僕を見ると

「ワイが悪い人か…そうでないか…我のようなガキに解ってたまるか…解ってたまるか…」

ぐっと眉間にしわを寄せると、今度は上段にその木刀を構えた…

「遊びは終わりや…この一撃で、今度こそ我を地獄に送ったるわい…」

 

「…めぐみちゃんを救うため…僕はあなたを倒す……」

  

「こっ、このガキがーーーーーーーーー!!」

西条は大声で怒鳴りながら、襲い掛かって来た…そしてその上段からすさまじい速さの剛剣が僕の頭めがけて振り下ろされた

ガツッ!!

鈍い木刀の音が倉庫街の夜空に響いたあと、一瞬あたりはシーンと静まり返った…

 

「なっ、何っ!?」

完全に僕の脳天に直撃したと思われた西条の剣先は、気がつくと地面に向かって打ちつけられ、そして、そこに居たはずの僕の姿が消えていたのだ…

「そんな、アホな…ワイの渾身の一撃が!?…ぐおっ!?」

西条はあわてて、振り返った、その一瞬だった

「きえぁーーーーーーーーーーーーー!!」

夜空に響きわたる奇声と共に、電光のような速さの僕の突きが、西条の胸元をめがけて襲い掛かっていた

グヴァシーーーーン!!

「うわあぁーーーーーーーー!」

夜空に西条の唸り声が響いた…

 

 

 

 

「兄貴ーーーーー!!」

離れた所から、金髪の鉄の歓喜の雄たけびが、僕の耳に飛び込んできた…

「兄貴、兄貴…やったー、すげえ、すげえよ…兄貴!!…」

「えっ!?」

僕は鉄の声にハッと我に返って、あたりをキョロキョロ見渡し、そこで信じられない光景を目にした…

「えっ?えっ?…えーーーーーっ?…」

何と僕の足元には、無意識に打ち出した僕の突きによって、白目を向いて気を失っている西条竜一の体が、無言で横たわっていたのだった…

 

「なっ、何ーーーーーーーーーーー!?」

僕は突きの構えのまま、大声で驚きの声を上げていた…

何と僕は無の境地に入った直後、あのスキンヘッドの熊井さんですら適わなかった、悪鬼西条竜一を、一撃で倒してしまっていたのだったのだった…

 

「兄貴ー、すげえ…すごすぎる……やっぱ俺の兄貴だーー!!」

鉄が涙と鼻水まみれの顔で、僕に擦り寄ってきた 

「か、勝った…僕は勝ったのか?…」

「勝ったんすよ…、兄貴…勝ったんっすよ…」

「勝った…本当に勝った…」

僕は張り詰めていた緊張から、その場にしゃがみこんだ…そして、 

「あっ!?…め、めぐみちゃん…めぐみちゃんは?…」

あわててひばり保育園のバスに目を向け、ハッと驚きの顔を浮かべた…

「あっ!?…」

「………」

そこには、バスの入り口で、じっと泣きながら、無言で僕を見つめている、めぐみちゃんの姿があったのだった…

続き
第93話 めぐみちゃんの唇kissmarkへ…

イラストカットは近日アップします^^

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第一章 侠客鬼瓦興業」カテゴリの記事

コメント

よっしゃ~happy02good

でもでも作者さんsign01
めぐみちゃんがどうなったか、わからないままじゃないですか~sad

投稿: けんさぁ | 2009年8月 7日 (金) 09時49分

けんさぁさん

このラスト、けっこう悪質ですねcoldsweats01
書いてる私も、そりゃないだろーって、思わず叫んでいましたーsadsweat01

それにしても吉宗くん、いつの間にかSFになってしまってますねsweat02

投稿: 光一郎 | 2009年8月 7日 (金) 16時56分

毎日クリックしてますよ(笑

ストーリーといっしょにイラストも頑張ってください!
気長に待ってますから(笑

投稿: 四番サード掛布 | 2009年8月17日 (月) 22時50分

四番サード掛布さん

ありがとうございますーcrying
実は今日アップしたかったのですが、別の仕事が立て込んでいてできませんでした…coldsweats01
明日中には仕上げて新しいお話アップしますね

イラストも改めて頑張ります…sweat01

投稿: 光一郎 | 2009年8月18日 (火) 03時08分

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