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2009年11月 5日 (木)

第99話 吉宗くんはたいした男…

「おっ、おい、どうしてだ…なんで吉宗のやつが…」

追島さんはススだらけの顔で、お慶さんに尋ねていた、

「ユキのことを助けようと…夢中で中へ…」

「ユキを助けるって…、ユッ、ユキはもうここにいるだろうが…」

お慶さんは小さくうなずくと、青ざめた顔で燃え上がる建物に目を向けた

「あの子、まだ、何も知らずに、中でユキのことを探してるんじゃ…」

「あっ、あの煙の中でか?…」

「そうよ、きっと必死にユキのことを…」

「だっ…、だとしたら、途中であきらめて、引き返してくれてればいいんだが…」

追島さんの言葉に、めぐみちゃんが小さく首を横に振った…

「吉宗君は…引きかえす人じゃないです…」

「えっ?…」

「吉宗君は…、吉宗君は、ユキちゃんを助けるまでは、絶対にあきらめたりしない…そういう人です…」

そう言いながら立ち上がると、

「知らせなきゃ…吉宗君にユキちゃんの事を知らせてあげなきゃ…」

ふらふらとした足取りで、建物の入り口付近に向かって歩き始めていた…

「め、めぐみちゃん?…」

「知らせるんです!!吉宗君に知らせるんです!!」

「知らせるって、中はすでに火の海なんだぞ!…」

「それでも、知らせるんです!!」

めぐみちゃんは追島さんの制止を振りはらうと、夢中で燃え上がる建物の入り口に向かって走っていった…

 

「吉宗君!!…吉宗くーん!!」

「なっ、何!?」

叫びながら近づいてくるめぐみちゃんを、あわてて消防隊員たちがとり押さえた…、

「コラ、君…何を考えてるんだ…危険だから下がりなさい!!」

「知らせるんです!中にいる吉宗君にユキちゃんが無事だって知らせて、戻って来てもらうんです!!」

「なっ、何を無茶なことを…こんな中に飛び込んだりしたら、君の命まで!…」

「でも、このままじゃ吉宗君が…吉宗君が…」

「しっ、しかし…もう火は玄関の近くまで来てるんだぞ…」

「それでも、知らせるんです!吉宗君に知らせるんです…だから、放してください!」

「ダメだ!、あのような危険な場所に君のような女性では無理だ!…」

と、その時だった、

  

「せやったら、ワイがいっちゃる…」

 

「えっ!?」 

聞き覚えのある声に振り返ると、そこには、いつの間に手に入れたのか消防隊のヘルメットをかぶった西条さんの姿があった…

「ええか、吉宗は死なせたらあかん男や…、ワイの命にかえても、吉宗は助け出しちゃる…」

西条さんはそう叫ぶと同時に、めぐみちゃんと消防隊員の横をすり抜け、そのまま燃え上がる保育園の中へ飛び込んでいってしまったのだった…

 

「なっ、何だ!?…だっ、誰だ今の隊員は?…」

消防隊員たちは慌てて顔を見合わせたが、スーツに消防ヘルメットという西条さんの奇妙ないでたちに気がつくと

「何だあの男はー、おいコラ!ちょっと待ちなさーーい!!」

口々に叫びながら、西条さんの後を追いかけ建物の中へ突入していってた…

と、その直後だった…ガシャガシャガシャーーーン!

大きな音と共に、西条さん達が飛び込んだ入り口付近を残し、保育園の建物の大半が崩れ落ちてしまったのだ…

「キャーーーーー!!」

あたりいっせいに、悲鳴のような叫び声が響きわたった…

 

少しして、西条さんが呆然とした顔で、崩れ残った保育園の入り口から飛び出してきた…

「さっ、西条さん…」

めぐみちゃんは西条さんの青ざめた様子に、唇をわなわなと震わせると

「よっ、吉宗くーーん!!」

大声で崩れ落ちた建物に向かって叫んでいた…

「あなた、吉宗君が、吉宗君が…」

お慶さんも泣きながら追島さんの胸に顔をうずめた、そしてその追島さんも

「あっ、あのバカが…無駄死にしやがって…ぐおっ…ぐおーーー」

すさまじい形相で泣き崩れていた…

「よっ、吉宗ーー!!」

「吉宗の兄貴ーーーー!!」

「ぐおーーー、吉宗ーーー!」

銀二さんも、鉄も、熊井さんも…みんなが悲しみに泣きくずれていた…

  

「吉宗君…吉宗君の…バカ…バカ…みんなを残して死んじゃうなんて…バカ…」

めぐみちゃんはその場にしゃがみこむと、ぐしゃぐしゃの顔で泣きじゃくっていた…

 

そんなめぐみちゃんの元へ、間一髪、建物の下敷きにならずに助かった西条さんが、呆然とした顔で近づいてくると、

「なっ、何て野郎や…あの一条吉宗って男は…」

そう言いながら肩口を押さえて、その場に崩れ落ちた…

「さっ、西条さん!!」

めぐみちゃんは慌てて西条さんの元へ近づいた…

「わっ、わいやったら大丈夫や、大丈夫や…」

西条さんは肩の傷を押さえながら、うつろな目でめぐみちゃんを見ると、

「めぐみちゃん…あんたの彼氏やが…」

「あっ、はい…」

「たっ、たいした男や…」

「はいっ…、はいっ…」

「ホンマにたいした男や…」

西条さんの言葉にめぐみちゃんは泣きながら唇をゆがめると

「でも…、でも…、たとえ、たいした男でも、死んじゃったら何にもならないじゃないですか…、たくさんの人に悲しみを残して、死んじゃったら、何もならないじゃないですか……うっうううぇうぇ…」

めぐみちゃんの言葉に西条さんは、一瞬パチパチとまばたきをすると

「死ぬ?…」

不思議そうな顔を向けた…

 

「めぐみちゃん…死ぬってあんた、何を言うとるんや?…」 

「えっ!?…」

「ワイが言いたいのは、あの吉宗いう男は、ホンマに運の強いたいした男や、そういう意味でのたいした男やで…」

「運の強い?…」

めぐみちゃんはきょとんとした顔で西条さんを見た後、あわてて保育園の入り口に目を移した…そして

「あーーーー!?」

大きな声を上げながら、目をキラキラと輝かせた…

めぐみちゃんの目線の先には、消防隊員のタンカの上に、大口をおっぴろげたバカづらで、仰向けに倒れながら救出されている、僕の姿があったのだった…

Kyuusyutu99_2   

「よっ、吉宗君!!」

めぐみちゃんは涙をいっぱいにためながら、僕のもとへ走りよっていった…

 

「あっ!、君はたしか、さっきの!?…」

消防隊員の一人がめぐみちゃんに気がつくと、顔のススをぬぐいながら微笑んだ…

「あの、吉宗君は、吉宗君は!?…」

「ああ、彼だったら大丈夫、軽い脳振とうを起こして寝ているだけです…」

「脳振とう?…」

めぐみちゃんは目をパチパチしながら腰をおろすと、僕の頭に出来た巨大なたんこぶを見て思わず目を丸くした…

「なっ、何?…この大きなたんこぶ!?」

「ああ、これね、玄関を入ってすぐの所に大きな柱がありましてね、そこへおもいっきり頭をぶつけたようですね、君の彼氏は…」

「玄関の柱に?…」

めぐみちゃんはポカンと口を開け、消防隊員のことを見た

「どうやら、彼、火事場に飛び込んだのはいいものの、勢いあまって玄関入り口の段差につまずき、目の前の柱に頭をぶつけて、そのままそこで気絶してしまったようです…、お陰で燃え上がる建物の中には入れなかったようで……」

消防隊員はそう話しながら、バカづらで気絶している僕を見て、必死に笑いをこらえていた…

「それじゃ、吉宗君は、玄関でつまづいたおかげで無事に?…」

「はい、もしも、あそこで転んで頭をぶつけていなかったら、きっと今頃は…」

消防隊員はそういいながら、無残に崩れ落ちてしまった保育園の建物に目をやった…

「西条さんが言っていた、運が良いって、そういうことだったの…」

めぐみちゃんは建物を見ながら、そっと目をとじると、はぁ~っと小さなため息を一つついた…、そして再び視線を僕に向けると  

「吉宗くん!…」

うれしそうに微笑みながら、そっと僕の手をにぎりしめた…

 

「よかった…本当によかった…」

めぐみちゃんはポロポロと涙をこぼしながら、それからずっと僕のそばに寄り添っていた…

そして僕は、そんな彼女の暖かい手のぬくもりを感じながら、大口を開けたバカ面で、いつまでも幸せそうに、眠り続けていたのだったのだった…

Yssimune99nemuri

続き
第100話 素敵な恋…へ

イラストカットは近日アップします^^

Megulank_2
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第一章 侠客鬼瓦興業」カテゴリの記事

コメント

ぁはははhappy01

どんくさっhappy01

笑かすっhappy01

さすが吉宗っnote
かっこいいだけでは終わらへんなっsmile

投稿: けんさぁ | 2009年11月 6日 (金) 10時56分

けんさぁさん
やっぱり吉宗くん、結末はこんな感じでしたねhappy01
とりあえず第一幕の山場は乗り越えてちょっとホッとしている所です

第二幕は笑い笑いで行こうと思ってますので、楽しみにしていてくださいねhappy01

それから予断ですが
明日東京10レース ラドラーダちゃんが走ります
まず勝ち負けは確実です…
詳しくはお馬さんのコーナーにてsmile

投稿: 光一郎 | 2009年11月 6日 (金) 17時37分

こんばんは。
ご無沙汰してましたー!
吉宗君は全部読ませてもらってますよ~
ハラハラドキドキの展開でしたね。
吉宗君、運が強くてカッコイイです。
ちょいとマヌケなところがまた面白いですね~

投稿: 楽楽 | 2009年11月11日 (水) 19時11分

楽楽さん
ごぶさたしてましたー^^
掲示板のほうも実はちょくちょくお邪魔してましたが、なかなかカキコできませんでしたーcoldsweats01
近々愛馬近況と新しいイラストを添えて遊びにいきますね^^

実のところ次のお話で、またお楽さんたちが登場なんておもっていたところなんです
(本当に本当です…happy01
ぜひ楽しみにしていてくださいね^^
第一章仕上げまであと少し、いまじっくりと吉宗くんたちと心で会話しているので、出来次第続きアップしますね^^

投稿: 光一郎 | 2009年11月11日 (水) 22時51分

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