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2009年12月25日 (金)

第103話 めぐみちゃんとミヤマクワガタ… 

「ちょっと、待って下さーい!」

僕は最近やっとはき慣れて来た、セッタという草履に足を入れながら、銀二さんに叫んだ…

「何だ?吉宗…お前も行くのか?…」

「はい、一緒に迎えに行って挨拶をしておいた方が良いって、岩さんが…」

「挨拶か…それもそうだな、マサの野郎、機嫌を損ねると、たちの悪い所があるからな…」

「たちの悪い所ですか?…」

「ああ、普段はおもしれえ男なんだが、怒らすとちょっとな…」

銀二さんは笑いながら、門の外へむかった

(怒らすと、たちが悪い…)

僕は額から数本の青筋をたらしながら、銀二さんの後を追いかけた…

 

「あ、あの銀二さん…、一つ聞いて良いですか?」

「あー?」

「さっき、岩さんが話してた、武州のミヤマクワガタって、あの、いったい?…」

「ああ、マサの野郎の、若い頃のあだ名だよ…」

「あだ名?……」

「ああ、本名は白鳥 正義っつうんだけどよ、ガキの時分から、娑婆と少年院を行ったりきたりの繰り返しでな…、この町に住んでいながら、めったに姿を見れねえってんで、天然記念物のミヤマクワガタみたいな野郎だって、そう呼ばれてたんだよ…」

「しょっ、少年院を行ったりきたりって…、そっ、それじゃ、やっぱり怖い人なんですか…」

「怖いなんてもんじゃねえよ…、その昔は悪中の悪だった男だからな…」

「悪中の悪!?…」

「まあ、俺も、けっこう悪さしてきたけどよ、マサの野郎は、その遥か上を行ってやがったな…ハハハ…」

「銀二さんの上を行くって…」

僕はいつの間にか数十本の青筋を額にたらしながら、ごくりと恐怖のつばを飲み込んだ…

銀二さんはそんな僕の様子に気づくと、慌てて手を横に振りながら

「おいおい、お前がそんな緊張することねえって、昔の話だからよ、昔の…」

「はっ、はあ…昔の話…、ですか…」

「ああ、今じゃだいぶ丸くなってるから、怒らせさえしなきゃ、まじで面白い野郎だよ…怒らせさえしなければな…」

笑いながら駅の方に向かって蟹股で歩いていった…

 

「怒らせなければ…か…、これは気をつけないと…」

僕は頭に長い角をはやした恐ろしい形相の、武州のミヤマクワガタと呼ばれる男の姿を想像しながら、銀二さんの後を追いかけていった…

 

 

 

その頃、駅裏の人気の無い路地裏では…

「うぐぇ…、すいません…すいませんっす…」

腕にドクロの刺青を入れた男達が、ボコボコに腫れ上がった顔で、必死に土下座をしていた…そして、男達の視線の先には、身長160センチの体に不釣合いな大きなパンチパーマ頭の、武州のミヤマクワガタこと、白鳥正義(しらとりまさよし)の姿があったのだった…

 

「謝るぐらいなら、始めから絡んでくるんじゃねーよ…」

ミヤマクワガタのマサは、ドクロ男達の前にヌッとその大きな顔を突きつけると、中にポツンと配置された小さな目で睨みすえた…

「すいません…すいません…まさか、ミヤマのマサさんだったなんて、気がつかなかったもんですから…」

「勘弁してください…どうか、勘弁してください…」

男たちは、ボロボロと涙を流しながら、地べたに頭を擦り付けた…、しかし、ミヤマのマサは近くにあったレンガを握りしめると

「ざけんな、この野郎…」

ドクロ男たちの頭上高く、そのレンガを振り上げた… 

「ひえーーー、助けてくださいーー!!」

と、その時だった…、ミヤマのマサは振り上げたレンガをぽんっと後ろに頬リ投げ、男達の前にしゃがみこんだ…

「昔の俺だったら、あいつで、てめえらのドタマかち割ってただろうな…ハハハ…」

「……」

「ついてたなお前ら、こうしてやりあった時が、昔の俺の時じゃなくて、今の俺の時でよ…」

ミヤマのマサはそう言いながら、そっと男達の前に手を差し出し、やさしく微笑んだ…

「えっ!?…あの…」

「昨日の敵は今日の友だ…ほら…握手で仲直りだ…」

「握手で仲直り?…」

「ああ、仲直りだ、ほれ…」

「あっ、ありがとうございます!!」

ドクロの一人が、大慌てでマサの手を握った…

「握手で、仲直り~♪~、握手で仲直り~♪~」

ミヤマのマサは、奇妙な歌を歌いながら握った手を振り続けた…ドクロ男達も仕方なくそれに合わせるように

「はい、なっ、仲直り~♪~、なっ、仲直り~♪~、はは、ははは♪~…」

引きつった顔で、一緒に歌い続けていた…

ミヤマのマサは、しばらく歌いながら握った手を振り続けていたが、突然その手を止めると

「さてと、仲直りも済んだところで、一緒にご馳走でもべしゃりに行くか…」

ニヤーッと不気味に、その小さな体に不釣合いな巨大な顔で笑っていたのだった…

 

 

 

「吉宗くーーん!」

駅に向かう道中、僕の後から、聞き覚えのある可愛い声が近づいて来た…

「待ってー、吉宗くん!…はあ、はあ…」

「あっ、めぐみちゃん…」

「もう、ひどいよ…ずっと呼んでたのに…」

「えっ?あっ、ごめん…、考えごとしてたから…」

「考え事って?」

「うん、今から駅に迎えに行く人のことをね…」

「迎えに行く人?」

 

その時だった、

「おーい、何やってんだよー、遅いぞ吉宗ーー!」

少し前を歩いていた銀二さんが大声で僕に声をかけた… 

「あれっ、銀二さんも一緒だったんだ…」

めぐみちゃんは、そう気づくと、

「おはようございまーす」

可愛く微笑みながら、頭を下げた… 

「おーう、めぐみちゃん、学校かい?…、制服姿も可愛いなー、ははは…」

「やだー、銀二さんったら…」

めぐみちゃんは照れくさそうに笑ったあと、僕の方に目を向けた…

「吉宗君…、さっきはごめんね…」

「えっ?」

「私のパパ…、相変わらず頑固だからさ…」

「ああ、いや…しかたないよ…」

「パパッたら、吉宗君のこと全然分かってないくせに、ひどい事ばかり言って、あったまきちゃう…、あの後も部屋でガミガミ怒鳴りちらしてさ…」

めぐみちゃんは、ハゲ虎刑事の事を怒りながら、僕達と一緒に歩いていた…、しかし、少したって、ふっと首をかしげると

「ところで、吉宗君、銀二さんも一緒に、いったい何処に行くの?」

思い出したように尋ねて来た…

 

「ああ、駅にね…」

「駅?…あっ、そういえば、さっき誰かを迎えに行くって言ってたよね…」

「うん、あの、ミヤマクワガタさんって人を…」

  

「ミッ、ミヤマクワガタ!?…」

 

突然、めぐみちゃんは表情を変え、慌てて銀二さんに顔を向けた…  

「銀二さん、ミヤマクワガタって、もしや!?…」

「ああ、そのもしやだよ…」

銀二さんはそう言うと、ニッとめぐみちゃんに笑顔を見せた…

「うそー!!マーちゃんが出て来たのー!?」

めぐみちゃんは、嬉しそうに目をキラキラ輝かせた… 

「あっ、あの、めぐみちゃんも、知ってる人だったの?…ミッ、ミヤマクワガタさん…」

「えっ、あっ…うん…うん…」

彼女は何故かぎこちない顔で僕を見た後、ポッと頬をピンクに染め静かにうなずいた…

 

(えっ!何だ?…どうしたんだめぐみちゃん…ミヤマクワガタの名前を聞いたとたん、急に様子が…?)

 

「マーちゃんが…、マーちゃんが……」

気がつくとめぐみちゃんは、潤んだ瞳で遠くを見つめながら、何度も小声で、そう呟いていた…

(えーー!?、おっ、おまけに、マーちゃんなんて、すごーく親しげに名前を!!…)

僕は今まで見せた事のない、そんな彼女の姿に、何か得体の知れない恐怖と旋律を感じはじめていたのだったのだった……

続き
第104話 握手で怖~い、お友達 へ…

イラストカットは近日アップします…

Megulank_3
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第二章 吉宗くんと懲りない面々」カテゴリの記事

コメント

拝見させていただきました。
応援ポチポチ!

投稿: アシュトン | 2010年1月 5日 (火) 05時41分

アシュトンさんポチポチありがとうございます
お返しにポチポチさせていただきました。
難しいブログを運営されていらっしゃるのですね…
超天然頭の私では…coldsweats01難しい~sweat01
 
息抜きにまた遊びにいらしてくださいね

投稿: 光一郎 | 2010年1月 5日 (火) 10時43分

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