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2010年1月 8日 (金)

第104話 握手で怖ーい、お友達…

「遅え…、あの野郎、いったい何処で油うってやがんだ…」

駅前のロータリーでは、きつい目をさらに吊り上げ、眉間をひくひくさせている銀二さんと、頬を赤らめながら、嬉しそうにあたりをキョロキョロしているめぐみちゃん…、そして、そんな彼女の様子を遠めに見ながら、得体の知れない恐怖に脅えている僕の姿があった…

(なんでだ…、どうしてめぐみちゃんは、ミヤマクワガタの名前を聞いたとたん、あんなに嬉しそうに、そわそわしてるんだ……)

僕は心臓をバクバクさせながら、恐る恐るめぐみちゃんに声をかけた…

「あっ、あの…めぐみちゃん…」

「……」

「めぐみちゃ……」

「……」

が、しかし、彼女はミヤマクワガタとの再会という喜びのせいか、まったく僕の言葉など耳に入らず、ひたすら幸せそうにあたりを見渡していた…

「はぁ~…」

僕は小さなため息をついた…

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「しっかし、あの野郎、何所行っちまったんだ…、ここで待ってるって言ってたのによう…」

銀二さんはイライラしながらタバコに火をつけると、隣のめぐみちゃんを見た

「めぐみちゃんも、せっかく待ってるってのにな…」

「うん…」

めぐみちゃんは小さく頷くと、そっと右手の腕時計に目をうつし

「残念だけど、次の電車に乗らないと…学校遅刻になっちゃうな…」

寂しげにカバンの中から定期券を取り出した…

「銀二さん、それじゃ、マーちゃんによろしく言っておいて下さいね…」

「ああ、伝えとくよ…、しかし野郎も、めぐみちゃんが待ってくれてた事知ったら、さぞ悔しがるだろうな…ははは…」

「それじゃ…」

めぐみちゃんは銀二さんに頭をさげると、振り向きざま僕を見てハッとした顔を浮かべ…

「あっ、吉宗君!……」

「えっ!?…」

「あっ、あの、それじゃ、またね…」

どことなくぎこちない笑顔で手をふりながら、駅の改札を抜け走り去っていった…

僕はそんな彼女の後ろ姿を眺めながら

(あっ、吉宗くん!…って、明らかに僕がいる事を忘れていた…、なっ、何で…、めぐみちゃんとミヤマクワガタさんの間にはいったい何が?…)

不安のあまり、思わず半べそをかいていたのだった…

 

 

その頃、ミヤマクワガタは…

「おばちゃん悪いなー、まだ開店前だってのに無理いっちまってよ…」

「いいのよ、マサちゃんの頼みなんだから、遠慮なくいっぱい食べとくれ、」

「ありがとうよ、おばちゃん…やっぱりここの鰻は世界一うまいなーははは」

銀二さんがイライラしながら待っているにもかかわらず、駅裏の小さな鰻屋さんで、極上うな重をほおばっていた…、そしてミヤマのマサの前には、顔を腫らしたドクロ軍団も、恐る恐る鰻重を食べていたのだった…

「どうだ、うめえだろ、ここの鰻…、幕末からの老舗だからよ、秘伝のタレも年期がはいってんだよ!」

「はい、まじうまいっす!」

「だろ、遠慮しねえで、どんどん食えよ、何つったって、握手で仲直りした間だからな!」

「あっ、ありがとうございます!…」

ドクロの刺青をいれた男達は、ミヤマクワガタ白鳥正義を見ながら

「武州のミヤマクワガタさんって、うわさじゃ半端ねえ極悪人って聞いてたけど、本当はやさしい気さくな人だったんだな…」

「ああ、喧嘩を売った俺達に、逆にこんなご馳走までしてくれてよ…人間がでかいんだな…」

小声でささやきながら、尊敬と羨望のなまざしを浮かべていた…

そんなこんなで、やがて気がつくと、ミヤマのマサとドクロたちの前には、食べ終わったカラの重箱が、高々と積み上げられていた

 

「いやー、食ったなー、食った、食った…どうだ、うまかったろ?」

「はい、まじ、うまかったです…」

「ご馳走様でしたー!!」

「おう、なんっつっても、握手で仲直りした中だからな…ははは」

ミヤマのマサは突き出したおなかをべしべし叩きながら立ち上がると、

「おばちゃん、お勘定ー」

スーツの胸ポケットから黒光りした鰐皮のブランド財布を取り出した、

「あいよー、極上11人前で、35200円ねー」

「おー、相変わらず安いなー」

マサは小気味よく返事しながら、隣にいたドクロの一人に持っていた鰐皮の財布を手渡すと…

「おう、そこのお前、これで代わりに払っといてくれや…」

「えっ?…あっ、自分がですか?」

「おう…、いやあ、食った食った…」

咥えた楊枝をシーシーさせながら、出口に向かって歩いていた

ドクロの男は受け取ったブランド財布を抱えてレジの前に向かうと、恐る恐る財布の中を覗き見て

「えっ!?…」

思わず首をかしげた…

 

「あっ、あれ?…あれれ?…」

男は必死に財布の中を調べてみたが、そこに紙幣らしきものは一枚も入っていなかったのだった…

「あっ、あのマサさん、ちょっと!?…」

「ん?…」

「あの、お金が……」

「ああ…わりい、細かいの持ち合わせネエからよ、足りない分は払っといてくれな…」

「細かいのはって…あの…」

男は再び財布の中を覗いた…、するとそこには数枚の百円玉と十円玉らしきものが姿を見せていた…

「細かいのは無いって、逆に細かいのしかないじゃねえかよ…」

ドクロ男は財布の中を眺めながら思わず呟いた…

「あ~?…お前、今何か言ったか?…」

「えっ!?」

振り返るとそこには、小さな体に不釣合いな巨大な顔でじっと睨んでいる、ミヤマのマサの姿が…

「何か言ったか?…」

「あの、お金が…」

男がそういいかけた時、近くにいた別のドクロ男たちが

「あっ、いや…、何でもないです…」

慌ててレジの男の下へ走りより小声で

「バカ…これ以上怒らせたら大変だろうが…」

そうささやきながら自分の財布から一万円札を4枚取り出し…

「後で割り勘だからな、お前ら…」

周りの仲間を見ながら、しぶしぶそれをレジのおばちゃんに差し出した…

「はーい、毎度ありがとう…、じゃ、二百円はおまけしとくね…」

おばちゃんはそう言って男から4万円を受け取ると、レジから5千円札を取り出した…

と、その時だった…出口近くでじーっとドクロ男達を見ていた、ミヤマのマサが一言、

「おつり、ちゃんと俺の財布に入れといてくれな…」

ニンマリ笑顔でそう言いのこし、咥えた楊枝をシーシーしながら、一人お店の外へと出て行ってしまったのだった…

「おっ、お釣り入れとけって…」

ドクロ男はおばちゃんから受け取った5千円札をもったまま、呆然と立ち尽くしていた…

104wa2

 

「ばっ、バカヤロウ…何が気さくでいい人だよ…やっぱり、とんでもねえ悪だったじゃねえか…」

「もともと、てめえがあんなのに因縁ふっかけるからだ…」

「ふざけんなこら、てめえらも一緒に…」

「バカ、俺達がここで喧嘩しても仕方ねえだろ、とりあえずここはこの財布を返して、はええとこずらかるしかないだろ…」

ドクロ男達は小声でささやきあいながら、鰻屋さんの外へ出た…、するとそこには何食わぬ顔で笑いながら、右手を出しているミヤマのマサの姿があった…

「どうだ、うまかっただろ、ここの鰻…」

「はっ、はい…美味しかったです…」

ドクロの一人が作り笑いを浮かべながら、5千円札の入った鰐皮の財布をマサに手渡した…、マサは平然とした顔でそれを受け取ると、今度はもう片方の手を男たちの前にヌッと突き出した…

「えっ?…」

男達は額から数本の青筋をたらしながら、

「あっ、あの…、マサさん…、その手っていったい?…」

「お前らの携帯番号…、今度は高級キャバクラ連れてってやるから…」

ミヤマのマサはそう言うと、右手を突き出したままニンマリ笑顔でじーっと立っていた…

ドクロの男達はその瞬間、大きく鼻の穴をおっぴろげながら、その場で金縛り状態におちいってしまった…

 

と、その時だった…

「てめえ、マサーーー!!」

男たちの背後から、ドスの聞いた怒り声が響いてきた…

「ん?」

気がつくと、そこには怒り頂点に達した鬼のような形相の銀二さんが立っていたのだった…

「てめえ、人と待ち合わせしておきながら、鰻なんぞべしゃってやがったのか!!」

「おう、何だ、銀二か!」

「銀二かじゃねえだろうが、どれだけ待ったと思ってんだコラ…」

「えっ!?」

ミヤマのマサは急に小さな目を大きく見開くと、

「あーー、そうか、お前と待ち合わせしてたんだよな…悪い悪い…」

「何が悪いだ、この野郎!」

銀二さんはそういいながら、マサの隣で金縛り状態になっているドクロの男達を見た…

「何だこいつらは?…」

「ああ、さっき知りあった、俺のお友達だ…」

「お友達~?」

銀二さんは待たされた苛立ちのせいか、ギロッと光る目でドクロの連中を見た…するとドクロの中の一人が…

「あっ!?…」

思わず銀二さんを見て、小声で他の連中にささやいた

「おい、やべえ…、あの人、鬼瓦興業の山銀さんだ!…」

「やっ、山銀さんって!…武州丸走連合の頭だった山崎銀二さんか!?」

「そうだよ、通称、火の玉銀二さんだ!…」

ミヤマクワガタのマサに加え、鬼のような形相の銀二さんの登場…おまけにその二人に挟まれ、ドクロの男達は脂汗を流しながらカタカタと震えていた…、が、やがて、そのあまりの恐ろしい状況に耐え切れなかったのか、突然その中の一人が

「ひええーーーーーーーーーー!!」

引きつった顔で奇声を発すると、その場から猛ダッシュで走り去ってしまった…、それと同時に、他の連中も

「助けてーーーーー!」

「殺されるーーーーーーーー!」

口々にそう叫びながら、その場から散り散りばらばらに消え去ってしまった… 

「あーー、待てコラー、まだてめえらの携帯番号聞いてねえだろうがーー!」

ミヤマのマサは、遠くへ逃げ去った男達に叫んだが、やがてチッとしたうちすると、銀二さんと僕の方に顔を向けた…

 

「銀二!…いきなり人相の悪いてめえが現れやがるから、美味しいお友達連中が逃げちまったじゃねえかよ……」

「美味しいお友達だ?…」

銀二さんは一瞬ぽかんと口をあけたあと、呆れ顔を浮かべ…

「美味しいってマサ、また得意のあれ、やったのか?…」

「んっ?…ははは、まあな、お陰でたらふく鰻重も食えたし、多少ふところもあったまったぜ…お前も、もうちっと早く来てたら、ご馳走してやったのによ…」

「バカヤロウ…いい年して、たかりなんぞ出来るか…」

「たかり?…おい銀二、人聞きの悪い事言うんじゃねえよ…今日のはたかりじゃなくて、天罰を食らわしてやっただけだ…、」

「天罰?…」

「ああ、あいつら、クソ生意気に人に因縁吹っかけてきやがったからよ…、むやみに人様に絡んだりすると、どういう怖い目に会うか…まあ、世のため人のために俺が代わって、正義のつむじをふるってやった訳よ……」

「正義のつむじ?…」

「おう、正義のつむじよう!!」

「バーカ、それを言うなら、正義の剣(つるぎ)だろうが…」

「えっ!?…つむじじゃなかったの?…」

「まったく、相変わらずバカだな、お前は、豚箱から出てきても、バカは治らなかったのかよ、ははは…」

「うるせえな、久しぶりに会ったのに、そうバカバカって言うんじゃねーよ、はははは…」

ミヤマのマサはそう言うと、なぜか嬉しそうにゲラゲラと声を出して笑いはじめた…、その表情は今までの怖い顔とは別人の、まるで純粋な少年のような、キラキラした笑顔だった…そして、気がつくと銀二さんも、マサという人の笑顔に吸い寄せられるように、何時しか少年のように笑っていた…

 

(銀二さん…さっきまであんなに怒ってたのに…)

僕は銀二さんの変化に戸惑いながら、純白のスーツにコートを肩から羽織った、まるで昔のギャング映画から出てきたようなミヤマクワガタのマサを眺めていた…

「んっ?…」

ミヤマのマサは、銀二さんの後ろの僕に気がつくと

「誰だおまえ?…」

眉間にしわをよせながら小さな目を光らせた…

「えっ!あっ!…」

僕はその小さな鋭い眼光に驚きながらも、

「はじめまして!…、いっ、一条吉宗です!!」

大声で叫びながら、何時しか身についてしまった、両膝に腕をのせて中腰で頭をさげる、この業界流の挨拶をしていた…

ミヤマのマサはそんな僕のことを、小さな目でじーっと見ていたが、やがて隣の銀二さんに顔をむけると

「いっいちじょう…よしむね?…」

首をかしげながら尋ねた

「いっいちじょうじゃなくて、一条吉宗…、うちの新人だよ、大人しいツラしてるが、なかなか根性の入った男だ…」

「ほう、銀二にそうまで言わせるとは、たいしたもんだなお前…」

「えっ、いや…そんな事は…」

「いやっ、たいしたもんだよ、銀二はめったに人の事、褒めたりしねえ男だからな…」

ミヤマのマサはそう言って笑いながら、僕の肩をポンとたたくと

「どうでもいいけど、その堅苦しい挨拶はやめねえか?…俺は高倉の若頭みてえに頭は固くねえからよ…」

「あっ、はい…すいません…」

「一条吉宗か…名前もいいけど、ツラも良いなお前…、俺は白鳥正義だ、マサさんでもマサちゃんでも、何て呼んでもかまわねえから、まあ、これからよろしくな…」

そう言うと、すっとその小さな体には不釣合いな大きな手を差し出してきた…、僕はあわててその手を握ると

「よろしくお願いします!!」

笑顔で握手をかわしたのだった…

 

「近くで見るとマジで男前だなお前…これはまさに武器になるな…」

「武器?…」

「いやいや、こっちの事…それより、握手でお友達だ…」

「えっ?…」

「握手でお友達~♪、握手でお友達~♪」

ミヤマのマサは僕の手を振りながら、うれしそうに奇妙な歌を歌っていた…

  

(銀二さんの言ってた通り、この人、怒らせなければ、とっても良い人なんだ…よかった…)

僕は今までの緊張からとかれ、ほっと安堵のため息をつきながら、いっしょに握りあった手を振っていた…

「握手でお友達~♪…握手でお友達~♪…、おい、吉宗っつったけ、お前も歌えって…」

「あっ…はい!…握手でお友達~♪、握手でお友達~♪」

「おう、うまいうまい…お前、歌もやるじゃねえか…」

「ありがとうございます…ははは」

僕は何時しか、武州のミヤマクワガタ、白鳥正義のペースに飲み込まれ、めぐみちゃんとこの人の関係は?という重大な事まで忘れ、ほんわかした気持ちで微笑んでいた…

「握手でお友達~♪、握手でお友達~♪」

「握手でお友達~♪、握手でお友達~♪」

まさか握手でお友達になってしまった、ギャング姿のこの男が、後に僕にとって、背筋も凍るような旋律の恐怖の元となるなんて…、その時僕は知るよしも無かったのだったのだった…

104wa3

続き
第105話 めぐとミヤマは…ちょめちょめな関係…

イラストカットは近日アップしまーすcoldsweats01

Megulank_3
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第二章 吉宗くんと懲りない面々」カテゴリの記事

コメント

なんじゃなんじゃsign02
めぐみちゃんとミヤマクワガタは
どんな関係sign02sweat01

ドクロくん達かわいそうsmile

投稿: けんさぁ | 2010年1月13日 (水) 15時22分

けんさぁさん
さてさて、ミヤマとめぐみちゃんの関係やいかに…coldsweats02
これから純粋な吉宗君がどんな事になっていくか、書いている私もドキドキです

実はこのミヤマのマサ…ちょっとデフォルメしていますが、モデルがいるんです…
出演前偶然私に電話してきて、「あっそうだ、あなた出てくださいね…」「何か知らんけど良いよ…」
と言うわけで出演交渉成立となってます^^

でも本人はこんな風にかかれてるなんて知らないのです…ばれたら怒られそうですcoldsweats01

投稿: 光一郎 | 2010年1月13日 (水) 16時19分

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