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2010年12月

2010年12月22日 (水)

第112話 お嬢の正体

大切なめぐみちゃんのために… 

めぐみちゃんが本当に幸せになるためなら、涙を呑んで彼女のことを忘れなければいけない…、そして、彼女のために真実の新しい愛をつかみ取らねばいけない…

ミヤマの正さんの策略とも知らず、僕は必死に自分にそう言い聞かせながら、明るい笑顔で仕事に励んでいた

「さあ、いらっしゃい、いらっしゃい…金魚すくい一回300円ですよー!」

 

そんな僕の様子を遠目に見つめる巨大な影が…

「あっ、あれが一条吉宗!?…」

それは京極森亀会、森山亀太郎会長だった…

「あれが…」

森亀会長は、大きな目玉をギョロギョロ動かしながら、しばらく僕を観察していたが、やがてそのタラコのような唇を横に広げるとひきつった顔で

「おいおい兄弟…、冗談はいかん…あれは別の一条吉宗やろう…」

隣にいる親父さんを見た

「別の吉宗?」

「そうや、ワイが言うとるのは、もっと厳ついもう一人の一条吉宗やで…」

「もう一人って、何言ってるんだ兄弟、うちに吉宗ってのは、あいつしかいねえぞ…」

「あいつしかおらんって…、そっ、それじゃ本当にあれが!!…」

森亀会長は巨大な口を、がぶぁーっとおっぴろげると

「んなアホな…、んーなアホな~!」

ガラガラ声で呟きながら、ドッスン、ドッスンと僕の方へ走りだしていた

 

「さあ、さあ、いらっしゃい、いらっしゃい…金魚すくい一回300円…一回さんびゃ…うおあ!?」

ドッスン、ドッスン、ドッスン、ドッスン!

巨大な地響きとともに、目の前の水槽の水が波打ち始め

「うわー、なっ、何だー、地震か~!!」

僕は大慌てで金魚の入った水槽を抑えた

ドッスン、ドッスン、ドッスン、ドッスン!

「お前が一条吉宗かー!」

今度は地響きに交じって、大きなガラガラ声が…、「えっ!?」 僕はそこで、地響きの正体が地震ではなく、巨大なおじさんが走り寄ってくる音だと気が付いた…

   Morikame1

「お前が、一条吉宗かと聞いとるんやーー!」

巨大なおじさんはがなり声で怒鳴りながら、僕の顔をそのキャッチャーミットのような両手で鷲ずかみにすると、そのまま夜空に向かって天高く持ち上げた

「どわーーー、なっ、なんれすかー急にーー!?」

突然の出来事に僕は首をびろーんと伸ばされた状態で手足をバタバタとさせた

「なんでやない、お前が一条吉宗かって聞いとるんやー!」

「はっ、はひ!…そうれすけろ…」

目の前に現れたお相撲さんのような男に恐れおののきながら、ひきつった顔で答えた

Morikame2

「ほんまかー、ほんまに、お前が吉宗かー」

「はひ、ほんまれす、ほんまれす…」

「なんちゅう…噂の侠客がこないな青年やとは…おっ驚きや~、この世の七不思議や~」

森亀会長は大きな目玉をぎょろぎょろ動かすと

「うーん、うーん…七不思議や…」

奇妙な唸り声を上げながら、僕を観察し続けた…

「おいおい、森亀の兄弟…、そんな乱暴に扱ったら、そいつの首が引っこ抜けちまうじゃねーか、はははは…」

背後から聞こえてきた、鬼瓦興業の親父さんの声に、森亀会長ははっとすると、

「おっ、すまんすまん…」

あわてて僕を地面に降ろし、再びうーんと唸りながら改めて僕を見た

 

「あっ、あの、親父さん…こちらの方は…」

僕は首長族のようにビロローンと伸びきった首で、巨漢の背後で笑っている親父さんにたずねた…

「んっ?…おう、この人はワシの兄弟分でな、森山亀太郎さんだ…、ほれ、しっかり挨拶せんか…」

「あっ、はひ…」

僕はあわてて両膝を開くと、

「初めまして、いっ、一条吉宗れす!」

少しだけなれた業界風の挨拶で恐る恐る頭を下げた…

「うーむ…これは驚いたわ、噂の一条吉宗いう男が、こんな普通の兄ちゃんやったとは…」

森亀会長はガラガラ声でつぶやくと

じーーーーーーーーーーーー!

その巨大な目玉を超至近距離に近づけ、顔、胸、背中、腕、足…そして股間、ありとあらゆる場所をぎょろぎょろ観察しはじめた

「あっ、あの、なんですか~、いったい僕に何かついてるんですか~」

「ええから、じっとしとれ!…」

「はっ、はひ…」

「うーん、うーーむ…」

会長はその後も、僕のあらゆる場所にギラギラ光る目玉を光らせ続けた

(なっ、なんだー、この恐ろしいおじさんは~、ぐおあ…息が、息が…)

恐るべき眼光の圧力に僕が思わず窒息しかかった、その時…

 

「うむ、ええやろう…!」

会長は突然、バシッとそのキャッチャーミットのような手で僕の肩をたたいた

「痛ーーーー!」

僕は、そのすさまじい衝撃に思わず脱臼しかけながら、恐る恐る森亀会長の巨大な顔面を覗き見て

「うえっ…」

目をぱちぱちさせた…

そこには、今までの恐ろしい形相から一転して、満足そうに笑いながら僕を見ている森亀会長の姿があったのだった

「うむ、一見頼りなさそうやが、よう見ると実にええ目をもっとる…、それに…」

後ろに立つ親父さんをチラッと見た後

「鬼辰の兄弟も認めて採用したほどの男や…うん、ええ、これやったら合格や、合格…」

「ごっ、合格?…」

「おう、合格や…」

「あの、合格っていったい?…」

「おーい、三郎ー!」

森亀会長はどすの利いたガラガラ声で、向かいの三寸の前にいる大きな顎の男に声をかけた

「はい、会長御用で…」

「お嬢に伝えい、合格やとな…」

「えっ!合格って会長…」

デカ顎の男、森亀会のサブさんは慌てた様子で僕を見た

「まってください会長、合格って…」

「合格は合格や、はよう、お嬢にそう伝えい…」

「あっ、はい…」

会長に睨まれ、サブさんは恐る恐るその場から後づさりした…そんなサブさんに

「おい、サブちゃん、どうしたんだ?…」

小さな目をキラキラさせながら、ミヤマの正さんが近づいて来た

「なあ、サブちゃん、今、森亀会長、吉宗を見て合格って言ってたよな、なあ、なあ、それってもしかして…」

「うぐっ…」

デカ顎のサブさんはその場でじっとこぶしを握りしめていたが、やがて正さんの方へ顔を向けると

「そうや、会長が、あの吉宗いう兄ちゃんとお嬢の間を許した言うことや…うぐぐ…」

目にいっぱいの涙を浮かべながら、悔しそうにうなずいた…

「やっぱそうだったのか、はははー、これでガマお嬢と吉宗の野郎が、はははー」

「なっ、何を嬉しそうに笑っとんや、正やん…」

「あっ、悪い悪い、お嬢はサブちゃんにとっても憧れの人だったよな…」

「なっ、なんでや、会長…、あんな小僧を、少し見ただけやのに…、なんで合格だなんて…」

サブさんは呆然とその場に立ち尽くしていたが、

「こらサブー、われ何をぼーっとしとるんや!…はようお嬢を呼んでこんかい!」

森亀会長に怒鳴り飛ばされると、大慌てで境内の奥へと走っていった…

 

「こいつはナイスな展開になってきたぜー、親父のお墨付きで、吉宗とガマお嬢が晴れて結ばれるって訳だ、はははは…」

正さんはにやけ面をうかべると

「吉宗ーーー、うおーい吉宗くーん!」

ぴょんぴょんとスキップしながら、森亀会長と僕の方へ走り寄ってきた

「いやー、よかったなー吉宗!…これでお前にも真実の愛が誕生するぞー、ははは~」

「えっ?真実の愛?…正さんそれってどういうことですか?…」

「まあ、今にわかるからよ、いやあ、よかったよかった~」

正さんはへらへら笑いながら僕の頭をたたくと、隣にいる森亀会長のほうに顔を向け

「いやあ、参りましたー、さすがは新京極の森亀会長っすね、一瞬にしてこの吉宗という男の本質を見抜いちまうなんて…この白鳥正義、改めまして会長さんの眼力のすさまじさに感動しやしたー!」

してやったりという笑顔ではしゃぎまくった…

 

「正さん、正さん、どういうことですか?…真実の愛とか、合格とか、いったい何のことですか?…」

僕は小声で正さんに尋ねた

「んー?、そうかそうか、お前は聞かされてなかったんだな、いやいや実はよう…」

正さんは耳元で、ことの真相を僕に告げた…

 

「えーーーー!?こちらのお嬢さんが、僕のことをーーーー!?」

「そうよ、おまけに父親の森亀会長からも交際の許しが出たんだぞ!…いやー、よかった、本当によかったなー吉宗、ははははー」

「そっ、そんなこと急に言われても、僕、そのお嬢さんという方にもお会いしたことないし…そっ、それに…めっ…!」

僕は慌てて言葉を止めた…

「吉宗、お前、今めぐみって言おうとしただろう…」

「えっ、あっ…」

「いかん!…それはいかんぞ吉宗!…その名前を口にすると、お前も、めぐみのやつも深い悲しみに苦しむことになっちまうんだ!…」

「そっ、そうだった…ぼっ僕は、僕は…」

「わかるな吉宗…今はつらいことと思うが我慢するんだ、我慢して、その悲しみを乗り越えて、そしてこれから目の前に現れるガマお嬢…じゃなかった、会長のお嬢さんと真実の愛をつかみ取るんだ…」

「会長のお嬢さんと真実の愛?…」

「そうだ、森亀会長のお嬢さんと結ばれ、お前の本当の幸せをつかんでやるんだ…」

「えっ!?」

僕は思わず顔を赤らめながら、少し離れた場所でじーっと僕の様子を見ている、森亀会長に目を向けた…

会長は、何をぼそぼそしゃべっとるんや?という顔で僕たちのことを見ていたが、やがて境内の暗がりから走りよって来る人影にふっと目を細めた…

 

「お父ちゃん、サブやんの言うとったことって、本当?…、本当に許してくれるん?…」

会長の大きな背中に隠れ姿は見えないが、暗がりから現れたそれは女性の声だった…

「うれしいわー、やっぱりうちのお父ちゃんやわー」

女性の声はそう言いながら森亀会長の胸に抱きつき、うれしそうにはしゃいでいる様子だった…

「おいおい、お嬢、人前で何をするんや、はははは…」

「だって、ほんにうち、めっちゃ嬉しいんやもの…」

 

そんな会長と会長の背中に隠れて見えないガマお嬢の様子をじーっと見ていたマサさんは  

「ガマ親父とガマお嬢の抱擁か…くっくくくく…」

へらへらと薄ら笑いを浮かべながら、僕の背にそっと手をそえ

「ほら吉宗、お前にとっての真実の愛の始まりだ、さあ、ガマお嬢…、じゃなかった森亀会長のお嬢さんをやさしく迎えてやれよ…」

どんと二人の方へ突き飛ばした…

「あっ、ちょっと正さん!…」

僕がよろけながら、慌てて声をあげると 

「あれ?…その声は…吉宗はん?…」

「えっ?…」

「もしかして、そこにおるん?…」

会長の大きな背の向こうから、聞き覚えのあるきれいな声が…

「あれ…その声どこかで?…」

「あー、やっぱり吉宗はんの声やわー」

森亀会長の背中がふっと横にそれると同時に、僕の目の前に再びあの切れ長の目をした美しい女性の姿が映し出された…

Ojyou  

「あーー、あなたは、きょっ、京子さん!?」

「うれしいー、うちの名前、ちゃんと覚えとってくれたんやね、吉宗はん…」

そう、それは、ついさっき噴水の前で出会い、愛を告白されてしまった謎の美女、京子さんだったのだった…

「ほんまに嬉しいわー」

京子さんはほほを染めながら走り寄ってくると、そっと僕の腕を握りしめ

「吉宗はん、うち嬉しい…憧れの吉宗はんとの仲を、お父ちゃんにも認めてもらえて、すごーく嬉しいわ~」

その美しすぎる顔をすり寄せてきた

「あっ、あの京子さん…」

僕は突然の出来事に、顔を真っ赤にしながら呆然とその場に立ち尽くしていたのだった…

 

そんな僕と京子さんのことを、ひきつった顔で見ている男の姿が… 

「なっ、なんだ?…おい、吉宗…、だっ、誰?…おい、そのすんげえ美人、いったい誰?…」

それはミヤマの正さんだった…

「えっ、あれっ?あれれれ?…ちょっと森亀会長…、あのこちらのすんごい美人の方はいったい?…」

「んー?、なんや…これはわいの一人娘の京子やが…」

「一人娘って、それじゃ、あの…、この美しい人が、おっ、おっ、お嬢!?…」

正さんは京子さんのあまりの美しさに見とれながら、ひくひくと顔をひきつらせていた…そんな正さんのもとへデカ顎のサブさんが

「おーい、正やん、すまんすまん、さっきの写真あれは間いやったわー」

「えっ?間違え!?」

サブさんは胸ポケットから、正さんに見せた森亀会長の女版写真を取り出すと

「いやー、この写真なあ、実は会長が韓国旅行の飲み屋でふざけて撮った写真やったわー」

「なーーー!?」

「ほんまのお嬢の写真はこっちやった、こっち…」

サブさんは森亀会長の女装写真の後ろから、もう一枚の写真を取り出すと、正さんの顔の前に突出した、そこには本物のお嬢、京子さんが清楚な着物姿で写し出されていたのだった…

「どえーーーーー!!」

正さんは改めて本物のお嬢に目をうつすと

「なんでサブちゃんーーーーーーーー!!」

夜空に向かって悲痛の絶叫をあげたのだったのだった……

(続き 第113話 お嬢は俺の物 へ…)

Megulank_3
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good↑侠客☆吉宗くんの他、楽しい

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