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2012年1月 6日 (金)

第116話 吉宗君、さらば僕のおちんちん

「ああ、最低だ~、僕は最低のスケベ男だぁ~…。」

バンの後部座席、ぎっしり積み込まれた荷物の隅で、僕は恨めしそうに自らの股間を見つめていた

「ああ、どうして僕のここは、節操がないんだ…、めぐみちゃんの悲しい思いを知りながら、あんな所でカチカチに大きくなってしまうなんて…最低のスケベ男だ~」

「お前、さっきからスケベだの、最低だのって、何をぶつぶつ言ってんだ?」

運転席の銀二さんが振り返った

「だって銀二さん…」

「だってもクソもねえだろ、あんないい女に好きって言われたうえに、おもいっきし抱きつかれてんだぞ、そらあチンボだっておっ立つに決まってんだろうが」

「で、でも、銀二さん、僕は京子さんに真実を言えないまま、スケベ心をむき出しにしてしまったんですよ。くそう、それもこれも、この節操のないこいつのせいだ~」

僕は力任せに自らの股間をぶったたき、「ぐおあ…」その場で悶絶しながらかがみこんだ。

「てめえの倅せめてどうすんだ、バカ…」

銀二さんは呆れ顔で笑ったあと、ほっぺをピンクに染めながら

「はあ、それにしてもいい女だったな~京子お嬢…。思い出しただけで俺の真珠入りのマグナムがうずいてくるぜ…」

にやけっつらでつぶやくと

「ああマジでいい女だった、俺の名刀正義だって、さっきから、ずーっとこの調子だぜ」

助手席のマサさんも、こんもりと盛り上がった自分の股間を指さした。

「ちくしょう、おまけにお嬢は京極森亀会会長の一人娘…、一緒になったら関西でも名だたるテキヤ一家の二代目襲名って、どでかいおまけつきだぞ…」

銀二さんとマサさんは口をそろえると、後ろを振り返り鬼のような形相で僕を睨み付け

「だいたいから何でお前なんだ吉宗!先輩の俺らを差し置いて、この野郎!かーっ、なんだかムカッ腹が立ってきやがる!」

「ひえー、そっ、そんなこと言われても…」

僕は思わず顔をひきつらせた

やがてバンは明りの消えたお不動さんの前を通過すると、見慣れた細い路地へと入っていった、だんだん会社へ近づくにつれ僕の鼓動はドキドキと高鳴り始めた。

(もう少しで会社だ、めぐみちゃん今頃どうしてるんだろう?…)

僕の脳裏に寂しげに店番をしていた、めぐみちゃんの姿が浮かんできた。僕はポケットから、無残に紐のちぎられた小さなお守り袋を取り出し

(めぐみちゃん、ごめんね…ごめんね…)

彼女からもらったそれをじっと見つめながら、目にいっぱいの涙を浮かべていた…

「おいっ、ついたぞ吉宗」

マサさんの言葉に顔を上げると、バンはすでに会社の車庫へと到着していた。

僕は慌てて車から降りると、キョロキョロと周囲を見回したが、あたりはひっそり静まり返っており、大きな犬小屋の中でセントバーナードの与太郎が退屈そうに、じっとこっちを見ているだけだった。

「はあ~」

小さなため息をつくと、バンの中から売れ残った金魚や、荷物を倉庫へ運び入れ、鬼瓦興業の建物の中へと入っていった。

 

「ほーい、みんなお疲れさん。」

玄関に入るといつものように、姐さんが笑顔で僕たちを迎えてくれていた。

「ただいまーっす!腹減ったー」

「今日はマサの出所祝いだ、お慶ちゃん達と一緒に、ご馳走いっぱい作ったからね、手を洗ったら早く居間に行きな…」

「俺の出所祝いっすか?姐さん、ありやとあっす、すっげえ感激っすよ!」

マサさんは小さな目を輝かせると、バタバタ廊下の奥へと入っていった

(お慶ちゃん達?)

僕は雪駄を脱ぎながら、姐さんの言葉に一瞬目を見開いた

「あっ、あの…姐さん。」

「なんだい、よっちゃん」

「お慶さん達って、もしかして、めぐみちゃんも…?」

「ああ、もちろん手伝ってくれたよ」

「それじゃまだ中に!?」

僕は玄関の雑巾で汚れた足を拭くと、心臓をバクバクさせながら奥へ向かおうとした、が、その時

「残念でした…、めぐみちゃんだったら、ハゲ虎が迎えに来てしぶしぶ帰って行ったよ」

姐さんの言葉に足を止め、「はあ~」と、ふたたび大きなため息をつくと、がっくりと肩を落としながら、とぼとぼと廊下の奥へ入っていった。

 

居間に入ると、何時ものように親父さんが座卓に腰かけ、得意の唐辛子で真っ赤になった刻みネギをバリバリ食べていた。そして、その周りには別の仕事(バイ)に行っていた、追島さんをはじめ、鉄や刺青の岩さんも座っていた。

「おう、なにぼーっと突っ立ってんだ吉宗、ほらお前も座れ、座っていっぱい食え!」

「はい!」

僕は親父さんに頭をさげると、鉄の隣のいつもの場所へ腰を下ろした。

「それじゃ、マサの出所を祝って乾杯!」

親父さんはそう言いながら、最近はまっている純生マッコリの入った大きなどんぶりを掲げたあと、がぶがぶと一気に飲み干し、隣に座っているマサさんの肩をグローブのような大きな手でばしばしとたたき始めた

「おうこらマサ、今度はくだらねえことで、パクられんじゃねーぞ、がはははは」

「くだらねえって、かっ、勘弁してくださいよ、親父さん…」

「馬鹿野郎、酔っぱらって素っ裸で一物されけ出したまま、女子高生追い掛け回したんだろが、思い切りくだらねえじゃねえか、はははは…」

「ちょっと追島の兄いまで」

真っ赤になってうろたえるマサさん、みんな大声で笑いながら、お酒を飲んだり、ご馳走をぼおばったりしていた。

いつもなら、僕にとっても大好きな楽しい時間だった。しかし今の僕は、京子さんと、めぐみちゃんのことが頭から離れず、呆然と座卓のご馳走を眺めていた…

「よっちゃん、どうしたのさ?さっきから、ぼーっとしちゃって」

気がつくと、僕の後ろに、大皿を抱えたお慶さんが立っていた。

「ほら、よっちゃん、あんたの好きな唐揚げだよ」

お慶さんは美味しそうに揚がった唐揚げ入りの大皿を、僕の目の前に置くと、そっと隣の席に腰を下した。

「さあ、食べてごらん、本当においしいんだから…」

「あっ、はい…」

僕はうなずくと、唐揚げを、そっと口の中に入れた…

(おいしい……)

「ねっ、おいしいでしょ、それ、めぐみちゃんがよっちゃんのために、心をこめて揚げた唐揚げだからね…」

「めぐみちゃんが!?」

あわててお慶さんを見たあと、僕は再び大皿に目をやった

(めぐみちゃんが…めぐみちゃんが僕のためにこれを…)

震える手で唐揚げを大皿からとると、僕は再びそれを口に入れた

(おいしい…、おいしすぎる…)

めぐみちゃん作、愛情のこもった唐揚げを噛み締めながら、僕は思わず目を潤ませていた

「何があったの?よっちゃん」

お慶さんはそっと僕にささやいた

「めぐみちゃんと何かあったんでしょ?」

「おっ、お慶さん?…」

「めぐみちゃんね、みんなの前で普通にふるまっていたけど、それを揚げながら泣いていたのよ…」

「泣いていた!?」

「やっぱり何かあったのね…」

僕は静かにうなずいた…

「だめだよ、よっちゃん。あんないい子泣かせたりしたら…」

「………」

「ほら、せっかくよっちゃんのために揚げてくれたんだから、しっかり食べてあげなさい、何があったか知らないけれど、早く仲直りするんだよ」

お慶さんの優しい言葉に頷くと、僕は唐揚げをもう一つ手にとり、そっと立ちあがった

「すんません、ちょっとトイレに…」

涙を隠しながら慌てて廊下へと出ると、僕は奥の暗がりへふらふらと歩きだした。僕の目からは涙が止めどなく流れ落ちていた…

(めぐみちゃんが、泣いていた…この唐揚げを作りながら、泣いていた…)

僕は廊下の途中で足を止めると、そっと窓の外を見た。視線の先にはめぐみちゃんの家があり、二階にある彼女の部屋は暗くひっそりと静まり返っていた。

「めぐみちゃん…」

僕はポケットに手を入れると、彼女が作ってくれた小さなお守り袋をとりだし、これをくれる時のめぐみちゃんの言葉を思い出した。

 

(恥ずかしいけど、私の手作りのお守り袋…、愛情たっぷりこめて作ったんだよ…中にお不動さんのお守りと、私からのメッセージが入ってるんだ…)  

(めっ、めぐみちゃんからのメッセージ?…)  

(あっ、ダメ~!恥かしいから、中は後で見てね…)

 

「そう言えば、めぐみちゃん中にメッセージが入っているって…」

僕は震える指先でお守り袋を開くと、お不動さんのお札の脇に折りたたまれた小さな手紙を取り出し、薄暗い廊下の明りにかざしてみた

「あっ…」

そこには、きれい文字で

『どうか吉宗くんが、毎日、元気に楽しく過ごせますように…』

めぐみちゃんらしい、優しい言葉か書かれていた…。そしてその脇には小さな文字で

『それから…私、神咲めぐみは、ずーっと大好きな吉宗くんのそばにいれますように…』

そう付け加えられていたのだった…

「めっ、めぐみしゃん…」

僕の目玉から、脱水症状になるのではないかと思うほどの、すさまじい涙が流れ始めた…

(めっ、めぐみちゃん!…めぐみぢゃん…)

「こんなに、ポクのことを思ってくれていたのら~!らろに、僕は、僕はめぐみしゃんを疑って、あんらひろいころを、言ってしまったのら~、めぐみしゃん!めぐみしゃん!」

僕は泣きながら顔を上げると、二階の彼女の部屋に目を向けた…

「めぐみちゃん、僕はめぐみちゃんが一番大切なのら~!君だけが大切なのら~!」

頭の中に、めぐみちゃんとの楽しかった思い出が、走馬灯のように蘇ってきた。

初めてであった面接の日…。一緒にべっこう飴を売った楽しいひと時…。西条さんとの対決の後、疲れて僕の肩に寄りそって寝ていた彼女のやさしい顔…。出会って間もないのに、僕にとっては数十年以上一緒に過ごしていたような、そんな数々の思い出を一つ一つかみしめるうちに僕の胸はどんどんと熱くなり始めていた…

とその時、薄暗かった彼女の部屋にパッと明りが!

「はっ、めぐみちゃん!」

(あの明りの部屋にめぐみちゃんが…めぐみちゃんがいる!)

そう思うと僕の心臓はバクバクと高鳴り始めた…

(会いたい…、めぐみちゃんに会いたい!)

気が付くと僕は裸足のまま外に飛び出し、夢中で彼女の家の塀の上によじ登っていた…

(めぐみちゃん!)

僕は無意識に手を伸ばし、彼女の部屋のバルコニーに飛び移ろうとした。とその時…

「はっ!?」

僕の頭の中に、京極森亀会の京子さんの美しい顔が…

「そうだ、僕は…僕はさっき、京子さんに愛の告白をしたままなのだ…」

京子さんの美しい笑顔が、頭の中でどんどん大きく広がりキラキラと輝き始めた。

しかし僕は、「違う!違う!!」ぶるぶるっと塀の上で首を横に振ると

(京子さんごめんらさい!ぼくはやっぱり、めぐみちゃんが一番大切なんれすら~!)

頭の中の美しい京子さんに向かって叫んだ…、すると京子さんは、それまでの美しすぎる笑顔から見る見ると恐ろしい鬼の形相へと変わりはじめ、同時に、彼女のバックには巨大な眼玉を見開いた森亀会長の怒りに満ちた顔と、京極森亀会のこわーい人たちが登場していた。

「ぐお!」僕は思わずのけぞり、思わず塀から落ちそうになった。

頭の中の京子さんは、めらめら燃える火炎の前で、まるでメデューサのように髪の毛を逆立てながら、右手には出刃包丁、そして左手にペットのワニガメを掲げると

(おどりゃ~!さっきの愛の告白は嘘やったんか~!)

目玉を血走らせながら僕に襲い掛かってきた

(うぐあーーー!)

僕はあわてて股間を握りしめると、青ざめた顔でバルコニーの先にある、明りのついた、めぐみちゃんの部屋に目をやった…

(ここで、あのバルコニーに飛び移ったら、めぐみちゃんに会える。でも、そのあとに待っているのは…)

僕の未使用の一物をおいしそうに食べているワニガメの様子がリアルに映し出された

(まだ、一度も使ったことが無かったのに…)

僕は寂しげに自分の股間をなでなですると

(ごめんね、僕のおちんちん…!)

自らのおちんちんに別れを告げ、ぐっと眉間にしわをよせ

「僕はめぐみちゃんを選ぶ!…たとえ、ぶった切られたって、めぐみちゃんを選ぶのら~!」

大声で叫びながら、めぐみちゃんの部屋のバルコニーへ向かって飛んでいたのだった…

つづき
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第二章 吉宗くんと懲りない面々」カテゴリの記事

コメント

楽しみに待っていて 1年ぶりに 再開したのに、月1回しか 更新しないのかなー

頑張って更新して下さい

投稿: | 2012年1月17日 (火) 21時09分

ごめんなさーいcoldsweats01
最低でも週一ペースで更新しますので、今回だけはしばしお待ちください。

ちょっとだけ言い訳ですが
ここしばらく内勤から外で一日重機に乗らされていて、帰宅と同時にバタンキューwobbly
でも明日か明後日で内勤の仕事に戻りますので、仕事の合間にせっせと書けます。sweat01
&出版した小説本の営業活動も、これから先は嫁さんに任せたのでひと段落、これで書かなかったらただサボってるだけなのでどんどん怒ってやってくださいsweat01

投稿: のぶ(光一郎) | 2012年1月18日 (水) 17時32分

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