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2012年1月21日 (土)

第117話 吉宗くんとめぐみちゃんの大きな壁

「ごめんやす~、ごめんやす~!」

鬼瓦興業の玄関で、大きな顎の男が声を張り上げた。そしてその後ろにはオシャレな帽子を深くかぶり、高級ブランド風の服をまとった女性が静かに立っていた

「はっ…はい…ど、ど、ど……、どなたっすか?」

廊下の奥から金髪の鉄が、のそのそと姿を現し、玄関の二人を得意の不気味な目でギロッと見た。同時に玄関の顎男は眉間にしわをよせると

「自分は京極森亀会のデカ顎のサブというもんです…鬼辰のオジキに御用の儀あってまいりました。」

右手を差出し、ぐっと腰を落とした。鉄は多少この業界の仁義という挨拶を知っているのか、あわてて腰を低く下げると

「こ…こ…これは、しっ、しっ、失礼しやした……じっ、自分は、おっ、おっ、鬼瓦興業の…、ふっ、不死身の、てっ…、鉄と…とっ、とっ、とっ……とっ…」

緊張のせいかいつも以上の、たどたどしい時間差口調で挨拶を返し始めた、するとそれまで顎男の後ろにいた女性が

「あー、あなたが吉宗はんの舎弟分の鉄はんやね…」

キラキラした笑顔で二人の間に割って入った

「…えっ?…てっ、鉄はん…?」

鉄は突然現れた女性の顔を見た瞬間、小さな目玉を見開いたまま、その場で固まってしまった…

鉄の前に割って入った女性、それは京極森亀会のお嬢こと、森山京子さんだったのだった…

「あなたが鉄はんや、うちすごーく会いたかったんやわ…」

「あっ、あっ、会いたかったって…えっ?えっ?…」

鉄はボロボロの歯を見せながら口を大きくおっぴろげると、顔を真っ赤にしながら京子さんを見つめた…

「あー、ごめんなさい、急にそない言うたらびっくりするのも仕方ないね…」

京子さんはあわてて帽子をとると

「うちは森山京子どす…、これから長い付き合いになるけど、よろしゅうたのみます」

相変わらずの美しすぎる笑顔で鉄に挨拶をした。

「なが…なが…長い付き合いって…はが、はが…」

鉄は頭から湯気をだしながらポーッと京子さんを見つめていた

「あら、うちったら相変わらずそそっかしいわ、初めて会ってこんな事いったって、鉄はんにはようわからんね、実はうち、吉宗はんのコレなんよ、ふふふ」

京子さんはそっと右手の小指を立てて見せた

「えっ、えーっ、あっ、兄貴の、こっ、コレって?…えっ?……」

鉄はつられるように自分の右手の小指を突き上げると、

「だって兄貴には……えっ?…えっ?…」

もう片方の手の小指もつき立てて、両方を交互にみながらパニック状態に陥っていた…

「鉄はんったらそんなに驚かんでもええやない…。そうやわ聞いてるよ、西条竜一との対決の時に、鉄はんが吉宗はんのピンチを救ってくれたんやてね」

京子さんはそう言いながら鉄に接近すると

「これは、うちからのお礼やわ…。ありがとう、うちの大切な人を救ってくれて、チュッ!」

鉄のほほにそっとキスをした。

Chu

「ほえっ!!」

よほどの衝撃だったのか、鉄は頭から機関車のような蒸気をポーッと吹き上げると、まるで旧型のパソコンのようにその場でフリーズしてしまった。

「あら、ちょっと、鉄はん?鉄はんったら、どないしたん?」

「……ジーー……、キュルルル………」

鉄はボロボロの歯をガチガチ動かしながら、完全にフリーズし続けていた、とそこへ居間から姐さんが姿を現し、玄関のお嬢を目にすると

「あらっ、もしかしてあなた京子ちゃん…やっぱり京子ちゃんね」

「はい、京子どす。鬼瓦の姐さん、ご無沙汰してました…」

「まあ、噂には聞いていたけど、本当に美人になっちゃって」

姐さんは嬉しそうに近寄り彼女の手をそっとにぎった

「あなたの話は、さっきうちの人から聞いたわよ、さあ、上がって上がって…あら、後ろにいるのはサブちゃんね、さあ、あなたも上がりなさい…」

「鬼瓦の姐さん、お言葉にあまえて、お世話になります!」

デカ顎のサブこと、京極森亀会の三郎さんは両手を膝にのせ、深々と頭をさげ礼儀正しく挨拶をした後

「ほいたら、失礼します…」

玄関脇に置かれた真っ赤なスーツケースと、その隣にあった水槽を抱え京子さんの後に続いて中へ入っていった。

「さあ、うちの人も首を長くして待っていたから、二人とも向こうで一緒に一杯やりなさい」

「ありがとうございます、鬼瓦の姐さん」

「何よ京子ちゃん他人行儀に…、昔みたいにおばちゃんでいいのよ」

「それじゃ、遠慮なく、鬼瓦のおばちゃん、しばらくお世話になります。」

姐さんに招かれながら京子さんとサブさんは、マサさんの出所祝いでにぎやかに盛り上がっている奥の居間へと歩いて行った。

 

 

「あっ!?」

それまでフリーズしていた鉄は、ハッと目を見開くと、慌てて京子さんの後ろ姿に目を向け

「なっ、なっ…なんだ、あの、めちゃめちゃ、すっ、すっげえ美人は!?…それも兄貴の、こっ、コレって…でっ、でも兄貴には、めっ、めぐみさんが…えっ、でも、あの美人は兄貴のコレって…」

興奮で鼻息を荒げながら、両手の小指を交互に見た後

「あーー、そっ、そうか!」 

「あっ、あの人は吉宗兄貴の、とっ、土地土地の女?…てことは、あの京都弁からして、にっ、西の女ってやつか!…。やっ、やっ…、やっぱり吉宗の兄貴だ…。あっ…、あんな半端ねえ美人が、にっ、西の女にいるってのに…、めっ、めっ、めぐみさんまで、もっ、モノにしてしまう。すっ、すっ、すっげえ~、すっげえよ~」

鉄はキラキラ光る眼で天を仰ぎ、ぐっと拳を握ると

「東にはめぐみさん、にっ、西にはあの美人の姐さん…きっと北と南にも、兄貴はいい女を隠してるに違いないぞ…。すっ、すっげえ…、あっ、兄貴…、おっ、俺は、一生あんたに付いて行きますぜ…」

僕に対して更なる忠誠を誓ったのだった…。

 

 

 

そのころ僕は…

まさか森亀のお嬢こと京子さんが、鬼瓦興業へ登場しているとは露知らず。めぐみちゃんへの熱いのみを胸に

「僕はめぐみちゃんを選ぶ!…たとえ、ぶった切られたって、めぐみちゃんを選ぶのら~!」

叫ぶと同時に塀の上から、めぐみちゃんの部屋のバルコニーめがけ決死のダイブをした。

…がっ!…

彼女のバルコニーのはるか手前で、距離の目測を誤ったことに気が付き

「あれ!あれれ!?」

遠くに見えるバルコニーをつかもうと、空中で手をバタバタさせたものの、どうにもならずそのまま顔面から落下、グシャーッ!という鈍い音とともに神咲家の庭先へ叩き付けられてしまったのだった…

「ぐおぁ~!!」

僕はガマガエルがダンプに踏みつぶされたような声を発しながら鼻血まみれの顔を持ち上げると、今度は近くにあった柿の木に向かって猛ダッシュ、夢中で木のてっぺんへとよじ登っていった

(めぐみじゃん…めぐみじゃん…)

僕の頭には、めぐみちゃんに会いたい、会って自分の真実の思いを告げたい、ただそれだけしかなかった…。自分がどれだけデンジャラスな場所にいるか、そして身の危険が刻々と迫っているか、そんなことも知らずに僕は柿の木のてっぺんからは少し離れた場所にある、めぐみちゃんの部屋へ声を張り上げた

「めぐみちゃん!めぐみちゃーん!!」

僕は明りのついた彼女の部屋を祈るような思いで見つめた、すると僕の熱い思いが天に届いたのか、部屋のカーテンがあわただしく開き、中から夢にまで見ためぐみちゃんが姿を現した

「吉宗くん!…、そこにいるのは吉宗くんなのね!」

めぐみちゃんもよほど嬉しかったのだろうか、裸足のままバルコニーへ飛び出すと

「ずっと待ってたんだよ、すごく会いたかったんだよ!」

瞳にいっぱいの涙をためながら、バルコニーの端へとやってきてくれた

「めぐみちゃん、ごめんよ…。僕、何も知らずに、あんな酷いこと言っちゃって、ごめんよ…」

僕は柿の木のてっぺんで泣きながら彼女に叫んだ。めぐみちゃんは首を横に振ると

「ううん、いいんだよ…、誤解が解けたんなら、それでいいんだよ…」

嬉しそうに微笑んでくれた

「めぐみちゃん…、めぐみちゃん…」

僕は柿の木にしがみつきながら必死に彼女のバルコニーへ手を伸ばした、

「吉宗くん!吉宗くん!」

彼女も僕の手をつかもうとバルコニーから手を差し出した、しかし、僕たちの距離は遠く、二人して手を取り合うことは出来なかった…。

近いのに遠い、二人の間に存在するその距離こそ、これから先、僕と彼女の間に訪れる試練の壁だったのだった…

そしてその二人の試練の壁の番人が、刻一刻と近づいていた…。

柿の木の下に近づいてくるギラギラ光る丸い物体…、真っ暗な庭先、電灯など無かったはずの柿の木の下で、その丸い光の物体はピタッと止まると

「この腐れガキが~!!」

突然僕に向かって怒鳴り声を上げた…。そう、その光の正体こそ、閻魔のハゲト虎、めぐみちゃんと僕の間に立ちはだかる最大の城壁…警視庁捜査四課で泣く子も黙る鬼刑事、神咲虎三の光り輝くハゲ頭だったのだった…

 

そして僕たちの間に割って入る人物がもう一人…、そう、それは美しすぎる城壁…。

 

その美しい城壁、新京極の森亀お嬢はその時、何も知らずに鬼瓦興業の居間で僕がトイレから戻るのを待ちわびていた…

「吉宗はんったら、どないしたんやろ?…せっかくうちが会いに来てあげたのに…」

お嬢は静かにつぶやくと、そっと彼女の後ろに置かれた水槽に目を向け

「もうじきあんたにも会わせたるからね…」

水槽の中に向かって語りかけた。すると中から一匹の獰猛そうなワニガメがゴツゴツした甲羅から、ニューっと顔を突き出し、獲物を求めるような鋭い目で口をパクパク動かしていたのだったのだった…

つづく

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