第二章 吉宗くんと懲りない面々

2012年1月21日 (土)

第117話 吉宗くんとめぐみちゃんの大きな壁

「ごめんやす~、ごめんやす~!」

鬼瓦興業の玄関で、大きな顎の男が声を張り上げた。そしてその後ろにはオシャレな帽子を深くかぶり、高級ブランド風の服をまとった女性が静かに立っていた

「はっ…はい…ど、ど、ど……、どなたっすか?」

廊下の奥から金髪の鉄が、のそのそと姿を現し、玄関の二人を得意の不気味な目でギロッと見た。同時に玄関の顎男は眉間にしわをよせると

「自分は京極森亀会のデカ顎のサブというもんです…鬼辰のオジキに御用の儀あってまいりました。」

右手を差出し、ぐっと腰を落とした。鉄は多少この業界の仁義という挨拶を知っているのか、あわてて腰を低く下げると

「こ…こ…これは、しっ、しっ、失礼しやした……じっ、自分は、おっ、おっ、鬼瓦興業の…、ふっ、不死身の、てっ…、鉄と…とっ、とっ、とっ……とっ…」

緊張のせいかいつも以上の、たどたどしい時間差口調で挨拶を返し始めた、するとそれまで顎男の後ろにいた女性が

「あー、あなたが吉宗はんの舎弟分の鉄はんやね…」

キラキラした笑顔で二人の間に割って入った

「…えっ?…てっ、鉄はん…?」

鉄は突然現れた女性の顔を見た瞬間、小さな目玉を見開いたまま、その場で固まってしまった…

鉄の前に割って入った女性、それは京極森亀会のお嬢こと、森山京子さんだったのだった…

「あなたが鉄はんや、うちすごーく会いたかったんやわ…」

「あっ、あっ、会いたかったって…えっ?えっ?…」

鉄はボロボロの歯を見せながら口を大きくおっぴろげると、顔を真っ赤にしながら京子さんを見つめた…

「あー、ごめんなさい、急にそない言うたらびっくりするのも仕方ないね…」

京子さんはあわてて帽子をとると

「うちは森山京子どす…、これから長い付き合いになるけど、よろしゅうたのみます」

相変わらずの美しすぎる笑顔で鉄に挨拶をした。

「なが…なが…長い付き合いって…はが、はが…」

鉄は頭から湯気をだしながらポーッと京子さんを見つめていた

「あら、うちったら相変わらずそそっかしいわ、初めて会ってこんな事いったって、鉄はんにはようわからんね、実はうち、吉宗はんのコレなんよ、ふふふ」

京子さんはそっと右手の小指を立てて見せた

「えっ、えーっ、あっ、兄貴の、こっ、コレって?…えっ?……」

鉄はつられるように自分の右手の小指を突き上げると、

「だって兄貴には……えっ?…えっ?…」

もう片方の手の小指もつき立てて、両方を交互にみながらパニック状態に陥っていた…

「鉄はんったらそんなに驚かんでもええやない…。そうやわ聞いてるよ、西条竜一との対決の時に、鉄はんが吉宗はんのピンチを救ってくれたんやてね」

京子さんはそう言いながら鉄に接近すると

「これは、うちからのお礼やわ…。ありがとう、うちの大切な人を救ってくれて、チュッ!」

鉄のほほにそっとキスをした。

Chu

「ほえっ!!」

よほどの衝撃だったのか、鉄は頭から機関車のような蒸気をポーッと吹き上げると、まるで旧型のパソコンのようにその場でフリーズしてしまった。

「あら、ちょっと、鉄はん?鉄はんったら、どないしたん?」

「……ジーー……、キュルルル………」

鉄はボロボロの歯をガチガチ動かしながら、完全にフリーズし続けていた、とそこへ居間から姐さんが姿を現し、玄関のお嬢を目にすると

「あらっ、もしかしてあなた京子ちゃん…やっぱり京子ちゃんね」

「はい、京子どす。鬼瓦の姐さん、ご無沙汰してました…」

「まあ、噂には聞いていたけど、本当に美人になっちゃって」

姐さんは嬉しそうに近寄り彼女の手をそっとにぎった

「あなたの話は、さっきうちの人から聞いたわよ、さあ、上がって上がって…あら、後ろにいるのはサブちゃんね、さあ、あなたも上がりなさい…」

「鬼瓦の姐さん、お言葉にあまえて、お世話になります!」

デカ顎のサブこと、京極森亀会の三郎さんは両手を膝にのせ、深々と頭をさげ礼儀正しく挨拶をした後

「ほいたら、失礼します…」

玄関脇に置かれた真っ赤なスーツケースと、その隣にあった水槽を抱え京子さんの後に続いて中へ入っていった。

「さあ、うちの人も首を長くして待っていたから、二人とも向こうで一緒に一杯やりなさい」

「ありがとうございます、鬼瓦の姐さん」

「何よ京子ちゃん他人行儀に…、昔みたいにおばちゃんでいいのよ」

「それじゃ、遠慮なく、鬼瓦のおばちゃん、しばらくお世話になります。」

姐さんに招かれながら京子さんとサブさんは、マサさんの出所祝いでにぎやかに盛り上がっている奥の居間へと歩いて行った。

 

 

「あっ!?」

それまでフリーズしていた鉄は、ハッと目を見開くと、慌てて京子さんの後ろ姿に目を向け

「なっ、なっ…なんだ、あの、めちゃめちゃ、すっ、すっげえ美人は!?…それも兄貴の、こっ、コレって…でっ、でも兄貴には、めっ、めぐみさんが…えっ、でも、あの美人は兄貴のコレって…」

興奮で鼻息を荒げながら、両手の小指を交互に見た後

「あーー、そっ、そうか!」 

「あっ、あの人は吉宗兄貴の、とっ、土地土地の女?…てことは、あの京都弁からして、にっ、西の女ってやつか!…。やっ、やっ…、やっぱり吉宗の兄貴だ…。あっ…、あんな半端ねえ美人が、にっ、西の女にいるってのに…、めっ、めっ、めぐみさんまで、もっ、モノにしてしまう。すっ、すっ、すっげえ~、すっげえよ~」

鉄はキラキラ光る眼で天を仰ぎ、ぐっと拳を握ると

「東にはめぐみさん、にっ、西にはあの美人の姐さん…きっと北と南にも、兄貴はいい女を隠してるに違いないぞ…。すっ、すっげえ…、あっ、兄貴…、おっ、俺は、一生あんたに付いて行きますぜ…」

僕に対して更なる忠誠を誓ったのだった…。

 

 

 

そのころ僕は…

まさか森亀のお嬢こと京子さんが、鬼瓦興業へ登場しているとは露知らず。めぐみちゃんへの熱いのみを胸に

「僕はめぐみちゃんを選ぶ!…たとえ、ぶった切られたって、めぐみちゃんを選ぶのら~!」

叫ぶと同時に塀の上から、めぐみちゃんの部屋のバルコニーめがけ決死のダイブをした。

…がっ!…

彼女のバルコニーのはるか手前で、距離の目測を誤ったことに気が付き

「あれ!あれれ!?」

遠くに見えるバルコニーをつかもうと、空中で手をバタバタさせたものの、どうにもならずそのまま顔面から落下、グシャーッ!という鈍い音とともに神咲家の庭先へ叩き付けられてしまったのだった…

「ぐおぁ~!!」

僕はガマガエルがダンプに踏みつぶされたような声を発しながら鼻血まみれの顔を持ち上げると、今度は近くにあった柿の木に向かって猛ダッシュ、夢中で木のてっぺんへとよじ登っていった

(めぐみじゃん…めぐみじゃん…)

僕の頭には、めぐみちゃんに会いたい、会って自分の真実の思いを告げたい、ただそれだけしかなかった…。自分がどれだけデンジャラスな場所にいるか、そして身の危険が刻々と迫っているか、そんなことも知らずに僕は柿の木のてっぺんからは少し離れた場所にある、めぐみちゃんの部屋へ声を張り上げた

「めぐみちゃん!めぐみちゃーん!!」

僕は明りのついた彼女の部屋を祈るような思いで見つめた、すると僕の熱い思いが天に届いたのか、部屋のカーテンがあわただしく開き、中から夢にまで見ためぐみちゃんが姿を現した

「吉宗くん!…、そこにいるのは吉宗くんなのね!」

めぐみちゃんもよほど嬉しかったのだろうか、裸足のままバルコニーへ飛び出すと

「ずっと待ってたんだよ、すごく会いたかったんだよ!」

瞳にいっぱいの涙をためながら、バルコニーの端へとやってきてくれた

「めぐみちゃん、ごめんよ…。僕、何も知らずに、あんな酷いこと言っちゃって、ごめんよ…」

僕は柿の木のてっぺんで泣きながら彼女に叫んだ。めぐみちゃんは首を横に振ると

「ううん、いいんだよ…、誤解が解けたんなら、それでいいんだよ…」

嬉しそうに微笑んでくれた

「めぐみちゃん…、めぐみちゃん…」

僕は柿の木にしがみつきながら必死に彼女のバルコニーへ手を伸ばした、

「吉宗くん!吉宗くん!」

彼女も僕の手をつかもうとバルコニーから手を差し出した、しかし、僕たちの距離は遠く、二人して手を取り合うことは出来なかった…。

近いのに遠い、二人の間に存在するその距離こそ、これから先、僕と彼女の間に訪れる試練の壁だったのだった…

そしてその二人の試練の壁の番人が、刻一刻と近づいていた…。

柿の木の下に近づいてくるギラギラ光る丸い物体…、真っ暗な庭先、電灯など無かったはずの柿の木の下で、その丸い光の物体はピタッと止まると

「この腐れガキが~!!」

突然僕に向かって怒鳴り声を上げた…。そう、その光の正体こそ、閻魔のハゲト虎、めぐみちゃんと僕の間に立ちはだかる最大の城壁…警視庁捜査四課で泣く子も黙る鬼刑事、神咲虎三の光り輝くハゲ頭だったのだった…

 

そして僕たちの間に割って入る人物がもう一人…、そう、それは美しすぎる城壁…。

 

その美しい城壁、新京極の森亀お嬢はその時、何も知らずに鬼瓦興業の居間で僕がトイレから戻るのを待ちわびていた…

「吉宗はんったら、どないしたんやろ?…せっかくうちが会いに来てあげたのに…」

お嬢は静かにつぶやくと、そっと彼女の後ろに置かれた水槽に目を向け

「もうじきあんたにも会わせたるからね…」

水槽の中に向かって語りかけた。すると中から一匹の獰猛そうなワニガメがゴツゴツした甲羅から、ニューっと顔を突き出し、獲物を求めるような鋭い目で口をパクパク動かしていたのだったのだった…

つづく

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2012年1月 6日 (金)

第116話 吉宗君、さらば僕のおちんちん

「ああ、最低だ~、僕は最低のスケベ男だぁ~…。」

バンの後部座席、ぎっしり積み込まれた荷物の隅で、僕は恨めしそうに自らの股間を見つめていた

「ああ、どうして僕のここは、節操がないんだ…、めぐみちゃんの悲しい思いを知りながら、あんな所でカチカチに大きくなってしまうなんて…最低のスケベ男だ~」

「お前、さっきからスケベだの、最低だのって、何をぶつぶつ言ってんだ?」

運転席の銀二さんが振り返った

「だって銀二さん…」

「だってもクソもねえだろ、あんないい女に好きって言われたうえに、おもいっきし抱きつかれてんだぞ、そらあチンボだっておっ立つに決まってんだろうが」

「で、でも、銀二さん、僕は京子さんに真実を言えないまま、スケベ心をむき出しにしてしまったんですよ。くそう、それもこれも、この節操のないこいつのせいだ~」

僕は力任せに自らの股間をぶったたき、「ぐおあ…」その場で悶絶しながらかがみこんだ。

「てめえの倅せめてどうすんだ、バカ…」

銀二さんは呆れ顔で笑ったあと、ほっぺをピンクに染めながら

「はあ、それにしてもいい女だったな~京子お嬢…。思い出しただけで俺の真珠入りのマグナムがうずいてくるぜ…」

にやけっつらでつぶやくと

「ああマジでいい女だった、俺の名刀正義だって、さっきから、ずーっとこの調子だぜ」

助手席のマサさんも、こんもりと盛り上がった自分の股間を指さした。

「ちくしょう、おまけにお嬢は京極森亀会会長の一人娘…、一緒になったら関西でも名だたるテキヤ一家の二代目襲名って、どでかいおまけつきだぞ…」

銀二さんとマサさんは口をそろえると、後ろを振り返り鬼のような形相で僕を睨み付け

「だいたいから何でお前なんだ吉宗!先輩の俺らを差し置いて、この野郎!かーっ、なんだかムカッ腹が立ってきやがる!」

「ひえー、そっ、そんなこと言われても…」

僕は思わず顔をひきつらせた

やがてバンは明りの消えたお不動さんの前を通過すると、見慣れた細い路地へと入っていった、だんだん会社へ近づくにつれ僕の鼓動はドキドキと高鳴り始めた。

(もう少しで会社だ、めぐみちゃん今頃どうしてるんだろう?…)

僕の脳裏に寂しげに店番をしていた、めぐみちゃんの姿が浮かんできた。僕はポケットから、無残に紐のちぎられた小さなお守り袋を取り出し

(めぐみちゃん、ごめんね…ごめんね…)

彼女からもらったそれをじっと見つめながら、目にいっぱいの涙を浮かべていた…

「おいっ、ついたぞ吉宗」

マサさんの言葉に顔を上げると、バンはすでに会社の車庫へと到着していた。

僕は慌てて車から降りると、キョロキョロと周囲を見回したが、あたりはひっそり静まり返っており、大きな犬小屋の中でセントバーナードの与太郎が退屈そうに、じっとこっちを見ているだけだった。

「はあ~」

小さなため息をつくと、バンの中から売れ残った金魚や、荷物を倉庫へ運び入れ、鬼瓦興業の建物の中へと入っていった。

 

「ほーい、みんなお疲れさん。」

玄関に入るといつものように、姐さんが笑顔で僕たちを迎えてくれていた。

「ただいまーっす!腹減ったー」

「今日はマサの出所祝いだ、お慶ちゃん達と一緒に、ご馳走いっぱい作ったからね、手を洗ったら早く居間に行きな…」

「俺の出所祝いっすか?姐さん、ありやとあっす、すっげえ感激っすよ!」

マサさんは小さな目を輝かせると、バタバタ廊下の奥へと入っていった

(お慶ちゃん達?)

僕は雪駄を脱ぎながら、姐さんの言葉に一瞬目を見開いた

「あっ、あの…姐さん。」

「なんだい、よっちゃん」

「お慶さん達って、もしかして、めぐみちゃんも…?」

「ああ、もちろん手伝ってくれたよ」

「それじゃまだ中に!?」

僕は玄関の雑巾で汚れた足を拭くと、心臓をバクバクさせながら奥へ向かおうとした、が、その時

「残念でした…、めぐみちゃんだったら、ハゲ虎が迎えに来てしぶしぶ帰って行ったよ」

姐さんの言葉に足を止め、「はあ~」と、ふたたび大きなため息をつくと、がっくりと肩を落としながら、とぼとぼと廊下の奥へ入っていった。

 

居間に入ると、何時ものように親父さんが座卓に腰かけ、得意の唐辛子で真っ赤になった刻みネギをバリバリ食べていた。そして、その周りには別の仕事(バイ)に行っていた、追島さんをはじめ、鉄や刺青の岩さんも座っていた。

「おう、なにぼーっと突っ立ってんだ吉宗、ほらお前も座れ、座っていっぱい食え!」

「はい!」

僕は親父さんに頭をさげると、鉄の隣のいつもの場所へ腰を下ろした。

「それじゃ、マサの出所を祝って乾杯!」

親父さんはそう言いながら、最近はまっている純生マッコリの入った大きなどんぶりを掲げたあと、がぶがぶと一気に飲み干し、隣に座っているマサさんの肩をグローブのような大きな手でばしばしとたたき始めた

「おうこらマサ、今度はくだらねえことで、パクられんじゃねーぞ、がはははは」

「くだらねえって、かっ、勘弁してくださいよ、親父さん…」

「馬鹿野郎、酔っぱらって素っ裸で一物されけ出したまま、女子高生追い掛け回したんだろが、思い切りくだらねえじゃねえか、はははは…」

「ちょっと追島の兄いまで」

真っ赤になってうろたえるマサさん、みんな大声で笑いながら、お酒を飲んだり、ご馳走をぼおばったりしていた。

いつもなら、僕にとっても大好きな楽しい時間だった。しかし今の僕は、京子さんと、めぐみちゃんのことが頭から離れず、呆然と座卓のご馳走を眺めていた…

「よっちゃん、どうしたのさ?さっきから、ぼーっとしちゃって」

気がつくと、僕の後ろに、大皿を抱えたお慶さんが立っていた。

「ほら、よっちゃん、あんたの好きな唐揚げだよ」

お慶さんは美味しそうに揚がった唐揚げ入りの大皿を、僕の目の前に置くと、そっと隣の席に腰を下した。

「さあ、食べてごらん、本当においしいんだから…」

「あっ、はい…」

僕はうなずくと、唐揚げを、そっと口の中に入れた…

(おいしい……)

「ねっ、おいしいでしょ、それ、めぐみちゃんがよっちゃんのために、心をこめて揚げた唐揚げだからね…」

「めぐみちゃんが!?」

あわててお慶さんを見たあと、僕は再び大皿に目をやった

(めぐみちゃんが…めぐみちゃんが僕のためにこれを…)

震える手で唐揚げを大皿からとると、僕は再びそれを口に入れた

(おいしい…、おいしすぎる…)

めぐみちゃん作、愛情のこもった唐揚げを噛み締めながら、僕は思わず目を潤ませていた

「何があったの?よっちゃん」

お慶さんはそっと僕にささやいた

「めぐみちゃんと何かあったんでしょ?」

「おっ、お慶さん?…」

「めぐみちゃんね、みんなの前で普通にふるまっていたけど、それを揚げながら泣いていたのよ…」

「泣いていた!?」

「やっぱり何かあったのね…」

僕は静かにうなずいた…

「だめだよ、よっちゃん。あんないい子泣かせたりしたら…」

「………」

「ほら、せっかくよっちゃんのために揚げてくれたんだから、しっかり食べてあげなさい、何があったか知らないけれど、早く仲直りするんだよ」

お慶さんの優しい言葉に頷くと、僕は唐揚げをもう一つ手にとり、そっと立ちあがった

「すんません、ちょっとトイレに…」

涙を隠しながら慌てて廊下へと出ると、僕は奥の暗がりへふらふらと歩きだした。僕の目からは涙が止めどなく流れ落ちていた…

(めぐみちゃんが、泣いていた…この唐揚げを作りながら、泣いていた…)

僕は廊下の途中で足を止めると、そっと窓の外を見た。視線の先にはめぐみちゃんの家があり、二階にある彼女の部屋は暗くひっそりと静まり返っていた。

「めぐみちゃん…」

僕はポケットに手を入れると、彼女が作ってくれた小さなお守り袋をとりだし、これをくれる時のめぐみちゃんの言葉を思い出した。

 

(恥ずかしいけど、私の手作りのお守り袋…、愛情たっぷりこめて作ったんだよ…中にお不動さんのお守りと、私からのメッセージが入ってるんだ…)  

(めっ、めぐみちゃんからのメッセージ?…)  

(あっ、ダメ~!恥かしいから、中は後で見てね…)

 

「そう言えば、めぐみちゃん中にメッセージが入っているって…」

僕は震える指先でお守り袋を開くと、お不動さんのお札の脇に折りたたまれた小さな手紙を取り出し、薄暗い廊下の明りにかざしてみた

「あっ…」

そこには、きれい文字で

『どうか吉宗くんが、毎日、元気に楽しく過ごせますように…』

めぐみちゃんらしい、優しい言葉か書かれていた…。そしてその脇には小さな文字で

『それから…私、神咲めぐみは、ずーっと大好きな吉宗くんのそばにいれますように…』

そう付け加えられていたのだった…

「めっ、めぐみしゃん…」

僕の目玉から、脱水症状になるのではないかと思うほどの、すさまじい涙が流れ始めた…

(めっ、めぐみちゃん!…めぐみぢゃん…)

「こんなに、ポクのことを思ってくれていたのら~!らろに、僕は、僕はめぐみしゃんを疑って、あんらひろいころを、言ってしまったのら~、めぐみしゃん!めぐみしゃん!」

僕は泣きながら顔を上げると、二階の彼女の部屋に目を向けた…

「めぐみちゃん、僕はめぐみちゃんが一番大切なのら~!君だけが大切なのら~!」

頭の中に、めぐみちゃんとの楽しかった思い出が、走馬灯のように蘇ってきた。

初めてであった面接の日…。一緒にべっこう飴を売った楽しいひと時…。西条さんとの対決の後、疲れて僕の肩に寄りそって寝ていた彼女のやさしい顔…。出会って間もないのに、僕にとっては数十年以上一緒に過ごしていたような、そんな数々の思い出を一つ一つかみしめるうちに僕の胸はどんどんと熱くなり始めていた…

とその時、薄暗かった彼女の部屋にパッと明りが!

「はっ、めぐみちゃん!」

(あの明りの部屋にめぐみちゃんが…めぐみちゃんがいる!)

そう思うと僕の心臓はバクバクと高鳴り始めた…

(会いたい…、めぐみちゃんに会いたい!)

気が付くと僕は裸足のまま外に飛び出し、夢中で彼女の家の塀の上によじ登っていた…

(めぐみちゃん!)

僕は無意識に手を伸ばし、彼女の部屋のバルコニーに飛び移ろうとした。とその時…

「はっ!?」

僕の頭の中に、京極森亀会の京子さんの美しい顔が…

「そうだ、僕は…僕はさっき、京子さんに愛の告白をしたままなのだ…」

京子さんの美しい笑顔が、頭の中でどんどん大きく広がりキラキラと輝き始めた。

しかし僕は、「違う!違う!!」ぶるぶるっと塀の上で首を横に振ると

(京子さんごめんらさい!ぼくはやっぱり、めぐみちゃんが一番大切なんれすら~!)

頭の中の美しい京子さんに向かって叫んだ…、すると京子さんは、それまでの美しすぎる笑顔から見る見ると恐ろしい鬼の形相へと変わりはじめ、同時に、彼女のバックには巨大な眼玉を見開いた森亀会長の怒りに満ちた顔と、京極森亀会のこわーい人たちが登場していた。

「ぐお!」僕は思わずのけぞり、思わず塀から落ちそうになった。

頭の中の京子さんは、めらめら燃える火炎の前で、まるでメデューサのように髪の毛を逆立てながら、右手には出刃包丁、そして左手にペットのワニガメを掲げると

(おどりゃ~!さっきの愛の告白は嘘やったんか~!)

目玉を血走らせながら僕に襲い掛かってきた

(うぐあーーー!)

僕はあわてて股間を握りしめると、青ざめた顔でバルコニーの先にある、明りのついた、めぐみちゃんの部屋に目をやった…

(ここで、あのバルコニーに飛び移ったら、めぐみちゃんに会える。でも、そのあとに待っているのは…)

僕の未使用の一物をおいしそうに食べているワニガメの様子がリアルに映し出された

(まだ、一度も使ったことが無かったのに…)

僕は寂しげに自分の股間をなでなですると

(ごめんね、僕のおちんちん…!)

自らのおちんちんに別れを告げ、ぐっと眉間にしわをよせ

「僕はめぐみちゃんを選ぶ!…たとえ、ぶった切られたって、めぐみちゃんを選ぶのら~!」

大声で叫びながら、めぐみちゃんの部屋のバルコニーへ向かって飛んでいたのだった…

つづき
第117話 吉宗くんとめぐみちゃんの大きな壁へ

Rankingu

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2011年1月31日 (月)

115話 銀さんマサさんのグレイトマルチン大作戦

ドンガ、ドンガ、ドンガ、ドンガ…

森亀会長らによる祝い太鼓は、けたたましく夜空に響き渡っていた…

(金玉をぶった切って、ワニ亀の餌って…)

僕は京子さんの言葉が頭から離れず、恐る恐る彼女に目を向けた。しかしそこには優しい笑顔で祝い太鼓を見つめている彼女の姿があった

(さっきの怖い顔…、見間違えだったのかな?…)

そう思い首をかしげた時、

「おい、吉宗…、吉宗…」 僕の肩をそっと叩く手が、振り返るとそこには顔面蒼白なマサさんが立っていた…

「あっ!マサさん…」僕が声を出すと、マサさんは自分の口の前に人差し指を立てて

「バカ、しっ、しー!」

「えっ?」

「いいから、こっち来い!」

僕の腕をつかみ、植栽の影へ引きずり込んだ…

 

僕は植栽の中で首をかしげていたが、ハッと目を輝かせると

「マサさん、ありがとうございました!…お陰で僕も新しい愛を掴むことができましたよ!」

元気いっぱいに頭を下げた

 

「ありがとうじゃねえよ、この天然バカが…」

「えっ!?」

「お前、とんでもねえこと、お嬢に言っちまったんだぞ…」

「とんでもない?…」

「ああ、とんでもねえことだよ」 

「どういうことですか?…、僕、マサさんの言うとおり、真実の愛を掴んだんですよ…、これでめぐみちゃんも、邪魔者の僕が消えてマサさんと幸せに…」

「それが違うんだよ」

「違う?」

「言いか、よーく聞けよ…」 マサさんは青ざめた顔で

「実はなあ…」

すべての真相を僕に告げた…

 

「えっ?…マサさんはめぐみちゃんと婚約なんてしてない?…えっ?えっ?…」

僕は何がなにやらわからず、目をパチパチさせ…

「あの…、言っている意味が良くわからないのですけど…」

「だから、あれは俺の嘘…」

「嘘?…」

「ああ…、実は婚約も嘘、ぜーんぶ嘘、本当はめぐみはお前の事だけが好きなんだよ…」

「ぜーんぶ嘘?…、めぐみちゃんは僕の事だけ好き?……、えっ?えっ?…」

何度も首をかしげると

「いやだな、マサさん…、どっ、どうしてそんな嘘をつくんですか?…はは、ははは…」

「嘘じゃねえってんだよ」

「だって、証拠に、そのめぐみちゃんが作った愛のお守りが、それにマサさんとめぐみちゃん、あんなに仲も好いし…」

震える手で、マサさんの胸元にぶら下がっている小さなお守袋を指差した…

「あっ、これか?…、これはめぐが作ったんじゃなくて、あいつの従姉妹が昔作ってくれたやつなんだ…」

「えっ!?」

「実はよ、めぐの従姉妹と俺は昔付き合っててよ、それであいつ、前から俺のこと兄貴みたいに思っててよ、そんな訳だから、お前が俺の事、恋人と間違えるのも無理ねえってかよ…」

マサさんの話を聞くうちに、僕の顔はだんだん青ざめ 

「そっ、そんな…、そんな…」 崩れ落ちるようにその場にしゃがみこんだ…

「そっ、そんな~…」  

「すまねえ、マジですまなかった吉宗…」 

「はっ、それじゃ…!?」 

「それじゃ僕は騙されているとも知らずに、めぐみちゃんに、あんな酷いことを…」

彼女からもらった、愛のお守袋を、怒って引きちぎってしまった時のことを思い出した…

「ぼっ僕は…、僕は何ということを彼女に…」 

(すると、ここで店番をしていた時の、めぐみちゃんの悲しい顔は…)

「あーーーー!?」

(あんなひどいことをした僕の事を、けなげに待ってくれていたのか!?) 

「ああぁ…、めぐみしゃん…、めぐみしゃん…」

気がつくと僕は涙と鼻水まみれのボロボロの顔で泣きくずれていた…

115chinbosakusen2  

「おい、泣いてる場合じゃねえだろ…吉宗!」

「えっ?」

「えっじゃねえよ、ほらあれ…」

マサさんは植栽の中からぬっと顔を突き出すと、幸せそうに祝い太鼓を眺めている京子さんを見た

「あっ!京子さん!?」

彼女の姿を目にし、僕は思わず額から青筋をたらした…

「あー!!、めぐみちゃんの辛い思いも知らずに、僕は京子さんに愛の告白を!…」

「だから俺は、お前を止めようと必死にここで叫んでたんだろうが…」

マサさんが手をバタバタしている姿を思い浮かべ

「あっ、あれは、応援団の三々七拍子じゃなかったのかー!」

「まったくお前ってやつはよう…」

マサさんは呆れ顔で僕を見た後

「とにかく、真実がわかった以上、ちゃんとお嬢に本当のことを伝えねえとダメだろうが…」

「はっ!」

「はっじゃねーっての、早く、僕には好きな人がいるんですって、お嬢に言うんだよ…」

「えっ、でもそんなこと言ったら京子さんが深く傷ついてしまうんじゃ!…」

「それじゃ、めぐみはどうすんだ、あいつは嘘つき呼ばわりされながらも、けなげにお前のことを、ここですっと待ってたんだぞ…」

「ああ、そうだ…、そうなんだ…」

僕は再びめぐみちゃんの悲しい心を思い、ぽろぽろと涙を流しはじめた…

 

「だから、泣いてる場合じゃねえだろっての…」

「でも、マサしゃん、いったいどうしたら?…」

「一つだけ手はあるぞ…」

「えっ?」

マサさんはニヤッと小さな目玉を光らせると

「お嬢、つまり京子さんの前に、お前以上に愛すべきすごい男を登場させるんだ…」

「愛すべきすごい男?…」

「いいか、よーく聞けよ…」

マサさんは大きなパンチパーマを近づけると、僕の耳元でぼそぼそと語りはじめた…

 

「まず、はじめにお前はすべての真実を打ち明ける…」

「でも、それじゃ?京子さんがショックを…」

「まあ、始めはお嬢も落ち込むだろうな…、だがその心は、ショックからやがて裏切られたお前に対する怒りに代わっていくだろう…」

「えっ!?…やっ、やっぱり…」

僕は一瞬見せた彼女の般若のような目を思い浮かべた…

 

(それじゃ怒りに満ちた京子さんは…)

 

「吉宗はん、あれは嘘やったのね、あの言葉を信じていいって、うちに言うたあの約束は…」

京子さんの顔がみるみる鬼の形相に変わり

「それやったら、きっちり落とし前つけてもらうわ!」

「落とし前!?」

「言うたやろ、あんたの金玉ぶった切って、ワニ亀の餌にしたるって…」

いつのまにか彼女の右手に大きな出刃包丁が握られていた…

「ひー!、ちょっと待って下さい、これには訳が、訳が…」

「やかましい、早う、その腐れ金玉出さんかい!」

彼女は無理やり僕のパンツをずり下ろし、一物をぐいっと鷲づかみにすると

「落とし前やーー!」

声を張り上げ、出刃包丁を天高く振り上げた…

と、その時…

「あいや、待たれい!…」

危機一髪の僕の前に、さっそうとマサさんが登場!

 

「お嬢、あいや京子さん、吉宗には何の罪もねえ…、すべては俺が犯した過ちのせい、どうか勘弁してやっておくんなさいよ…」

「なんやのあんた、これはうちと吉宗はんの問題や!…」

京子さんは僕の一物を握り締めたまま、嶮しい顔でマサさんを見た

「たしかに、お嬢と吉宗の問題かもしれねえ、でもな、それじゃ俺の男としての義が立たないんでさあ…」

「あんたの義?…」

「ああ、俺が嘘をついたせいで、吉宗に落とし前をつけさせちまったんじゃ、この俺の義がたたねえ…」

マサさんの言葉に京子さんは、ギロッと鋭い目を向けると

「それやったら、あんたが落とし前つけるいうの?…」

「お嬢さん、それであんたが許してくれるならね」

マサさんは、そう言うと同時に、さっそうとベルトを緩めパンツごとズボンをずり下ろした

「あっ!?…」

京子さんの頬が一瞬ピンクに…

115a

「お嬢さん、あんたを傷つけちまった落とし前だ、さあ、この磨きぬかれた俺の名刀正義、そいつでスパッとやっちまっておくんなさい!」

「本気でいってるのかい?」

京子さんは僕のものを放すと、出刃包丁を片手に立ち上がり

「うちはマジでやる女よ…」

「かまいませんよ、あんたのような日本一のいい女にスパッとやられるんだ、俺の名刀も幸せってもんでさあ…」

「日本一のいい女?…」

「ああ、あんたは日本一いい女だ、さあ、遠慮しねえでスパッと!…」

マサさんの気迫に京子さんはしばらく呆然と立ち尽くしていた…、がやがて

「負けや…」 そうつぶやくと、手にしていた包丁をカランと地面へ放り投げ

「負けや負け、うちの負けやわ…」

ピンクにほてった顔で、そっとマサさんの一物を握り締め…

「こんな立派なお宝、ぶった切ったりしたら、うち一生後悔するやないの…」

「お嬢さん、それじゃ…」

「この名刀正義は、もうあんただけのものやない…、今日からうちの物でもあるんやしね…」

熱いまなざしをマサさんに向けた…

 

「おっ、お嬢さん!…」

「ううん、やめてそんなよそよそしい呼び方、京子って呼んで…」

「京子!」

「はい?」

「京子、俺について来てくれるか?」

「うちはこれからあんたのモノや…、来るなって言われても一生ついて行きます…」

京子さんは潤んだ瞳でマサさんの胸にすがりつくと、ふっと僕をかえりみた

「吉宗はん、そういう事やから、あんたはその、めぐみ言うお嬢さんとお幸せに…」

「あっ、はい…」

僕は、あわやぶった切られる寸前だったアレをさらけ出したまま、呆然とした顔でうなずいた

マサさんはそんな僕に

「それじゃ、俺は行くぜ…達者でな…吉宗…」

そう言い残し、京子さんと二人手をとりあって去っていったのであった…

…つづく… 

 

「とまあ、そういう訳だ…これならお嬢も傷つくことはねえだろう?…」

「はっ、はあ…」

僕はマサさんの話に首をかしげていた…

「何だよお前、俺のこの作戦が信じられねえってのか?」

「だって、京子さんがマサさんのアレを見てそんな風になっちゃうなんて…」

「バカだなお前は、だから何時までたっても童貞なんだよ、大人の女ってなあ、みーんな立派なお宝に目がねえんだぞ…」

「でっ、でも…」

 

「おい吉宗、そのバカの話なんぞ信じちゃなんねえぞ…」

「えっ?」

気がつくと僕とマサさんの背後に銀二さんがしゃがみこんでいた

「何だてめえ銀二、俺の作戦のどこがバカな話だってんだ…」

「バカだからバカだって言ってんだよ…」

「何!?…」

「てめえのチンケな金玉見て惚れる女が何所にいるってんだ…」

「チンケだと、てめえ銀二!」

銀二さんはマサさんの口を押えると

「いいか吉宗、このバカでなく俺の言うことを信じるんだぞ…」

「あっ、はあ…」

「いいか、よーく聞けよ…」

僕の耳元で作戦を伝授しはじめた

 

「まず、お前がお嬢に真実を打ち明ける…、そして怒りに我をわすれたお嬢が、お前の金玉を切り落とそうとする。これも俺の経験上間違いなく予想できることだ…」

「やっ、やっぱり銀二さんも、そう思いますか?…」

「ああ、間違いねえだろう」

僕はぞっと青ざめた

「おいおい、心配はいらねえぞ吉宗」

「えっ?…でっ、でも…」

「危機一髪の瞬間、今度は俺があらわれる…そしてお嬢に一言」

 

「おいおい、待ちなよお嬢さん!」

銀二さんはキリッとした表情で怒りに満ちた京子さんに声をかけた

「何よあんた?…関係ない人は口出ししないでちょうだい!」

「それが、関係なくねえんだよ、何しろその吉宗って男は右も左も分かれねえころから俺が育てた男だからな…」

「あんたが育てた?」

「ああ、そいつの過ちは、そいつを教育してきた俺のあやまちだ…」

「へえ、それやったら、あんたどうするつもりやの?…」

「どうも、こうも、俺が落とし前をつけさせてもらう以外ねえだろうな…」

「あんたが落とし前?」

「ああ…」

銀二さんはつりあがった鋭い目で京子さんを見ると、おもむろにズボンを下ろし、彼女の目の前に、自慢の一物をさらけ出した…

 

「なっ、なんやのあんた?…そんなもの出してどういうつもりなの?…」

「言っただろ、落とし前は俺がつけるって…」

銀二さんはそう言いながら、腰をぶるっと動かした、すると

ジャラジャラ!…

銀二さんの黒光りした一物から奇妙な音が…

「なっ、何!今の音は…」 

京子さんは驚きのあまり呆然と銀二さんのアレを見つめた…すると銀二さんはさらに腰を大きく揺さぶり 

ジャラジャラ!ジャラジャラ…

「はっ、その音は、まさかあんたのそれ!?…」

京子さんは顔を真っ赤にすると、握っていた僕のあれから手を放し、恐る恐る銀二さんのもとへ近寄った…

「どうやら気がついたようですね、お嬢さん…」

「やっぱりそれって真珠入り!?…」

「ええ、100パーセント天然のね…」

銀二さんはキリッと目を細めると、京子さんの前で腰をくねくねと激しく振りまくった

ジャラジャラ…ジャラジャラ…

京子さんはその音を聞いているうちに、どんどん顔を真っ赤に火照らせ

「もうあかん…、そんな素敵な音を聞かされたんじゃ、うち、もう我慢できへんやないの…」

銀二さんの真珠入りへ向かって叫んでいた…

 

「さあ、落とし前だ、その包丁で俺のパール入りのゴージャスなこいつを、思いっきりぶった切るんだ!」

「えっ、でっ…でも!」

「さあ、いいから、ぶった切れ!!…」

銀二さんが大声で叫ぶと同時に、京子さんは 「はあ、あかん…」 かすれた声で、その場に崩れ落ちてしまった

 

「あかん、うちにはそんなゴージャスなお宝、眩しすぎて見ることもできない…ましてやぶった切ることなんて…」

「それじゃ、こうしよう…、落とし前としてぶった切る変わりに、今日から俺のゴージャスなこいつは、お嬢さんあんただけの物だ…煮て食うなり焼いて食うなり好きにしてくれ…」

銀二さんはギラッと光る眼で京子さんを見つめた…

「はあん…嘘やろ~、本当に本当に今日からこれが私の物?…」

「ああ、この鬼瓦興業の山崎銀二って男は、嘘をつく男じゃありませんぜ…ましてやお嬢さんみてえな美しい女性にはなおさらね…」

「うれしいー!」

京子さんは目に涙をいっぱいあふれさせると、その場にしゃがみ込んで、銀二さんのゴージャスなお宝をうれしそうにジャラジャラ揺すぶり始めた…

「今日からこれは、私のもの…ふふふ…」

ジャラジャラ、ジャラジャラ… 

こうしてお嬢の心は銀二さんのものに…銀二さんは僕の急場を救った上に、晴れて京極森亀会の二代目襲名となったのであった…

…つづく…

 

「まあ、こういう算段ってわけだ、はははは、はははははー!」

銀二さんはカクカク腰を揺さぶりながら、ジャラジャラと真珠を鳴らした

「どうだ吉宗、素晴らしい作戦だろうが、はははは」

 

「素晴らしいっていうか、あの、マサさんとほとんど同じじゃないですか…」

「こいつと同じ!?…」

銀二さんは隣であきれているマサさんを見ると

「ふざけんなバカ、こいつのしょぼくれチンポと俺の真珠入りゴージャスチンポとじゃ、天と地の差だ、天と地の…」

「てめえ銀二、俺の名刀をしょぼくれチンポとは何だこの野郎!」

「しょぼくれだから、しょぼくれって言ったんだろが!」

「何だこの野郎、そういうてめえの方こそ、天然真珠とかぬかして本当はプラスチック入りのイカサマ改造チンポだろうがコラ!」

「なっ、てめえマサ、イカサマ改造チンポとは何だ、このしょぼくれチンポ野郎が!」

「何このイカサマチンポ野郎!」

「なんだこの、しょぼくれチンポ野郎!」

二人はえげつない言葉で罵り合いながら、その場で取っ組み合いを始めてしまった…

「あー、ちょっと銀二さん、マサさん喧嘩はやめてー」

僕が必死に割って入った、その時だった…

 

「吉宗はん、そんな所で何しとるの?…」

気がつくと、僕たちの前に京子さんが立っているではないか…

「あっ!きょっ、京子さん!?…」

僕が慌てて叫ぶと、今まで喧嘩をしていた二人も、はっとこっちを見た

「あっ、お嬢!?」

銀二さんとマサさんは、京子さんに気がつくと

「あっ、どっ、どもーーー!」

顔を真っ赤にしながらニンマリ微笑んだ…

 

「あっ、もしかしてお二人は銀二はんにマサはんですか?…」

京子さんはその美しすぎる笑顔で二人に話かけた

「銀二はんにマサはんって、あのお嬢さん、どっ、どうして俺たちのことを…」

「やっぱりそうやったのね、ふふふ…、だって憧れの吉宗はんの先輩でしょ、しっかり調べとかんと恋人として失格やからね…」

にっこり微笑みながら、僕の腕をにぎり

「ねっ、吉宗はん…うふふ」

キラキラ輝く瞳で僕を見つめてきた…

「あっ、はひ…ははは、はははは…」

僕はその美しさにつられて、うっかり大切な事を忘れ微笑んでいた…

 

「近くで見ると、さらに美しいな…」

「ああ、やっぱ美しすぎる…」

銀二さんとマサさんは顔を真っ赤にしながら、呆然と京子さんを見つめていたが、やてハッと我に返ると

「おい、吉宗!作戦、作戦…、俺が伝授した作戦開始だ…」

小声で僕に訴えかけてきた

(はっ、そうだった…、僕はまず真実を京子さんに話さなきゃいけなかったんだ…)

必死に深呼吸をすると、

「京子さん!僕の話を聞いてください!」

大声で叫びながら彼女を見つめた

「えっ?どないしはったの吉宗はん」

京子さんは振り返ると、キラキラ輝くそれは眩しすぎる笑顔で僕を見つめ返してきた

「あっ!…」

彼女のそんな輝きに包みこまれた瞬間、僕は緊張のあまり何も言えず口をパクパク動かすだけになってしまった…

「どうしたん?吉宗はん、今なんていうたの?…」

京子さんは金魚のように口をパクパクしいてる僕を、しばらくの間じーっと見つめていたが、やがて

「えっ?なに…、あ…い…し…て…る…?」

僕の口パク言葉を勝手にそう読み取ると

「吉宗はんったら、うちのこと愛してるって、今、そう言ったのね!」

美しい瞳をさらにキラキラと輝かせた… 

「いや、あの…」 僕は慌てて首をふったが京子さんは

「うち、うれしい…めっちゃうれしいー!!」

そう言うと、力いっぱい僕に抱きついてきた…

 

(ちっ、ちがう、ちがう…)

必死に叫ぼうとした、その時…

ポヨン、ポヨヨ~ン…

僕の胸元にやわらか~く、丸いポヨヨンとした物体が…

(あっ、こっ、これは!?…きょっ、京子さんの!?…)

僕は下目ずかいに彼女の胸元へ目をうつし、ポッと真っ赤にお顔をそめ…

(やっぱり、きょ、京子さんのオッパイだ…。ああ、何て暖かくて、やわらかくて…素晴らしい感触なんだろう…)

鼻の下をだらーっと伸ばし、ポエ~っとだらしない顔で微笑んでしまった…

 

「はっ!?…」 

(いけない、こんなところでポエーッとしてる場合じゅないんだ!…京子さんに真実を…)

そう思った僕は、思い切ってめぐみちゃんと僕の事を語ろうとした、その時だった

気がつくと僕の困った君が、こんな危機的状況にもかかわらず、スーパー困った君へと変身してしまっているではないか…

(うおあー!まずい、僕のおちんちんが~!!)

(なっ、何でこんな時に…、今は、さっきの愛の告白が間違いだったって、京子さんに伝えなくちゃならないのに…)

僕はスーパー困った君のことを京子さんに悟られないよう、必死に腰を後ろへくねらせると

(このバカちんちん、静まれ!静まれ~!)

僕の困ったおちんちんに言い聞かせた…。ところが…

「吉宗はん、うち好いちょるよ、吉宗はんのこと、好いちょるよ…」

京子さんは危機的状況の僕をさらに刺激するかのように、耳もとでそうささやくと、そのやわらかいおっぱいをぐっと押し付けてきたのだ

「うぐぁー!」

僕は思わず踏みつぶされたガマ蛙のようなうめき声を発すると

(だめ、だめだめ…そんな事をされたら…だめだめ…静まれ、静まれ!)

グレードアップしてしまった、スーパー困った君を、必死になだめ続けたのだった…

 

そんな僕の光景を遠目に見ていた銀二さんとマサさんは、

「でっ、でけえ…」

二人そろって、ボソッとつぶやくと、額から青筋をたらしながら自分の股間に目をやった…

「おい、マサ…、どうやら俺達のチンボ大作戦は、通用しそうもねえな…」

「ああ銀二、やつがあんなお宝を持ってたんじゃな…」

二人は僕のグレートスーパー困った君を眺めながら、呆然と立ち尽くしていたのだった…

115chinbosakusen3

つづき
第116話 さらば僕のおちんちんへ

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2011年1月21日 (金)

第114話 吉宗くん、祝い太鼓と真実の愛

「やべえ、まじでやべえぞ…」

銀二さんは慌てて後ろを振り返った、そこには銀二さん以上に青ざめた顔で立っている、マサさんの姿が

「マサ、おい何とかしろ!もとはてめえが撒いた種だろうが!…」

「何とかっつっても…」

「おめえが吉宗に説明するしかねえだろうが、さっきの話は嘘だったって…」

「……」

「このままじゃ、お嬢も森亀会の跡目も吉宗のものになっちまうんだぞ!」

「そ、そうか!」

マサさんは、大きなパンチ頭を突き出し、猛ダッシュで森亀会長のわきをすり抜けると、僕の持ち場脇の植栽の中へと飛び込み

「おい、吉宗…、吉宗…」

小声でひっしに僕の事を手招きはじめた…

「吉宗~、おーい吉宗~」

「えっ?…」

僕は植栽の影から手を振っているマサさんに気づき

「あれ?…そこにいるのはマサさん?…」

歩み寄ろうとした、その時だった

「おーう、お嬢~、どうやー、婿どんとうまくやっとるかー?」

大きなガラガラ声を響かせながら、森亀会長が近づいてきた…

「あっ!…かっ、会長さん…」

僕は、マサさんから目をはなし、あわてて森亀会長に頭をさげた

 

「おいおい、そないに他人行儀はやめいや…お前さんはもうワシの婿なんやからの、がーはははは…」

「むっ、婿?…」

僕はきょとんとした顔で会長を見た…

「おっ、お父ちゃん…何をいうとるの、吉宗はんがびっくりしとるやないの、もう…」

「何やお嬢…婿言うて何が悪いんや?…」

「もう、お父ちゃんったら…」

「えっ?…えっえっ?…」

しばらくの間、僕は目をぱちくりしていたが、やがて京子さんと森亀会長を交互に見たあと

「えっ!?あの、婿ってもしかして…」

自分の事を恐る恐る指差した…

「がはははは、婿いうたら他に誰がおるんや…」

「えーーー、えーーーーーー!、ちょっと待って下さい、僕がどうして!?」

「何や、おまえなんぞ文句でもあるんか?…」

森亀会長は大きな目玉をギョロっと動かした

「いや、あっ、あの…文句とかじゃなくて、あまりにも急すぎて、あの…」

「急もなんもあるか…ワシが合格言うた時から、お前はお嬢の婿に決まったんや…」

「決まったって、でっ、でも…」

「おどれ、まさか、うちのお嬢のことを、気に入らんいうんじゃないやろうな…」

「えっ!あっ、いや、あの…」

京子さんは困った様子の僕を見て

「ちょっと、お父ちゃん!」

あわてて二人の間に割って入った

 

「なっ、何でや、お嬢…ワシはお前のためを思うて…」

「お父ちゃん!…」

京子さんはキッと森亀会長を見ると

「お父ちゃんの気持ちはありがたいけど、ちょっとあっち行ってて!」

「お、お嬢!?…」

「うち、吉宗はんと大切なお話があるの、お願いだから…」

京子さんの言葉に森亀会長はしぶしぶ、その巨体を揺らしながら遠ざかっていった…

 

会長の威圧感たっぷりの目玉から解放された僕は、その場で 「ほっ…」 っとため息をついた…

京子さんは、とぼとぼと離れていく会長の後ろすがたを確認したあと

「ごめんね吉宗はん…、うちのお父ちゃんって、せっかちで、強引やから…」

そう言いながら僕の方に振り返った…

「えっ、いや…あっ!?」

僕は、はっとした…

それは京子さんの顔が今までの明るいものではなく、とても切なそうな、それはたまらない表情だったからだった…

「きょっ、京子さん!?…」

「吉宗はん、ごめんね…、考えてみたらうちも、お父ちゃんと同じやったかもね…」

「同じ?」

「うん…、吉宗はんの気持ちも確かめんと、いきなり現れて勝手に好きや~、なんて言い寄ったり…それに、こうしてずうずうしく手伝うたりして…」

「えっ…」

「吉宗はん、たしか十八歳やろ…、それに比べてうち二十歳やから、二つもお姉さんや…」

「……」

「吉宗はん、年上の女なんて嫌かもしれんのにね…」

京子さんは静かに語りながら、潤んだ瞳を僕に向けた…

 

「きょっ、京子しゃん!?…」 

僕は彼女の悲しそうな瞳を見た途端、胸がきゅんとしめつけられた…、

「ごめんね吉宗はん、うちも本当にいけんね、お父ちゃんに似ちゃったのかな…」

京子さんは潤んだ瞳をさらに輝かせながら、僕のことを見つめてきた…

(なっ、なんていう甘く切なく、そして美しい瞳なんだ…)

彼女のキラキラ輝く潤んだ瞳を見ているうちに、僕はさらなる熱い感動をおぼえ、気が付くと目にいっぱいの涙を浮かべていた…

「えっ?…」

「うぐ…うぐぐぐ…」

「やだ…、吉宗はん泣いとるの?…」

「何だかわからないですけろ…、京子しゃんの美しい目を見ていたら、涙が…涙が…」

意味も分からず僕は、ぽろぽろと涙を流し始めていた…

「吉宗はん、泣かんといて、ねえ、泣かんといて…」

京子さんは持っていた手ぬぐいで、やさしく僕の涙を拭いてくれた

「すいましぇん…すいましぇん…京子しゃん…」

「もう、何やの吉宗はんったら…強いだけやのうて、こんなに純粋で涙もろいところもあったなんて…うちますます好きに…あっ!」

京子さんはハッとすると

「あっ…ごっ、ごめんね吉宗はん…うち、またこんな事…」

「えっ!」

「ほら、吉宗はんの気持ちも確かめんと、勝手にひとりよがりしちゃって…」

「いやっ、そっ、そんなこと…」 

「あっ、あの吉宗はん…一つ聞いていい?…」

京子さんは頬をピンクに染めながら

「吉宗はん…、好きな人…、おるん?…」

その美しすぎる瞳で僕を見つめた…

「えっ!?…」

その瞬間、僕の脳裏にめぐみちゃんの優しい笑顔がよみがえってきた…

 

「あっ、あの…あの…」

頭の中に登場しためぐみちゃんは、どんどん大きく膨らみはじめ、僕の胸はふたたびきゅーんと張り裂けそうになった…

114megu

 

「どないしはったの?…吉宗はん…」

「あっ…あの…その…実は…」

僕はめぐみちゃんが好きです…そう言いかけた、その時…

「吉宗ーーーー、吉宗ーーーーーーー!」

背後から僕を呼ぶ声が…

「えっ!?」

慌てて振り返ると、そこには植栽の影で、バタバタ手をふっているマサさんの姿が…

(あっ、マサさん!!…)

その瞬間、頭の中のめぐみちゃんの隣に、マサさんの大きなパンチパーマ頭が割って入り込んで来た…

 

(そっ、そうだったんだ…、めぐみちゃんにはマサさんという愛する婚約者がいるんだった…)

僕は慌てて夜空を見上げると、ダボシャツの袖で涙をぬぐい、ずずずーーっと鼻汁を啜り上げた…そして植栽の中でバタバタ手を振っているマサさんへ、うんうんとうなずいて見せた… 

「えっ?なんだ…吉宗のやつ…」

マサさんは、意味深に泣きながらうなずく僕の姿に

「あのバカ、なんか勘違いを…」 慌てて立ち上がり

「違う違うーーー!」

引きつった顔で、再び手をバタバタと降り始めた…  

(どうしたんだろうマサさん、あんなに必死に手をバタバタ振り回して…)

「あっ!」 僕は、はっと目を輝かせ

(あっ、あれは、三々七拍子だ!!…)

心の中で叫んだ…

 

(そうか、マサさんは、僕と京子さんのために、あんな所で応援団長を務めてくれているに違いない…)

僕は、マサさんの優しさに感動しプルプルと身体を震わせながら、再びうんうんとうなずいて見せた…

 

「何だよあの天然バカは…」

マサさんは僕の様子にあきれながら、

「バカ吉宗、違う違う、俺とめぐみは違うぞー!」

「えっ?…」

僕は一瞬、目をパチパチさせると

「誓う誓う?…俺とめぐみは誓う?…」 

(そうかマサさん…、めぐみちゃんを絶対に幸せにしてくれるって誓ってくれているんだ!…)

人生最大の勘違いをした僕は

(ありがとうございます、マサさんのその思い、確かに受け止めましたよ!)

心の中でつぶやいた…

 

「吉宗はん…あの人、たしか吉宗はんの先輩でしょ…、何しとるん?あんな所で…」

京子さんの問いに僕はぐっと気合を入れると

「僕の応援をしてくれているんです!」

唇をかみしめながら、大きな声で叫んでいた…

「応援?…」

「はいっ!すごく優しい人なんです…」

僕は再びマサさんを見ると

(マサさん、ありがとうございます!…僕も真実の出会いをつかみ取りましたよー!)

心で訴えかけながら、マサさんにガッツポーズを見せた…

  

「ガッ、ガッツポーズって…、あっ、あのスーパー天然…」

マサさんは慌てて立ち上がると

「バカ吉宗ー違うってのー!」

大声で叫んだ…

  

…がっ!…… 

ドンガ!ドンガ!ドンガ!ドンガ!ドンガ!…  

マサさんの叫びと同時に何所からか、大きな太鼓の音が…

ドンガ!ドンガ!ドンガ!ドンガ!ドンガ!…

 

「なっ、なんだー、この音は!祭りは終わったはずだろー」

マサさんは目を血走らせると

「吉宗ー違うぞー、めぐみと俺の婚約ってのは嘘だぞー、ぜーんぶ俺の嘘だぞーー!」

必死に叫びながら手をバタバタ振り回した…、しかし…、

ドンガ!ドンガ!ドンガ!ドンガ!ドンガ!…

マサさんの叫びは太鼓の音によって消しさられ、僕の目からはマサさんが太鼓の調べにあわせて応援団長を務めてくれている、そう映るだけだったのだった…

114masasyan  

(マサさん、僕のために太鼓まで用意してくれるなんて…なんていい人なんだ…)

僕はさらに感動しまくると、頭の中のめぐみちゃんへの思いを振り払うように

「うおーーーーーーーーーーーー!!」

夜空に向かって雄叫びを上げた…

 

「吉宗はん、どないしたの?…」 

「京子さん、聞いてください!」

「えっ?」

ドンガ!ドンガ!ドンガ!ドンガ!ドンガ!…

「さっきの質問の答えです!…」

僕は太鼓の音に負けないくらいの大きな声で

「実は、僕には好きな人がいました!…」

「えっ!?」

「でも、僕はもうその人のことをあきらめましたー!」

「それって、どういうこと?」

「それは…、僕のことをこんなにまで大切に思ってくれている、あのマサさんと、そして彼女のため、そして真実の愛をつかむ為、僕はあきらめる決心をしたんです!」

ドンガ!ドンガ!ドンガ!ドンガ!ドンガ!…

太鼓の音は、僕の心を奮い立たせるように、さらに大きく響き渡った…

「京子さん!僕はもうすべての事を捨てる決心を固めました!」

「えっ?…ちょっと吉宗はん、太鼓がうるさくて、よく聞こえんかったよー」

京子さんは大声で叫んだ…僕はそんな彼女の姿、そして鳴り響く太鼓とマサさんの応援にさらなる後押しを受け、心の中で (よっしゃーー!) っと一発気合を入れると

 

「京子さん!…僕はあなたと真実の愛をつかむ決心をしたのです!…」

太鼓の音に負けないくらいの大きな声で叫んでしまったのだった…

114kokuhaku

しーん…

その言葉と同時に、どういうわけか今まで響いていた太鼓の音はピタッとなりやんでいた…

そして気が付くと、目の前の京子さんは、潤んだ瞳を輝かせ、僕のことを熱く見つめていた…

「あっ!?」

(しまった、勢いにのって、僕は京子さんにこんな大胆なことを…)

「京子さん、今のはあの…その、太鼓の勢いっていうか…その…」

「うれしい…」

「えっ!?」

「うち、こんなに熱い愛の告白を受けたの、生まれてはじめてや~!」

京子さんは感激で顔を真っ赤にそめながら

「うちも好きや…吉宗はんのこと大好きや!…」

僕の胸へ飛び込んできた…

「ありがとう…、吉宗はん、ありがとう…」

「京子さん…」

僕の胸にすがりつき、幸せそうに微笑んでいる京子さんを見ながら

(ああ、これでいいんだ…、こうして真実の愛を僕もつかんだことで、めぐみちゃんも安心してマサさんと幸せになれるんだ…)

僕は自分にそう言い聞かせていた…、そして、すっかり静まった夜空を見上げると

(めぐみちゃん…さよなら…さようなら…)

悲しみをぐっと胸の奥へしまいこみ、心の中で何度も何度もつぶやいていた…

  

「うむ、さすがはお嬢が惚れて、ワシが合格を出した婿や…気合の入ったええ言葉やったー!!」

「えっ!?…」

突然響いてきたガラガラ声に振り返り、僕は 「うわーーー!?」っと驚きの声をあげた…

そこには、お囃子の舞台の上、全身の入れ墨をさらけ出し、鉢巻き姿で太鼓のばちを握っている森亀会長と、その後ろで、これまた片肌の刺青をさらけ出しかっこよくポーズを決めている京極森亀会の怖い人たちが並んで立っていたのだった…

Taijkoiwai

  

「あの、それじゃさっきの太鼓の音は…会長さんたちが…」

「どうやー婿よ、京都の祝い太鼓、すばらしかったやろー、ガハハハハハ…」

「はっ、はい…」

僕はひきつった顔で頭を下げた…

「いやあ、今日はめでたい…実にめでたい、ガハハハ、ガーハハハハハハ!…」

会長は、ガマガエルのような笑い声を夜空に響かせていたが、やがてその大きな目玉をグワッと見開くと

「おい婿…お前に大事なことを言い忘れとった…」

「はっ?…」

「もしもワシの大切なお嬢を泣かせてみい、おどれのどたまマグナムでぶち抜いて、10メートル四方脳みその海にしたるからな…グワハハハ、グワハハハハハハ…」

見開いた目玉をぎょろぎょろ回しながら大きなガラガラ声で笑った…

「のっ、脳みそって!?…うぐえっ…」

僕は背筋にぞっと悪寒を走らせながら、ひきつった声で 「はっ、はひっ!…」っと返事すると、救いを求めるように京子さんに目を移した…

京子さんはそんな僕の恐怖をやわらげるように

「いややわ吉宗はん…、冗談よ、冗談…」

優しく微笑んでくれた…

「じょっ、冗談ですか…はは、はははは…」

「それより吉宗はん?一つ確認したいんやけど…」

「えっ?」

「うん、さっきの言葉…、うちと真実の愛をつかむって、あれ信じてええん?…」

「えっ…」

僕はしばらく考えて

「はっ、はい…」

小さく首を縦に振った…

「ほんまに?…ほんまに信じてええんやね…」

「はっ、はい…」

「もし嘘やったらうちかてただでおかんよ…」

「いっ!?…」

「嘘やったらあんたの金玉ぶった切って、うちで飼っとるワニ亀の餌にしたるからね…」

京子さんは今まで見せたことのない、ど鋭い般若のような目で僕を見た… 

「うぐぇ!?…」

「きょっ、京子さん、あの…金玉って…亀の餌って…あのっ…あの…」

驚きと恐怖にひきつった顔の僕を見て彼女は

「いややわ吉宗はん、嘘やったらの話よ、嘘やったらの、ふふふ…」

ぱっともとの優しい笑顔に戻り、にっこり微笑んだ…

(何だ…今の恐ろしい目は…)

僕は額に脂汗をたらしながら、京子さんの笑顔を見つめていた…

  

「おーっしゃお前らー、祝いや祝いや、祝い太鼓の続きやー!」

会長のガラガラ声に、森亀会の人たちは、「へーい…」と、どすの利いた返事をすると、

ドンガ!ドンガ!ドンガ!ドンガ!ドンガ!…

一斉に太鼓を叩きはじめた…しかし祝い太鼓と言いながら、彼らの目は憧れのお嬢の心を奪った、僕に対する怒りで満ち満ちていたのだった…

ドンガ!ドンガ!ドンガ!ドンガ!ドンガ!…ドンガ!ドンガ!ドンガ!ドンガ!ドンガ!…

そんな僕と京子さんの祝い太鼓を遠めに見ながら、

「あいつ、マジで金玉切り取られるな…」

「ああ、間違いねえ…」

マサさんと銀二さんは呆然と立っていた…

そして、夜空にはこれから起こる波乱の幕開けを告げる、祝い太鼓の音色が響き渡っていたのだった…

続き 第115話 銀さんマサさんのグレイトマルチン大作戦 へ

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2011年1月17日 (月)

第113話 お嬢は俺のもの…

「マサー!、うおーいマサー!」

お祭りのはねた境内に、銀二さんの声が響いてきた

「マサー、お前見たんだってな、森亀さんのお嬢さん!」

「ふぇ?…はあ…」

「不覚にも俺はみそびれちまったんだけどよ、えっれえ、いい女らしいじゃねえか…」

「ふぇ…、はあぁ…」

「何だ…?、おめえ、さっきから、ふぇだのはあ~だのって、ボーっとしてよ…」

銀二さんはマサさんの様子に首をかしげ…

「お前見れたんだろお嬢さんのこと、どうなんだよ、そんなにいい女なのかよ…」

「はぇ?…、はぁ…」

マサさんはまるで魂の抜け落ちたような顔で、向いの金魚すくいの方を指差した…

「はあ?…お前どうしちゃったの?…」

「お嬢…ガマお嬢…アへ…アへ…」

「アへって?…」

銀二さんはマサさんの指す方角へ目を向けた…するとそこには…… 

 

「吉宗はん、売れ残った金魚ぜんぶ袋に移し終えたけど…」

「あっ、すっ、すいません京子さん…」

「すいませんって、そないによそよそしくせんといて、ねえ…次、何を手伝ったらええかな?…」

「次って、もういいですよ…」

「もういいって…、吉宗はん、うちがこうして手伝ったりするの迷惑なん?」

「めっ、迷惑だなんてとんでもないです…すごく助かってます」

「それやったらもっと手伝わせて、うち、吉宗はんとこうしていっしょに居れるだけで、幸せなんやもん…」

「えっ!…しっ、しあわせって…!」

僕が顔を真っ赤にすると

「いややわ、吉宗はん照れて赤くなっとるん?…、ほんにかわいい…」

京子さんは、その美貌を僕に向け、ニッコリ微笑んだ…

113wakat1

「あっ、あれが…森亀会長のお嬢!?…」

銀二さんは京子さんの姿を遠目に見つめながら、呆然と立ち尽くしていた…

「なっ、驚いただろ銀二……」

抜け殻状態だったマサさんも、何時しか銀二さんの隣にホンワカした笑顔で立っていた

「まっ、マサ…、これは参った…、お前がおかしくなっちまうのもわかるわ…」

「ああそうだろ、美しいだろ…」

「ああ、美しい…いや美しすぎる…」

「そう、美しすぎるんだよ…」

ボエ~~~…

二人はしばらくの間、だらしないボケ顔で京子さんの事を眺めていたが、やがてその隣にいる僕に目を移すと急に目を血走らせ…

「しかし、なんでえ吉宗の野郎、お嬢相手にデレデレしやがって…」

「うむ、何だかむかついてくるだろう銀二!…」

「ああ、だいたいから森亀会長のお嬢さんが、野郎に憧れるってのがおかしいだろう…、このまま行くとあいつ、あんな美人をモノにした上に、森亀会の二代目襲名候補じゃねえか」

「美人のお嬢に加えて、森亀会二代目襲名!?…」

 

(うおっ、そうか!…お嬢といっしょになるって事は、森亀の二代目、つまり西の大親分の仲間入りっていうおまけが!!…)

マサさんは小さな目玉をギラギラ輝かせると、自分が数十名の若衆にあがめられ踏ん反りかえっている姿を思い浮かべた…そしてマサさんの横には、美しい着物姿で寄り添う京子さんの姿が…

(むおあ…いいっ、絶対にいいぞ…これぞ俺が探し求めていた理想の未来像だ…)

「ん~っ!?」

(でも、ちょっと待て…となるとめぐみの事は…)

今度はめぐみちゃんと二人、ホンワカした雰囲気で、愛を語り合っている光景が頭に…が、しかし、そこへ突然光り輝く影が…それはめぐみちゃんのお父さん、捜査四課、閻魔のハゲ虎の怒りに満ちたハゲずだった…

「ぐおぁ!」

マサさんは思わずその場でのけぞると

(あっ、危ねえ!めぐの可愛さにすっかり大事な事を忘れてたが、あいつはハゲ虎の娘じゃねえか!…)

脂汗をぬぐいながら再び京子さんの事を血走った目で見た…

(森亀のお嬢、やはり見れば見るほど美しいぜ…うんうん、タイプこそ違えめぐも容姿ではいい勝負かもしれねえ、しかし、裏のおまけにかんしちゃ、まるで天と地の差だ!)

「そうだ!やっぱりお嬢がいいに決まってるじゃねえか!」

気づくとマサさんは、拳を握りしめながら大声で叫んでいた…

 

「何だマサ…お嬢がいいに決まってるって?…」

ふと見る隣の銀二さんが、片方の眉を吊り上げながらマサさんを睨み据えていた…

「あっ銀二!?いやっ、何でもねえ、何でもねえ…」

「さては、てめえもお嬢のこと!?」

「えっ!?…」

「あの美人お嬢を物にして、森亀の跡目を継ぐ、てめえもそう考えてやがったのか!」

「てめえもって銀二…おめえまさか…」

「そのまさかだ、お嬢は俺がもらう…」

「何だと!?」

「森亀会二代目も、あの美しすぎるお嬢も…、俺にこそふさわしいんだ…」

胸をグッと突き出しながら、自信に満ちた笑顔から白い歯を輝かせた

「てめえ銀二、俺の半目に回るってのかコラ!?」

「バカヤロウ、半目もくそもねえだろうが、俺は鬼瓦興業でもいい男ベストスリーに入る色男…、それに引きかけてめえは万年女日照りの変態フルチン野郎だ…はなから勝負になるかってんだ、あーははははっははーー!」

「変態フルチン野郎だと!てめえ喧嘩売ってんのかコラ!」

マサさんは鬼のような形相で銀二さんにつかみかかった

「おうよ、一生の人生がかかってんだ、上等じゃねえか!」

まさに一触即発、二人が獣のように牙を向き合ったその時だった…

 

「やっぱり吉宗はん、見れば見るほど、ええ男やわ~!」

二人の耳にお嬢のおのろけ声が響いてきた…

「むお!?…」

銀二さんとマサさんは慌てて僕のほうに目をむけた…

「おい、俺らが喧嘩してる場合じゃねえぞ、銀二…、先ずはあいつから何とかしねえと…」

「それだったら心配いらねえだろ、しょせんあいつは童貞男だ、俺の真珠入りのマグナムの敵じゃねえぜ、あーはははは~!」

銀二さんは腰をカクカク動かしながら大声で笑った

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「バカ、笑ってる場合じゃねえだろ、何とかしねえと吉宗の野郎、お嬢とできちまうぞ!」

「お前もわかってねえな、野郎の心の中は何所を切ってもめぐみちゃんだらけ、愛のめぐみちゃん飴男だぞ、そんなやつがめぐみちゃんを裏切って、お嬢とできちまう訳ねえっての、ははは…」

余裕たっぷりに笑うと、銀二さんは腹巻からブラシを取り出し、

「そんな心配するより、お嬢へのアタック準備だ…」

ニヤニヤしながらリーゼントヘアを整え始めた…しかし、マサさんは額から青筋をたらしながら

「それが…実は今のあいつは違うんだよ!」

鬼気迫る顔で銀二さんを見た

「違う?何が違うってんだ?…」

「吉宗のやつは今、めぐみのことをあきらめる為に新しい愛を探し求めている真っ最中なんだよ!…」

「めぐみちゃんをあきらめる!?…なんだそりゃ?…」

「いや、あの…実はよう…」

マサさんは苦笑いをしながら、事の次第を銀二さんに話した…

 

「なっ、何ーーー、てめえとめぐみちゃんが婚約者だって嘘ついたってかー!?…」

「いやあの、嘘っていうか、俺の勘違いもあってよ…、それで、お人よしのあいつ、めぐみと俺が幸せになる為に、自分も真実の愛を探すんだー、なんて気合いれちまってる最中なんだよ、はは…ははは…」

「はははじゃねえだろが、てめえ何て汚ねえまねを!」

銀二さんは激怒りしながら、マサさんの胸ぐらをつかんだ

「おいおい、今はもめてる時じゃねえっつたろ、とにかく急いで吉宗に本当の事を説明してやらねえと…あいつ俺の言葉真に受けて、お嬢のことを運命の人だなんて思い込んじまうぞ!」

「うお!?そうか!!…」

慌ててマサさんから離れると

「おーい吉宗ー、吉宗よーい!」

大声で叫びながら僕のもとへ走りだした…が、その瞬間、目の前に巨大な物体が割り込み 「ぐおあ!?」 銀二さんはボヨーンっと弾き飛ばされてしまった

「なんだー!、てめえ急に飛び出してきや…あっ!?」

銀二さんはハッと青ざめた…

「んっ…何や?…」

突然割り込んで来た巨大な物体、それは京子さんのお父さん、森山亀太郎会長だったのだった…

 

「あっ!?森亀会長…すっ、すいません!…」

銀二さんは慌てて頭を下げた

「おう、お前確かさっきワシの事を案内してくれた…あー、たしか銀二いうたな…」

「はっ、はい…」

「そうやちょうどええ所でおうた…、銀二、実はお前にも礼を言おう思うとったんや…」

「お礼?…」

銀二さんは慌てて立ち上がると

「あの、会長…俺に礼っていったい?…」

会長はその大きなミットのような手で銀二さんの肩をガシッと叩くと

「お前さんが、ワシの婿の教育をようしてくれとったって聞いてな、はははは…」

「婿の教育?…」

「おう、婿や婿…ほれ、あそおこにおるワシの婿さんや、がははははーー」

大声で笑いながら京子さんの隣にいる僕のことを指差した…

「えっ?…」

銀二さんはしばらく目をパチパチさせていたが、急に大きな口をおっぴろげると

「どえーーーー、婿って吉宗のことですかーーー!?」

大声で叫んだ…

森亀会長は満足そうに大きな顔を立てに振ると

「お嬢が好きになって、このワシが合格をだす…そらあもう婿と同じや、がはははは…」

ガラガラ声を夜空に響かせながら、のっしのっしと僕の方へ歩き始めた

 

「やべえ…森亀会長は乗り気まんまんじゃねえか…、これじゃ俺がお嬢うんぬんより、吉宗の野郎が、とんでもねえ恐ろしい目にあっちまう予感が…」

銀二さんは額から脂汗をたらしながら、京子さんの隣で笑っている僕を見た…

そんな銀二さんの予感が的中して、これから愛と恐怖のトライアングル蜘蛛の巣地獄へと突き進んで行くなんて、その時の僕はまだ知る由もなかったのだった…

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続き 第114話 吉宗くん 祝い太鼓と真実の愛 へ

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2010年12月22日 (水)

第112話 お嬢の正体

大切なめぐみちゃんのために… 

めぐみちゃんが本当に幸せになるためなら、涙を呑んで彼女のことを忘れなければいけない…、そして、彼女のために真実の新しい愛をつかみ取らねばいけない…

ミヤマの正さんの策略とも知らず、僕は必死に自分にそう言い聞かせながら、明るい笑顔で仕事に励んでいた

「さあ、いらっしゃい、いらっしゃい…金魚すくい一回300円ですよー!」

 

そんな僕の様子を遠目に見つめる巨大な影が…

「あっ、あれが一条吉宗!?…」

それは京極森亀会、森山亀太郎会長だった…

「あれが…」

森亀会長は、大きな目玉をギョロギョロ動かしながら、しばらく僕を観察していたが、やがてそのタラコのような唇を横に広げるとひきつった顔で

「おいおい兄弟…、冗談はいかん…あれは別の一条吉宗やろう…」

隣にいる親父さんを見た

「別の吉宗?」

「そうや、ワイが言うとるのは、もっと厳ついもう一人の一条吉宗やで…」

「もう一人って、何言ってるんだ兄弟、うちに吉宗ってのは、あいつしかいねえぞ…」

「あいつしかおらんって…、そっ、それじゃ本当にあれが!!…」

森亀会長は巨大な口を、がぶぁーっとおっぴろげると

「んなアホな…、んーなアホな~!」

ガラガラ声で呟きながら、ドッスン、ドッスンと僕の方へ走りだしていた

 

「さあ、さあ、いらっしゃい、いらっしゃい…金魚すくい一回300円…一回さんびゃ…うおあ!?」

ドッスン、ドッスン、ドッスン、ドッスン!

巨大な地響きとともに、目の前の水槽の水が波打ち始め

「うわー、なっ、何だー、地震か~!!」

僕は大慌てで金魚の入った水槽を抑えた

ドッスン、ドッスン、ドッスン、ドッスン!

「お前が一条吉宗かー!」

今度は地響きに交じって、大きなガラガラ声が…、「えっ!?」 僕はそこで、地響きの正体が地震ではなく、巨大なおじさんが走り寄ってくる音だと気が付いた…

   Morikame1

「お前が、一条吉宗かと聞いとるんやーー!」

巨大なおじさんはがなり声で怒鳴りながら、僕の顔をそのキャッチャーミットのような両手で鷲ずかみにすると、そのまま夜空に向かって天高く持ち上げた

「どわーーー、なっ、なんれすかー急にーー!?」

突然の出来事に僕は首をびろーんと伸ばされた状態で手足をバタバタとさせた

「なんでやない、お前が一条吉宗かって聞いとるんやー!」

「はっ、はひ!…そうれすけろ…」

目の前に現れたお相撲さんのような男に恐れおののきながら、ひきつった顔で答えた

Morikame2

「ほんまかー、ほんまに、お前が吉宗かー」

「はひ、ほんまれす、ほんまれす…」

「なんちゅう…噂の侠客がこないな青年やとは…おっ驚きや~、この世の七不思議や~」

森亀会長は大きな目玉をぎょろぎょろ動かすと

「うーん、うーん…七不思議や…」

奇妙な唸り声を上げながら、僕を観察し続けた…

「おいおい、森亀の兄弟…、そんな乱暴に扱ったら、そいつの首が引っこ抜けちまうじゃねーか、はははは…」

背後から聞こえてきた、鬼瓦興業の親父さんの声に、森亀会長ははっとすると、

「おっ、すまんすまん…」

あわてて僕を地面に降ろし、再びうーんと唸りながら改めて僕を見た

 

「あっ、あの、親父さん…こちらの方は…」

僕は首長族のようにビロローンと伸びきった首で、巨漢の背後で笑っている親父さんにたずねた…

「んっ?…おう、この人はワシの兄弟分でな、森山亀太郎さんだ…、ほれ、しっかり挨拶せんか…」

「あっ、はひ…」

僕はあわてて両膝を開くと、

「初めまして、いっ、一条吉宗れす!」

少しだけなれた業界風の挨拶で恐る恐る頭を下げた…

「うーむ…これは驚いたわ、噂の一条吉宗いう男が、こんな普通の兄ちゃんやったとは…」

森亀会長はガラガラ声でつぶやくと

じーーーーーーーーーーーー!

その巨大な目玉を超至近距離に近づけ、顔、胸、背中、腕、足…そして股間、ありとあらゆる場所をぎょろぎょろ観察しはじめた

「あっ、あの、なんですか~、いったい僕に何かついてるんですか~」

「ええから、じっとしとれ!…」

「はっ、はひ…」

「うーん、うーーむ…」

会長はその後も、僕のあらゆる場所にギラギラ光る目玉を光らせ続けた

(なっ、なんだー、この恐ろしいおじさんは~、ぐおあ…息が、息が…)

恐るべき眼光の圧力に僕が思わず窒息しかかった、その時…

 

「うむ、ええやろう…!」

会長は突然、バシッとそのキャッチャーミットのような手で僕の肩をたたいた

「痛ーーーー!」

僕は、そのすさまじい衝撃に思わず脱臼しかけながら、恐る恐る森亀会長の巨大な顔面を覗き見て

「うえっ…」

目をぱちぱちさせた…

そこには、今までの恐ろしい形相から一転して、満足そうに笑いながら僕を見ている森亀会長の姿があったのだった

「うむ、一見頼りなさそうやが、よう見ると実にええ目をもっとる…、それに…」

後ろに立つ親父さんをチラッと見た後

「鬼辰の兄弟も認めて採用したほどの男や…うん、ええ、これやったら合格や、合格…」

「ごっ、合格?…」

「おう、合格や…」

「あの、合格っていったい?…」

「おーい、三郎ー!」

森亀会長はどすの利いたガラガラ声で、向かいの三寸の前にいる大きな顎の男に声をかけた

「はい、会長御用で…」

「お嬢に伝えい、合格やとな…」

「えっ!合格って会長…」

デカ顎の男、森亀会のサブさんは慌てた様子で僕を見た

「まってください会長、合格って…」

「合格は合格や、はよう、お嬢にそう伝えい…」

「あっ、はい…」

会長に睨まれ、サブさんは恐る恐るその場から後づさりした…そんなサブさんに

「おい、サブちゃん、どうしたんだ?…」

小さな目をキラキラさせながら、ミヤマの正さんが近づいて来た

「なあ、サブちゃん、今、森亀会長、吉宗を見て合格って言ってたよな、なあ、なあ、それってもしかして…」

「うぐっ…」

デカ顎のサブさんはその場でじっとこぶしを握りしめていたが、やがて正さんの方へ顔を向けると

「そうや、会長が、あの吉宗いう兄ちゃんとお嬢の間を許した言うことや…うぐぐ…」

目にいっぱいの涙を浮かべながら、悔しそうにうなずいた…

「やっぱそうだったのか、はははー、これでガマお嬢と吉宗の野郎が、はははー」

「なっ、何を嬉しそうに笑っとんや、正やん…」

「あっ、悪い悪い、お嬢はサブちゃんにとっても憧れの人だったよな…」

「なっ、なんでや、会長…、あんな小僧を、少し見ただけやのに…、なんで合格だなんて…」

サブさんは呆然とその場に立ち尽くしていたが、

「こらサブー、われ何をぼーっとしとるんや!…はようお嬢を呼んでこんかい!」

森亀会長に怒鳴り飛ばされると、大慌てで境内の奥へと走っていった…

 

「こいつはナイスな展開になってきたぜー、親父のお墨付きで、吉宗とガマお嬢が晴れて結ばれるって訳だ、はははは…」

正さんはにやけ面をうかべると

「吉宗ーーー、うおーい吉宗くーん!」

ぴょんぴょんとスキップしながら、森亀会長と僕の方へ走り寄ってきた

「いやー、よかったなー吉宗!…これでお前にも真実の愛が誕生するぞー、ははは~」

「えっ?真実の愛?…正さんそれってどういうことですか?…」

「まあ、今にわかるからよ、いやあ、よかったよかった~」

正さんはへらへら笑いながら僕の頭をたたくと、隣にいる森亀会長のほうに顔を向け

「いやあ、参りましたー、さすがは新京極の森亀会長っすね、一瞬にしてこの吉宗という男の本質を見抜いちまうなんて…この白鳥正義、改めまして会長さんの眼力のすさまじさに感動しやしたー!」

してやったりという笑顔ではしゃぎまくった…

 

「正さん、正さん、どういうことですか?…真実の愛とか、合格とか、いったい何のことですか?…」

僕は小声で正さんに尋ねた

「んー?、そうかそうか、お前は聞かされてなかったんだな、いやいや実はよう…」

正さんは耳元で、ことの真相を僕に告げた…

 

「えーーーー!?こちらのお嬢さんが、僕のことをーーーー!?」

「そうよ、おまけに父親の森亀会長からも交際の許しが出たんだぞ!…いやー、よかった、本当によかったなー吉宗、ははははー」

「そっ、そんなこと急に言われても、僕、そのお嬢さんという方にもお会いしたことないし…そっ、それに…めっ…!」

僕は慌てて言葉を止めた…

「吉宗、お前、今めぐみって言おうとしただろう…」

「えっ、あっ…」

「いかん!…それはいかんぞ吉宗!…その名前を口にすると、お前も、めぐみのやつも深い悲しみに苦しむことになっちまうんだ!…」

「そっ、そうだった…ぼっ僕は、僕は…」

「わかるな吉宗…今はつらいことと思うが我慢するんだ、我慢して、その悲しみを乗り越えて、そしてこれから目の前に現れるガマお嬢…じゃなかった、会長のお嬢さんと真実の愛をつかみ取るんだ…」

「会長のお嬢さんと真実の愛?…」

「そうだ、森亀会長のお嬢さんと結ばれ、お前の本当の幸せをつかんでやるんだ…」

「えっ!?」

僕は思わず顔を赤らめながら、少し離れた場所でじーっと僕の様子を見ている、森亀会長に目を向けた…

会長は、何をぼそぼそしゃべっとるんや?という顔で僕たちのことを見ていたが、やがて境内の暗がりから走りよって来る人影にふっと目を細めた…

 

「お父ちゃん、サブやんの言うとったことって、本当?…、本当に許してくれるん?…」

会長の大きな背中に隠れ姿は見えないが、暗がりから現れたそれは女性の声だった…

「うれしいわー、やっぱりうちのお父ちゃんやわー」

女性の声はそう言いながら森亀会長の胸に抱きつき、うれしそうにはしゃいでいる様子だった…

「おいおい、お嬢、人前で何をするんや、はははは…」

「だって、ほんにうち、めっちゃ嬉しいんやもの…」

 

そんな会長と会長の背中に隠れて見えないガマお嬢の様子をじーっと見ていたマサさんは  

「ガマ親父とガマお嬢の抱擁か…くっくくくく…」

へらへらと薄ら笑いを浮かべながら、僕の背にそっと手をそえ

「ほら吉宗、お前にとっての真実の愛の始まりだ、さあ、ガマお嬢…、じゃなかった森亀会長のお嬢さんをやさしく迎えてやれよ…」

どんと二人の方へ突き飛ばした…

「あっ、ちょっと正さん!…」

僕がよろけながら、慌てて声をあげると 

「あれ?…その声は…吉宗はん?…」

「えっ?…」

「もしかして、そこにおるん?…」

会長の大きな背の向こうから、聞き覚えのあるきれいな声が…

「あれ…その声どこかで?…」

「あー、やっぱり吉宗はんの声やわー」

森亀会長の背中がふっと横にそれると同時に、僕の目の前に再びあの切れ長の目をした美しい女性の姿が映し出された…

Ojyou  

「あーー、あなたは、きょっ、京子さん!?」

「うれしいー、うちの名前、ちゃんと覚えとってくれたんやね、吉宗はん…」

そう、それは、ついさっき噴水の前で出会い、愛を告白されてしまった謎の美女、京子さんだったのだった…

「ほんまに嬉しいわー」

京子さんはほほを染めながら走り寄ってくると、そっと僕の腕を握りしめ

「吉宗はん、うち嬉しい…憧れの吉宗はんとの仲を、お父ちゃんにも認めてもらえて、すごーく嬉しいわ~」

その美しすぎる顔をすり寄せてきた

「あっ、あの京子さん…」

僕は突然の出来事に、顔を真っ赤にしながら呆然とその場に立ち尽くしていたのだった…

 

そんな僕と京子さんのことを、ひきつった顔で見ている男の姿が… 

「なっ、なんだ?…おい、吉宗…、だっ、誰?…おい、そのすんげえ美人、いったい誰?…」

それはミヤマの正さんだった…

「えっ、あれっ?あれれれ?…ちょっと森亀会長…、あのこちらのすんごい美人の方はいったい?…」

「んー?、なんや…これはわいの一人娘の京子やが…」

「一人娘って、それじゃ、あの…、この美しい人が、おっ、おっ、お嬢!?…」

正さんは京子さんのあまりの美しさに見とれながら、ひくひくと顔をひきつらせていた…そんな正さんのもとへデカ顎のサブさんが

「おーい、正やん、すまんすまん、さっきの写真あれは間いやったわー」

「えっ?間違え!?」

サブさんは胸ポケットから、正さんに見せた森亀会長の女版写真を取り出すと

「いやー、この写真なあ、実は会長が韓国旅行の飲み屋でふざけて撮った写真やったわー」

「なーーー!?」

「ほんまのお嬢の写真はこっちやった、こっち…」

サブさんは森亀会長の女装写真の後ろから、もう一枚の写真を取り出すと、正さんの顔の前に突出した、そこには本物のお嬢、京子さんが清楚な着物姿で写し出されていたのだった…

「どえーーーーー!!」

正さんは改めて本物のお嬢に目をうつすと

「なんでサブちゃんーーーーーーーー!!」

夜空に向かって悲痛の絶叫をあげたのだったのだった……

(続き 第113話 お嬢は俺の物 へ…)

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2010年7月14日 (水)

第111話 ミヤマのマサの恐るべき陰謀

すっかり夜もふけ、祭りの客層は小さな子供から大人へと代わり始めていた…そんな中、僕は境内脇の植栽の陰をこそこそと隠れながら、持ち場の金魚すくいへと近づいていた…
  
「まずいな…、ついカッとなって仕事場から飛び出しちゃって、気がついたらこんな時間になっちゃった…今頃追島さん達怒ってるだろうな…」
僕は植栽の間から恐る恐る水槽の方を覗き、「えっ!?」 思わず目を丸くした
 
「めっ、めぐみちゃん!?…」
 
そこには、あたりを見回しながら、寂しげにお店番をしてくれている、めぐみちゃんの姿があったのだ…
 
「どっ、どうしてめぐみちゃんが?…だって彼女は婚約者のマサさんが帰って来て…」
僕は向かいの三寸に目を向けた…、するとそこには、お好み焼きを作りながら、めぐみちゃんの方を見てぶつぶつ何かを呟いている、ミヤマのマサさんがいた…
  
「何だ?…マサさんあんなに怖い顔で、めぐみちゃんの事を見て…」
僕はさっきのお守り騒動を思い浮かべはっとした… 
「そうか!…マサさん婚約者のめぐみちゃんが僕に手作りのお守りなんかプレゼントしたもんだから怒ってるんだ!」
  
「それじゃ、めぐみちゃん…、せっかく再会できたというのにマサさんと喧嘩してしまったのか…」
慌てて金魚すくいの前に目を移すと、そこには境内の出口付近を見ながら、うっすらと目に涙を浮かべている彼女の姿が…
 
「なっ、泣いている!…めぐみちゃんが、泣いている…」
   
それは大きな衝撃だった、愛する人の深い悲しみ、切ない思い、僕の胸はグッと締め付けられた…
 
「めぐみちゃん…僕のせいで大好きなマサさんと…それであんなに悲しい顔を…」
 
僕は大きな勘違いをしながら、じーっと彼女の事を見つめ…
 
「ごっ、ごめんね…、ごめんね、めぐみしゃん…、僕のせいれ、めぐみしゃんに悲しい思いを…、めぐみしゃん…めぐみしゃん…ごめんね…ごめんねなのら…」
こみ上げる熱い思いを押さえきれず、植栽の陰で泣きながら、何度も謝りつづけていた…

     

しかし、僕の純粋な思いとは裏腹に、お好み焼き三寸のマサさんは…
 
「うん、やっぱ可愛い…、めぐの可愛さはまさしくこの町一番だな…」
眉毛をピクピクさせ、怖い顔でめぐみちゃんを見ては、そんなことを呟いていたのだった…
  
マサさんは、鉄板の前でさらに険しい表情で腕組みすると
「やっぱ、めぐみには俺クラスの色男じゃねえといけねえ…、まだ駆け出しの吉宗クラスにゃ、10年早えって訳だ…うんうん…」
ぼそぼそと呟きながら、隣のテント屋台に目を向け、親父さんと談笑しながら、ガマガエルのような巨大な口で、ぐしゃぐしゃと焼き鳥を頬張っている森亀会長を見た…
 
「そうだ…、吉宗のやつが、あの森亀会長の娘、あのガマお嬢といっしょになって、西へ消えてくれれば…」
  
マサさんは、デカ顎のサブさんに見せられた恐るべしお嬢の写真を思い浮かべ、にやっと小さな目玉を細めると、まるで獲物を狙うハイエナのような目でめぐみちゃんを見ると
    
「となると、今、吉宗の野郎に戻ってこられたんじゃ、うまくねえな…」
小声で呟きながら、あたりを見渡し、少し離れた一点に目を止めた…
 
「うっ!…思った矢先にあいつ…」
そこには植栽の陰で、切なそうに泣きながら、めぐみちゃんの事を見つめている僕の姿があったのだった…

 

「やべえ、吉宗の野郎、いつの間にかあんな所に!?…」
 
マサさんは小さな目をぎらっと見開くと小走りで彼女の方へ近寄り    
「おいっ、めぐ!…やべえ、やべえぞ…」
血走った目で両手をバタバタさせた
「えっ?…どうしたのマーちゃん急に?…」
「ハゲ虎の旦那だよ、ハゲ虎の!」
「えっ!?…ハゲ虎って、私のパパ!?」
めぐみちゃんはあたりをキョロキョロと見回した…マサさんは慌てて彼女の脇に近寄ると、さっとその肩を抱き寄せた…
「バカ…あっちを見ちゃダメだ…、ハゲ虎はあの植木のあたりでうろうろしてたんだからよ…」
「えー!こんな所をうろうろって、それじゃやっぱり私の事探してるのかな?…」
「ああ、間違いねえ、まさに獲物を狙うハンターってツラしてたからな…うん…」
「うそっ、どうしよう、マーちゃん…私みつかっちゃったかな?」
「いやっ、怖い面でキョロキョロしてたけど、お前には気づいちゃいなかったみてえだぞ…」
「本当?…」
「ああ、とにかく見つかったら偉い事だ、ひとまず俺の胸に隠れろ…」
マサさんはそう言いながら、ドサクサまぎれにめぐみちゃんの顔を両手で抱き寄せると、僕がひっそり隠れている植栽のあたりを、横目でチラッと見た…
 
そこには、マサさんとめぐみちゃんのショッキングなな光景を目の当たりにして、呆然と大きな鼻と口をおっぴろげている僕の姿があったのだった…
 
そう、僕の目には、その光景が紛れも無く、仲直りによる愛の抱擁に見えてしまったのだった…
 
「めぐみちゃん…マサさんが…はあ…はあぁ~…」
僕はショックで呆然としながらも
「そうら…これれ…これれよかったんら~…これれ、めぐみしゃんはまた幸せに暮らす事が出来るんら~…」
複雑な心境で二人の抱擁シーンを遠巻きに見つめていた…
 
 
僕が植栽の影で泣きながら見ているとは露知らず
  
「マーちゃん、どうしよう…、今パパに見つかったら…、まだ、吉宗くんに本当の事説明してないのに…」
めぐみちゃんは潤んだ瞳でマサさんの事を見た…
 
「バカ、そんなこと言ったって、今お前がハゲ虎に見つかってみろ、うちの親父さんに加えて新京極の森亀会長まで近くにいるんだぞ、えれえ大ごとになっちまうじゃねえか…」
「でも、吉宗くんが…、吉宗くんが…」
めぐみちゃんは、ポロポロと泣きながら、マサさんの事を見つめた…
マサさんはそんな彼女に、大きな顔を近づけると
「吉宗の事だったら心配するな…、やつが戻ったら俺がちゃんと誤解を解いておいてやるから…」
「本当?…」
「ああ、さっきも約束しただろ、心配するな…」
「本当にちゃんと話してくれる?…私とマーちゃんが婚約なんてしてないって、あれは間違いだったって、ちゃんと説明してくれる?」
めぐみちゃんのすがるような訴えに、マサさんは大きく首を縦に振ると、ぐっと彼女の肩を抱き寄せながら
 
「ああ、俺を信じろ!!…」
突然僕にも聞こえるように大声を張り上げた…
めぐみちゃんはほっとしたのか、涙をぬぐいながらマサさんに微笑むと
「本当にお願いね、マーちゃん…」
小さな声でささやき、近くに置いてあったカバンで顔を隠しながら、慌てて境内の外に向かって走っていってしまった…
 
 
そんな二人の様子を僕は涙と鼻水まみれのぐしゃぐしゃな顔でじーっと見つめていたが、やがて
「あぁぁぁぁぁぁ~…」
奇妙なうめき声を発っすると、その場に崩れ落ちてしまった…
「やっぱり、やっぱり僕は…、僕はめぐみちゃんの事が好きなのら~、本当に好きなのら~」
そう呟きながらも僕は、必死に唇を噛み締め
「れも…んぐっ…、れもめぐみちゃんの心の中には、マサさんという愛する男が…」
彼女が別れ際見せた、切ない表情を思い浮かべ
「そうなのら…僕が割り込んでしまっては、再び彼女を苦しめる事に…」
植栽の影で一人、まるで大魔神のような形相で心の葛藤を繰り返していたのだった…
 
と、その時だった
「おい、吉宗!…何やってんだ?そんなところで…」
突然木々の隙間から、ニューッと大きなパンチパーマ頭が姿を現した…
  
「うわーーーー!?」
慌ててのけぞる僕の前に、たった今めぐみちゃんと切ない別れシーンを演じていた、マサさんの大きな顔があったのだった…
 
「まっ、マサさん!?…」
「マサさんじゃねーだろ、吉宗!…、てめえ、仕事ほっぽり出して何処行ってやがったんだよ!…」
マサさんはぐっと怖い顔で、僕を睨みつけた
「すっ、すいません!…」

「すいませんじゃねーよ、このバカ!…俺が無理やりめぐみにお前にかわって店番させたからいい様なものを、あったく…」

「無理やり?…」

僕は一瞬ムッとした顔でマサさんを見た

「あっ?…何だお前急におっかねえツラして…」
「無理やりって、どういうことですか?マサしゃん!…」
「どうもこうもねえだろ…、めぐのやつ、本当は久しぶりに会った俺の手伝いがしてえって、泣いてすがったんだがな、でもお前、それじゃ吉宗が可愛そうすぎるだろうって、言い聞かせてよ…」
「僕が可愛そう?…」
「ああ、淡い恋がぶっ壊れたあげく、追島の兄いに仕事サボったのがばれて、どつきまわされたんじゃ、お前が可愛そうすぎるじゃねえか…」
「そっ、それで、無理やり嫌がる彼女に、僕の代わりに店番を?…」
「ああ、まあ、そういう訳だ…」
マサさんはとぼけた顔で笑った…、僕はそんなマサさんの事を、再びぐっと怖い顔で見ると 
「どっ、どうして…どうしてそんな酷いことを!…どうしてそんな事をさせたんですか!」
思わず大声で叫んでいた…
 
「どうしてって、だからお前が…」
「僕はどうなったってかまわないんです!…、僕のことなんかより、久しぶりに出会ったマサさんと一緒に居たいって、一分でも一秒でも近くに居たいって、彼女の切ない思いを大切にしてあげる、それが婚約者じゃないんですか!」
僕は湧き上がるめぐみちゃんへの思いを抑えきれず、気がつくと誰もが恐れをなす、武州のミヤマクワガタに対してギラギラ光る目で詰め寄っていた…
 
「何だ…お前…」
マサさんはそんな僕の鬼気迫る思いに押され、しばらく呆然としていたが、ふっと優しく微笑むと
「吉宗、お前ってやつは…」
小さな目玉にうっすらと涙を浮かべ
「辛い気持ちを抑えながらも、めぐみの幸せのことを思って…」
がっしと僕の両手を大きな手で握り締めてきた…
「えっ、あっ、マサさん…」
「ありがとうよ…、お前の熱い思い、この白鳥正義、確かに受け取ったぜ…」
「えっ!」
「めぐのことは心配するな、あいつは俺が命に代えても幸せにしてやるから、お前の言うとおり寂しい思いなんてさせねえ、絶対にしねえって約束するから…」
「マサさん?…」
「吉宗…俺は分かったぜ、なぜ銀二のやつがお前の事を認めていたか…男だ、お前ってやつは本物の男だ…」
「本物の男?…」
僕は思わず目をまん丸にした…
 
「さあ、それより何時までこんなとこに隠れてやがんだ…急いで持ち場に戻らねえと、親父さんにどやされるぞ…」
マサさんは自分の小さな目をタオルでぬぐったあと、それをポンと僕へ放り投げた…
「ほれ、それで涙をぬぐって、辛い思い出も拭き取ってやるんだ…」
「思いを拭き取る…あっ、はい…」
僕はマサさんから受け取ったタオルで必死に涙と鼻水をぬぐった…そんな僕の様子をマサさんはしてやったりといったニンマリ笑顔で見ていたが、やがて僕の背中をポンとたたくと
 
「そうだ、お前に一つ俺の経験を教えてやるぜ…」
目をキラキラと輝かせた
「マサさんの経験ですか?」
「ああ、俺も昔、本当に愛する女に捨てられた事があってな…まるで真っ暗闇に突き落とされた…そんな事があったんだ…」
「えっ!マサさんにそんな事が?」
「ああ、しかしな、神様ってなあ決して傷ついた人間を見捨てやしねえ…ちゃーんとその直後に最高の真実の出会いってやつを用意してくれたんだ…」
「真実の出会い?…」
「ああ、お前には辛いかも知れねえが、めぐみとの出会いってやつだ…」
「うぐっ…」
「分かる、お前の気持ちは良く分かる、でもな俺も辛い別れを乗り越えてあいつと出会えたように、お前にもこれから真実の出会いが待ってるんだ…」
「僕にも…」
「ああ、だからよお前は過去を引きずっちゃならねえ…、めぐの事はきっぱり忘れて、これからは新しい愛を神様に願うことだ、そうすれば必ず神様はすぐ目の前にお前の本当の幸せを用意してくれるよ…」
「そんなこと言われても…」
僕は思わず手にしていたタオルでぐっと涙をぬぐった…マサさんは僕の背中を再びポンポンたたきながら
「めぐの事は心配いらねえって言っただろ、お前はお前で、これから真実の愛をつかめるんだから…」
「真実の愛?…」
「ああ、心優しいお前なら、必ず本物の…そう、真実の出会いがすぐそこに現れるだろう…、いや待てよ、もしかした、もうすでに現れているかもしれねえぞ…」
「えっ!?」
マサさんの言葉に僕は噴水の脇でであった、超美人のお姉さん、京子さんの事を思い出してしまった…しかし
 
(だめだ、だめだ!…まだ、めぐみちゃんとの愛を失った直後に、別の女性の事を考えるなんて、不順すぎる…)
慌ててぶるぶると首を横に振った
 
そんな僕の様子を見ていたマサさんは
「お前、今、新しい愛を探す事が、不順だなんて思っただろう…」
「えっ!どうして僕の心の中を…」
「分かるよ、俺とお前は似たもの同志だからな…、だがな、お前の考えは間違ってやがるぜ…」
「間違い?…」
「ああ、お前が新しい恋を見つけることで、めぐはホッと心から安心して幸せをつかめるってもんだろ…」
「めぐみちゃんが?安心して幸せを…」
僕はマサさんの言葉に思わず遠くを見つめていた…
 
(そうだったのか…、マサさんの言うとおり、僕が幸せをつかむ事で、めぐみちゃんも真実の愛をこのマサさんと何の気兼ねもなくつかめるんじゃないか…、そうだよ、愛する彼女のためにも僕は真実の愛を手に入れなくてはいけないんだよ…)
 
心の中で何度も呟きながら、めぐみちゃんに対する熱い思いをぐっと心の奥底にしまいこんだ…、そして明るく光る目をマサさんに向けると
「マサさん、僕頑張ります!めぐみちゃんの幸せの為に、絶対に真実の愛を掴み取って見せます!!」
目の前の男にすっかり騙されているなんて露とも知らず、キラキラ輝く瞳で
「僕は彼女の為に幸せを掴むぞーーーーー!!」
天に向かって大声で叫んでいた… 
「さあ、そうと分かれば仕事仕事ー、今まで抜けてた分も頑張って取り戻さなくては…」
単純な僕はすっかり元気一杯の明るい笑顔を取り戻すと、持ち場の金魚すくいへと走っていった…
 
「クーックックックックック……」
僕の背後から不気味な笑い声が響いていた…、が、しかし、めぐみちゃんの為に幸せをつかんでやる…、そんな奇妙な目標で頭が一杯の僕の耳には、そんなマサさんの笑い声など届くはずはなかった…
 
そしていつもの元気印に戻った僕は、金魚すくいの水槽の前に立つと同時に
  
「さーー、お待たせしましたー、金魚すくい、金魚すくいー!…楽しい、楽しい金魚すくいだよー!」
境内中に響き渡るような明るく大きな声で客寄せを始めた…
 
 
「ん?おー、どうやら吉宗が帰ってきたようだぞ…」
僕の大きな声に、テント屋台で焼き鳥を頬張っていた、親父さんが目を細めた…
 
「さー、さー、いらっしゃい、いらっしゃいー、そこのカップルどうだい一回三百円、今ならたっぷりおまけしちゃいますよー」
 
「そこの彼氏…どうですか、お家に金魚なんて、女の子にモテモテ間違い無しですよー!!」
 
愛するめぐみちゃんのために…、悲しみを胸にしまいこみ明るさを取り戻した僕は、それからも元気一杯に境内に向かって声を張り上げ続けていた…
 
そんな僕の事をじっと見ている、ギラギラ光る大きな目玉があった…
 
「ほう鬼辰の兄弟…、それじゃあいつが一条吉宗かいな…」
 
「んっ?ああ、あれがうちの一条吉宗だ…」
 
「ふーん、なるほど…、あれがうちのお嬢が惚れこんどる噂の侠客、一条吉宗…」
 
ギラギラ光る目玉の主、それは巨漢のガマ親分、京極森亀会、新京極の森山亀太郎会長その人だったのだった…
 
  
(更新が非常に遅くなってしまい、すいませんでしたーcoldsweats01 やっとこさ会社の仕事も落ち着いてきたので、これからはガンガン更新する予定です…イラストカットは近日アップしますよーん^^)

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2010年6月 5日 (土)

第110話 恐怖!新京極の森亀会長

僕が京子さんという超美人のお姉さんに愛の告白をされていたそのころ…、めぐみちゃんは金魚すくいの水槽の前で、じっと僕の帰りを待ちわびていた…

 

 

 

「はい僕、金魚一匹おまけしておいたからね…」

「わー、ありがとう、おねえちゃん」

「大切に育ててあげてね…」

「うん…」

小さな男の子が、金魚の入った袋を眺め嬉しそうにうなずくと、

「ママー、一匹おまけしてもらったよー」 

境内の出口近くにいる母親のもとへ走って行った…

 

めぐみちゃんは男の子が向かった先を、寂しげにじっと見つめながら 

「遅いな…吉宗君…、いったい何処へ行っちゃったんだろう……、あんなに怒って…、誤解だよ…、私は本当に吉宗君のことだけが好きなんだよ……」

うっすらと目に涙を浮かべながら小さな声でつぶやいた…

 

そんな彼女の背後から

「一条吉宗ちゅうんは、いったいどれや?…」

突然怒ったような声が…

「えっ!?」

振り返るとそこに、数名の男達が怖い顔で立っていた…

 

「えっ!やない…、一条吉宗いうんは、どれや聞いとんのや…」

「吉宗くん?…」

男達の異様な雰囲気に、めぐみちゃんは一瞬眉間にしわをよせ

「あっ、あの…あなたたちはいったい?…、彼は今、留守ですけど…」

「留守?…、おい、いったい何所におるんや?…」

「何所にって…、あなた達いったい誰ですか?…」

「あ~?誰でもええやろ、わしらは一条吉宗いう男に用があって来たんや…」

「だっ、誰でよくありません!…、彼に用事があるなら、きちんと自分達の名前くらい名乗ったらどうですか!…」

めぐみちゃんはムッとした顔で男達を見た…

 

「なんや?…この女は…、」

「おいコラ姉ちゃん、生意気ぬかしとると、ただですまんど…」

「タダで済まないって、どうする気よ!…」

めぐみちゃんは、只ならぬ様子から、男たちが僕に危害を加えるのではと感じ、必死にくらいついていた…と、そんな緊張の最中…

 

「おい、どうしたんだ、めぐ…」

男たちの後ろからミヤマのマサさんがひょっこり姿を現した…

「まっ、マーちゃん…」

「何だめぐ…おっかねえツラして、誰だこいつらは?…」

「そっ、それが、吉宗くんは何処だって、すごく失礼な言い方で…」

「吉宗?…」

マサさんは小さな目をパチパチさせると

「吉宗にいったい何のようだ?…お前ら…」

きっと怖い目で、男たちを見まわした

 

「何やおまえ?…えらいちんまいのに偉そうやないか?…」

男の中の一人が、マサさんに近寄ると、小馬鹿にした表情で、その大きなパンチパーマ頭を撫でてきた…

「ほんまにちんまいのう…、僕、何年生や?…」

「……」

「小学生が、大人にそんな口聞いたらあかんやないの?…おー」

「……」

マサさんはしばらく無言で男達にからかわれていたが、ふうっと一つ溜息をつくと、小さな目をギョロっと見開き 

「うおおおぉ、アチャーーーーーー!!」

突然ブルースリーのような奇声を張り上げた

「ぐうおあーーー!!」

うめき声とともに、マサさんの頭に手をかけていた男が、数メートル先の植栽に吹き飛ばされた…

マサさんは奇声と共に体を宙にうかせると、まるでワイヤーアクションのように、強烈な前蹴りを男の顎めがけてヒットさせていたのだった…

 

「こっ、このガキ、なにさらすんや!」

男達はいっせいにマサさんを取り囲んだ、と、その時だった…

 

「やめいや、このアホがー!!」

少し離れた所から、突然大きな声が…、振り返るとそこには、角刈りに巨大な顎をもった大きな男と、まるで相撲取りのような太った巨漢のおじさんが立っていた…

 

「このアホどもが、誰が喧嘩せい言うた…」

大きな顎の男は、怖い顔で男たちを怒鳴りつけた後、ふっとマサさんに目をうつし、

「こらあ、すんませんな…うちの若いもんが失礼なこと…ん?」

「あっ!マサやん…、何や、マサやんやないか?…」

急に親しげに語りかけてきた…

  

マサさんはしばらく首をかしげたあと、

「マサやんって言われても…?…、んっ?、あれ、そのでっかい顎…、どっかで見たような?…」

「わしや、わし…、京極森亀会の三郎や…」

「森亀会の三郎?…、あー、思い出した、お前、デカ顎のサブちゃんか!?」

「久しぶりに会って、デカ顎はないやろ…ははは…」

角刈りの男は、ふっと笑った後、植栽の中で伸びている男に目を移し、

「あ~あ…、あいつも、よりによって、ミヤマのマサやんに喧嘩をしかけるとは…」

渋い顔でマサさんの事を見た

 

「サブちゃんの所の若衆だったのか?…」

「ああ、しかし、とび蹴り一発で気絶させるとは、相変わらず威勢がいいのうマサやん…」

「威勢もクソも、喧嘩売ってきたのは、あんたの所の、この連中なんだぜ…」

「いやあ、ほんにすまん、こいつらかなり苛立っとったからの…」

「苛立つ?…」

「ああ、それがの…すこしばかり訳ありでの…」

デカ顎のサブさんは、後ろの太った男の人を意識しながら、小声でささやいた…

「訳あり?…」 

マサさんは小声で呟きながら、ふっとデカ顎さんの背後に立っている巨漢のおじさんに目をやった…

 

「あれ?…あの太ったおじさん、どっかで見たような…?」

しばらく首をかしげた後、再びサブさんを見て、ハッと小さな目を見開いた

 

「サブちゃん、もっ、もしや、あの人が…、京極森亀会の森山亀太郎会長か!?」

「ああ、そうや、うちの森亀会長や…」

「うえー、まじかよ…あの人が、新京極の森亀さん!」

マサさんは目をキラキラ輝かせると、大慌てで巨漢の森亀会長の前に走りより、両手をひざの上に乗せ、深々と頭をさげた

 

「あのっ、お初にお目にかかります、自分は関東鬼瓦興業のもんで…」

「鬼瓦興業のもん?…、ほいたらお前が一条吉宗か?…」

「えっ!?」

「一条吉宗かって聞いとるんや?…」

森亀会長は、恐ろしく太い眉毛の下のギラギラ光る大きな目玉をギョロっと動かしながら、ガラガラ声で尋ねてきた… 

「あっ、いやっ…、自分は…」

さすがのマサさんも、森亀会長のど迫力満点のオーラに押されてか、おろおろと慌てふためいた

 

森亀会長は再び目玉をギョロギョロ動かすと

「一条吉宗なんか?…違うんか、どっちや?…」

マサさんの大きな頭の倍はあると思われる、巨大な顔面をぐっと近づけてきた

「自分は、ちっ、違います…」

「違う?…ほいたら、お前は一条吉宗やないんやな…」

「はっ、はい、自分は白鳥正義って…」

「のけ…」

「はっ?」

「一条吉宗やないなら、そこをのけ言うとるんや…」

「あっ、すいません!」

マサさんは森亀会長に頭をさげると、あわててその場を退き、こそこそと後ろの、めぐみちゃんの下へ走りよった…

 

「何て迫力だ、あのおっさん…、さすがの俺も思わず緊張しちまったぜ…」

「あの、マーちゃん…、いったいこの人たちは?…」

「ああ、京極森亀会の連中と、関西でも超有名な伝説の親分で、新京極の森山亀太郎会長だ…」

「伝説の親分?」

「ああ、全国のテキヤ仲間も、その名前を聞いただけで小便をちびるってくらい、噂じゃおっかねえ親分さんだ…」

「そっ、そんな怖い親分さんが、どうして吉宗君のことを?…」

「わかんねえけど、ただ事じゃねえ様子だな…」

マサさんはそう言うと、今度はデカ顎のサブさんの元へそっと歩いていった

 

「ただ事じゃないって…吉宗君、いったい何を?…」

めぐみちゃんは、恐る恐る森亀会長の事を見て

「!?…」

思わず青ざめた…

何と、森亀会長もじーっと彼女のことを、ギラギラ光る大きな目玉で見つめていたのだ…

Morikametomegu 

「あっ!…」

めぐみちゃんは慌てて目をそらした、が、しかしその後も、森亀会長の目玉光線は、ガンガン彼女めがけて突き刺さって来る…それどころか、会長はその目玉光線の威力をどんどん増幅させながら、のっしのっしとその巨体を揺らして彼女の元へ近づいてくるではないか…

(やっ、やだ、こっちに向かってきてる…)

めぐみちゃんは恐怖でぶるぶると震えていたが、やがて森亀会長が自分の目の前までやってきた事を肌で感じとると、観念したように、引きつった笑いを会長へ向けた… 

 

「…あっ、あの何か、ごっ、御用でしょうか?…」 

「うむ…」

森亀会長は一言つぶやくと、その後もじーっと無言でめぐみちゃんの事を監察し続けた…

 

(えー、すっごい私のこと見てるけど、ど、どうしよう…どうしよう…) 

めぐみちゃんは緊張から、窒息状態に陥っていた…

 

そんな緊迫した状態がどれだけ続いたか、彼女が思わず失神する寸前 

「お姉ちゃん…、あんた誰や?…」

沈黙を破るように、森亀会長がガラガラ声で尋ねてきた…

 

「えっ?…」

めぐみちゃんは、そこでふっと我に帰った

「だっ、誰って、あの?…」

「だから、お姉ちゃんは一条吉宗いう男の、いったい何者か聞いとるんや?…」

「えっ?…あっ、あの私は彼の友達で…」

「友達?…」

森亀会長は大きな目玉を、さらにギョロっと見開くと

「ほんまに友達なんか?…、あんた吉宗いう男のお嫁さんと違うんか?…」

「おっ、お嫁さん!?…」

めぐみちゃんはあわてて首を横に振った

「ちっ、違います、私、まだ学生ですから…」

「ふーん…」

会長は大きな鼻の穴から、生暖かい風を噴出しながら、大きくうなずいた…

 

めぐみちゃんは緊張の中、勇気をふりしぼり森亀会長に尋ねた

「あっ、あの…、どうして吉宗君の事を?…いったい彼にどんな用があるんですか?」

「ん?…」

「皆さんすごく怖い顔で、彼のことを…、いったい吉宗君に何をするつもりなんですか?…」

「何をする?…」

「はっ、はい…」

めぐみちゃんの言葉に森亀会長は、再び目玉をギョロっと見開くと

「何もせん、ただわしは、一条吉宗言う男を見に来ただけや…」

「えっ?吉宗君を見に…」

めぐみちゃんが首をかしげた…その時、

 

「おう、兄弟―!どうだ吉宗には会えたかい?…」

少し離れた所から、聞き覚えのある豪快な大声が響いてきた…

 

「あっ!?…」

めぐみちゃんは声の主を目にした瞬間、今までの緊張から解かれたように、地べたにしゃがみこんでしまった…、

声の主、それは鬼瓦興業の鬼瓦辰三親分だった…

「おっ、おじさん…」

「あれれ?…何だ、めぐみちゃん来てたのか…」

「はっ、はい…」

鬼辰親分は、あっぱれと書かれた扇子をパタパタと動かしながら、隣に銀二さんを引き連れ近づいて来ると…

「あれ?…吉宗の野郎はどうしたんだ?…」

あたりを見渡し、きょとんとした顔でめぐみちゃんに尋ねた…

 

「あっ、あの…、吉宗君でしたら、トッ、トイレに…、お腹が痛いって言って…」

めぐみちゃんはとっさに僕をかばい嘘をついた…

「便所?…、何だあの野郎、変なもんでも食ったのかな?…」

鬼辰親分は首をかしげながら、隣にいる森亀会長を見て

「兄弟、それじゃあんた、まだうちの吉宗に会ってねえのかい?…」

「おう、実はそうなんや…鬼辰の兄弟…」

「そらあ、すまんな兄弟…」

「いやいや、クソじゃ、しゃあないやろ…、まあ、ちいと待たせてもらうわ…」

「そうかい、すまねえな、まあ、せっかくだ、そこのテントの下で久しぶりに一杯やるかい?」

右手をくいくい動かした

「おう、鬼辰の兄弟といっぱいやるんは何年ぶりかのう…」

「うーん、静岡の叔父貴の義理以来だから、3年ぶりかな、はははは…」

「三年ぶりか、時の立つのは早いもんやのう…」

「そうだな、早えもんだな…」

二人は嬉しそうに語り合いながら、マサさんのお好み三寸のとなりにあった、大きなテント屋台の中へ入っていった…

 

そんな親父さんと森亀会長の様子を離れた場所で見ていたマサさんは、不思議そうに首をかしげると

「おい、サブちゃん、森亀会長、今、うちの吉宗を見に来たっていってたよな…」

「ああ、そうやけど…」

「いったい、どういうことだ?…なんで吉宗のことを…」

「さっきも言うたやろ、訳ありって…」

「その訳ってなあ、いったい何だよ?」

デカ顎のサブさんはグッと眉間にしわをよせると

「マサやん、実はうちのお嬢がな…、あんたの所の一条吉宗の噂を聞いて、どうしても会いたい言い出しての…」

「お嬢?…」

「ああ、会長のお嬢さんや…」

「お嬢さん?…」

マサさんは一瞬テント屋台の中を見た…、そこには親父さんと嬉しそうにビールを飲んでいる、100キロ以上の巨体に、特大な顔面…、すさまじく太い眉毛に、大きな目玉、さらには横におっぴろがり500円玉がゆうに入りそうな鼻の穴…、そしてとどめに特大明太子が重なったような唇という、まるでガマ蛙が進化して人間になったような、森亀会長の姿があった…

「あっ、あの人の娘って…」

マサさんそんな森亀会長の女性バージョンを頭に思い浮かべ、ぞーっと青ざめながら

「さっ、サブちゃん…、そのガマ蛙娘…じゃなかった、お嬢さんが、うちの吉宗に会いたいってな、いったい?…」

 

  

「噂を聞くうちに、もうぞっこんになってしもうてな…」

 

「吉宗にぞっこん!?」

 

「ああ、それを知って、うちの連中、えらいショックをうけてのう…」

 

「ショックって一体どうして?…」

「じっ、実はのう、会長のお嬢はわしら森亀会全員の憧れの女性なんや…」

「憧れ?…」 

「ああ、その憧れの的がこともあろうに関東の、いまだ預かり分の駆け出し男に惚れ込んで、どうしても会いたい言い出しての…」

「それで、あいつらあんなに苛立って…」

マサさんは回りにいる森亀会の連中を見た… 

「ああ、みんな悔しくてな、実はこのわしも…、あっ!…」

サブさんはそう言った後、慌てて真っ赤になった顔を両手でおおい隠した…

「いかん、いかん…わしとしたことが、マサやんにこんな事を…」

マサさんは両手の下からにょきっと突き出ているサブさんの大きな顎を、真剣に見ながら

「サブちゃんまで憧れてるって…、それじゃ、会長のお嬢さんってなあ、そんなに美人だったのか?…」

「ああ、美人も何も、西のテキヤ仲間からは、小野小町の再来って言われとるくらいや…」

「うっ、嘘だろ…、あの会長の娘が、そんなに美人だなんて…」

「何をうたがっとるんやマサやん…」

サブさんは片手で顔を覆ったまま、胸ポケットをゴソゴソとまさぐると

「見てみい、これがお嬢や!…」

自信満々に一枚の写真をマサさんに突き出した…

「えっ!?」

マサさんは、そこに写る一人の女性を見た瞬間、

「ぐえー!?」

思わずその場で仰け反ってしまった…

 

「こっ、これが、憧れのお嬢?…」

「あっ、ああ、お嬢や、ほんまに美しい人やろ…」

「こっ、これが…これが…」

マサさんはヒクヒクと顔を引きつらせると、改めてその写真を見た…

そこには、森亀会長をそのまま女にしたような、それはすさまじい容姿の女版ガマ蛙の進化系女性が写し出されていたのだ…

Ojyou  

「こっ、これが、これが森亀会の憧れの…お嬢……」

「ああ、美しすぎて声もでんやろ、マサやん…」

「美しいって、あっ、ああ…」

マサさんは、引きつった顔で返事を返した

「このお嬢が、あんたの所の吉宗いう男に…うぐ…」

悔しそうに震えるサブさんに

「おーい、三郎!!ちっとこっちこいや…」

テントの中から森亀会長が声をかけてきた…

 

「マサやん、すまんが会長がお呼びや…」

サブさんは手にしていた写真を慌てて上着のポケットにつっこむと…

「はい、会長およびでっかー!」

そのままテント屋台の方へ走っていった…、マサさんはそんなサブさんの後ろ姿を見ながら

「あれが美人で憧れの的だなんて…、関東と関西では美的感覚がこうもちがうのか?…」

 

「しっかし、すげえ写真だったな、頭にこびりついて放れやしねえや…、あんなすさまじい女に惚れられるとは、吉宗のやつもえれえ災難だな…ははは…」

呆れ顔で笑っていたが、やがてハッと小さな目玉を見開くと  

「まてよ、あの森亀会長の女版が、吉宗と結ばれてくれたら…」

突然目をキラキラ輝かせ、金魚すくいの水槽の方に目を移した…

  

「そうだよ、吉宗っていう邪魔者が、そのまま関西に消えてくれれば、めぐの心は俺の方に…」

にんまりとした策謀の目で、水槽の前、一人呆然としゃがみこんでいるしている、めぐみちゃんの事を見ていたのだった… 

続き
第111話 ミヤマのマサの恐るべし陰謀へ…

 

(イラストカットは近日アップします^^) 

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2010年5月12日 (水)

第109話 京美人と憧れの吉宗はん

「噂の侠客、一条吉宗はん、想像以上にええ男やね……」 

突然現れた、ハッピ姿の美しい女性は、うれしそうに顔を近づけてきた… 

「吉宗はんって…、あの…どっ、どうして僕の名前を…」 

「どうして?…」 

女性は足元に置かれた木箱へ、そっと腰をかけると 

「ふふっ…、だって鬼瓦興業の一条吉宗はん言うたら、めっちゃ有名やん…、」 

笑いながら、そっとショートヘアーの綺麗な黒髪をかきあげた…、同時に彼女から甘く芳しい香りがただよってきた… 

(うぐ、なんて良いにおい…) 

僕は一瞬だらしなく目じりをたらした後、ハッと慌ててその女性に尋ねた 

「あの、有名って!?…何で僕が?…」 

「えーっ?…、何でって、今や関西の仲間うちでも、貴方の名前を知らん人はおらんよ…」 

「仲間うち?…」 

「あっ、そうやった、言い忘れてたわ…、うちも吉宗はんと同じ的屋なんよ…、」 

「あっ、あなたも?…」 

「ええ、旅から旅の的屋家業よ…、そうやわ…」 

彼女は一瞬、キラッと瞳を輝かせると、座っていた木箱から軽く腰を浮かせ、突然右手の平を僕に向けて差し出してきた… 

「えっ?……」 

僕は慌てて彼女の手のひらを見て、 

(なっ、なんだこの人…、いきなり現れて僕に何かよこせって…、人のこと有名とか変なこと言ったり、はっ!?もしや…) 

脳裏に以前銀二さんが話してくれた、ポン引きお姉さんという男をホテルにさそってお金をもらう女性が… 

(もしや、この人が、そのポン引きお姉さんでは!?…同業とか言いながら、僕をホテルへ…) 

慌てて後ずさりすると、 

「ごめんなさい、僕、お金は持ってません…、だから、そうやって誘われても、だっ、だめです…ぜったいについて行きませんよ!…」 

首をぶるぶると横に振った… 

「えっ?…お金?…それに誘うって、ちょっと何を言うとるのよ、吉宗はん…」 

彼女は中腰で右手を差し出したまま、目をまん丸にしていたが、やがてプーッと噴出し 

「やっ、やだわ、吉宗はんったら、何や勘違いしとるよ…、うちはお金か欲しくて手をだしとるんとちがうよ…」 

「えっ?…」 

「それに誘われてもついて行かへんって…、あー、うちのこと変な目で見とるね…」 

「いやっ、あのそういうわけでは…」 

「ひどいわ~、いきなりあってそんな女と思うなんて…」 

「あっ、すいません、でも、あの…、貴女が急に何かよこせって手を差し出すから…」 

女性はしばらくきょとんとした顔で僕をみていたが、やがてケラケラと声を立てて笑ったあと… 

「この手は何かよこせやなくて、仁義やんか、」 

「仁義?」 

「そうよ仁義、的屋の挨拶やん、映画とかで見たことあるやろ?…」 

「え?…」 

「初めて会ったんやから、ちゃんと仁義をきってご挨拶せんと…」 

「仁義でご挨拶って…」

「御控えなすっておくんなさい…」 

彼女は、突然まるで昔の時代劇のようにカッコよく語りはじめた… 

「お控えなすっておくんなさい…、手前生国は古の都、京都です…、京都言うても広うございます…」 

「えっ、あっ、あの、ちょっと…」 

いきなりの出来事に、僕は慌てて両手をバタバタさせた 

「どないしたん?…吉宗はん、仁義の最中やのに…」 

「そんなこと言われても、僕そう言うのって全然分からないんです…」 

「あら…、」 

彼女はしばらく目をぱちぱちしていたが、ふっと優しい笑顔をみせると 

「ふふふ、やっぱり分からないよね…、古―い昔の挨拶やからね…」 

「あっ、すいません…」 

「謝らんでもええよ、実は、うちもほんまは、上手にできんのよ、こういった挨拶…、ただ有名な侠客の吉宗はんやから、初めて会ったら、しっかり挨拶しようって、前から練習してたんや…」 

彼女は照れくさそうに笑ったあと 

「それにしても、仁義のための手を見て、お金はもってませんなんて、吉宗はんってすごーく冗談のうまい人やね…本当は堅苦しい挨拶はやめようってそいう意味やね…」 

「いや、あの…、そうじゃ…」 

「それじゃお言葉に甘えて、うちも堅苦しいのはやめにして、改めてご挨拶します…、うち、京子です…、貴方に会いたくて遥々京都からやってきたんよ…」 

「えっ?…」 

「噂の侠客に一目会いとうてね…」 

うれしそうにそう告げると、ぐっと顔を近づけてきた…、間近に迫ってきた彼女の切れ長の瞳は、まさに京美人といった美しさを漂わせていた… 

(近くで見ると、さらに綺麗だ、この人…、めぐみちゃんとは違ったタイプの美人だけど…) 

僕はそんな事を考えながら、ドキドキと心臓の鼓動を高鳴らせ… 

(あっ、何を考えているんだ、めぐみちゃんとこの人を比べるなんて…でも、やっぱり綺麗な人だ~…、あっ、いかん、いかん…) 

心の中で葛藤しながら、目の前に迫ってきた京都美人の京子という女性の顔を見ていた、 

がっ…、少しして僕は、僕自身のある場所の変化に思わずハッと顔を赤く染めた… 

(うわっ、まずい…) 

そう、それは節操も無く、いつの間にやら元気もりもりに変身しはじめている、僕のへそ下三寸のこまった君のことだったのだった…

「どないしたん吉宗はん、急に真っ赤な顔して…、熱でもあるん?…」 

「いやっ、あの…」 

「あかんよ、無理したら、ちょっとおでこさわらせて…」 

京子さんは、少し心配そうに僕のおでこに手をあてると、 

「あれ?すこし温かいかな…、ちょっとごめんね…」 

そう言いながら、自分の前髪をかきあげ、そのかわいらしい額を僕のおでこにすりつけてきた… 

(あっ、いきなりそんなことされてしまったら…) 

僕のこまった君は、さらに、もっとこまった君へと大変身…、僕は慌てて腰をぐっと後ろに引いた奇妙なかっこでごまかした… 

「うん、熱は無いみたいやね…」 

京子さんは、僕のおでこから額を離したあと、一瞬ハッと顔を赤らめた… 

「あっ、ごめんなさい…、いきなり会ってこんなこと…」 

「えっ、いや…」 

「何や、まえから憧れとった吉宗はんやから、つい他人のような気がしなくて…」 

「…あっ、憧れ!?」 

「うん、ずーっと憧れとったんよ…」 

彼女はそう言ったあと、幸せそうに僕を見つめ 

「それにしてもええ男やね~!…、噂以上やったわ…、おまけにめっちゃ可愛いし…」 

「かっ、可愛い?」 

「うん、想像とは全然違ってたわ…」 

「はあ?…」 

「実はね、吉宗はんのたくさんの武勇伝聞かせてもろうて、もっといかつい男や思うとったんよ、うち…」 

「武勇伝?」 

「ええ、関東は武州多摩の地に、西条竜一を一撃で倒したうえに、性根まで叩き直した若き侠客がいるって…、」 

「西条さん!?」 

彼女の口から出てきたその名前に、僕ははっとあの恐怖の一夜を思い出した… 

「西条さんって、あの、どうしてあなたが…」 

「どうしてって、西条竜一いうたら、西の極道連中でも知らん人はおらん位、極悪で有名な男やったんよ…、誰も奴には逆らえんかった位や…」 

「西条さんが…」 

「そうや、その西条竜一を、恐れるどころか真っ向から打ち負かした男がおるいう噂が広がってね…、おまけにそれが18歳の駆け出し預かり分…、みんな驚いとったんよ…」 

京子さんはそう語りながら、キラキラ輝く瞳を僕に向けた… 

「あっ、あの…、それだったら誤解ですよ…、西条さんを倒したのは、僕じゃなくて、僕の中に入った桃さんで…」 

僕はあわてて首を横に振った、しかし京子さんは、さらに瞳を輝かせると 

「そう言うところが、また素敵やわ~…」 

「すっ、素敵!?…」 

「ほんまはめっちゃすごい男やのに、そんなそぶりすら見せず、さりげなーくしとる…、可愛い顔の奥に、ごっつい男義をかくしとる、ほんまもんの男…、吉宗はんは、うちが想像していた以上やったわ~…」 

「いやっ、あの、そうじゃなくて本当に桃さんが…あっ!?……」 

 気づくと京子さんの綺麗な指先が、僕の口を押さえていた… 

「嘘ついたってあかんよ…、あなたの話はこっちに来てからも、ぎょうさん聞かせてもらったんやから…、」 

「えっ?…」 

「的屋になってたった二日目に、川竜一家の熊井さんいうプロレスラーのような男とまっこうから戦って、一歩も引かんかった…、それどころか熊井さんは涙で貴方に降参した話とか…、みんなも恐れる捜査四課の鬼刑事に戦いを挑んで、鬼刑事のパンツを公衆の面前ではぎ取ってやったとか…」 

  

「えっ?そっ、そんな話まで…」 

「その他たくさん…、もう、聞けば聞くほど、うち、あんたに夢中になってな…、ずーっと会いたくてしかたなかったんや…、その夢がやっとかなって、こうして二人っきりで会わせてもらえるなんて、何度も神様にお願いした甲斐があったわ…」 

そう言うと彼女は、少し潤んだ輝く瞳で僕をじーっと見つめながら、 

「一条吉宗はん、うち、なんや胸のあたりが変やわ…」 

「えっ?」 

「うち、こんな感じって、初めてやわ…」 

「こんな感じ?…」 

「貴方のそばにおる、そう思うだけで、何や胸がキューンと熱うなって…どないしたんやろ…」 

「あっ、あの胸が熱いって、だっ、大丈夫ですか?…、早くお医者さんに…」 

「アホやね、病気とちゃうよ…」 

「そっ、それじゃいったい?…」 

「ほんまものの恋や…、うち、吉宗はんのこと、めっちゃ好きになってしまったみたいやわ…」 

「えっ?」 

僕は目の前で起こっている光景に、ただおろおろとしていた、しかし彼女はさらにぐっと、その美しすぎる顔を近づけてくると 

「はじめは憧れだけやったのに、こうして直接貴方に会えて…、憧れが本物の恋に代わってしまったみたいや…」 

「こっ、恋?…」 

「うん、うち、貴方のことが好っきや~、めっちゃ好っきや~…」 

「ぼっぼっ、ぼっ、僕が…、好き?…」 

(これって、もしかしてドッキリ番組?…) 

僕はあたりをきょろきょろと見まわしはじめた、 

「どないしはったん?吉宗はん…」 

「あっ、あの…、貴女のような綺麗な人が、突然現れて、そっ、そんなこと言うから、きっとドッキリ番組じゃないかと思って…」 

「ドッキリ?…」 

「何所かにテレビカメラとかが…」 

「いややわ、そんなものありません…」 

京子さんはそう言うと、そっと僕のダボシャツの袖口をつかみ、満面の笑顔を僕に向け 

「でも、うれしいわ…、うちのこと綺麗なんて、吉宗はんの口から言ってもらえるなんて…」 

「えっ!…それは、あの、だって…、本当に綺麗だから…」 

「うれしい…、吉宗はん、うちもあんたが好きや、めっちゃめっちゃ好っきや~」 

僕の腕に顔をすりよせてきた…

(こっ、これは、いったい…えーっ?えーっ?えーっ?) 

突然起こった、ディープインパクト…そう、大きな衝撃に、僕はしばらくパニック状態に陥っていた、しかしやがて、ブワっと鼻の穴を大きくおっぴろげると 

「どうえーーーーーーーーーーーーーー!?」 

思わず大声で驚愕の雄叫びをあげていたのだった…

 

続き
第110話 恐怖!新京極の森亀会長へ…

 

(イラストカットは近日アップします^^)

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2010年4月 1日 (木)

第108話 めぐみちゃんのウェディングドレス

夕暮れの境内は、いつしか人の波があふれだしていた…めぐみちゃんはそんな中、一人、今にも泣き出しそうな悲しげな顔で歩いていた…

「彼女、一人?…あれれ、なんか寂しそうだね…」

茶髪のチャラ男が、めぐみちゃんに馴れ馴れしく声をかけてきた

「ねえ、ねえ、そんな顔してたんじゃ、可愛い顔が台無しだぜ、俺といっしょにお祭り楽しまない?…」

「………」

「ねえ、返事くらいしてくれたっていいじゃん…」

「………」

「ねえ、ねえ、可愛い顔して、それはつれなすぎるよ、彼女…」

「………」

「何だよ?せっかく声かけてやってんのにシカトかよ…おい…」

チャラ男が、めぐみちゃんの肩をグッとつかんだ…と、同時に

「うるさい!!」

めぐみちゃんは、キッと怖い顔でチャラ男の腕を振り払うと、ふたたび無言で境内の奥に向かって歩きだした…

 

「うっ、うるさいって…おいコラ、待てよお前…」

チャラ男はムッとした顔で彼女の後を追いかけた…

めぐみちゃんはそんな男の事など気にもかけない様子で、ある一軒の三寸の前で足を止めると、今まで我慢していたのか、突然大粒の涙をこぼしながら中にいる一人の男に向かって

「何って言ったのよ!…」

大声で叫んだ…

 

「えっ!?…」

三寸の中では、お好み焼きを焼いていたマサさんが、小さな目をパチパチとさせていた…

「マーちゃん、吉宗君に何を言ったのよ!」

「えっ?えっ?…」

「さっき吉宗君が言ったじゃない、マサさんが言ったことは本当だったって…、いったい彼に何を言ったのよ!!」

「いやっ、あの何って?…」

「吉宗君が…吉宗君があんなに怒るなんて……」

めぐみちゃんは涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、三寸の中にしゃがみこんだ…

 

「あっ、おい、めぐ…」

マサさんは、慌ててめぐみちゃんのそばに近づくと

「どっ、どうしたんだよお前…」

そっと彼女の肩に手をおいた…めぐみちゃんはマサさんを睨むと

「放してよ!…」

その手を振り払い

「本当に何を言ったのよ!!」

泣きながらマサさんを見た…、マサさんはただ事でない彼女の様子に、おろおろしながら

「何って…めぐ…、お前と俺のことを…」

頭をポリポリ掻きながら目をぱちくりさせた…

 

「私とマーちゃんのこと?…」

「ああ、俺とめぐが結婚の約束をしてるって、そう話しただけだけど…」

「けっ、結婚!?…」

めぐみちゃんは思わず大声でのけぞると  

「結婚の約束って?…え~っ?え~っ?え~っ!?」

大慌てで立ち上がった…

 

「なっ、何でよ、何で私とマーちゃんがそんな約束したなんて嘘を?…」

「嘘ーっ!?…嘘って、おっ、お前…何を言っちゃってんだよ、約束したじゃねーかよ…」

「は~?…」

めぐみちゃんは呆れ顔でマサさんを見た…と、そんな所へ

「おいおい、うるさいとは何だよ、うるさいとはよう…」

再びチャラ男が、めぐみちゃんの元へ近づいて来た…めぐみちゃんはムッとした顔で男を見ると

「うるさーーい!」

大声で怒鳴りながら、チャラ男の股間を蹴り上げた

「うぐえぁ…」

チャラ男はガマ蛙のようなうめき声を上げると、股間を押さえその場にうずくまった…めぐみちゃんは何事もなかったように再びマサさんに目を移し

「約束って、何よ?…」

真剣な顔で詰め寄った…

「何って、おっ、お前…、忘れたのか?…あの時の話…ほら、おまえが写真館でバイトした時の…」

「写真館?…」

「ああ、写真館の親父に頼まれて、お前ウエディングドレスの写真撮っただろ、あの時…」

「ウェディングドレス?…」

めぐみちゃんは眉間にしわをよせ 

「ドレスって…、そういえば、マーちゃんに頼まれて、一度そんなことがあったけど…」

過去の記憶を思い浮かべ始めた…

 

 

「あの時、マーちゃんと一緒に…えーっと、たしか駅前の小さな写真館だったかな…」

  

 

(えーー!?私がモデルに?…)

 

(ああ、頼むよめぐ…、前々から店の親父と約束しちゃっててよう…)

(何でそんな約束しちゃったのよ、嫌だよ私、そんなバイト、恥ずかしいじゃない…)

(頼む、一生のお願いだからよ…、終わったらケーキご馳走してやっから…)

(嫌だ~!ぜーったいに嫌~!だいたい何でマーちゃんがそんなバイトひきうけちゃったりするわけ)

(俺じゃねえよ…)

マサさんはぶっきらぼうにそう言うと、少し寂しそうに横を向いた…

(俺じゃないって、マーちゃん、それじゃ誰が?……あっ!?)

めぐみちゃんはハッとして

(もしかして、美咲お姉ちゃん?…)

そーっとマサさんの顔を覗きこんだ…するとマサさんは、顔をぐしゃぐしゃにゆがめながら

(ああ…)

静かにうなずいた…

(美咲お姉ちゃんが…)

めぐみちゃんはしばらくマサさんの顔をみつめていたが…ふ~!っと小さなため息を一つつくと

(それじゃ、仕方ないか…、分かった、一回だけだよマーちゃん…)

(マジか?)

(うん…、仕方ないじゃない…美咲お姉ちゃんが原因なら…)

そういって静かにうなずいた…

 

やがて二人は駅前の写真館に到着すると

(あれれ~、マサさん、この子は?…)

写真館のおじさんが不思議そうにめぐみちゃんの事を見た

(おじちゃん、美咲のいとこで、めぐってんだ、代わりに来てもらったんだよ…)

(代わりって、何で?美咲ちゃん具合でも悪いのかい?…マサさん…)

(いやっ、おじちゃん…そう言う訳じゃなくてよ…)

(それじゃ用事でも?…)

(んっ、まあ、そんなところだ…)

マサさんはうなずきながらも、グッと辛そうに唇をかみしめていた…

写真館のおじさんは、ニコニコ笑いながら、めぐみちゃんの事を見ると

(うんうん、美咲さんも美人だけど、君も負けないくらい美人だね…さすがはいとこだ…)

(やだっ、そんな事無いです…)

(いやいや、そんな事あるよ…うん…、それじゃ、奥にうちのかかあがいるから…おーい、かかあ!…)

指差しながら声をかけると、奥から小太りのおばさんが顔をだした…

(あら~、ま~、可愛い子ね…、さあ、こっちに来て…)

めぐみちゃんはおばさんに手招きされ、恥ずかしそうに店の奥の方へ入っていった…

 

どれくらいたったか、店先でおじさんとマサさんがタバコをふかしていると

(はーい、お待ちどお様~…)

おばさんに連れられて、綺麗なウェディングドレス姿のめぐみちゃんが姿を現した…

(あっ…!)

マサさんとおじさんは、美しいドレス姿のめぐみちゃんに、その場でしばらくの呆然とたたずんでいた…

(本当に綺麗な子だな、マサさん…これはいい写真が撮れるよ…)

おじさんは早速写真撮影の準備をはじめた、が、隣のマサさんは… 

(………)

ぼ~~~……… 

そのまま、めぐみちゃんの美しいウェディングドレス姿に見とれていたのだった…

 

(はい、オッケー…、いやあ、本当にいい写真が撮れたよ、ありがとうね…お嬢ちゃん)

写真館のおじさんの大きな声に、マサさんはハッと我に帰った…

(マーちゃん…、マーちゃん…)

(えっ?)

(何さっきからボーっとしてんのよ…、終わったよ…)

(えっ、あっ、ああ…、ありがとうな…、めっ、めぐ…)

(何か心が無いって感じだけど…、さては美咲姉ちゃんのこと考えてたんでしょ……)

(いやっ、そうじゃなくって…)

(お姉ちゃんほど綺麗じゃないと思うけど、私も少しは似合ってるかな?)

めぐみちゃんはドレスのすそをそっと持ち上げてニッコリと微笑んだ…

Meguwedding

(えっ…)

マサさんは思わずポッと顔を赤らめると

(すっ、すっげえ似合ってるよ、めぐ…)

(えーっ、本当?…)

(ああ、マジ、本当にすっげえ似合ってる…)

そう言いながら、まるでまぶしいものでも見ているように、そっと目をそらした…

(へえ、似合ってるか…、何だかすっごくうれしいなあ…ふふふ…)

 

(ずうーっとガキだと思ってたけど、何時のまにか成長してたんだな…めぐ…)

(えー?、急に何をいってるのよ、マーちゃん…)

(マジで綺麗だな~!)

マサさんは照れくさそうにめぐみちゃんを見た… 

(やだっ!マーちゃんまでそんな事いって、恥ずかしいじゃない…)

めぐみちゃんは真っ赤になってうつむいた…、そんな彼女の事をマサさんはしばらくボーっと見つめていたが、やがてグッと眉間にしわをよせると

(なあ、めぐ…)

真剣な顔で彼女に

(いつかまた、俺にそんなウェディングドレス姿…みっ、見せてくれるか?…)

ぶっきらぼうにそう告げると、慌てて横を向いた…

 

(ドレス姿を?…、マーちゃんに?…)

めぐみちゃんは、少し首をかしげていたが、やがてニッコリと微笑むと

(うん、いいよ…、見せてあげる…)

(えっ!…マジか?マジで見せてくれるのか?…、撮影とかじゃなくて本当のドレス姿だぞ…)

(うん…)

(やったーーーー!)

マサさんは何故かガッツポーズをとりながら天を仰ぐと…

(おじちゃん、おじちゃん…やったーー、やったぞーー、はははは)

写真館のおじさんの元へ小躍りしながら走っていった…めぐみちゃんはそんなマサさんを見ながら

(私のドレス姿を見るのがそんなに楽しみだなんて…マーちゃんったら、ふふふ…、それじゃ頑張って素敵な人みつけないとね…)

小声でつぶやいていたのだった…

 

 

「思い出したか?写真館での約束…」

気がつくとマサさんは真剣な顔でめぐみちゃんを見つめていた…

「うん…思い出したけど、結婚の約束なんて全然してないじゃない…」

「してないって…、おっ、お前…、だって俺の為にウェディングドレス姿見せてくれるって…!」

「えっ!?」

「えっじゃねえよ、えっじゃ…」

「だって、ドレス姿を見せてあげるって…ただ、それだけ…?…えっ!?」

めぐみちゃんは大きく目を見開くと

「うっそーーーー!何よ、あれってプロポーズだったの?…」

思わずその場でのけぞった…

 

「プロポーズだったのって?…何言ってんだお前、ドレスを見せろっていったら、そうに決まってんだろが!!」

「えーーー!えーーーー!?」

めぐみちゃんは顔を真っ赤にさせながら、両手をバタバタさせると…

「ちょっと待ってよ、マーちゃん…、何でそうなっちゃうわけ~!?」

「何でって、そりゃーお前…」

「わっ、私はそんなつもりで返事したんじゃないよー!」

「そんなつもりじゃないって、それじゃ?…」

「だから~、いつか私が誰かと結婚する時、マーちゃんも招待してドレス姿を見てもらうって…、ただ、そういう意味で…」

「しょ、招待!?…」

「そっ、そうよ、だって、マーちゃんは私にとって、ずーっとお兄ちゃんのような存在だったでしょ、そっ、それに美咲お姉ちゃんとのこともあったし…」

「美咲のこと?…」

マサさんは思わず唇を噛みしめた…

  

「あっ、ごっ、ごめんね…、マーちゃん…、美咲お姉ちゃんとのことは辛い思い出だったね…」

「うぐっ……」

「ドレスのバイトも、お姉ちゃんが急に居なくなっちゃって、マーちゃんがすっごく寂しそうだったから、あのっ、私…、」

「………」

マサさんは慌ててめぐみちゃんに背を向けると、小さく肩を震わせていた…

 

「あっ、ごっ、ごめんね、マーちゃん…」

「………」

「本当に、ごめんなさい…」

「いやっ、お前が謝ることじゃねーよ、めぐ…、俺が、バカだから勝手に勘違いしちまってよ…」

「マーちゃん…」

「考えて見ると、あの時俺、美咲にふられて落ち込んでたからな…、だからお前の言葉も勝手に勘違いしちまってたんだな…」 

「うっ、うん…、そうだよ、マーちゃん…、あの時、すっごく落ち込んでたから…、私のことなんて本当は何とも思ってないのに、勘違いしちゃったんだよ……」

「そうだな…うん、うん…そうだ…」

マサさんは袖で涙をぬぐうと、めぐみちゃんの方へ振り返り

「いやっはは、何だかえれえ恥ずかしいな、はははは…」

明るく笑った…

めぐみちゃんはそんなマサさんの表情を見てホッと小さなため息をつくと、マサさんの胸元にある小さなお守り袋に目をやり…

「それっ…、まだ持ってたんだね…、マーちゃん…」

「えっ?」

マサさんは胸元にぶらさがっている小さなお守り袋に目をやった…

「ああ、あいつが作ってくれたお守りか…、どういうわけか捨てられなくてな…」

 

「やっぱり、今でも美咲お姉ちゃんのこと…」

「………」

マサさんは小さなお守りを見た後、ふっと寂しげに横を向いた…そしてハッと何かを思い出したのか

「そういえば、あいつ…、吉宗の胸にも、同じお守りが?…」

「私が作ったの…、お姉ちゃんに昔教わったのを思い出して…」

「お前が作ったって…、それじゃお前、あいつの事…」

 

「…うん…」 

めぐみちゃんは小さくうなずくと

「好きなの…、吉宗君のこと、大好きなの…」

涙を一杯にためながらそっと呟いた…

 

「それなのに、吉宗君のこと…、あんなに怒らせちゃって…私…私…」

めぐみちゃんは涙をポロポロこぼしながら、その場にしゃがみこんだ…

「あっ、ごっ、ごめん、俺のせいで…」

マサさんは困った顔で、彼女の背中に手をかけると…

「でも、お前がこんなに人を好きになるなんて…、誰に言い寄られても相手にしなかったおまえが…」

「吉宗君は特別なの…、本当に私にとって大切な人なの…」

「めぐ…、お前…」

「うえっ…うえっ…」

めぐみちゃんはその場で顔をおさえて泣きじゃくった…そんな彼女にマサさんは

「だっ、大丈夫…全部誤解だったんだからよ…、ちゃんと説明すれば、野郎も機嫌を直すだろ…」

「そうかな…」

「ああ、俺からもちゃんと伝えてやっからよ…、だから泣くなよめぐ…」

「本当?…マーちゃんからもちゃんと説明してくれるの?…」

「ああ、可愛い妹のためだ…」

やさしく小さな目で微笑んだ… 

めぐみちゃんはそんな言葉に少しほっとしたのか、静かに立ち上がると

「そうだ…吉宗君が戻ってくるまで、私、代わりにお店番してあげないと…」

涙をぬぐいながら、僕が受け持っていた金魚すくいの水槽の方へ歩いていった…

 

それからマサさんは、金魚すくいの前に寂しそうに腰掛けているめぐみちゃんのことを、無言でしばらく見つめていた…と、その時、

「うおあ、痛ててて、何てことしやがんだこの生意気女が…」

めぐみちゃんに一物をけられ、今までうずくまっていたチャラ男が、股間を押さえながら怖い顔で立ち上がると

「あれっ?…さっきの女は?…」

あたりをキョロキョロと見回していた…そしてお好みの三寸の前で無言で立ち尽くしているマサさんに気づくと

「オッサン…さっきの女はどこにいんだよ…」

うっぷんを晴らすかのようにマサさんの胸倉にぐっとつかみかかった…

「おい、オッサン!!聞いてんだよコラ!」

その瞬間だった…

ブワゴーーーーーーー!!

マサさんの大きなパンチパーマ頭が、チャラ男の顔面にすさまじい勢いで炸裂…

「ぐえあーーーーー!」

悲鳴と共にチャラ男は数メートル先の草むらに吹き飛ばされた…

 

マサさんは何事も無かったように、三寸の外に目を移し、再び金魚すくいの水槽の前で仕事の準備をしているめぐみちゃんを見ると…

「吉宗君は…特別な人…大切な人なの……か……」

震える声でそう呟いた…

そして、その目は何故か、怒りに満ちていたのだった…

続き
第109話 京美人と憧れの吉宗はん…へ

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